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最初の結婚式
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そんな感じで毎日エステに通って。
帰ったらイタリア語の勉強もして。
身体に痕をつけようとする崇に、痕つけたら絶交! 結婚もしないから! って言って泣かせたり。
間に入ったロレンツォがおろおろする珍しい姿を見たり。
色々あって。
明日は結婚式当日だ。
……緊張するなあ。
ブライダルエステの最後の仕上げは、いつものコースに加えて髪のトリートメントと。
襟首とかも無駄毛を綺麗に剃られて、どこもかしこもつるつるにされた。
元々薄いから必要ないかもって言われたけどね!
爪もつるつるピカピカに磨いた上に、何か白いバラとかのネールアートをされた。
午前中は二人とも白いタキシードの予定なんだけど。手袋するし、いいか。
結婚式にはどっちも身内以外は入れないから、トーニオとジーナへ披露宴の招待状を出した。
来てくれるといいなあ。
*****
母さん達はイタリアに前日入りしたけど。
観光したいから明日現地で会いましょうね! と言われてしまった。
まあ最後に会ってから一月も経ってないし、連絡は取り合ってるからいいけど。
ミラノにはミケーレの店……ミステリオーソの本店があるので、晃司義兄さんが見に行きたいって言ってるようだ。
ミケーレと鉢合わせしたら面白そう……とか言って。
ヴァレンティーノ製のタキシード。
すごく身体にぴったりしてる。
崇は僕が着る服は全部自分がデザインしたいって言って、ほんとに沢山作っちゃって。
総額どうなるのか、考えるだけで恐ろしいんだけど。
……もしかして、あのエッチな寝間着とか下着もそうだったり?
一流の職人さんに、なんてものを作らせるんだよ!!
『Mi sta bene?』
崇が白いネクタイを直してくれてる時に訊いて。
『Certo、とても似合っているよ、私の”人生最愛の人”』
『崇もすごくかっこいいよ。惚れ直しちゃいそう』
『何度でも惚れてかまわない。私は昨日より今日より明日、君をもっと愛すから』
愛理さん、笑いながら晃司義兄さんの背中を叩くのはやめてあげてね。
驚くことに、崇は冗談で言ってるんじゃなく、本気も本気。
心から言ってるんだよ。これ。
*****
最初の結婚式は、ヴェネツィアの教会で。
今日。崇はヴァレンティーノではなく、御木本崇として宇佐美奏太と結婚式を挙げるんだ。
結婚式を挙げるには立会人二人の署名が必要なので、二人の名前の下に、ミケーレとお義父さんがサインをしてくれた。
午後からの結婚式ではロレンツォとマリオおじさんがするんだって。
御木本の名前で書いたのは、正式なものじゃないけど。
この結婚式は、僕のためなんだ。
崇はいつだって僕のことを考えてる。
ずれてることもあるけど。他人の気持ちが理解できないサヴァンの崇が、一生懸命考えてくれたことだ。
嫌なことは嫌、嬉しいことは嬉しいって。正直に言うよ。
永久の愛を誓いますか、と問う牧師さん。
崇はやや緊張した顔で僕を見ている。
この段階でNOなんて言う訳ないのにね。
『私、宇佐美奏太は夫、御木本崇を永久に愛することを誓います』
宣誓に、ほっとしたように微笑んで。
あんまりその笑顔が素敵だから、牧師さんまで見惚れちゃったよ。
誓いのキスはまだか? みたいな目で崇に睨まれて、慌てて続きを言った。
軽くキスをして。
本番は後でじっくりしようね、と囁かれる。全くもう。
結婚指輪は、金色なんだ。
これもミステリオーソ製? シンプルなのに綺麗なラインで。
ドレスといい、お疲れさま、ミケーレ。
ミケーレは晃司義兄さんと楽しそうに話してる。
ミケーレ、チャッ友だって名乗ったのかな?
晃司義兄さん、やっぱりイタリア語わかってたんじゃないか。
愛理さんも驚いてる。
二人が話してると、まるで双子か兄弟みたいだし。
ライスシャワーに見送られて。
ヴェネツィア名物、ゴンドラに乗って記念写真を撮って。
御木本崇と宇佐美奏太としての結婚式は終わった。
そして母さん達はひと足先に披露宴会場であるヴァレンティーノのお屋敷で待っててもらって。
崇と僕と、着付けをやってくれるミケーレは。
ロレンツォの操縦する同じ小型機でもう一つの式場へ向かった。
*****
『……二回目の式の後、”誓いの洞窟”で一族と”血の掟”を誓ってもらうことになる』
崇は、ヴァレンティーノ・ファミリアーリの首領でもある。
一族の掟は、配偶者である僕も守らないといけないので、幹部たちの前で儀式をしないといけないんだって。
儀式は幹部が見守る中、掟を守ることを誓って。
互いの親指に針を刺し血を出して。
それを重ねて血が交わることで、一族に加わったことになる儀式らしい。
掟はいくつかあって。
破った者は”死の制裁”を受ける。
・麻薬・覚醒剤の使用、取引、密造に関わってはいけない。
・観光客、一般市民に危害を加えてはいけない。ただし、売られた喧嘩は百倍にして返すこと。
・第三者が同席する場合を除いて、独りで他組織のメンバーと会ってはいけない。
・バーや社交クラブに入り浸ってはいけない。
・どんな時でもファミリーのために働けるよう準備をしておかなくてはならない。
・約束は絶対的に遵守しなければならない。
・何かを知るために呼ばれたときは、必ず真実を語らなくてはならない。
・ファミリーの仲間の妻に手を出してはいけない。
・ファミリーの仲間、およびその家族の財産を横取りしてはならない。
・ファミリーに対して感情的に背信を抱く者、素行の極端に悪い者、道徳心を持てない者は、兄弟の契りを交わさないものとする。
麻薬と素人には手を出さない、は前に聞いたっけ。
トーニオはファミリーじゃないから、誓ってはいないけど。
シチリアを仕切っているヴァレンティーノの掟は周知の事実なので、破ったら罰を受けるというのは常識だった。
なので、ヴァレンティーノが支配……仕切ってる地域はみなお行儀がいい、って話だ。
始末、とか処理とか。
考えないようにしてたけど。
マフィアの首領の伴侶になるからには、覚悟を決めないと。
崇の流した血も、罪も。
一緒に背負って生きていく覚悟だ。
*****
『そういえば、ミケーレはマフィアっぽくないよね?』
マフィアの幹部なのに。
『俺は主にお金稼ぐ役目だもん。暴力は不得意なの。都合上、サリーと兄弟の契りは交わしたけど、そっちの仕事はほとんどしてないよ』
ああ、だからロレンツォみたいに裏の世界の住人っぽい感じがしないんだ。
GPSや盗聴器にもドン引きだったし。
感覚は普通っぽい。
『あれ? でも、僕が敵対組織に攫われたとき、来てたよね?』
幹部だから強制参加だと思ってたけど。
デザイナーだし、特別に免除されてるらしいのに。
『坊やの一大事だもん。行くに決まってるでしょ』
当たり前じゃないか、って。
危険な銃撃戦に?
当たり所が悪ければ、死ぬかもしれないのに?
崇は、そういう男なんだ、って言った。
そうか。
信頼はしてるんだ。
ロレンツォも。疑う余地無く、命を預けられる相手だって。
だから運転も任せられるんだろうな。
ちょっと嫉妬しちゃうかも。
だって、僕じゃ守られるばっかりだもん。
帰ったらイタリア語の勉強もして。
身体に痕をつけようとする崇に、痕つけたら絶交! 結婚もしないから! って言って泣かせたり。
間に入ったロレンツォがおろおろする珍しい姿を見たり。
色々あって。
明日は結婚式当日だ。
……緊張するなあ。
ブライダルエステの最後の仕上げは、いつものコースに加えて髪のトリートメントと。
襟首とかも無駄毛を綺麗に剃られて、どこもかしこもつるつるにされた。
元々薄いから必要ないかもって言われたけどね!
爪もつるつるピカピカに磨いた上に、何か白いバラとかのネールアートをされた。
午前中は二人とも白いタキシードの予定なんだけど。手袋するし、いいか。
結婚式にはどっちも身内以外は入れないから、トーニオとジーナへ披露宴の招待状を出した。
来てくれるといいなあ。
*****
母さん達はイタリアに前日入りしたけど。
観光したいから明日現地で会いましょうね! と言われてしまった。
まあ最後に会ってから一月も経ってないし、連絡は取り合ってるからいいけど。
ミラノにはミケーレの店……ミステリオーソの本店があるので、晃司義兄さんが見に行きたいって言ってるようだ。
ミケーレと鉢合わせしたら面白そう……とか言って。
ヴァレンティーノ製のタキシード。
すごく身体にぴったりしてる。
崇は僕が着る服は全部自分がデザインしたいって言って、ほんとに沢山作っちゃって。
総額どうなるのか、考えるだけで恐ろしいんだけど。
……もしかして、あのエッチな寝間着とか下着もそうだったり?
一流の職人さんに、なんてものを作らせるんだよ!!
『Mi sta bene?』
崇が白いネクタイを直してくれてる時に訊いて。
『Certo、とても似合っているよ、私の”人生最愛の人”』
『崇もすごくかっこいいよ。惚れ直しちゃいそう』
『何度でも惚れてかまわない。私は昨日より今日より明日、君をもっと愛すから』
愛理さん、笑いながら晃司義兄さんの背中を叩くのはやめてあげてね。
驚くことに、崇は冗談で言ってるんじゃなく、本気も本気。
心から言ってるんだよ。これ。
*****
最初の結婚式は、ヴェネツィアの教会で。
今日。崇はヴァレンティーノではなく、御木本崇として宇佐美奏太と結婚式を挙げるんだ。
結婚式を挙げるには立会人二人の署名が必要なので、二人の名前の下に、ミケーレとお義父さんがサインをしてくれた。
午後からの結婚式ではロレンツォとマリオおじさんがするんだって。
御木本の名前で書いたのは、正式なものじゃないけど。
この結婚式は、僕のためなんだ。
崇はいつだって僕のことを考えてる。
ずれてることもあるけど。他人の気持ちが理解できないサヴァンの崇が、一生懸命考えてくれたことだ。
嫌なことは嫌、嬉しいことは嬉しいって。正直に言うよ。
永久の愛を誓いますか、と問う牧師さん。
崇はやや緊張した顔で僕を見ている。
この段階でNOなんて言う訳ないのにね。
『私、宇佐美奏太は夫、御木本崇を永久に愛することを誓います』
宣誓に、ほっとしたように微笑んで。
あんまりその笑顔が素敵だから、牧師さんまで見惚れちゃったよ。
誓いのキスはまだか? みたいな目で崇に睨まれて、慌てて続きを言った。
軽くキスをして。
本番は後でじっくりしようね、と囁かれる。全くもう。
結婚指輪は、金色なんだ。
これもミステリオーソ製? シンプルなのに綺麗なラインで。
ドレスといい、お疲れさま、ミケーレ。
ミケーレは晃司義兄さんと楽しそうに話してる。
ミケーレ、チャッ友だって名乗ったのかな?
晃司義兄さん、やっぱりイタリア語わかってたんじゃないか。
愛理さんも驚いてる。
二人が話してると、まるで双子か兄弟みたいだし。
ライスシャワーに見送られて。
ヴェネツィア名物、ゴンドラに乗って記念写真を撮って。
御木本崇と宇佐美奏太としての結婚式は終わった。
そして母さん達はひと足先に披露宴会場であるヴァレンティーノのお屋敷で待っててもらって。
崇と僕と、着付けをやってくれるミケーレは。
ロレンツォの操縦する同じ小型機でもう一つの式場へ向かった。
*****
『……二回目の式の後、”誓いの洞窟”で一族と”血の掟”を誓ってもらうことになる』
崇は、ヴァレンティーノ・ファミリアーリの首領でもある。
一族の掟は、配偶者である僕も守らないといけないので、幹部たちの前で儀式をしないといけないんだって。
儀式は幹部が見守る中、掟を守ることを誓って。
互いの親指に針を刺し血を出して。
それを重ねて血が交わることで、一族に加わったことになる儀式らしい。
掟はいくつかあって。
破った者は”死の制裁”を受ける。
・麻薬・覚醒剤の使用、取引、密造に関わってはいけない。
・観光客、一般市民に危害を加えてはいけない。ただし、売られた喧嘩は百倍にして返すこと。
・第三者が同席する場合を除いて、独りで他組織のメンバーと会ってはいけない。
・バーや社交クラブに入り浸ってはいけない。
・どんな時でもファミリーのために働けるよう準備をしておかなくてはならない。
・約束は絶対的に遵守しなければならない。
・何かを知るために呼ばれたときは、必ず真実を語らなくてはならない。
・ファミリーの仲間の妻に手を出してはいけない。
・ファミリーの仲間、およびその家族の財産を横取りしてはならない。
・ファミリーに対して感情的に背信を抱く者、素行の極端に悪い者、道徳心を持てない者は、兄弟の契りを交わさないものとする。
麻薬と素人には手を出さない、は前に聞いたっけ。
トーニオはファミリーじゃないから、誓ってはいないけど。
シチリアを仕切っているヴァレンティーノの掟は周知の事実なので、破ったら罰を受けるというのは常識だった。
なので、ヴァレンティーノが支配……仕切ってる地域はみなお行儀がいい、って話だ。
始末、とか処理とか。
考えないようにしてたけど。
マフィアの首領の伴侶になるからには、覚悟を決めないと。
崇の流した血も、罪も。
一緒に背負って生きていく覚悟だ。
*****
『そういえば、ミケーレはマフィアっぽくないよね?』
マフィアの幹部なのに。
『俺は主にお金稼ぐ役目だもん。暴力は不得意なの。都合上、サリーと兄弟の契りは交わしたけど、そっちの仕事はほとんどしてないよ』
ああ、だからロレンツォみたいに裏の世界の住人っぽい感じがしないんだ。
GPSや盗聴器にもドン引きだったし。
感覚は普通っぽい。
『あれ? でも、僕が敵対組織に攫われたとき、来てたよね?』
幹部だから強制参加だと思ってたけど。
デザイナーだし、特別に免除されてるらしいのに。
『坊やの一大事だもん。行くに決まってるでしょ』
当たり前じゃないか、って。
危険な銃撃戦に?
当たり所が悪ければ、死ぬかもしれないのに?
崇は、そういう男なんだ、って言った。
そうか。
信頼はしてるんだ。
ロレンツォも。疑う余地無く、命を預けられる相手だって。
だから運転も任せられるんだろうな。
ちょっと嫉妬しちゃうかも。
だって、僕じゃ守られるばっかりだもん。
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