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墓場の裏で、運命の出会いをしました。
足音の主が、地面に置いた懐中電灯に照らし出された。
『……あれ、君、一人か? さっき、大勢いなかった?』
と。
藪を抜け、暗闇の中から現れたのは。
中世の騎士の……コスプレイヤー、というやつか?
てっきり鎧兜を身に着けた落ち武者でも出てくるかと思っていたのに。
現れたのが意外なものすぎて、拍子抜けした。
◆◇◆
しかし。
そいつが身に着けている、使い込まれたような銀色の鎧は薄汚れていて。動くと金属が軋む音がする。
鎧の中には鎖帷子を着用しているのだろう。鎧の隙間から、それらしき物が見える。
その重量、質感からして、本物の鎧だろう。アンティークだろうか?
腰の下まである長さの赤いマントを羽織って、それを緑色の宝石で留めている。
手には抜き身の長剣。藪の植物をそれで払っていたようだ。
シンプルだが、業物なのがわかる。
自然に流した短めの赤茶色の髪に、明るい緑色の目。
どうやら外国人のようだ。
俳優のような整った顔をしているが、あちこち汚れて傷だらけだ。撮影でもしていて、山から転げ落ちでもしたのだろうか?
背は、190cm以上はありそうだな。体格はいい。
かなりの長身、鍛えられた体躯。俳優にしては、一切隙のない身のこなし。
強い。おそらく、俺よりもずっと。
こいつは、いったい。何者だ?
『まあいいか。君が、”ゼンショー”だね?』
「あ、ああ、」
思わず頷いてしまったが。
……いや、俺の名前は善正だ!
『良かった。君の助けが必要なんだ。お願いだ。手を貸してくれ!』
男は、必死な形相だった。
傷だらけの姿で。
他でもない、俺に向かって助けを求め、伸ばされた手を。
つい、握り返してしまったのが、俺の運の尽きだったに違いない。
いや、これが新たな運命の始まりだったのだろうか?
◆◇◆
俺が、差し出された男の手を握った直後。
「ぐ、」
ぐわん、と。頭を殴られたような衝撃がして。
気圧変化か、耳が詰まるような感覚。
何だこれは。
頭痛と、耳鳴りがひどい。高山病というやつに似ている気がする。
それは、プールなどでするように耳抜きをしてみたら収まったが。
……何だったんだ?
まだ残っている違和感を、振り切るように頭を振って。
辺りを見回してみる。
……どこだ、ここは。
俺は、今の今まで、うちの寺の敷地……裏山の墓地にいたはずだが。
それが。
何故か、石造りの建物の中にいるようだ。天井は高く、歴史を感じさせる建物。
足元には、奇妙な模様が赤黒い、血のようなもので描かれていた。
魔法陣のように見えるが。
気のせいだろうか?
それは、うちの山にある石碑に記されていた模様にどこか似ているような感じがした。
◆◇◆
『おお、戻って来ましたか、テオ! 心配しましたよ!』
若い男の声がする。
『その方が、ゼンショー様か!?』
もう一人いたようだ。こっちは渋い声。
……ゼンショー、様、だと?
どいつもこいつも、何で俺をゼンショーと呼ぶのだ。俺の名前は善正だというのに。
二人の男が、こちらに駆け寄ってきた。
やはり、赤いマントと鎧姿で。帯刀している。
一人はフルアーマーでなく、急所を守る程度の軽装だが。
どちらも隙の無い身のこなしで。見上げるほど背が高い。
クラスメイトも家族も、皆、俺より背が低いので、新鮮な気がする。
『ゼンショー殿、ご助力してくださるとのこと、感謝いたします。私はレオナルド。ここ、エリノアの騎士団長です。こちらはワルター、同じくエリノアの戦士長で。貴方をご案内してきた者が勇者テオ……ティボルトですが、紹介はお済みでしたか?』
そう言って、優美な笑みを浮かべ、恭しくこちらへ礼をしてみせたのは。
金色の長髪を後ろで軽く留め、青い目、甘い顔立ちをした男だ。
レオナルド、か。外国人だな。
騎士団長にしては、かなり若い気がするが。騎士ならば若く見目麗しい方がいいのか?
少々薄汚れてはいるが、白い鎧で全身を包んでいた。
マントは赤、瞳と同じ色の宝石で留めているのはそういった決まりなのだろうか。
腰に佩いているのは、金で装飾された細身の剣だ。
エリノアというのは、国の名前だろうか?
聞いたことのない地名だが。
ウルフカットというか、乱雑に刈られた黒髪に、右目は眼帯、鋭い深緑の目の、精悍な顔立ちをした男がワルター、戦士、か。
年齢は、30から40歳くらいだろうか? 外国人の年齢はよくわからん。
肩と胸、肘、股間、膝に革製らしい防具をつけている。中に着ているのは緑色のチュニックに白いズボン。
やはり赤の、丈の短いマントは肩当てで留めているようだ。
無骨な大剣を背負っている。この大剣を振り回すには、相当の腕力が必要だろう。
テオ、と呼ばれた、俺の手を取った、赤いマントに銀色の鎧で赤茶の髪、緑の目の男。
勇者だったのか。
随分若いが。確かに腕は立ちそうだった。
おそらく、この中で一番強いのが彼だろう。勇者という職業を聞かずとも、立ち居振る舞いでそれとわかった。
しかし、この国は顔で剣士を選んでいるのか? という疑問を持つくらい、俳優かモデルかと思うほど整った顔立ちの者ばかりだな。
いや、実際、役者なのか?
『……あれ、君、一人か? さっき、大勢いなかった?』
と。
藪を抜け、暗闇の中から現れたのは。
中世の騎士の……コスプレイヤー、というやつか?
てっきり鎧兜を身に着けた落ち武者でも出てくるかと思っていたのに。
現れたのが意外なものすぎて、拍子抜けした。
◆◇◆
しかし。
そいつが身に着けている、使い込まれたような銀色の鎧は薄汚れていて。動くと金属が軋む音がする。
鎧の中には鎖帷子を着用しているのだろう。鎧の隙間から、それらしき物が見える。
その重量、質感からして、本物の鎧だろう。アンティークだろうか?
腰の下まである長さの赤いマントを羽織って、それを緑色の宝石で留めている。
手には抜き身の長剣。藪の植物をそれで払っていたようだ。
シンプルだが、業物なのがわかる。
自然に流した短めの赤茶色の髪に、明るい緑色の目。
どうやら外国人のようだ。
俳優のような整った顔をしているが、あちこち汚れて傷だらけだ。撮影でもしていて、山から転げ落ちでもしたのだろうか?
背は、190cm以上はありそうだな。体格はいい。
かなりの長身、鍛えられた体躯。俳優にしては、一切隙のない身のこなし。
強い。おそらく、俺よりもずっと。
こいつは、いったい。何者だ?
『まあいいか。君が、”ゼンショー”だね?』
「あ、ああ、」
思わず頷いてしまったが。
……いや、俺の名前は善正だ!
『良かった。君の助けが必要なんだ。お願いだ。手を貸してくれ!』
男は、必死な形相だった。
傷だらけの姿で。
他でもない、俺に向かって助けを求め、伸ばされた手を。
つい、握り返してしまったのが、俺の運の尽きだったに違いない。
いや、これが新たな運命の始まりだったのだろうか?
◆◇◆
俺が、差し出された男の手を握った直後。
「ぐ、」
ぐわん、と。頭を殴られたような衝撃がして。
気圧変化か、耳が詰まるような感覚。
何だこれは。
頭痛と、耳鳴りがひどい。高山病というやつに似ている気がする。
それは、プールなどでするように耳抜きをしてみたら収まったが。
……何だったんだ?
まだ残っている違和感を、振り切るように頭を振って。
辺りを見回してみる。
……どこだ、ここは。
俺は、今の今まで、うちの寺の敷地……裏山の墓地にいたはずだが。
それが。
何故か、石造りの建物の中にいるようだ。天井は高く、歴史を感じさせる建物。
足元には、奇妙な模様が赤黒い、血のようなもので描かれていた。
魔法陣のように見えるが。
気のせいだろうか?
それは、うちの山にある石碑に記されていた模様にどこか似ているような感じがした。
◆◇◆
『おお、戻って来ましたか、テオ! 心配しましたよ!』
若い男の声がする。
『その方が、ゼンショー様か!?』
もう一人いたようだ。こっちは渋い声。
……ゼンショー、様、だと?
どいつもこいつも、何で俺をゼンショーと呼ぶのだ。俺の名前は善正だというのに。
二人の男が、こちらに駆け寄ってきた。
やはり、赤いマントと鎧姿で。帯刀している。
一人はフルアーマーでなく、急所を守る程度の軽装だが。
どちらも隙の無い身のこなしで。見上げるほど背が高い。
クラスメイトも家族も、皆、俺より背が低いので、新鮮な気がする。
『ゼンショー殿、ご助力してくださるとのこと、感謝いたします。私はレオナルド。ここ、エリノアの騎士団長です。こちらはワルター、同じくエリノアの戦士長で。貴方をご案内してきた者が勇者テオ……ティボルトですが、紹介はお済みでしたか?』
そう言って、優美な笑みを浮かべ、恭しくこちらへ礼をしてみせたのは。
金色の長髪を後ろで軽く留め、青い目、甘い顔立ちをした男だ。
レオナルド、か。外国人だな。
騎士団長にしては、かなり若い気がするが。騎士ならば若く見目麗しい方がいいのか?
少々薄汚れてはいるが、白い鎧で全身を包んでいた。
マントは赤、瞳と同じ色の宝石で留めているのはそういった決まりなのだろうか。
腰に佩いているのは、金で装飾された細身の剣だ。
エリノアというのは、国の名前だろうか?
聞いたことのない地名だが。
ウルフカットというか、乱雑に刈られた黒髪に、右目は眼帯、鋭い深緑の目の、精悍な顔立ちをした男がワルター、戦士、か。
年齢は、30から40歳くらいだろうか? 外国人の年齢はよくわからん。
肩と胸、肘、股間、膝に革製らしい防具をつけている。中に着ているのは緑色のチュニックに白いズボン。
やはり赤の、丈の短いマントは肩当てで留めているようだ。
無骨な大剣を背負っている。この大剣を振り回すには、相当の腕力が必要だろう。
テオ、と呼ばれた、俺の手を取った、赤いマントに銀色の鎧で赤茶の髪、緑の目の男。
勇者だったのか。
随分若いが。確かに腕は立ちそうだった。
おそらく、この中で一番強いのが彼だろう。勇者という職業を聞かずとも、立ち居振る舞いでそれとわかった。
しかし、この国は顔で剣士を選んでいるのか? という疑問を持つくらい、俳優かモデルかと思うほど整った顔立ちの者ばかりだな。
いや、実際、役者なのか?
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