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真夜中の宣誓*
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2度目の深い接吻で慣れない快楽から舌を逃がそうとすれば、その意図を察したレオン様が舌を敢えて絡ませそれ以上の愛撫を施した。……そもそも今日の夜這いでさえ経験が無いなりに頑張った結果だったのに、予想以上で想定外すぎる。
一度目よりも呼吸することに慣れたとはいえ、快楽と綯交ぜになってくると中々キツイものがあった。
「れ、っおん、さま……、も、無理です。」
切れ切れになりながらも辛うじて声を発して、レオン様の胸板を押す。
しかしながらそれなりに強く押しているはずなのに、ピクリとも動く気配はなかった。私が軟弱なだけなのか、それとも彼が強すぎるのかは分からない。
トントンと3回ほど叩いたあたりでやっと呼吸が楽になった。
「もう、……意地悪。死んじゃうかと思いました。」
少し気色ばんでそう告げれば、レオン様の形の良い眉が楽しそうに歪んだ。
「何年も待ったんだ、我慢するつもりはないと言っただろ?」
まるで何かから解放されたような、吹っ切れたような表情で笑うレオン様を見て胸が詰まった。そんな表情で言われたら、ならそれでも良いかな、何て思えてしまうのだから恋心とは恐ろしいと思う。
けれど、これ以上快楽を与えられたら形を失ってしまいそうな気がするのも確かだった。さっき、調子に乗って挑発した自分を叱りたい気分だ。
「う、受け止めたい気持ちは、もちろんあります。……でも、これ以上されたら、何だか自分が自分でなくなっちゃいそうというか、溶けちゃいそうで……。」
率直に告げれば、レオン様の青緑の色彩に目が捉えられる。
「シエル、……本当に可愛い。
怖い思いはこれ以上させないように善処する、だからもう一度抱き直して良いか?」
思わず、という雰囲気でそう呟かれて頬に熱が集まる。しかしその後に続けられた言葉にこれ以上とないくらい熱くなる。
さっきまでは自分が夜這いをかける側で勢いもあったから恥ずかしさをどうにか押し込められたけど、こんな、見つめあって近距離でなんて恥ずかしさの塊でしかない。
それでも、私は意を決して口を開いた。
「本当に、怖くしませんか……?」
伺いながらそう問えば、手を優しく取られた。
そしてそのまま私の手の甲を自分の口元まで持ち上げ、ふわりと触れるだけのフェザーキスをした。
それはこの国で人々が相手に対して忠誠を誓うときのポーズであり、相手に尽くすことを女神に宣誓する祈りのポーズでもあった。
「我が名にかけて誓おう。……優しくするよ。」
真摯な声でそう囁かれてしまえば、私は消え入るような声で応答して静かに頷くしかできなかった。
身体中に優しく降り注ぐキスの嵐に唯々幸せを享受する。時折与えられる鋭い快感に背を仰け反らせれば、執拗に深い快感を与えられる。
「ひゃ、っ!そ、そんなとこにキスなんて!」
「大丈夫、シエルはどこも綺麗だから。」
なによりも整った顔を持つレオン様にそう言われて居たたまれなくなる。
さらに興が乗ったのか、触れるだけではなく舌を使って愛撫されたり指を使われたりした。際限なく快楽の波が押し寄せる。
そのせいなのか、それともポーションのせいか。私の体は与えられる快楽にすでにぐすぐすになっていた。押し寄せる絶頂のスパンが短くなっていく。
「もっ、もう、良いですから……!早く、レオン様の、ください、っ!」
耐えきれなくなってそう乞えば、何かを詰まらせたような声が頭上で響いた。
「本当に、シエルは俺を煽る天才だな。」
なぜか呆れた顔をするレオン様。
「……痛かったら言ってくれ。と言っても、止められるかは分からんがな。」
疑問の声も、了承の声も、声を出そうとして全て喉の奥に消えた。
処女ではないとはいえ、失ったばかりの身にはその快楽は強すぎた。頭の奥まで真っ白になる。
ゆっくりと痛みを与えないように挿入されたものの、狭い膣内には暴力的なまでの快感だった。
「ぁっ、待って、こんな、っ気持ち良いの、ムリ、」
最早自分でもなにを言っているか分からない。ただその快感から逃げて縋るように、目の前のレオン様に抱きつく。
「ホントにかわい……、我慢できるかな、俺。」
ぐちゃぐちゃになった頭に、レオン様の声が響いたけどうまく言葉の意味を理解できなかった。
よく分からないけれど、代わりにギュッと抱く力を強めた。
奥を突き上げられる度に、口から甘い声がもれる。
「やっ、あっ、……んんっ!」
絶頂したその快楽がなくなる前にまた次が訪れる。とめどなく訪れて、止みそうにない。
潤んだ視界の中で余裕のないレオン様の表情が見える。その表情に嬉しくなってキュンとする。
「も、きて、ください、っ!」
挿入のストロークが早くなって、その感覚に溺れそうになる。
お腹の奥底でその熱を感じると、一仕事終えた時の気分になった。
しかし、お腹の中のソレは未だにその形を保ち続けていた。
「えっ、えっ、あれ?」
一つの峠を越えたと思ったのに、変わらず続く硬さに驚きを覚える。
「シエル、が、可愛すぎるから、だなっ。」
レオン様の頬を滑る汗が光を反射して輝いた。
その後も十分に愛し合い、身体中に倦怠感が回り始めた頃、やっと捕食されるような勢いが落ち着いてきた。
夜這いをかけたときとは全く違う、胎の奥の暖かで熱い幸福感。少し膨らんだお腹を撫でて思わず笑みが溢れてしまう。今回は魔法で妊娠をしないようにしているけれど、まるで子供がいるみたいな幸せだ。
レオン様が満足そうに私の様子を見た。次いで、ずるりと質量と熱を伴って抜けていく。
「俺、今凄い幸せだ。……ありがとう、シエル。」
抜けていった感覚に、ふるふると身体が快楽に震える。
ちょっと落ち着いたので、少し身体を上げればレオン様の剛直がなお熱を保っているのが見えた。
「ひゃっ、……まだ、続けられますよ、私。お相手、……しましょうか?」
未だにやや息切れがしている呼吸を整えながらそう言えば、レオン様がゆるりと微笑んだ。
「いや、大丈夫だ。そろそろ止めにしよう。」
私、もしかして何か粗相でもしでかした?変なこと口走ったりとか?あり得る……、今もだけれどさっきから頭に霞みがかったように不思議と思考がまとまらない。
「ど、どうかしましたか?……何か、気にさわること、しちゃいましたか?」
不安になって潤んだ目を開けば、少しぼんやりとレオン様の思案顔が見える。
「いや、少し性急すぎたかと思ってな。シエルはあまり身体が丈夫じゃなかっただろ?今日は色々と身体に刺激が強すぎる、大事な人に自分の都合で無理はして欲しくない。……と言っても、もう無理させた後かもしれんが。」
そう言って慈しむように細い指が私の髪を撫でる。労わりの伝わるその温度に心が暖かくなる。
「ありがとうございます……。あの、実は、私ポーションを卒業研究に作ったんですけど、それを保管していた容器に間違えて飲用水を入れて誤飲してしまって、」
「っ!?治験は終わっていなかったやつをか?身体は大丈夫なのか?副作用は?」
私が言い終わらないうちに、レオン様が矢継ぎ早く質問を重ねる。
「そうなんです……。一応大事をとって誤飲した2日前から寮の自室で経過を見ていましたが、とくに命に関わるような異常はありませんでした。……効能は1週間程、身体強化と魔力量の底上げをするもの、でした。結果的に飲用水で薄められたものを飲んだので、大きく能力に影響を残すような強い効果は出ませんでした。」
どこか後ろめたい気持ちになってしどろもどろに答えれば、レオン様が安堵の息を吐いた。
「そうか、それなら良かった。」
優しい眼差しに心が安らぐ。しかし私にはもう一つ言わなければならないことがある。
浅い呼吸をしてからしずしず口を開く。
「ただ、副作用で、その、自分の欲求に素直になりやすくなりまして……。」
こんな風に夜這いをかけた次第なんです。と消え入りそうになる声で告げる。するとレオン様が「なるほど。」と独り言ちた。
「普段なら魔法を展開させるのに意識を集中させるが、今回は通常の思考が阻害されるリミットが掛かっていたんだな……。普段ならミスしないような基礎的な術式に少し脆い箇所があって、そこから拘束を解くことができたのはそういうことか。」
そう言われて気づく。掛かった感覚がしっかりとあった拘束魔法が破られたのはそれが原因だったんだ。自由を奪う、なんて高難易度の術式かつ多量の魔力を使用する魔法は、一度掛かったらそうそう破れるものではないのだから。つまり拘束魔法の威力は十分だったのにも関わらず、術式に抜けがあったということなんだろう。
「拘束魔法の後遺症はございませんか?集中力不足で術式構成に間違いがあったなら、何か不備があるかもしれません。」
身体の動きを止めるはずが心臓を止めていた、なんてことはないと思うけど、小さな不具合ならあるかもしれない。
「いや、大丈夫だ。拘束を解いたときに全て解除できたはずだからな。不安なら確認するか?」
そう言ってレオン様は元より開けぎみだったナイトウェアの合わせを開いた。そっと胸板に手を触れると、鼓動を掌の向こう側に強く感じる。
施術者が相手に直接触れていること、相手が施術に許可していること、この二つが揃うといわゆる診療魔法と呼ばれる術式を行使することができる。
私の魔力が残留していないかということに焦点を絞って魔法を展開させていき、何も異常がないことに安心して息を吐いた。
「良かった……。何も異変はありませんでした。」
「そうか、シエルがそれで安心できたなら良かった。」
微笑むレオン様を見上げて大事があったらと思うとヒヤリとしながら、開けたシャツのボタンを閉じようとした。しかしボタンを掴もうとしてぐらりと身体が傾き、不可抗力でそのままレオン様の胸に落ちた。
「シエル?どうした?」
さっきまでのふわふわとした酩酊感が一気に強くなったのを感じる。不安定な思考越しに、レオン様の声が響く。
「……?何だか、頭が、ぼんやりしてて、……あれ?何でだろ……。」
言葉もうまく言えない私にレオン様がそっと肩を支えて覗き込んだ。
「シエル、さっき二日前にポーションを誤飲したと言った時、飲用水で薄められたものを飲んだと言ったな?」
聞き取りやすいようにゆっくりとテノールが紡がれる。
「はい、それを半分くらい、飲んで……。」
「もともと1週間程度の効能を期待して作ったポーションなら、水で薄めた上に半分の量を服用したなら三日目の夜に切れても不自然は無いな。……きっとさっきまではポーションの身体強化のお陰で気力が保てていたんだろうな。」
そっか、ポーションが切れたのか。よく思い返してみれば、初めての経験に加えて夜更け過ぎまでぱっちり目覚めていられるなんて普段の私からは想像もつかないことだ。
なら、あのポーションは欲求強化の効能さえ解除出来れば、十分商品化可能な成功作ということになるのか。思い当たった結論に場違いながら嬉しくなって笑みをこぼせば、レオン様の声が耳に届いた。
「シエル、大方ポーションの成功に喜んでいるのかもしれないが、そろそろ休もう。」
言い当られた私が目を逸らすと、レオン様はたしなめるように私の名前を呼んでからベッドから降り、そのまま私の身体を抱き上げた。
「ひゃっ……!」
そっと身体を抱き上げると、レオン様は慣れた足取りで寝室の隣の部屋へと移動する。
唐突な行動に疑問符を浮かべる私に、レオン様は優しく告げる。
「見たところ、今夜の疲労とポーションの反動もかなりあるんだろう。シエルは大人しく世話されればいい。」
抱き上げた私を物ともせず扉を開けるとそこはバスルームだった。そういえば私がこの部屋に訪れたとき丁度シャワーを浴び終えた様子だった。そのせいかまだ浴室は温かった。
「よし、身体を冷やす心配は無いな。シエル、服を脱がせてもいいか?」
耳元で囁かれたその言葉に意図せずして顔が熱くなる。うぅ、そんなわけでレオン様は言ってるわけじゃないのに……。
服の着脱なんていう侍従にもやらせないようなことをレオン様にやられるのは気がひけるけど、制御の利かないこの体で出来る気はしない。治ったらちゃんと謝ろう、今は任せるしかない。
「すみません……、お願い、します。」
赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて、肩に顔を押し当てる。
今着ているのが羽織らせてもらったレオン様のガウンに薄手のネグリジェで両方とも着脱が容易、ということだけが幸いだった。
テキパキと服を脱がせると、私が惚けている間にシャワーを浴びせ、すかさず柔らかな生地のバスタオルで身を包んでくれた。水滴を拭う手つきが優しい。
「どうだ?気持ち悪いところはあるか?」
浴室を出て再びベッドサイドへ向かいながら、心配の色を含んだ声音で呼びかけられる。
「いえ、お陰でスッキリできました……。」
私の返事を聞きレオン様が納得気に頷く。
「そうか、良かった。もうこんな時間だし部屋に戻るのもなんだろうから、ここで寝てしまえばいいさ。」
ゆっくりとした動きでベッドへ横たわらせると、小さな子をあやすように私の頭を撫でた。
さっきからずっと尽くしてもらってばかりいる状況に、心が痛む。元はと言えば私の独善的なワガママから始まったことなのに……。
「……ごめんなさい、すべてレオン様にやらせてしまって。私、今夜……いいえ、前からずっとレオン様には迷惑しかかけてないです……。」
頭を撫でる心地良いリズムに眠気を誘われるものの、申し訳無さから薄っすらと涙が滲んで次いで謝罪をする。
それを聞いたレオン様は手を一旦止めると、滲んだ涙をそっと拭った。
「シエル、そんな風に思わないでくれ。俺はシエルが大好きだからやってるんだよ。むしろ役得な位だ。」
ベッドサイドに腰を下ろすと、レオン様の香りがふわりと立った。
「学園に入ってから逢える機会が減って悲しい思いをした分、これからは目一杯俺に愛される予定なんだから今からそんなんじゃ持たないぞ?」
不安げな表情を浮かべる私に、少しだけ意地悪な表情をしたレオン様が笑いかける。
「ほら、気は済んだか?そろそろ夜も更けてくる、明日は午後から卒業式も予定されているし、早く寝るんだ。」
そういうとレオン様は肌触りの良い布団を私の上に掛け、部屋の電気を消した。
「分かりました。でも、……レオン様は、寝ないのですか?」
電気を消しても戻ってくる気配がないので、そう問いかける。
「あぁ、気にしないでくれ。元々今晩は明日の式典の準備をする予定だったんだ。
大丈夫、シエルが寝るまでは側にいる。」
再びベッドサイドに腰を下ろしたレオン様の手をそっと握る。握り返してくれる感覚に頬が緩む、これが安心感というのだろう。
「さ、おやすみ、お姫様。明日も愛してるよ。」
繋いだ手を持ち上げられて、手の甲に静かなキスが落とされた。
瞼を閉じ真っ暗になった視界の中で、ぼんやりとその言葉を反芻した。
愛を囁かれることがこんなにも幸福感を与えてくれるということを、私は今まで知らなかった。両親や兄弟から愛されてこなかったわけでは無いのに。
ただ一人の愛する人から一言貰えるだけで、こんなに世界が色付くんだ。……その不思議さに驚きながら、私は深い眠りに落ちていった。
一度目よりも呼吸することに慣れたとはいえ、快楽と綯交ぜになってくると中々キツイものがあった。
「れ、っおん、さま……、も、無理です。」
切れ切れになりながらも辛うじて声を発して、レオン様の胸板を押す。
しかしながらそれなりに強く押しているはずなのに、ピクリとも動く気配はなかった。私が軟弱なだけなのか、それとも彼が強すぎるのかは分からない。
トントンと3回ほど叩いたあたりでやっと呼吸が楽になった。
「もう、……意地悪。死んじゃうかと思いました。」
少し気色ばんでそう告げれば、レオン様の形の良い眉が楽しそうに歪んだ。
「何年も待ったんだ、我慢するつもりはないと言っただろ?」
まるで何かから解放されたような、吹っ切れたような表情で笑うレオン様を見て胸が詰まった。そんな表情で言われたら、ならそれでも良いかな、何て思えてしまうのだから恋心とは恐ろしいと思う。
けれど、これ以上快楽を与えられたら形を失ってしまいそうな気がするのも確かだった。さっき、調子に乗って挑発した自分を叱りたい気分だ。
「う、受け止めたい気持ちは、もちろんあります。……でも、これ以上されたら、何だか自分が自分でなくなっちゃいそうというか、溶けちゃいそうで……。」
率直に告げれば、レオン様の青緑の色彩に目が捉えられる。
「シエル、……本当に可愛い。
怖い思いはこれ以上させないように善処する、だからもう一度抱き直して良いか?」
思わず、という雰囲気でそう呟かれて頬に熱が集まる。しかしその後に続けられた言葉にこれ以上とないくらい熱くなる。
さっきまでは自分が夜這いをかける側で勢いもあったから恥ずかしさをどうにか押し込められたけど、こんな、見つめあって近距離でなんて恥ずかしさの塊でしかない。
それでも、私は意を決して口を開いた。
「本当に、怖くしませんか……?」
伺いながらそう問えば、手を優しく取られた。
そしてそのまま私の手の甲を自分の口元まで持ち上げ、ふわりと触れるだけのフェザーキスをした。
それはこの国で人々が相手に対して忠誠を誓うときのポーズであり、相手に尽くすことを女神に宣誓する祈りのポーズでもあった。
「我が名にかけて誓おう。……優しくするよ。」
真摯な声でそう囁かれてしまえば、私は消え入るような声で応答して静かに頷くしかできなかった。
身体中に優しく降り注ぐキスの嵐に唯々幸せを享受する。時折与えられる鋭い快感に背を仰け反らせれば、執拗に深い快感を与えられる。
「ひゃ、っ!そ、そんなとこにキスなんて!」
「大丈夫、シエルはどこも綺麗だから。」
なによりも整った顔を持つレオン様にそう言われて居たたまれなくなる。
さらに興が乗ったのか、触れるだけではなく舌を使って愛撫されたり指を使われたりした。際限なく快楽の波が押し寄せる。
そのせいなのか、それともポーションのせいか。私の体は与えられる快楽にすでにぐすぐすになっていた。押し寄せる絶頂のスパンが短くなっていく。
「もっ、もう、良いですから……!早く、レオン様の、ください、っ!」
耐えきれなくなってそう乞えば、何かを詰まらせたような声が頭上で響いた。
「本当に、シエルは俺を煽る天才だな。」
なぜか呆れた顔をするレオン様。
「……痛かったら言ってくれ。と言っても、止められるかは分からんがな。」
疑問の声も、了承の声も、声を出そうとして全て喉の奥に消えた。
処女ではないとはいえ、失ったばかりの身にはその快楽は強すぎた。頭の奥まで真っ白になる。
ゆっくりと痛みを与えないように挿入されたものの、狭い膣内には暴力的なまでの快感だった。
「ぁっ、待って、こんな、っ気持ち良いの、ムリ、」
最早自分でもなにを言っているか分からない。ただその快感から逃げて縋るように、目の前のレオン様に抱きつく。
「ホントにかわい……、我慢できるかな、俺。」
ぐちゃぐちゃになった頭に、レオン様の声が響いたけどうまく言葉の意味を理解できなかった。
よく分からないけれど、代わりにギュッと抱く力を強めた。
奥を突き上げられる度に、口から甘い声がもれる。
「やっ、あっ、……んんっ!」
絶頂したその快楽がなくなる前にまた次が訪れる。とめどなく訪れて、止みそうにない。
潤んだ視界の中で余裕のないレオン様の表情が見える。その表情に嬉しくなってキュンとする。
「も、きて、ください、っ!」
挿入のストロークが早くなって、その感覚に溺れそうになる。
お腹の奥底でその熱を感じると、一仕事終えた時の気分になった。
しかし、お腹の中のソレは未だにその形を保ち続けていた。
「えっ、えっ、あれ?」
一つの峠を越えたと思ったのに、変わらず続く硬さに驚きを覚える。
「シエル、が、可愛すぎるから、だなっ。」
レオン様の頬を滑る汗が光を反射して輝いた。
その後も十分に愛し合い、身体中に倦怠感が回り始めた頃、やっと捕食されるような勢いが落ち着いてきた。
夜這いをかけたときとは全く違う、胎の奥の暖かで熱い幸福感。少し膨らんだお腹を撫でて思わず笑みが溢れてしまう。今回は魔法で妊娠をしないようにしているけれど、まるで子供がいるみたいな幸せだ。
レオン様が満足そうに私の様子を見た。次いで、ずるりと質量と熱を伴って抜けていく。
「俺、今凄い幸せだ。……ありがとう、シエル。」
抜けていった感覚に、ふるふると身体が快楽に震える。
ちょっと落ち着いたので、少し身体を上げればレオン様の剛直がなお熱を保っているのが見えた。
「ひゃっ、……まだ、続けられますよ、私。お相手、……しましょうか?」
未だにやや息切れがしている呼吸を整えながらそう言えば、レオン様がゆるりと微笑んだ。
「いや、大丈夫だ。そろそろ止めにしよう。」
私、もしかして何か粗相でもしでかした?変なこと口走ったりとか?あり得る……、今もだけれどさっきから頭に霞みがかったように不思議と思考がまとまらない。
「ど、どうかしましたか?……何か、気にさわること、しちゃいましたか?」
不安になって潤んだ目を開けば、少しぼんやりとレオン様の思案顔が見える。
「いや、少し性急すぎたかと思ってな。シエルはあまり身体が丈夫じゃなかっただろ?今日は色々と身体に刺激が強すぎる、大事な人に自分の都合で無理はして欲しくない。……と言っても、もう無理させた後かもしれんが。」
そう言って慈しむように細い指が私の髪を撫でる。労わりの伝わるその温度に心が暖かくなる。
「ありがとうございます……。あの、実は、私ポーションを卒業研究に作ったんですけど、それを保管していた容器に間違えて飲用水を入れて誤飲してしまって、」
「っ!?治験は終わっていなかったやつをか?身体は大丈夫なのか?副作用は?」
私が言い終わらないうちに、レオン様が矢継ぎ早く質問を重ねる。
「そうなんです……。一応大事をとって誤飲した2日前から寮の自室で経過を見ていましたが、とくに命に関わるような異常はありませんでした。……効能は1週間程、身体強化と魔力量の底上げをするもの、でした。結果的に飲用水で薄められたものを飲んだので、大きく能力に影響を残すような強い効果は出ませんでした。」
どこか後ろめたい気持ちになってしどろもどろに答えれば、レオン様が安堵の息を吐いた。
「そうか、それなら良かった。」
優しい眼差しに心が安らぐ。しかし私にはもう一つ言わなければならないことがある。
浅い呼吸をしてからしずしず口を開く。
「ただ、副作用で、その、自分の欲求に素直になりやすくなりまして……。」
こんな風に夜這いをかけた次第なんです。と消え入りそうになる声で告げる。するとレオン様が「なるほど。」と独り言ちた。
「普段なら魔法を展開させるのに意識を集中させるが、今回は通常の思考が阻害されるリミットが掛かっていたんだな……。普段ならミスしないような基礎的な術式に少し脆い箇所があって、そこから拘束を解くことができたのはそういうことか。」
そう言われて気づく。掛かった感覚がしっかりとあった拘束魔法が破られたのはそれが原因だったんだ。自由を奪う、なんて高難易度の術式かつ多量の魔力を使用する魔法は、一度掛かったらそうそう破れるものではないのだから。つまり拘束魔法の威力は十分だったのにも関わらず、術式に抜けがあったということなんだろう。
「拘束魔法の後遺症はございませんか?集中力不足で術式構成に間違いがあったなら、何か不備があるかもしれません。」
身体の動きを止めるはずが心臓を止めていた、なんてことはないと思うけど、小さな不具合ならあるかもしれない。
「いや、大丈夫だ。拘束を解いたときに全て解除できたはずだからな。不安なら確認するか?」
そう言ってレオン様は元より開けぎみだったナイトウェアの合わせを開いた。そっと胸板に手を触れると、鼓動を掌の向こう側に強く感じる。
施術者が相手に直接触れていること、相手が施術に許可していること、この二つが揃うといわゆる診療魔法と呼ばれる術式を行使することができる。
私の魔力が残留していないかということに焦点を絞って魔法を展開させていき、何も異常がないことに安心して息を吐いた。
「良かった……。何も異変はありませんでした。」
「そうか、シエルがそれで安心できたなら良かった。」
微笑むレオン様を見上げて大事があったらと思うとヒヤリとしながら、開けたシャツのボタンを閉じようとした。しかしボタンを掴もうとしてぐらりと身体が傾き、不可抗力でそのままレオン様の胸に落ちた。
「シエル?どうした?」
さっきまでのふわふわとした酩酊感が一気に強くなったのを感じる。不安定な思考越しに、レオン様の声が響く。
「……?何だか、頭が、ぼんやりしてて、……あれ?何でだろ……。」
言葉もうまく言えない私にレオン様がそっと肩を支えて覗き込んだ。
「シエル、さっき二日前にポーションを誤飲したと言った時、飲用水で薄められたものを飲んだと言ったな?」
聞き取りやすいようにゆっくりとテノールが紡がれる。
「はい、それを半分くらい、飲んで……。」
「もともと1週間程度の効能を期待して作ったポーションなら、水で薄めた上に半分の量を服用したなら三日目の夜に切れても不自然は無いな。……きっとさっきまではポーションの身体強化のお陰で気力が保てていたんだろうな。」
そっか、ポーションが切れたのか。よく思い返してみれば、初めての経験に加えて夜更け過ぎまでぱっちり目覚めていられるなんて普段の私からは想像もつかないことだ。
なら、あのポーションは欲求強化の効能さえ解除出来れば、十分商品化可能な成功作ということになるのか。思い当たった結論に場違いながら嬉しくなって笑みをこぼせば、レオン様の声が耳に届いた。
「シエル、大方ポーションの成功に喜んでいるのかもしれないが、そろそろ休もう。」
言い当られた私が目を逸らすと、レオン様はたしなめるように私の名前を呼んでからベッドから降り、そのまま私の身体を抱き上げた。
「ひゃっ……!」
そっと身体を抱き上げると、レオン様は慣れた足取りで寝室の隣の部屋へと移動する。
唐突な行動に疑問符を浮かべる私に、レオン様は優しく告げる。
「見たところ、今夜の疲労とポーションの反動もかなりあるんだろう。シエルは大人しく世話されればいい。」
抱き上げた私を物ともせず扉を開けるとそこはバスルームだった。そういえば私がこの部屋に訪れたとき丁度シャワーを浴び終えた様子だった。そのせいかまだ浴室は温かった。
「よし、身体を冷やす心配は無いな。シエル、服を脱がせてもいいか?」
耳元で囁かれたその言葉に意図せずして顔が熱くなる。うぅ、そんなわけでレオン様は言ってるわけじゃないのに……。
服の着脱なんていう侍従にもやらせないようなことをレオン様にやられるのは気がひけるけど、制御の利かないこの体で出来る気はしない。治ったらちゃんと謝ろう、今は任せるしかない。
「すみません……、お願い、します。」
赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくて、肩に顔を押し当てる。
今着ているのが羽織らせてもらったレオン様のガウンに薄手のネグリジェで両方とも着脱が容易、ということだけが幸いだった。
テキパキと服を脱がせると、私が惚けている間にシャワーを浴びせ、すかさず柔らかな生地のバスタオルで身を包んでくれた。水滴を拭う手つきが優しい。
「どうだ?気持ち悪いところはあるか?」
浴室を出て再びベッドサイドへ向かいながら、心配の色を含んだ声音で呼びかけられる。
「いえ、お陰でスッキリできました……。」
私の返事を聞きレオン様が納得気に頷く。
「そうか、良かった。もうこんな時間だし部屋に戻るのもなんだろうから、ここで寝てしまえばいいさ。」
ゆっくりとした動きでベッドへ横たわらせると、小さな子をあやすように私の頭を撫でた。
さっきからずっと尽くしてもらってばかりいる状況に、心が痛む。元はと言えば私の独善的なワガママから始まったことなのに……。
「……ごめんなさい、すべてレオン様にやらせてしまって。私、今夜……いいえ、前からずっとレオン様には迷惑しかかけてないです……。」
頭を撫でる心地良いリズムに眠気を誘われるものの、申し訳無さから薄っすらと涙が滲んで次いで謝罪をする。
それを聞いたレオン様は手を一旦止めると、滲んだ涙をそっと拭った。
「シエル、そんな風に思わないでくれ。俺はシエルが大好きだからやってるんだよ。むしろ役得な位だ。」
ベッドサイドに腰を下ろすと、レオン様の香りがふわりと立った。
「学園に入ってから逢える機会が減って悲しい思いをした分、これからは目一杯俺に愛される予定なんだから今からそんなんじゃ持たないぞ?」
不安げな表情を浮かべる私に、少しだけ意地悪な表情をしたレオン様が笑いかける。
「ほら、気は済んだか?そろそろ夜も更けてくる、明日は午後から卒業式も予定されているし、早く寝るんだ。」
そういうとレオン様は肌触りの良い布団を私の上に掛け、部屋の電気を消した。
「分かりました。でも、……レオン様は、寝ないのですか?」
電気を消しても戻ってくる気配がないので、そう問いかける。
「あぁ、気にしないでくれ。元々今晩は明日の式典の準備をする予定だったんだ。
大丈夫、シエルが寝るまでは側にいる。」
再びベッドサイドに腰を下ろしたレオン様の手をそっと握る。握り返してくれる感覚に頬が緩む、これが安心感というのだろう。
「さ、おやすみ、お姫様。明日も愛してるよ。」
繋いだ手を持ち上げられて、手の甲に静かなキスが落とされた。
瞼を閉じ真っ暗になった視界の中で、ぼんやりとその言葉を反芻した。
愛を囁かれることがこんなにも幸福感を与えてくれるということを、私は今まで知らなかった。両親や兄弟から愛されてこなかったわけでは無いのに。
ただ一人の愛する人から一言貰えるだけで、こんなに世界が色付くんだ。……その不思議さに驚きながら、私は深い眠りに落ちていった。
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