神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

文字の大きさ
29 / 71

異世界で、会議する

しおりを挟む
 神職バートルアンプレストンと神職見習いが数人。森の管理人、スペンサー夫妻がご近所さんになった。


 それからしばらくして。
 もう死の荒野ではなくなったリズリーの空き地を農地や牧場にするため、いくつかの世帯が引っ越してきた。
 予定地は、今すぐでも農地にできるように加工済みだ。

 王都であるロチェスターも、周辺に貯水池や湖が出来たので、これでもう水には困らなくなったと喜ばれているそうだ。

 塩湖も、そこから採れる塩は上質だし。景観もすばらしく。
 今や観光名所にもなってるとか。


 ロチェスターからリズリーまで、時速70キロ以上で走る馬で片道一時間ちょっと、馬車では二時間もかかる距離だというのに。
 ウィリアムやオズワルド、オーソンは毎日のようにこっちに顔を出してはご飯を食べて帰って行った。晩御飯だけじゃなく、昼ご飯も食べていく時もある。
 忙しい時でも、最低一週間に二回は来る有り様。

 一応、巡回するって名目で来ているそうだが。
 本職は大丈夫なのか訊いてみたら、俺の料理を食べたらもう満足できない胃袋になっちゃったんだって。
 そう言われたら、嫌な気はしないというか、正直、嬉しい。

 でも、毎日のように外食してたんじゃ、結婚した時に奥さんから怒られないかな? 今は皆独身で、結婚しないことが決まってるのは神職のプレストンくらいだけど。
 奥さんもここに連れてくる気だったりして……。


 *****


 かつて魔物の大繁殖により荒野になってしまったリズリーは、今や緑豊かな森と湖のある肥沃な土地になり。
 俺の家と教会、管理人小屋だけだったここにも冒険者組合の支店やスキート商会の出張所、人家などが増え、にぎやかになって来た。もう村といってもいいだろう。


 生まれ変わって、この世界に来て。
 そろそろ、生活の基盤も出来てきたと思う。

 若返った身体や異世界の習慣にも、まだ完全には慣れてないけど。
 じきに馴染んでいくだろう。

 俺も大人になったら、恋人とか作れるだろうか?
 今度こそ、前世では邪魔された、幸せな結婚とやらが出来たらいいなあ。


 せっかく国の代表が来てる訳だし。国の発展に繋がるようなものを作る時は、ウィリアムと相談してから作ることにしてるので。暇を見ては、何かと作戦会議をしている。
 その時だけ、オズワルドとオーソンには席を外してもらっている。

 というか、二人はリビングルームでおやつを食べて待機してるんだけど。たまにプレストンも加わってたりする。平和だ。


 *****


 書斎に本が欲しくなったし。スキート商会の協力のもと、試しにひとつ、印刷会社を立ち上げてみることになった。

 ウィリアムも凸版くらいは仕組みを知ってたけど。何もない状態からやるのは大変なので、二の足を踏んでたらしい。
 記憶を取り戻してからほとんどずっと魔物と戦ってたそうだし。そんな暇もなかったんだろう。

 輪転機のドラムを回転させる動力はペダル式にするか魔力にするか、とか。タイプライターなら作れそうなのでどっちを先に普及させるか、とか話し合ったりして。


「ウィルは、他に何か作りたいものとかある? さすがにパソコンとかは構造とかわかんないから、無理だと思うけど」
 小さな基盤とファンがあればいいんだっけ? パソコン本体の中身って、開けてみたらスカスカだったな。改造する人は更に色々取り付けるみたいだが。

「では、電話も無理かな? あれば便利なのだけどね」

 電話か。確かに、あれば便利だ。
 一応、通信用の魔法もあることはあるみたいだけど、かなりややこしい魔法陣を構成しないといけないという。

 スマフォじゃなく、無線の受信機なら作れる……んじゃないかと思う。分解したことあるし。でも、電波はどうしたら飛ばせるのか、その仕組みまでは知らない。
 もっと色々なことを勉強しておけばよかったなあ。

 そもそも電話もパソコンも、電気がないと、ただの箱だ。

「まずは発電所。それから変電所、電線が必要だよね……」
「発電か。そのことで我が国は大いに発展するだろうが。さすがにそこまでの改革は、やりすぎではないかな?」

「だよねー、」

 石炭や石油がない世界じゃ、火力発電は難しい。
 ダムを作って水力? 開発で、大規模な自然破壊とかになっちゃうかな。それは避けたい。


「えー、『何でも望むものを作って良い、詳しく思い浮かべなくてもおっけー』、だそうです」


 ……ん?
 プレストン? いつの間に会議に割り込んで来てたんだ⁉


 *****


「い、いつから聞いてたの?」
 恐る恐る訊いたら。

「お二人がお話しされていた内容は、浅学なわたしには全く理解できませんでしたが。先ほど下された神託をお伝えしに参りました」
 恭しく頭を下げられる。


 子供の頃から教会にいたので、自分は世間の物事をよく知らないため、相談に乗れず残念だという。
 何かの専門用語だと思ったようだ。

 まあ、ある意味専門用語かもな。異世界の。


 それにしても。わざわざお勤め中の神職にそんな伝言を頼むとか。
 内容といい、神様、過保護過ぎない? これが”神の加護”の力なのかな?

 でも、言われてみれば。
 発電機とか給湯器を作ってないのに、何故かお湯や電気がついてたのって、『電気を必要としない家電』を作っちゃってたのかもしれない。

 水道も、水源の必要がなかったり? プロパンガスのコンロは、火力が高いって知識があったから作ったけど。もしかして、ガスも別に必要なかったりする?
 そういえば補給とかしてないな。

 ”創造”魔法で、水も火も出せるわけだし。


 そんなの、何でもアリじゃないか。
 神様ってば、いくらお詫びだからって。とんでもない能力を授けすぎだよ。

 ……まあ、こうして神様の声が聴ける神職もいるんだし。もしやりすぎたら、注意してくれる……よな?
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

オレの番になって──異世界に行って愛猫の番にされる話

まめ
BL
不慮の事故により、異世界に転移することになった神木周。 心残りは、唯一の家族だった愛猫・ネロのことだけだった。 ──目覚めた草原で再会したのは、見覚えのある大きな黒い獣。ネロが追いかけてきてくれたのだ。 わからないことばかりの異世界だけど、ネロがいるからきっと大丈夫。 少しずつ心をほどき、神に招かれた世界で穏やかな毎日を楽しむ周たち。 しかし、そんな彼らに不穏な気配が忍び寄る―― 一人と一匹がいちゃいちゃしながら紡ぐ、ほのぼの異世界BLファンタジー。 こんにちは異世界編 1-9 話 不穏の足音編 10-18話 首都編 19-28話 番──つがい編 29話以降 全32話 執着溺愛猫獣人×気弱男子 他サイトにも掲載しています。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

【完】ラスボス(予定)に転生しましたが、家を出て幸せになります

ナナメ
BL
 8歳の頃ここが『光の勇者と救世の御子』の小説、もしくはそれに類似した世界であるという記憶が甦ったウル。  家族に疎まれながら育った自分は囮で偽物の王太子の婚約者である事、同い年の義弟ハガルが本物の婚約者である事、真実を告げられた日に全てを失い絶望して魔王になってしまう事ーーそれを、思い出した。  思い出したからには思いどおりになるものか、そして小説のちょい役である推しの元で幸せになってみせる!と10年かけて下地を築いた卒業パーティーの日ーー ーーさあ、早く来い!僕の10年の努力の成果よ今ここに!  魔王になりたくないラスボス(予定)と、本来超脇役のおっさんとの物語。 ※体調次第で書いておりますのでかなりの鈍足更新になっております。ご了承頂ければ幸いです。 ※表紙はAI作成です

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...