寺生まれなので異世界に召喚されて悪霊退治やらされてます。

篠崎笙

文字の大きさ
4 / 24

墓場の裏で、運命の出会いをしました。

足音の主が、地面に置いた懐中電灯に照らし出された。


『……あれ、君、一人か? さっき、大勢いなかった?』
と。
藪を抜け、暗闇の中から現れたのは。

中世の騎士の……コスプレイヤー、というやつか?


てっきり鎧兜を身に着けた落ち武者でも出てくるかと思っていたのに。
現れたのが意外なものすぎて、拍子抜けした。


◆◇◆


しかし。
そいつが身に着けている、使い込まれたような銀色の鎧は薄汚れていて。動くと金属が軋む音がする。

鎧の中には鎖帷子を着用しているのだろう。鎧の隙間から、それらしき物が見える。
その重量、質感からして、本物の鎧だろう。アンティークだろうか?

腰の下まである長さの赤いマントを羽織って、それを緑色の宝石で留めている。

手には抜き身の長剣。藪の植物をそれで払っていたようだ。
シンプルだが、業物わざものなのがわかる。


自然に流した短めの赤茶色の髪に、明るい緑色の目。
どうやら外国人のようだ。

俳優のような整った顔をしているが、あちこち汚れて傷だらけだ。撮影でもしていて、山から転げ落ちでもしたのだろうか?

背は、190cm以上はありそうだな。体格はいい。
かなりの長身、鍛えられた体躯。俳優にしては、一切隙のない身のこなし。

強い。おそらく、俺よりもずっと。
こいつは、いったい。何者だ?


『まあいいか。君が、”ゼンショー”だね?』

「あ、ああ、」
思わず頷いてしまったが。

……いや、俺の名前は善正だ!


『良かった。君の助けが必要なんだ。お願いだ。手を貸してくれ!』
男は、必死な形相だった。


傷だらけの姿で。

他でもない、助けを求め、伸ばされた手を。
つい、握り返してしまったのが、俺の運の尽きだったに違いない。

いや、これが新たな運命の始まりだったのだろうか?


◆◇◆


俺が、差し出された男の手を握った直後。

「ぐ、」
ぐわん、と。頭を殴られたような衝撃がして。


気圧変化か、耳が詰まるような感覚。

何だこれは。
頭痛と、耳鳴りがひどい。高山病というやつに似ている気がする。


は、プールなどでするように耳抜きをしてみたら収まったが。
……何だったんだ?


まだ残っている違和感を、振り切るように頭を振って。
辺りを見回してみる。


……どこだ、ここは。
俺は、今の今まで、うちの寺の敷地……裏山の墓地にいたはずだが。

それが。
何故か、石造りの建物の中にいるようだ。天井は高く、歴史を感じさせる建物。

足元には、奇妙な模様が赤黒い、血のようなもので描かれていた。
魔法陣のように見えるが。


気のせいだろうか?
は、うちの山にある石碑に記されていた模様にどこか似ているような感じがした。


◆◇◆


『おお、戻って来ましたか、テオ! 心配しましたよ!』
若い男の声がする。

『その方が、ゼンショー様か!?』
もう一人いたようだ。こっちは渋い声。

……ゼンショー、様、だと?
どいつもこいつも、何で俺をゼンショーと呼ぶのだ。俺の名前は善正だというのに。


二人の男が、こちらに駆け寄ってきた。

やはり、赤いマントと鎧姿で。帯刀している。
一人はフルアーマーでなく、急所を守る程度の軽装だが。

どちらも隙の無い身のこなしで。見上げるほど背が高い。
クラスメイトも家族も、皆、俺より背が低いので、新鮮な気がする。


『ゼンショー殿、ご助力してくださるとのこと、感謝いたします。私はレオナルド。ここ、エリノアの騎士団長です。こちらはワルター、同じくエリノアの戦士長で。貴方をご案内してきた者が勇者テオ……ティボルトですが、紹介はお済みでしたか?』
そう言って、優美な笑みを浮かべ、恭しくこちらへ礼をしてみせたのは。

金色の長髪を後ろで軽く留め、青い目、甘い顔立ちをした男だ。
レオナルド、か。外国人だな。

騎士団長にしては、かなり若い気がするが。騎士ならば若く見目麗しい方がいいのか?
少々薄汚れてはいるが、白い鎧で全身を包んでいた。

マントは赤、瞳と同じ色の宝石で留めているのはそういった決まりなのだろうか。
腰にいているのは、金で装飾された細身の剣だ。

エリノアというのは、国の名前だろうか?
聞いたことのない地名だが。


ウルフカットというか、乱雑に刈られた黒髪に、右目は眼帯、鋭い深緑の目の、精悍な顔立ちをした男がワルター、戦士、か。
年齢は、30から40歳くらいだろうか? 外国人の年齢はよくわからん。

肩と胸、肘、股間、膝に革製らしい防具をつけている。中に着ているのは緑色のチュニックに白いズボン。
やはり赤の、丈の短いマントは肩当てで留めているようだ。

無骨な大剣を背負っている。この大剣を振り回すには、相当の腕力が必要だろう。


テオ、と呼ばれた、俺の手を取った、赤いマントに銀色の鎧で赤茶の髪、緑の目の男。
勇者だったのか。

随分若いが。確かに腕は立ちそうだった。
おそらく、この中で一番強いのが彼だろう。勇者という職業を聞かずとも、立ち居振る舞いでそれとわかった。


しかし、この国は顔で剣士を選んでいるのか? という疑問を持つくらい、俳優かモデルかと思うほど整った顔立ちの者ばかりだな。
いや、実際、役者なのか?
感想 3

あなたにおすすめの小説

家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい

八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。 ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。 これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!