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とんでもない男に目をつけられてしまったようです。
『善正。……君がゴーストを全て退いたとしても。君を元の世界に帰したくない、と言ったら?』
目を開けると。
テオは、真剣な顔をしていた。
「どうしようもない。俺をこの世界に連れて来たのはテオだ。テオにその気がなければ、俺は帰れない」
『そうだ。そうだったね……』
何故、そんなつらそうな顔で笑うのだろう。
『……いや、やっぱり本当のことを言うよ。俺が死ねば、君は自動的に元の世界に戻る。俺の魂と君の肉体を連結させて、君の存在を無理矢理この世界に繋ぎとめているだけなんだ。だから、帰りたかったら俺を殺すしかない。……俺は、君を帰す気はないからね』
テオが死ねば、元の世界に戻る?
では。
少なくとも、15年の間。テオは死なないということか。
「よかった……」
思わずテオの背に、手を回す。
『え?』
「いや、なんでもない。こっちの話だ」
『え、こっちってどっち? ねえ、今の話で何でよかった、って言葉が出るの!?』
「教えない」
笑って言うと、テオが固まった。
『……その顔、誰にも見せちゃダメだからね? あ、俺以外。俺以外は絶対、ダメだから!』
何を必死になって。
テオはよく、わけのわからないことを言う。
◆◇◆
巨人との戦闘で、被害はゼロ、とはいかなかったようだ。
巨体の下敷きになり、3名の騎士が命を落とし。
戦闘による重軽傷者が騎士、戦士、兵士含め、約200名。
結構な被害だと思うが。
でもそれは、驚異的に少ない被害だという。
伝説の僧侶の登場に士気が上がったお陰だろう、とレオナルドは言った。
それほどに、絶望的だったそうだ。
今は千余名にまで減ってしまった騎士団は、魔族の襲撃前までは5千名以上もいて。
この世界で最大の規模を誇っていた最強の騎士団だったらしい。
前任の騎士団長が命を落としたため、副団長だったレオナルドが団長に就任したのだそうだ。
レオナルドが騎士団長にしては年齢が若いのは、そのせいだったのか。
それからは、勇者テオや戦士ワルターとの連携をみせ。目を瞠る活躍をし、魔物の軍団を押し返していた。
勝利は目前と思えたとき、悪霊の軍団が現れて。
物理攻撃は一切効かず、魔力……霊の攻撃に抵抗力の無い者から順に命を奪われ。
骸骨や屍鬼など、実体のあるものは粉々に砕けばようやく斃せたものの、数が多すぎて対処に遅れた。
国民も、兵として戦い、必死で抗うも、戦力は削られ。
後退、撤退を余儀なくされて。
神官の疲弊により、国全体を覆っていた結界は城の周辺までに狭まり。
いよいよこの国も終わりだと絶望していた。
そこで、勇者が命懸けで異世界に渡る術を試し、見事”伝説の僧侶”を連れ帰ったわけだ。
◆◇◆
俺の存在は、今やこの国だけでなく、この世界の皆の希望になっているという。
絶望の淵に沈んでいた国民達は、再び、活気を取り戻した。
先日の晩餐会も、久しぶりのご馳走だったらしい。
のん気だとか思って申し訳ない。皆のための慰労会だったのだ。
神官は、俺の登場で安心して休めたこともあり、疲労も徐々に回復して。
結界の規模を広げられそうだという。
召喚された時に城の床にあったあの赤黒い模様は、テオの血で描かれた召喚陣だったようだ。
模様は、この国の古代文字らしい。
うちの敷地にあった石碑には何と書いてあったのかと訊いたら。
一応着いた時にテオもざっと確認してみたが。
大昔に、テオが使ったのと同じ次元移動魔法で向こうに渡った、同じ世界の者が建てたらしいことしか解読できなかった、と謝られた。
俺も自国の文字でも古語は読めないので、謝らなくていいと言った。
テオの異世界へ渡る術が成功し、無事あちらへ辿り着けたのは、あの石碑が目印になったお陰だそうだ。
未来に書かれた卓也の本が過去にこの国へ流れ着いていたり。
この世界とは、何かしら深い縁があるのかもしれない。
そうか。
この世界から、俺の世界に渡った者がいて。そして、あの石碑に文字を刻んだのか。
その人は、どんな人生を送ったのだろう。
◆◇◆
夕方。
結界の外で、はぐれゴースト一体発見。
苦悶した人の顔のようなものが集合した軟体生物のような、なんとも形容しがたい不気味な造形のゴーストで。
卓也あたりが見たら、間違いなく失神しているだろうな、と思った。
成仏して欲しい。
そう思いながら、木刀の先を向けると。それだけで悪霊は掻き消えた。
ワルターの見立て通り、物を介してやれば無駄に力を使わずに済むことがわかった。
『お見事!』
ワルターが褒めてくれた。
今回、特訓に付き合ってくれているのは、テオとワルターの二人だ。
レオナルドは、巨人との戦闘の後始末で。今回は泣く泣く見送りだと実際に涙目で言っていた。
悪霊だけでなく、魔物も現れたが。それは二人が倒してくれた。
さすが歴戦の戦士と勇者。瞬殺だった。
テオの腕も、ワルターが褒めるだけあって、無駄な動きの一切ない、その鮮やかな剣捌きについ見惚れてしまったほどだ。
これだけの腕があるのに驕らず、毎日素振りや鍛錬を欠かさず、日々努力を重ねているようだ。
この若さで勇者になるのは、とても凄いことなのだという。
目を開けると。
テオは、真剣な顔をしていた。
「どうしようもない。俺をこの世界に連れて来たのはテオだ。テオにその気がなければ、俺は帰れない」
『そうだ。そうだったね……』
何故、そんなつらそうな顔で笑うのだろう。
『……いや、やっぱり本当のことを言うよ。俺が死ねば、君は自動的に元の世界に戻る。俺の魂と君の肉体を連結させて、君の存在を無理矢理この世界に繋ぎとめているだけなんだ。だから、帰りたかったら俺を殺すしかない。……俺は、君を帰す気はないからね』
テオが死ねば、元の世界に戻る?
では。
少なくとも、15年の間。テオは死なないということか。
「よかった……」
思わずテオの背に、手を回す。
『え?』
「いや、なんでもない。こっちの話だ」
『え、こっちってどっち? ねえ、今の話で何でよかった、って言葉が出るの!?』
「教えない」
笑って言うと、テオが固まった。
『……その顔、誰にも見せちゃダメだからね? あ、俺以外。俺以外は絶対、ダメだから!』
何を必死になって。
テオはよく、わけのわからないことを言う。
◆◇◆
巨人との戦闘で、被害はゼロ、とはいかなかったようだ。
巨体の下敷きになり、3名の騎士が命を落とし。
戦闘による重軽傷者が騎士、戦士、兵士含め、約200名。
結構な被害だと思うが。
でもそれは、驚異的に少ない被害だという。
伝説の僧侶の登場に士気が上がったお陰だろう、とレオナルドは言った。
それほどに、絶望的だったそうだ。
今は千余名にまで減ってしまった騎士団は、魔族の襲撃前までは5千名以上もいて。
この世界で最大の規模を誇っていた最強の騎士団だったらしい。
前任の騎士団長が命を落としたため、副団長だったレオナルドが団長に就任したのだそうだ。
レオナルドが騎士団長にしては年齢が若いのは、そのせいだったのか。
それからは、勇者テオや戦士ワルターとの連携をみせ。目を瞠る活躍をし、魔物の軍団を押し返していた。
勝利は目前と思えたとき、悪霊の軍団が現れて。
物理攻撃は一切効かず、魔力……霊の攻撃に抵抗力の無い者から順に命を奪われ。
骸骨や屍鬼など、実体のあるものは粉々に砕けばようやく斃せたものの、数が多すぎて対処に遅れた。
国民も、兵として戦い、必死で抗うも、戦力は削られ。
後退、撤退を余儀なくされて。
神官の疲弊により、国全体を覆っていた結界は城の周辺までに狭まり。
いよいよこの国も終わりだと絶望していた。
そこで、勇者が命懸けで異世界に渡る術を試し、見事”伝説の僧侶”を連れ帰ったわけだ。
◆◇◆
俺の存在は、今やこの国だけでなく、この世界の皆の希望になっているという。
絶望の淵に沈んでいた国民達は、再び、活気を取り戻した。
先日の晩餐会も、久しぶりのご馳走だったらしい。
のん気だとか思って申し訳ない。皆のための慰労会だったのだ。
神官は、俺の登場で安心して休めたこともあり、疲労も徐々に回復して。
結界の規模を広げられそうだという。
召喚された時に城の床にあったあの赤黒い模様は、テオの血で描かれた召喚陣だったようだ。
模様は、この国の古代文字らしい。
うちの敷地にあった石碑には何と書いてあったのかと訊いたら。
一応着いた時にテオもざっと確認してみたが。
大昔に、テオが使ったのと同じ次元移動魔法で向こうに渡った、同じ世界の者が建てたらしいことしか解読できなかった、と謝られた。
俺も自国の文字でも古語は読めないので、謝らなくていいと言った。
テオの異世界へ渡る術が成功し、無事あちらへ辿り着けたのは、あの石碑が目印になったお陰だそうだ。
未来に書かれた卓也の本が過去にこの国へ流れ着いていたり。
この世界とは、何かしら深い縁があるのかもしれない。
そうか。
この世界から、俺の世界に渡った者がいて。そして、あの石碑に文字を刻んだのか。
その人は、どんな人生を送ったのだろう。
◆◇◆
夕方。
結界の外で、はぐれゴースト一体発見。
苦悶した人の顔のようなものが集合した軟体生物のような、なんとも形容しがたい不気味な造形のゴーストで。
卓也あたりが見たら、間違いなく失神しているだろうな、と思った。
成仏して欲しい。
そう思いながら、木刀の先を向けると。それだけで悪霊は掻き消えた。
ワルターの見立て通り、物を介してやれば無駄に力を使わずに済むことがわかった。
『お見事!』
ワルターが褒めてくれた。
今回、特訓に付き合ってくれているのは、テオとワルターの二人だ。
レオナルドは、巨人との戦闘の後始末で。今回は泣く泣く見送りだと実際に涙目で言っていた。
悪霊だけでなく、魔物も現れたが。それは二人が倒してくれた。
さすが歴戦の戦士と勇者。瞬殺だった。
テオの腕も、ワルターが褒めるだけあって、無駄な動きの一切ない、その鮮やかな剣捌きについ見惚れてしまったほどだ。
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