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寺生まれなせいか、怪談的な展開になりました。
「寺生まれのTさんは入学式で新入生代表をつとめ、全国模試上位キープしながら、剣道部でも個人戦で県大会突破! 我が校の氷のプリンスと呼ばれるTさん、身長176cm、まだまだ伸び盛りのイケ坊主ですが、残念ながら顔出しNGだそうです~」
俺は坊主ではないし、誰が氷のプリンスだ。テニスをしてそうな名称をつけるな。
……そこまで言ったら、特定も容易だろう。
こら、人の個人情報をベラベラ話すな!
「黒の作務衣に手ぬぐい、和風のショルダーバック装備です。イケメンは何着ても似合うからズルイですね」
カメラを向けられる。
ショルダーバックではない。これは頭陀袋だ。
「褒めても何も出ないぞ。飴ならあるが」
頭陀袋から飴を取り出す。
「わーい飴ちゃんだー、って塩飴じゃん」
「ジジくさい……」
何を言うか。
夏場の塩分補給は基本ではないか。
◆◇◆
もう暗くなっているのに、蝉の鳴き声がうるさいほどだ。
一応山の上なので、少しは風が吹いている。
夜の散歩には、まあ丁度いい塩梅かもしれない。
しかし。
何故俺が、懐中電灯を持たされているのだろう。
しかも、先頭で。自分の家の敷地なので、目をつぶっていても歩けるほどであるが。
肝試しに行こうと言い出した張本人は、俺の背中にへばりついている。
それでは前が見えないのではないか。何を試しに来たのやら。
試されているのは、俺の忍耐力だろうか。
「ひゃああっ! な、なんか白いのいた!」
「……蛾だ」
虫がいたくらいでしがみつくな。
「なんかガサッて! 変な鳴き声しねえ!?」
「散歩中の猫だ」
近所の会田さんの飼っているミケさんだ。懐っこくてかわいいぞ。
皆して、俺にしがみついて。団子のようになって歩いている。
非常に歩きにくい。
風が吹いて、卒塔婆がカタカタ鳴っただけで悲鳴を上げるほどビビリばかりしかいないくせに。
何故、夜の墓場で肝試しなどやろうとしたのか。
計画性がないのだろうか。お馬鹿どもめ。
◆◇◆
『……て、』
「ん?」
何だ? 今、何か。
「ど、どしたの、ゼンショー」
卓也が更に俺の背にへばりついてくる。暑苦しい。
「今、誰か。何か言わなかったか?」
「ぎゃああ!?」
「マジで!?」
悲鳴が上がる。
誰かの声が聞こえたくらいで悲鳴を上げるな。
他に、ここへ肝試しに来た物好きかもしれないだろうに。おまえらそれでも高校生か。
抱きつくな。暑い。
「や、やめろよ! そういうこと言うの!」
これくらいで半べそをかくな。
風の音、だったのだろうか?
いや、しかし。
誰かに助けを求めるような声が聞こえた気がしたのだが。
『……か、た……けて……』
やはり、人の声のように聞こえる。
耳を澄ませてみる。
『お願いです、***してください!』
確かに声が聞こえた。
男の声だ。
「誰だ? どこにいる!」
『ここは***……**です』
「聞こえない、はっきり言ってくれ!」
『*****! あなたの******!』
◆◇◆
「ちょ、ゼンショー、……誰と会話してんだよ!?」
卓也だけではなく。
皆、真っ青な顔をしている。
「……皆には、聞こえてないのか?」
まさか、俺だけに聞こえたっていうのか? あんなにはっきりと聞こえたというのに。
「や、やめてくれよそういうの、マジで洒落になんねーって」
「その冗談、笑えねえぞ」
皆、半笑いであるが。震えている。
冗談を言ったつもりはないが。
「いや、ゼンショーはこういうとき、冗談は絶対に言わない男だ。絶対に」
卓也は、震えながらも言った。
「ちょい待ち、カメラで確認してみようぜ。もしかしたら、何か撮れてるかも」
岡田がカメラを確認した。
デジタルは、そこが便利だ。
撮った物をすぐに確認できるのだから。
再生してみると。
”誰かいますか? 助けてください!”
と。
声がしっかり録音されていた。
俺が聞いた、若い男の声だ。
声は、遠くから聞こえているようだ。
「マジかよ!」
「うわ、ほんとだ!」
悲鳴が上がる。
”お願いです、力を貸してください!”
誰かの声。
『誰だ? どこにいる!』
ビデオカメラの小さな画面には、俺が暗闇に向かって問いかけているのが映っている。
”ここは、どこでしょうか、石が周りにあって……辺りは真っ暗です”
誰かが言う。
『聞こえない、はっきり言ってくれ!』
俺が言う。
”灯りを見つけました! あなたのすぐ近くにいます!”
◆◇◆
先ほどまで僅かに吹いていた風も止み、辺りはしんと静まり返っている。
虫の声もしない。
皆、恐怖で声も出ないようだ。震えながら、しがみついてきている。
ザッ、ザッ、と。
まるで鎧でも身に着けているような重い足音がこちらへ近付いてくるのが聞こえた。
「……石碑の方から、誰かがこちらに向かって来る」
俺の言葉に。
皆、パニックになった。
「おまえら、社務所まで走れ。人を呼んで来い」
まだ、社務所に何人か残っていたはずだ。
「ゼ、ゼンショーは?」
卓也はもう腰を抜かしかけていた。
卒塔婆を失敬して。
握りやすくはないが。当たれば痛いだろう。
「……まあ、何とかなるだろう」
卓也は岡田たちに任せて。
足音の方角に向き直り、卒塔婆を竹刀のように構える。
物理攻撃が効く相手だろうか?
……何とかなればいいが。
いや、何とかしなくてはならない。
皆が無事逃げ切るまで、時間が稼げれば御の字か。
俺は坊主ではないし、誰が氷のプリンスだ。テニスをしてそうな名称をつけるな。
……そこまで言ったら、特定も容易だろう。
こら、人の個人情報をベラベラ話すな!
「黒の作務衣に手ぬぐい、和風のショルダーバック装備です。イケメンは何着ても似合うからズルイですね」
カメラを向けられる。
ショルダーバックではない。これは頭陀袋だ。
「褒めても何も出ないぞ。飴ならあるが」
頭陀袋から飴を取り出す。
「わーい飴ちゃんだー、って塩飴じゃん」
「ジジくさい……」
何を言うか。
夏場の塩分補給は基本ではないか。
◆◇◆
もう暗くなっているのに、蝉の鳴き声がうるさいほどだ。
一応山の上なので、少しは風が吹いている。
夜の散歩には、まあ丁度いい塩梅かもしれない。
しかし。
何故俺が、懐中電灯を持たされているのだろう。
しかも、先頭で。自分の家の敷地なので、目をつぶっていても歩けるほどであるが。
肝試しに行こうと言い出した張本人は、俺の背中にへばりついている。
それでは前が見えないのではないか。何を試しに来たのやら。
試されているのは、俺の忍耐力だろうか。
「ひゃああっ! な、なんか白いのいた!」
「……蛾だ」
虫がいたくらいでしがみつくな。
「なんかガサッて! 変な鳴き声しねえ!?」
「散歩中の猫だ」
近所の会田さんの飼っているミケさんだ。懐っこくてかわいいぞ。
皆して、俺にしがみついて。団子のようになって歩いている。
非常に歩きにくい。
風が吹いて、卒塔婆がカタカタ鳴っただけで悲鳴を上げるほどビビリばかりしかいないくせに。
何故、夜の墓場で肝試しなどやろうとしたのか。
計画性がないのだろうか。お馬鹿どもめ。
◆◇◆
『……て、』
「ん?」
何だ? 今、何か。
「ど、どしたの、ゼンショー」
卓也が更に俺の背にへばりついてくる。暑苦しい。
「今、誰か。何か言わなかったか?」
「ぎゃああ!?」
「マジで!?」
悲鳴が上がる。
誰かの声が聞こえたくらいで悲鳴を上げるな。
他に、ここへ肝試しに来た物好きかもしれないだろうに。おまえらそれでも高校生か。
抱きつくな。暑い。
「や、やめろよ! そういうこと言うの!」
これくらいで半べそをかくな。
風の音、だったのだろうか?
いや、しかし。
誰かに助けを求めるような声が聞こえた気がしたのだが。
『……か、た……けて……』
やはり、人の声のように聞こえる。
耳を澄ませてみる。
『お願いです、***してください!』
確かに声が聞こえた。
男の声だ。
「誰だ? どこにいる!」
『ここは***……**です』
「聞こえない、はっきり言ってくれ!」
『*****! あなたの******!』
◆◇◆
「ちょ、ゼンショー、……誰と会話してんだよ!?」
卓也だけではなく。
皆、真っ青な顔をしている。
「……皆には、聞こえてないのか?」
まさか、俺だけに聞こえたっていうのか? あんなにはっきりと聞こえたというのに。
「や、やめてくれよそういうの、マジで洒落になんねーって」
「その冗談、笑えねえぞ」
皆、半笑いであるが。震えている。
冗談を言ったつもりはないが。
「いや、ゼンショーはこういうとき、冗談は絶対に言わない男だ。絶対に」
卓也は、震えながらも言った。
「ちょい待ち、カメラで確認してみようぜ。もしかしたら、何か撮れてるかも」
岡田がカメラを確認した。
デジタルは、そこが便利だ。
撮った物をすぐに確認できるのだから。
再生してみると。
”誰かいますか? 助けてください!”
と。
声がしっかり録音されていた。
俺が聞いた、若い男の声だ。
声は、遠くから聞こえているようだ。
「マジかよ!」
「うわ、ほんとだ!」
悲鳴が上がる。
”お願いです、力を貸してください!”
誰かの声。
『誰だ? どこにいる!』
ビデオカメラの小さな画面には、俺が暗闇に向かって問いかけているのが映っている。
”ここは、どこでしょうか、石が周りにあって……辺りは真っ暗です”
誰かが言う。
『聞こえない、はっきり言ってくれ!』
俺が言う。
”灯りを見つけました! あなたのすぐ近くにいます!”
◆◇◆
先ほどまで僅かに吹いていた風も止み、辺りはしんと静まり返っている。
虫の声もしない。
皆、恐怖で声も出ないようだ。震えながら、しがみついてきている。
ザッ、ザッ、と。
まるで鎧でも身に着けているような重い足音がこちらへ近付いてくるのが聞こえた。
「……石碑の方から、誰かがこちらに向かって来る」
俺の言葉に。
皆、パニックになった。
「おまえら、社務所まで走れ。人を呼んで来い」
まだ、社務所に何人か残っていたはずだ。
「ゼ、ゼンショーは?」
卓也はもう腰を抜かしかけていた。
卒塔婆を失敬して。
握りやすくはないが。当たれば痛いだろう。
「……まあ、何とかなるだろう」
卓也は岡田たちに任せて。
足音の方角に向き直り、卒塔婆を竹刀のように構える。
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いや、何とかしなくてはならない。
皆が無事逃げ切るまで、時間が稼げれば御の字か。
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