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夏の王

蜜夜

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「王よ、御戯れは、その辺りでおやめ下さい」
ぴしり、と鋭い声が飛ぶ。

ラクか。

無粋な。
これは戯れではない。純粋なる、愛の行為である。

しかし、その様子で理解した。
ラクは、イチを好いている。わたしに妬いているのだと。

まだ子を成していないので、自分にもまだ可能性があると思っているのであろう。
恋とは、人を愚かにするものなのだな。


后の証である”印”を受け入れている時点で、勝負は決まっているものを。


◆◇◆


イチは、注目を浴びていることに気づき、頬を染め。
わたしから離れ、ハルの背後へ隠れた。

隠れる様子も、まるで小動物のようで、愛らしい。


「あらあら、油断も隙もないね。ウーさんったら。よしよし」
イチはおとなしく頭を撫でられている。

ハルには気を赦しているようだ。
ハルの好みは、自分よりも体格のよい男を組み敷くことである。

イチのことは可愛く思っているようだが、あくまでも愛玩の対象だ。
ある意味、安心して預けられるのだが。

ラクをこのまま、イチの警護にしておくのは考えものである。
どうしたものか。


微妙なものとなっていた空気を、壊したのはアフダルであった。
氷菓子を食い尽くしたアフダルを追いかけ、ラクも調理室を出て行った。


もうそろそろ、頃合であろう。
わたしとイチの間に子を授けてもらうとするか。

政務が終わり、イチの部屋に向かうと。
寝床には居なかった。


イチは湯浴み中だったようだ。
身体を清め、肌を磨いて、わたしを待っていようとは。

なんといじらしい伴侶であろうか。

待ちきれないので浴室へ入り。
こちらを見て目をぱちくりとしているイチの隣に腰を下ろす。


「もう、痛くはないだろう?」

耳元で囁き、腕の中に引き寄せ、口付ける。
イチは抗うでもなく、わたしにうっとりと身を預けている。

頬を上気させているのは、湯の温度だけではなかろう。
かけひきなど見せない、素直な反応が愛おしい。


◆◇◆


「ん、……ぅ、」
前に知った、イチの感じる場所に触れれば、甘い声で鳴く。


膝の上に乗せ、胸の飾りを捏ねてやれば、すぐに固く凝ってくる。
淡い色だったのが赤く色づいて。収穫を待つ果実を思わせる。

舌を這わせれば、どこもかしこも甘く。
美酒のようにわたしを酔わせる。


脂肪の少ない、薄い身体。
この腹を、早くわたしでいっぱいに満たしてやりたい。

イチは、わたしに抱かれるためにこの世に寄越されたに違いない。

この腕にしっくりくる心地のよさ。
胴が長めなのもよい。この背の低さで我々のような体つきであれば、わたしのものを奥まで受け入れることは不可能であっただろう。

身長差があるのに、挿入しながら口付けが可能なのも好ましい。


股間の小さいイチを愛でてやれば、すぐに膨らみ、解放を訴えてくる。
感じやすい身体である。

「駄目……、出ちゃう、から、」
「出せばよい。赦す」


わたし以外知らない、わたしだけの身体。

愛しいイチ。
后の印のある、額に口付ける。


「ひぁ、あああっ!」
わたしの手淫に耐え切れず、湯の中で放ち、くたりと脱力した身体を抱き上げる。

自動人形に身体の水気を拭わせ。
腕に抱いたまま、わたしの寝室へ移動した。


寝台に横たわらせると。
イチは、うっとりとした貌でわたしを見上げている。

胸をときめかせ、わたしに抱かれるのを待ちわびているのだろう。


早く、その願いを叶えてやりたいところであるが。
男同士の行為の場合、下準備は入念にせねばならないのだからな。

女と違い、そこは濡れることはない。無理をすれば傷付けてしまう、繊細な場所だ。そこが少々不自由でもあるが。

王であるわたしが、そこまでの手間をかけてやるほど、イチを愛しているのだと。
その身にじっくりと教えてやりたいものだ。


◆◇◆


額や頬に、口付けを落とし。
香油を手に取り、後孔を慣らしてゆく。

香油は惜しみなくたっぷり使い、挿入が可能なほど拡げてやる。


イチは、指だけではもの足りない様子で。
もどかしいように、腰を揺らした。

指よりも太く長い、わたしのものが欲しいのだろう。
わたしも早く、イチの中に入りたい。


もうそろそろ、頃合か。
指を引き抜くと、くぷりと音がした。

「ん、……や、」

名残惜しいか? すぐに代わりのものをくれてやろう。

腰を掴み。
すっかりほころんだ蕾にわたしのものをあてがう。

……さあ、王の寵愛を受けるが良い。


「う……っく、ああっ、」

背後から、ひと息に貫くと。イチの背がしなった。

挿入と同時に、達したようだ。
凄まじい快楽を味わったのであろう。余韻で、がくがくと脚が震えている。

挿れただけで、こうなるとは。
これからが楽しみである。もっと、この身体に快楽を教えてやらねば。


「や、あっ、んっ、まだ、動いちゃ、ダメ……っ、」

軽く揺すってやると、達した直後でもあり、感じすぎてしまうようだ。
きゅうきゅう締め付けてくる。


可愛いイチ。
わたしの、唯一無二の伴侶。


◆◇◆


「イチ。……余の名を、呼んでおくれ。ウージュ、と」
背後から、耳元で囁いて。

「ひゃぅ、」
ぐい、と最奥まで腰を押し付けてやる。


ぴったりと、肌と肌が触れ合っている。
隙間なく繋がっているのだ。わたしを、奥まで迎え入れて。

息苦しいのか、イチははくはくと、口を開けて。

……俺の中、ぜんぶ、入っちゃった。

声にならない声で、そう呟いている。

半分、意識が飛んでいるのだろうか?
浮かされたような様子だ。


嬉しいか。
わたしのすべてを受け入れたのが。


「イチ?」

喉元をくすぐり、再び懇願する。
お願いだ、と。そなたの愛らしい唇から、わたしの名が奏でられるのを聞きたいのだ。

「余の名を、呼んでおくれ。ウージュ、と」

「う、……ウージュ……?」
愛らしい声で、愛称を呼ばれた。

特別な呼び方だ。
この世で、イチしか呼ぶことを赦されない名。


「ああ、これが、幸福というものか。愛しい者から名を呼ばれる、この高揚が」
きつく、腕の中に抱き締める。

イチの中に収めたものが限界を告げ、膨らんでゆく。
溜めていたものを、中に、放ってやる。


「あ……、ぁう、」
それにすら、イチは感じていた。

熱くやわらかな筒内は、放った精を貪欲に呑み込むような動きをし、根こそぎ搾り取られそうであった。
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