自分が作ったゲームに似た異世界に行ったらお姫様の身代わりで野獣侯爵と偽装結婚させられました。

篠崎笙

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Schicksalhafte Begegnung (運命的な出会い)

Das ist meine wahre Figure(我が真実の姿はこれこの通り)

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数時間後に、やっと射精が治まった。


トールもさすがに疲れたのだろう、眠りの世界に居るようだ。
引き抜いて、指で中を確認してみれば。

あれほど大量の精液を放ったにもかかわらず、やはり、中は綺麗だった。
どうなっているのだろう。

……まあいい。
考えてもわからないことを悩むだけ無駄である。


鈴を鳴らし、使用人を呼び。
蒸したハントトゥーフタオルを持ってこさせ、トールの身体を拭ってやる。

愛らしい寝顔。


……わかっているか?
この私が後始末ここまでするのは、そなただけだぞ。

愛しい、私の可愛い宝物シャッツ


トールを抱き締めて眠って。
心地好い眠りを貪った。


*****


あたたかいものが、ごそごそと動いている気配。

しかし、警戒する必要はない。
愛おしい、私の小鳥である。

可愛らしい手が私の腰に触れ、尻の少し上、尾を掴んだ。
……そこも、感覚があるのだが。


「どうした、トール、足りないのか?」
可愛い悪戯っ子を抱き締める。

トールは私の貌に触れ。
口を開けさせ、鋭い牙を覗き込んだ。……本当に恐れ知らずだな。絶対に噛んだりはしないが。

あちこち触れて、確かめている様子である。


「……こら、何をしている。髭を引っ張るのはやめなさい」
さすがに痛いのでやめさせた。

「さっきまで、犬耳犬しっぽで、ほぼ人間の姿だったんだけど」
トールは不思議そうに首を傾げた。

「何?」
犬耳、と言ったか?

「まさか、トールには、私の姿が犬に見えているのか?」


皆や私には、おぞましい獣に見えているのに。
怯えなかった理由はそれだろうか。

「犬っていうか、凛々しい狼の顔だけど……違うの?」
「……私には、鏡に映った自分の姿は、邪悪な化け物に見えているが……」


「もしかして、人によって見えてる姿が違う、とか?」
そんなことがあるのか。

そういえば、皇帝は私を見て大笑いしていたな。
豪胆な奴ではあるが。

犬……狼に見えていたのだとすれば。
二足歩行の狼を見て笑うくらいは、奴なら、充分に有り得ることである。


では、グレアにも聞いてみよう、と。

服を着替え。
私達は地下へ向かった。


*****


「何を今更。狼男ヴェーアヴォルフだろう?」


私の姿がどのように見えるのか訊いたら、グレアは呆れたように言った。
そして、さらさらと絵を描いて、こちらに見せた。

「俺と同じだ。上手いな」

精巧に描かれたそれは、狼の姿をしていた。
私の似顔絵だそうだが。

「ほら、狼だろ?」

確かに、描かれているのは狼だが。
これが、私だと?

「……どういうことだ?」

グレアに訊いたが。
訳がわからない、といった様子で肩を竦めた。

「俺も狼に見えるんだけど。本人や他の人には、違うように見えてるみたいなんだ」
トールの説明に、グレアは頷いた。

「なるほどね……『真実の姿』が、誰の目にも同じに映るとは限らない、ということかい」


私が元々持っている魂の基本的な形は、”誇らしき狼”の姿であるそうだが。
人間というのは、環境や感情で変わるものである。

魔術により、私の歪んだ魂は、おぞましいその姿をあらわにし。
それは、他人にも影響を与えた。

恐れを持つ人間や、疑心暗鬼に囚われている人間には、恐ろしい化け物の姿に見えるのだろう、という。


私は、自分の貌や環境を嫌悪していた。
故に、世にもおぞましき姿に見えたのだろう。

トールは、私に恐れも疑いも持っていなかった。
それに加え、魔力に抵抗する力が強いので、グレアと同じように、そのまま狼の姿に見えていたのか。


皇帝にも、そう見えていたのだ。
だから、笑っていた。

こんなことで気落ちするな、というところか。


……それならば。
呪いをかけた本人には、どれほどおぞましく醜い化け物に見えたのだろうか?


*****


おそらく身体も、狼に近くなっていたのだろう。

なるほど、それで耳や鼻が利くようになり、動きも素早くなっていたのか。
身体能力も、化け物じみているとしか思わなかった。


「狼か……ああ、それで膨らんで、なかなか抜けなかったのだな」

犬の交尾を見たことがある。
簡単には抜けぬように陰茎の根元が膨らみ、妊娠を確実にするため、子宮まで届くように大量に射精するのだ、などという知識を披露したのは。マキシミリアンだったか?

狼も、犬の仲間であるのだから、構造も同じなのだろう。


獣の姿になって以来、閨に誘われることはなかった。誰かに欲情を抱くこともなかったため、自分の性器がそういう形状になるとは知らなかった。

今までは発情期が来なかった、みたいなものか。
犬も、メスの発情ヒートの匂いを嗅がねば発情しないという。


「ふふん。呪いが解けなくても幸せそうで何よりだねえ?」
グレアはからかうように笑っている。

ああ、私はとても幸せだ。

トールは真っ赤になっている。
狼の姿の私と交わったことが知られて恥ずかしいのか。

相変わらず慎ましいな。


*****


「あんたの『真実の姿』は16歳の少年のようだけど。羨ましいねえ」
トールを見ながらグレアは呟いた。

あの姿は、16歳だったのか。
もっと若く見えるが。

東洋人はそういうものだと噂に聞いていたので、外見上の年齢はあまり気にしていなかった。


「グレアも、掛けてみる?」
トールの気軽な発言に。

グレアは冗談じゃない、と身震いをした。

「いやいや、お断りだよ。普通は、己の『真実の姿』なぞ、怖くて直視したくないもんだ。大抵の場合、おぞましいものを見ることになるからね」


確かにそうだ。
普通は、真実の自分の姿など、知りたくはないし、直視したくもない。

グレアほどの魔女でも、それは恐ろしいものなのか。


「だから羨ましいと言ったのさ。侯爵は幸せ者だよ」
私を見て、グレアは皺だらけの貌で笑った。


*****


……そうか。
トールは、変身している訳ではなく。

本来の自分の姿になろうとして、自分に魔法を掛けたのだ。

それが、少年時代の自分の姿になったとは。
何と稀有で、純粋な心を持っているのだろう。

醜い部分が存在しない人間が、この世にいるなどと、誰が思うだろうか。


私は確かに幸せ者である。
このような素晴らしい伴侶を得ることが出来たのだから。
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