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45歳童貞、異世界へ行く
俺氏、グラディアトる。
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「はい、そこの前列10人の防御力を上げて」
ルプスの指示で、防御力を上げる。
「difensio」
ルプスは木剣で、防御力の上がった剣闘士の急所を容赦なく攻撃した。
でも、やられた剣闘士たちは、凄い、痛くない! と驚いている。
「随分高レベルの『防御魔法』だ……」
「次、そこの的を『魔法の矢』で射る」
「Sagitta・luminis、sagitta・stellae、Sagitta・Flame!」
光の矢、星の矢、火炎の矢を指示された場所に当てた。
「えー、では、逃げる敵を捕獲。……走れ」
「FunisVinctum」
『魔法の縄』で、逃げるよう指示された敵役の剣闘士を捕縛する。
「……そこの石に、最大火炎攻撃、最大氷結攻撃、最大雷撃」
「flagrantia・infernus、Congelatio・tempestas、jovis・tonitrusfulgoris」
中央に置かれた石に、『地獄の焔』、『氷結の嵐』、『神の雷光』をかけた。
しまった。
アリーナが陥没しちゃった。
ちなみにアリーナとは闘技場のことで。
ラテン語のarena、『流血を吸収するため砂を撒いた闘技場』から名付けられている。
血なまぐさいね。
*****
ああ、剣闘士たちが怯えている……。
ちゃんと範囲指定してるから大丈夫だよ? ちょっとした地獄絵図みたいになってるけど。
「……詠唱もなしにこんな大魔法を連発しておいて、いったい何の問題があると?」
ひええ。
何で怖い顔をして睨むんだ。
「し、指示されればできるけど、自分じゃ何していいのか悩むので」
「なるほど……それは困るな……」
納得したようだ。
知性と敏捷さの低い魔術師ですまない……。
「とりあえず、陥没したの直しとくね。……Restaurare」
無残な姿になったアリーナを元通り修復した。
「!?」
ルプスは元通りになったアリーナを二度見して。
「ちょっと待った。この規模の修復が可能ということは。……まさか元素魔法、白魔法、神聖魔法だけじゃなく、次元魔法も到達者なのでは?」
ああ。
『修復魔法』って、次元魔法と神聖魔法が高くないとできないんだっけ。
「まあ、それなりに……」
頷いてみせる。
何せ、魔法使いの王様だからね! フルコンプだよね。
全部レベルMAXだし!
魔法使いの次が大魔法使い、上位職が魔道士、大魔道士だったなんて、ここに来るまで知らなかったし。
だってゲームでも、会社によって同じ火系の魔法の名前ですら全然違うし。
メラとアギとファイアとか。
「カナメ様は、陛下にかけられた『魂結の術』をも解呪してたな……」
騎士長官が呟いて。
「何? あれが解呪できたと!? では、黒魔法も……?」
*****
「カナメ様、黒魔法の最大……いや、その手前のを中央に」
ルプスに指示されて。
「magunamelum・Exhalatio」
消費MP999、大いなる災い、とかいう魔法だ。
一帯が焦土になる呪文なので、範囲指定した。
最大のやつは、こんな場所ではできない。
ルプス、よく知ってるなあ。
「凄まじいな。『災厄焦土』も詠唱破棄で放つとは」
「これが『災厄焦土』……初めて見たぞ……」
ルプスと騎士長官が、呆然と火柱を見上げてる。
ああ、またアリーナに大穴が……。
『修復魔法』ですぐに元に戻しておこう。
「これならば、魔王が復活しても、勝てるかもしれない……いや、確実に、勝てる」
ルプスが目の前に来て。
「貴方は、我が国の希望だ」
真剣な顔で言われた。
あれ?
よく見たら、ルプスの目の色、ガイウスと同じ、アイスブルーだ。
でもって、結構なイケメンだったんだな。
筆頭剣闘士として大人気だったのも頷ける。
こんなハンサムなら、通う女性ファンも多かっただろう。
……何で頬を染めるんだよ。
精神魔法無効だし。
魅了、効いてないよな?
*****
「ルプス、私は我が后を戦場に連れていくつもりはない」
あれ、ガイウス。
仕事が終わったから、俺のことを探しに来たのかな?
厳しい顔しちゃって。
「何故だ? クラッススは、もう居ない。他の魔術師もだ。再び奴に襲われ、まともに戦ったとして、魔術師の補助なしで魔王に勝てるとでも思っているのか? 不可能だ! 彼ほどの魔力ならば、勝算は充分にあるんだぞ!?」
ルプスはガイウスに詰め寄った。
クラッススって、もしかして。
例の、命と引き換えに魔王を異世界に吹っ飛ばしたっていう魔術師?
「我が后は確かに強いが。戦うには優しすぎる。それに実戦経験が無くては、本番で動けなくなる可能性が高い」
ガイウスは、俺の参戦には反対なようだ。
何を生ぬるいことを、とルプスは言って。
「ならば経験を積ませ、使う魔法の指示を与えれば良いだけだ。その結果、誰が命を落としたとしても。その責は全て、指示した者が負えばよかろう」
ああ、そうか。
戦いになるってことは。
人が死ぬかもしれないってことで。
ガイウスは、俺を人殺しにしたくないんだ。
皇帝の癖に、そんなこと言っちゃ駄目だろ?
国を護るのが最優先でなくちゃ。
*****
「ガイウス。俺も、ガイウスを守りたいんだよ」
「カナメ……」
「皇帝なんだから、国を護らないといけないだろ。でも、ガイウス一人を危険な目に遭わせるのは嫌だし。俺が居れば勝てるっていうなら、行くしかないじゃん。連れてってよ」
ガイウスは苦笑して。
「私のマントの中に隠れて、か?」
確かにすぐマントの中に隠れるけど。
「そうそう。目いっぱい防御魔法かけたガイウスを盾にして、後ろから援護してやる」
「それは……心強いな」
笑った。
やっぱり、ガイウスの顔を見ると、ドキドキしてしまう。
困るなあ。
「……そういえば、陛下殿? 聞いた所によると、刺客に狙われ、矢に当たったそうで。平和が過ぎて、かなり勘が鈍ったのでは?」
ルプスに言われて。
ガイウスの耳が、ピクリと動いた。
いや、俺を庇ったせいで、当たっちゃったんだよ。
ルプスは笑顔で。
「そんなことでは、愛妻を護れるかどうか、わかったものではないな? 俺の後ろの方が安全なのではないかな?」
あ、ガイウスのこめかみに、ピキッと青筋が。
「では、鈍ったかどうか確かめるため。久しぶりにお手合わせ願えるかな? ルプス筆頭百人隊長……いや、元筆頭百人隊長殿?」
ガイウスは腰の剣を抜いて。
「よろしい。久しぶりにガイウス坊ちゃん……いえ、皇帝陛下の剣術指南をさせていただきましょうか」
ルプスも剣を手にした。
坊ちゃん? 久しぶりって。
この二人、どんな関係なんだよ!?
「おお、百数年ぶりに、二人の手合わせが見られるとは! これは皆に知らせなくては!」
騎士隊長が慌てて外に駆けて行った。
何で嬉しそうなの?
ルプスの指示で、防御力を上げる。
「difensio」
ルプスは木剣で、防御力の上がった剣闘士の急所を容赦なく攻撃した。
でも、やられた剣闘士たちは、凄い、痛くない! と驚いている。
「随分高レベルの『防御魔法』だ……」
「次、そこの的を『魔法の矢』で射る」
「Sagitta・luminis、sagitta・stellae、Sagitta・Flame!」
光の矢、星の矢、火炎の矢を指示された場所に当てた。
「えー、では、逃げる敵を捕獲。……走れ」
「FunisVinctum」
『魔法の縄』で、逃げるよう指示された敵役の剣闘士を捕縛する。
「……そこの石に、最大火炎攻撃、最大氷結攻撃、最大雷撃」
「flagrantia・infernus、Congelatio・tempestas、jovis・tonitrusfulgoris」
中央に置かれた石に、『地獄の焔』、『氷結の嵐』、『神の雷光』をかけた。
しまった。
アリーナが陥没しちゃった。
ちなみにアリーナとは闘技場のことで。
ラテン語のarena、『流血を吸収するため砂を撒いた闘技場』から名付けられている。
血なまぐさいね。
*****
ああ、剣闘士たちが怯えている……。
ちゃんと範囲指定してるから大丈夫だよ? ちょっとした地獄絵図みたいになってるけど。
「……詠唱もなしにこんな大魔法を連発しておいて、いったい何の問題があると?」
ひええ。
何で怖い顔をして睨むんだ。
「し、指示されればできるけど、自分じゃ何していいのか悩むので」
「なるほど……それは困るな……」
納得したようだ。
知性と敏捷さの低い魔術師ですまない……。
「とりあえず、陥没したの直しとくね。……Restaurare」
無残な姿になったアリーナを元通り修復した。
「!?」
ルプスは元通りになったアリーナを二度見して。
「ちょっと待った。この規模の修復が可能ということは。……まさか元素魔法、白魔法、神聖魔法だけじゃなく、次元魔法も到達者なのでは?」
ああ。
『修復魔法』って、次元魔法と神聖魔法が高くないとできないんだっけ。
「まあ、それなりに……」
頷いてみせる。
何せ、魔法使いの王様だからね! フルコンプだよね。
全部レベルMAXだし!
魔法使いの次が大魔法使い、上位職が魔道士、大魔道士だったなんて、ここに来るまで知らなかったし。
だってゲームでも、会社によって同じ火系の魔法の名前ですら全然違うし。
メラとアギとファイアとか。
「カナメ様は、陛下にかけられた『魂結の術』をも解呪してたな……」
騎士長官が呟いて。
「何? あれが解呪できたと!? では、黒魔法も……?」
*****
「カナメ様、黒魔法の最大……いや、その手前のを中央に」
ルプスに指示されて。
「magunamelum・Exhalatio」
消費MP999、大いなる災い、とかいう魔法だ。
一帯が焦土になる呪文なので、範囲指定した。
最大のやつは、こんな場所ではできない。
ルプス、よく知ってるなあ。
「凄まじいな。『災厄焦土』も詠唱破棄で放つとは」
「これが『災厄焦土』……初めて見たぞ……」
ルプスと騎士長官が、呆然と火柱を見上げてる。
ああ、またアリーナに大穴が……。
『修復魔法』ですぐに元に戻しておこう。
「これならば、魔王が復活しても、勝てるかもしれない……いや、確実に、勝てる」
ルプスが目の前に来て。
「貴方は、我が国の希望だ」
真剣な顔で言われた。
あれ?
よく見たら、ルプスの目の色、ガイウスと同じ、アイスブルーだ。
でもって、結構なイケメンだったんだな。
筆頭剣闘士として大人気だったのも頷ける。
こんなハンサムなら、通う女性ファンも多かっただろう。
……何で頬を染めるんだよ。
精神魔法無効だし。
魅了、効いてないよな?
*****
「ルプス、私は我が后を戦場に連れていくつもりはない」
あれ、ガイウス。
仕事が終わったから、俺のことを探しに来たのかな?
厳しい顔しちゃって。
「何故だ? クラッススは、もう居ない。他の魔術師もだ。再び奴に襲われ、まともに戦ったとして、魔術師の補助なしで魔王に勝てるとでも思っているのか? 不可能だ! 彼ほどの魔力ならば、勝算は充分にあるんだぞ!?」
ルプスはガイウスに詰め寄った。
クラッススって、もしかして。
例の、命と引き換えに魔王を異世界に吹っ飛ばしたっていう魔術師?
「我が后は確かに強いが。戦うには優しすぎる。それに実戦経験が無くては、本番で動けなくなる可能性が高い」
ガイウスは、俺の参戦には反対なようだ。
何を生ぬるいことを、とルプスは言って。
「ならば経験を積ませ、使う魔法の指示を与えれば良いだけだ。その結果、誰が命を落としたとしても。その責は全て、指示した者が負えばよかろう」
ああ、そうか。
戦いになるってことは。
人が死ぬかもしれないってことで。
ガイウスは、俺を人殺しにしたくないんだ。
皇帝の癖に、そんなこと言っちゃ駄目だろ?
国を護るのが最優先でなくちゃ。
*****
「ガイウス。俺も、ガイウスを守りたいんだよ」
「カナメ……」
「皇帝なんだから、国を護らないといけないだろ。でも、ガイウス一人を危険な目に遭わせるのは嫌だし。俺が居れば勝てるっていうなら、行くしかないじゃん。連れてってよ」
ガイウスは苦笑して。
「私のマントの中に隠れて、か?」
確かにすぐマントの中に隠れるけど。
「そうそう。目いっぱい防御魔法かけたガイウスを盾にして、後ろから援護してやる」
「それは……心強いな」
笑った。
やっぱり、ガイウスの顔を見ると、ドキドキしてしまう。
困るなあ。
「……そういえば、陛下殿? 聞いた所によると、刺客に狙われ、矢に当たったそうで。平和が過ぎて、かなり勘が鈍ったのでは?」
ルプスに言われて。
ガイウスの耳が、ピクリと動いた。
いや、俺を庇ったせいで、当たっちゃったんだよ。
ルプスは笑顔で。
「そんなことでは、愛妻を護れるかどうか、わかったものではないな? 俺の後ろの方が安全なのではないかな?」
あ、ガイウスのこめかみに、ピキッと青筋が。
「では、鈍ったかどうか確かめるため。久しぶりにお手合わせ願えるかな? ルプス筆頭百人隊長……いや、元筆頭百人隊長殿?」
ガイウスは腰の剣を抜いて。
「よろしい。久しぶりにガイウス坊ちゃん……いえ、皇帝陛下の剣術指南をさせていただきましょうか」
ルプスも剣を手にした。
坊ちゃん? 久しぶりって。
この二人、どんな関係なんだよ!?
「おお、百数年ぶりに、二人の手合わせが見られるとは! これは皆に知らせなくては!」
騎士隊長が慌てて外に駆けて行った。
何で嬉しそうなの?
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