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どうやら回復呪文も使えたようです。
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『疲れてない?』
テオが俺の顔を覗き込んできた。
「大丈夫だ」
『でも、まあ念のため』
大丈夫だと言っているのに。
抱き寄せられて、キスをされる。
じわり、と。あたたかいものが全身に行きわたる感覚。
……心地好い。
「んぅ、ふ、」
しかし……長くないか?
もう充分回復したというのに。
『……おい、しつこいと嫌われるぞ』
『いて』
ワルターがテオの頭を叩いたようだ。
……ふう、やっと離れた。
◆◇◆
『くそ、俺にももっと、魔力があればな』
ワルターが悔しがって、そこらの小石を蹴っている。
子供か。
『いくら魔力があってもダメ。善正は俺のだもん』
「誰がいつ、おまえのものになった」
テオに抱き寄せられそうになって、避ける。
と。
生温い空気を感じ。
「っ!?」
ドン、と身体を突き飛ばされた。
見ると。
ワルターが剣を抜き、さっきまで俺がいた場所で、構えている。
テオは、俺を庇うように前に出た。
二人とも、無言だ。
張り詰めたような空気で。呼吸をするのにも緊張するほどだ。
突然、現れたのは。黒い、……騎士?
『そやつが、伝説の僧侶とやらか。まだ子供ではないか』
底冷えするような冷たい声音。
フルフェイスの兜の奥は真っ黒で。目だけが煌々と光っている。
全身黒の鎧で。
黒いマントが、風も無いのに翻っている。
乗っている黒い馬には、生気がない。
その目は、虚のように真っ黒だ。
ひりつくような空気で、そいつがかなりの強敵だとわかる。
◆◇◆
黒い騎士は、黒い刃の長剣を振り上げた。
それをワルターは受けようとして。
……刃が、ワルターの刀をすり抜けた!?
『ぐわぁっ、』
だが、黒い騎士の方の攻撃は有効だったようだ。攻撃を喰らった衝撃で、ワルターが刀を取り落とした。
……馬と、黒い騎士には影が無かった。
実体が無い、ゴースト。
だから、すり抜けたのか!
悪霊相手ならば。
俺の攻撃が通るはずだ。
『よ……危ない、ゼンショー!』
俺を引きとめようとするテオの脇をすり抜けて。
木刀で、またもワルターに斬りかかろうとする刃を止めた。
止まった。
やはり、これはゴーストだ。
さっきキスで回復しておいてよかったかもしれない。こいつ、かなり手強い。
しかし、……重いな。
こんな、凄まじい剣圧を感じるのに。
本当に、実体がないのか?
『ほう、我が剣を止めるか。……美しいな。生命力に輝いている』
「問答無用! 死者は、土へ還れ!」
刃を跳ね上げて。
反す刀で、胴を下段よりなぎ払う。
入った。
『……か、……魔王…へ…報、告……』
黒い騎士は、騎馬ごとかき消えた。
ほっと安心する。
「ワルター、大丈夫か?」
ワルターは、腕を押さえて苦しそうな顔をしている。
霊からの攻撃は、魔力がなければ、抵抗できないというが。
『とりあえず、場所を移ろう』
テオがワルターを背負い、歩き出した。
落ちていたワルターの刀を拾い上げ、俺も後を追いかける。
結界内へ、急いで移動し。
近くの宿屋に、部屋を取った。
◆◇◆
自分で手を動かせないようなので。
ワルターの装備を外してやり、怪我の状態をみる。
黒い騎士から攻撃を受けた部分が、どす黒く変色していた。それが拡がっているようにも見える。
見るからに、痛そうだが。
「痛いか?」
『……いや、全く感覚が無い』
顔色も悪い。
「これ、どうやって治すんだ?」
ワルターは俯いて、首を横に振っている。
『……ゴーストに侵された怪我は、治す術が無いんだ』
テオは、つらそうに言った。
それは。
剣士として、致命的な。
「そんな、」
ワルターの手を撫でる。
「俺も、僧侶というなら、回復呪文のひとつでも使えればいいのに。……ヒールとか」
ヒール、と言った瞬間。
「あ、」
辺りが光に包まれ。
一瞬で、変色した部分が綺麗に治ってしまった。
テオもワルターも。
ぽかんとした顔で元通りになった腕を見ている。
……できてしまった。ヒール。
◆◇◆
「っく、……ん、」
ああ、またか。
またエネルギー切れで倒れてしまっていたようだ。
ヒール、全力でやってしまったんだな。
せっかく、力の調整が出来たと思ったというのに。
次はこれの調整も覚えないと。
「あ、……あっ、ん、」
そんなに、揺さぶるな。
ぐちゅぐちゅと、陰茎が出入りしている感覚。ぞくぞくする。
「テオ、」
テオの後頭部に手を回し、引き寄せて。
唇を重ねながら、腰を揺する。
「ん、……んぅ、ふ、テオ、」
もっと、強く。
して、いいから。
『……よく、人の目の前でそれだけイチャイチャできるな』
呆れたような、ワルターの声。
「!?」
思わずテオの後頭部に回していた手を放した。
頬が熱い。
そうだ、ここは。
黒い騎士に斬られたワルターを運んだ宿屋だった。
ワルターは隣のベッドで、やさぐれた顔をして横になっていた。
元気そうで何よりだが。
『いやあ、ラブラブなもんで』
「……ラブラブじゃない」
キスしようとしてくるテオの顔を押しのける。
『照れるなよハニー』
誰がハニーだ。
その口、縫い付けてやろうか。
……あれ? ワルター。
眼帯は?
ワルターは、緑色の目を両方開いて、こちらを見ていた。
テオが俺の顔を覗き込んできた。
「大丈夫だ」
『でも、まあ念のため』
大丈夫だと言っているのに。
抱き寄せられて、キスをされる。
じわり、と。あたたかいものが全身に行きわたる感覚。
……心地好い。
「んぅ、ふ、」
しかし……長くないか?
もう充分回復したというのに。
『……おい、しつこいと嫌われるぞ』
『いて』
ワルターがテオの頭を叩いたようだ。
……ふう、やっと離れた。
◆◇◆
『くそ、俺にももっと、魔力があればな』
ワルターが悔しがって、そこらの小石を蹴っている。
子供か。
『いくら魔力があってもダメ。善正は俺のだもん』
「誰がいつ、おまえのものになった」
テオに抱き寄せられそうになって、避ける。
と。
生温い空気を感じ。
「っ!?」
ドン、と身体を突き飛ばされた。
見ると。
ワルターが剣を抜き、さっきまで俺がいた場所で、構えている。
テオは、俺を庇うように前に出た。
二人とも、無言だ。
張り詰めたような空気で。呼吸をするのにも緊張するほどだ。
突然、現れたのは。黒い、……騎士?
『そやつが、伝説の僧侶とやらか。まだ子供ではないか』
底冷えするような冷たい声音。
フルフェイスの兜の奥は真っ黒で。目だけが煌々と光っている。
全身黒の鎧で。
黒いマントが、風も無いのに翻っている。
乗っている黒い馬には、生気がない。
その目は、虚のように真っ黒だ。
ひりつくような空気で、そいつがかなりの強敵だとわかる。
◆◇◆
黒い騎士は、黒い刃の長剣を振り上げた。
それをワルターは受けようとして。
……刃が、ワルターの刀をすり抜けた!?
『ぐわぁっ、』
だが、黒い騎士の方の攻撃は有効だったようだ。攻撃を喰らった衝撃で、ワルターが刀を取り落とした。
……馬と、黒い騎士には影が無かった。
実体が無い、ゴースト。
だから、すり抜けたのか!
悪霊相手ならば。
俺の攻撃が通るはずだ。
『よ……危ない、ゼンショー!』
俺を引きとめようとするテオの脇をすり抜けて。
木刀で、またもワルターに斬りかかろうとする刃を止めた。
止まった。
やはり、これはゴーストだ。
さっきキスで回復しておいてよかったかもしれない。こいつ、かなり手強い。
しかし、……重いな。
こんな、凄まじい剣圧を感じるのに。
本当に、実体がないのか?
『ほう、我が剣を止めるか。……美しいな。生命力に輝いている』
「問答無用! 死者は、土へ還れ!」
刃を跳ね上げて。
反す刀で、胴を下段よりなぎ払う。
入った。
『……か、……魔王…へ…報、告……』
黒い騎士は、騎馬ごとかき消えた。
ほっと安心する。
「ワルター、大丈夫か?」
ワルターは、腕を押さえて苦しそうな顔をしている。
霊からの攻撃は、魔力がなければ、抵抗できないというが。
『とりあえず、場所を移ろう』
テオがワルターを背負い、歩き出した。
落ちていたワルターの刀を拾い上げ、俺も後を追いかける。
結界内へ、急いで移動し。
近くの宿屋に、部屋を取った。
◆◇◆
自分で手を動かせないようなので。
ワルターの装備を外してやり、怪我の状態をみる。
黒い騎士から攻撃を受けた部分が、どす黒く変色していた。それが拡がっているようにも見える。
見るからに、痛そうだが。
「痛いか?」
『……いや、全く感覚が無い』
顔色も悪い。
「これ、どうやって治すんだ?」
ワルターは俯いて、首を横に振っている。
『……ゴーストに侵された怪我は、治す術が無いんだ』
テオは、つらそうに言った。
それは。
剣士として、致命的な。
「そんな、」
ワルターの手を撫でる。
「俺も、僧侶というなら、回復呪文のひとつでも使えればいいのに。……ヒールとか」
ヒール、と言った瞬間。
「あ、」
辺りが光に包まれ。
一瞬で、変色した部分が綺麗に治ってしまった。
テオもワルターも。
ぽかんとした顔で元通りになった腕を見ている。
……できてしまった。ヒール。
◆◇◆
「っく、……ん、」
ああ、またか。
またエネルギー切れで倒れてしまっていたようだ。
ヒール、全力でやってしまったんだな。
せっかく、力の調整が出来たと思ったというのに。
次はこれの調整も覚えないと。
「あ、……あっ、ん、」
そんなに、揺さぶるな。
ぐちゅぐちゅと、陰茎が出入りしている感覚。ぞくぞくする。
「テオ、」
テオの後頭部に手を回し、引き寄せて。
唇を重ねながら、腰を揺する。
「ん、……んぅ、ふ、テオ、」
もっと、強く。
して、いいから。
『……よく、人の目の前でそれだけイチャイチャできるな』
呆れたような、ワルターの声。
「!?」
思わずテオの後頭部に回していた手を放した。
頬が熱い。
そうだ、ここは。
黒い騎士に斬られたワルターを運んだ宿屋だった。
ワルターは隣のベッドで、やさぐれた顔をして横になっていた。
元気そうで何よりだが。
『いやあ、ラブラブなもんで』
「……ラブラブじゃない」
キスしようとしてくるテオの顔を押しのける。
『照れるなよハニー』
誰がハニーだ。
その口、縫い付けてやろうか。
……あれ? ワルター。
眼帯は?
ワルターは、緑色の目を両方開いて、こちらを見ていた。
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