面倒くさがりの奮闘記〜面倒だけど、可愛い子のために頑張ります〜

棘花翡翠

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訓練

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教会に行ってから数日、色んな書類を説明された。私の年齢を考慮してだいぶ簡単に教えてくれた。内容は私がこの街で滞在する事の届け出と、身分証の発行についてだった。

書類を見たところ、身分証の発行には結構お金がかかるらしい。
ここのような大きな街に滞在する際には身分を証明するものを持って滞在届けを出さなければいけないらしい。小さな村などではそういうのはないので、村から上京してきた人達は身分証を持っていないので発行自体はそこそこ行われるそうだ。
しかし、大きな街など様々な場所に冒険者ギルドや商業ギルドなど、ギルドというところがあり、そこに登録する時に渡されるギルドカードも身分証明のものとして扱われるので、そちらの方が多いそうだ。

まあ、そんな感じで書類と睨めっこする時間が終わった次の日、皆がぞろぞろと外に出ていくのを眺めた。今までは自分の事があったから何をしているのかわからなかったけど、する事が無くなったので何をしているのか聞いてみた。

皆は訓練を始めるらしい。

この世界には人攫いが普通に存在しており、魔物と呼ばれる化け物もいるらしい。そういうのを対処するために鍛えているそうだ。

とても面倒臭い。が、私も体力作りをする事にした。ここは人が多いし、これからの事も考えると体力をつけていた方がいいというのは明白だ。

とても、とても面倒臭いが頑張ることにした。

この時ばかりは前世の体を持ってこれたらなぁ、と思った。





走り始めて気付いた。体力がありえないほどに少ない。まさかこれほどまでとは…。
驚く事に、ランニングを始めて15歩で息が上がり、30歩で息切れ寸前だった。

私はすぐに回収され、木陰へ運ばれた。
皆こちらをチラチラと見ている。

体力は絶望的なのが分かったので、とりあえず前世で習っていた護身術の型をする事にした。
髪をまとめる。

前世では体術と棒術を習っていた。幼少期からやっていたため、結構強かった自信はある。

目を閉じ、いつも相手をしてくれていた私専属の護衛であった北村を思い描く。

北村は私に優しかった。いつも本気で指導してくれていた。北村のせいじゃないのに、「怖い思いをさせてすみません」とよく謝っていた。初めて素で話すことが出来た護衛だった。

いや、初めて素で話すことが出来た人だった。

でも、いなくなってしまった。あの暗殺者がおくられてきた日に。





『お嬢、さま。よくやり、ました。さすが、俺の教え子です、ね…ゴフッ』

口からも血が出てくる。

『もう、もう喋るな!すぐに助けてやるから!耐えろ!!』

泣きながら叫ぶ。

『…ふふっ。こんな主人につか、えられ、て……よかった』

あいつは笑った。嬉しそうに。涙を流しながら。

…ありがとう。お前が胸を張れるように、すごい人になるよ。



あの日を境に、私は習い事により積極的になった。





何分経っただろうか。あいつが教えてくれた体力をあまり消費しない方法のおかげで長く動ける。しかし、この体では対して意味のないように思えるが。

頬に流れる温かいものが、涙なのか汗なのか分からない。きっと私は今、笑っているだろう。

「…ス」

ああ、生まれ変わる前に北村にあっておきたかったなぁ…。

「シス!!」

名前を呼ばれ、ハッとして動きを止める。目を開けると皆が集まっていた。
突然止まった事によって一気に呼吸が苦しくなる。体がふらつくのを感じながら皆の方を見る。

「呼んでも気づかないし、汗ダラダラかいてるのに動き止めないし、泣き始めるし、焦ったんだよ!!」

間延びした返事をしているミリアンが珍しく怒ってきた。
驚いて目をぱちくりさせ、苦笑いする。

「ごめん。つい、夢中に、なって」

そう言うと皆が溜息をつきながら文句を言う。

「何だよ~。マジびっくりしたんだけど!!」

「とりあえず水分取らなきゃ」

「驚かせんなよ…。ってか呼吸荒くね?大丈夫?」

「それで、なに踊ってたの?」

私は膝に手を置き、荒い呼吸をしながら頭の上に?を浮かべた。

「踊って、た…?」

「うん。ずーっと踊ってたけど、なんの踊り?」

「キレイだったよな~」

「な~」

私は思い出した。北村も似たようなことを言っていた。

『お嬢様は型が綺麗ですね。まるでダンスをしているようです』

「あー…。まあ、体力作りを、しようとして、やってた」

とりあえずそれで納得してもらった。
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