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10 魔王の過去 ★魔王視点
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★魔王視点
「この悪魔め!!」
「こいつは魔物に違いない こんなツノ人間になんて生えないわよ」
僕は人間として生まれた。ずっと人間だと思って生きてきた。
黒髪に赤い瞳。お父さんとお母さんは茶色の髪に茶色の目をしていたから不思議だねってよく言われていた。
僕の生まれた村はとても小さいけど村民は皆優しくて温かい村だった。
「タイガくんこれお母さんに持っていっておくれ うちの畑でじゃがいもがたくさんとれたんだ」
「おばちゃんありがとう」
明日は僕の10歳の誕生日だ。夕方友達とかくれんぼをした帰りに道具屋のおばちゃんからじゃがいもをもらった。明日のご馳走は僕の大好きなじゃがいものスープになりそうだ。楽しみだなぁ。
「そうだ」
空を見あげるとまだ夕日がのぼっている時間だった。暗くなるまでまだ余裕がありそうだ。僕はこっそり家とは逆方向に走り出した。
そう、森へ行くんだ。村のすぐ近くには悪魔の森と呼ばれる森がある。そこは魔物が多くて呪われているから絶対に入るなと村の人達から言われていた。
でも大丈夫だよ。前に一度好奇心で入ってみたけど魔物なんていなかったから。
それよりもここには大切な友達がいるんだ。
「おじちゃん!」
森に入ってある程度進んだところに洞窟がある。僕が大きな声で呼ぶと苔の生えた小さな洞窟の中から一人の老人が出てきた。
身なりはボロボロでひげは長く伸びている。
「少年また来たのか」
しゃがれた声で彼は僕を少年と呼んだ。
「みてじゃがいもたくさんもらったからおすそ分けだよ」
僕が芋を何個か手に取り老人に押し付ける。
「ほぅ」
老人は嬉しそうに芋を受け取った。
このおじちゃんは僕が以前森の中で転んで怪我をしたときに傷の手当をしてくれた人だ。事情があって村には戻れなくて森で暮らしているらしい。
いつも食べ物に困っている感じだったからときどきこうして野菜や果物を持ってくるんだ。頼まれれば村でお使いだってする。
そしてお土産に彼の昔話をたくさん聞くんだ。おじちゃんはすごい。昔大陸を一周したみたいでいろいろな体験談を聞かせてくれた。人を助けて旅をして…しかも国で一番強い回復師だったらしい!
ドラゴンを倒した話、山賊を倒した話、かわいいお姫様を見た話、世界には絶景や様々な人がいることなど色々語ってくれた。
おじちゃんの話は本なんかよりずっとワクワクして楽しかった。今日は時間がないから話は聞けない。
「明日10歳の誕生日なんだ!じゃがいものスープ余ったら持ってくるからまたね」
僕は早々に話を切り上げて村へ帰ることにした。
「きゃぁぁぁぁっ」
翌日大きな悲鳴で目が覚めた。
まだ早朝。何事かと思って部屋を見渡すと腰を抜かした母親と目があった。
多分いつもどおり僕を部屋まで起こしに来てくれたんだろう。でもなんで叫んでるんだ?
お母さんは恐怖で顔がひきつっている。
その後ろにはお父さんが目を見開き立っていた。そして僕と目があうと玄関まで走り去る。僕は首を傾げた。
「あ、ぁぁぁぁ」
「お母さんどうしたの?」
「ひっ…たぃが…?」
「うん」
「たいがたいがたいが…ぁぁ…」
お母さんは僕の名前を呼んでその場に泣き崩れた。
どうすればいいのか分からなくてとりあえず母の元まで駆け寄る。
背中を優しくさすった。するとお母さんは顔をあげる。その顔は涙でぐちゃぐちゃだ。僕の腕をきつく掴むと
「逃げなさい」
そう力強く叫んだ。
「え?」
逃げろって…なんで…。するとなにやら家の外が騒がしい。窓から確認すると村人がたくさん家の前に集まっている。こんな朝早くにどうしたのか。
僕は玄関まで向かった。ドアを開けると村の男たちがぞろぞろと僕を取り囲む。その中にはお父さんの姿もあった。
「お父さん…どうしたの」
「やめろ!俺はお前なんかの父親じゃない!」
お父さんは険しい表情で僕を睨んだ。どんなに悪いことをしてもこんなに怒られることなんてなかったのに…。なにかしてしまったのだろうか。
すると老人が前に出てきて彼を制した。
村長だ。
「これは… 間違いない悪魔の子供だ」
老人は僕を指さし息を呑む。悪魔の子供?
すると村人たちが次々に野次を飛ばした。
「この悪魔め!!」
「こいつは魔物に違いない こんなツノ人間になんて生えないわよ」
ツノ…?おそるおそる自分の頭に手を伸ばしてみるとそこにはなにか硬いものがあった。なんだこれ…。昨日までなかったのに。
「リュウ、お前はこの子を森で拾ったと言っていたな」
村長がお父さんに問いかけた。
「…ちがう…俺は知らなかったんだ…」
「ねぇその森ってもしかして悪魔の森じゃないでしょうね??」
道具屋のおばちゃんがヒステリックに叫んだ。
父親は重たくうなずくと村人の間で悲鳴がちらほら聞こえる。
昔お父さんから聞いたことがある。僕は森で拾われたんだって。あれは冗談だと思っていたけど本当にそうなの?それなら髪の色と目の色が親子で違うことも説明がつく…。僕は悪魔?魔物?
「人型をとる悪魔は知能が高く厄介なことが多いんじゃ リュウお前が責任をとって殺しなさい この村から悪魔が生まれたなんて噂になっては一大事じゃ」
殺す…?
僕は一歩後にさがった。村人たちが殺せ殺せとコールする。
「ひっ…」
お父さんは光のない目で僕を捉えた。そして庭に刺さっていた畑の桑を引き抜く。
それを僕に向かって大きく振り上げた。恐怖で体は動かなかった。
どうして…。
「この悪魔め!!」
「こいつは魔物に違いない こんなツノ人間になんて生えないわよ」
僕は人間として生まれた。ずっと人間だと思って生きてきた。
黒髪に赤い瞳。お父さんとお母さんは茶色の髪に茶色の目をしていたから不思議だねってよく言われていた。
僕の生まれた村はとても小さいけど村民は皆優しくて温かい村だった。
「タイガくんこれお母さんに持っていっておくれ うちの畑でじゃがいもがたくさんとれたんだ」
「おばちゃんありがとう」
明日は僕の10歳の誕生日だ。夕方友達とかくれんぼをした帰りに道具屋のおばちゃんからじゃがいもをもらった。明日のご馳走は僕の大好きなじゃがいものスープになりそうだ。楽しみだなぁ。
「そうだ」
空を見あげるとまだ夕日がのぼっている時間だった。暗くなるまでまだ余裕がありそうだ。僕はこっそり家とは逆方向に走り出した。
そう、森へ行くんだ。村のすぐ近くには悪魔の森と呼ばれる森がある。そこは魔物が多くて呪われているから絶対に入るなと村の人達から言われていた。
でも大丈夫だよ。前に一度好奇心で入ってみたけど魔物なんていなかったから。
それよりもここには大切な友達がいるんだ。
「おじちゃん!」
森に入ってある程度進んだところに洞窟がある。僕が大きな声で呼ぶと苔の生えた小さな洞窟の中から一人の老人が出てきた。
身なりはボロボロでひげは長く伸びている。
「少年また来たのか」
しゃがれた声で彼は僕を少年と呼んだ。
「みてじゃがいもたくさんもらったからおすそ分けだよ」
僕が芋を何個か手に取り老人に押し付ける。
「ほぅ」
老人は嬉しそうに芋を受け取った。
このおじちゃんは僕が以前森の中で転んで怪我をしたときに傷の手当をしてくれた人だ。事情があって村には戻れなくて森で暮らしているらしい。
いつも食べ物に困っている感じだったからときどきこうして野菜や果物を持ってくるんだ。頼まれれば村でお使いだってする。
そしてお土産に彼の昔話をたくさん聞くんだ。おじちゃんはすごい。昔大陸を一周したみたいでいろいろな体験談を聞かせてくれた。人を助けて旅をして…しかも国で一番強い回復師だったらしい!
ドラゴンを倒した話、山賊を倒した話、かわいいお姫様を見た話、世界には絶景や様々な人がいることなど色々語ってくれた。
おじちゃんの話は本なんかよりずっとワクワクして楽しかった。今日は時間がないから話は聞けない。
「明日10歳の誕生日なんだ!じゃがいものスープ余ったら持ってくるからまたね」
僕は早々に話を切り上げて村へ帰ることにした。
「きゃぁぁぁぁっ」
翌日大きな悲鳴で目が覚めた。
まだ早朝。何事かと思って部屋を見渡すと腰を抜かした母親と目があった。
多分いつもどおり僕を部屋まで起こしに来てくれたんだろう。でもなんで叫んでるんだ?
お母さんは恐怖で顔がひきつっている。
その後ろにはお父さんが目を見開き立っていた。そして僕と目があうと玄関まで走り去る。僕は首を傾げた。
「あ、ぁぁぁぁ」
「お母さんどうしたの?」
「ひっ…たぃが…?」
「うん」
「たいがたいがたいが…ぁぁ…」
お母さんは僕の名前を呼んでその場に泣き崩れた。
どうすればいいのか分からなくてとりあえず母の元まで駆け寄る。
背中を優しくさすった。するとお母さんは顔をあげる。その顔は涙でぐちゃぐちゃだ。僕の腕をきつく掴むと
「逃げなさい」
そう力強く叫んだ。
「え?」
逃げろって…なんで…。するとなにやら家の外が騒がしい。窓から確認すると村人がたくさん家の前に集まっている。こんな朝早くにどうしたのか。
僕は玄関まで向かった。ドアを開けると村の男たちがぞろぞろと僕を取り囲む。その中にはお父さんの姿もあった。
「お父さん…どうしたの」
「やめろ!俺はお前なんかの父親じゃない!」
お父さんは険しい表情で僕を睨んだ。どんなに悪いことをしてもこんなに怒られることなんてなかったのに…。なにかしてしまったのだろうか。
すると老人が前に出てきて彼を制した。
村長だ。
「これは… 間違いない悪魔の子供だ」
老人は僕を指さし息を呑む。悪魔の子供?
すると村人たちが次々に野次を飛ばした。
「この悪魔め!!」
「こいつは魔物に違いない こんなツノ人間になんて生えないわよ」
ツノ…?おそるおそる自分の頭に手を伸ばしてみるとそこにはなにか硬いものがあった。なんだこれ…。昨日までなかったのに。
「リュウ、お前はこの子を森で拾ったと言っていたな」
村長がお父さんに問いかけた。
「…ちがう…俺は知らなかったんだ…」
「ねぇその森ってもしかして悪魔の森じゃないでしょうね??」
道具屋のおばちゃんがヒステリックに叫んだ。
父親は重たくうなずくと村人の間で悲鳴がちらほら聞こえる。
昔お父さんから聞いたことがある。僕は森で拾われたんだって。あれは冗談だと思っていたけど本当にそうなの?それなら髪の色と目の色が親子で違うことも説明がつく…。僕は悪魔?魔物?
「人型をとる悪魔は知能が高く厄介なことが多いんじゃ リュウお前が責任をとって殺しなさい この村から悪魔が生まれたなんて噂になっては一大事じゃ」
殺す…?
僕は一歩後にさがった。村人たちが殺せ殺せとコールする。
「ひっ…」
お父さんは光のない目で僕を捉えた。そして庭に刺さっていた畑の桑を引き抜く。
それを僕に向かって大きく振り上げた。恐怖で体は動かなかった。
どうして…。
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