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1 俺は婚約破棄したい
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俺の幼馴染はやりたい放題だった。
ここは人間とケモ耳が共存する世界。俺、ウルは暗い茶色の髪に黄色の瞳をもつ狼族だ。狼と言っても、ほぼ人間の見た目に狼の耳と尻尾が生えているだけのいわゆるケモ耳ってやつ。
狼族は縄張り意識が強いから、人里離れた山奥で村を作りひっそりと生活をしていた。狼の社会にはヒエラルキー、つまり力関係があるんだ。
力の強い者、賢い者が弱者を支配する。どんな理不尽を強いられていても逆らうことは許されない。
俺の村では見た目がよくカリスマ性がありリーダーシップがある狼が権力を持っていた。
それが俺の幼なじみのリアーだ。彼は村長の息子で襟足の長い黒髪にツリ目、三白眼で高身長の男。口は悪いが、頭がよく格好いいから村中の人気者だった。
それに対して俺は小柄で力も弱く頭も悪い。見た目も至って平凡だった。昔から彼と比べられていたせいか、出来損ないだといじめの対象になっていた。
そして数日前、幼なじみは皆の前で俺に向かってこういった。
「こいつ俺の番候補だから」
番というのは恋人のこと。つまり婚約者を指す。正直信じられなかった。だって彼はいつも俺のことを虐めてくる。パシリにしたり乱暴なことをしたりバカにしたり…。
今回もなにかの嫌がらせだろう、そう思っていた。でも村の人気者に逆らうことはできない。だからただ黙っていた。すると周りの狼たちはケラケラ面白がって笑った。
「男のくせに番候補だってさ。ウルちゃん!」
「小せぇしお前本当はメスなんじゃねーの?」
「今日からこいつ虐めていいのは俺だけだからな」
リアーはそう言って高らかに笑った。
俺は後ろ手にギュッと拳を握りしめた。
「おいウル」
うわっ。でた…。できれば出会いたくない人ナンバーワンの男。
ある朝、乱暴な幼なじみは、畑にまく水を汲もうと川へ向かう途中の俺を引き止めた。
番候補と言われてから村の連中は俺に暴力を振るうことはなくなった。それは良かったんだけど、でもいつもどおりリアーには何かと嫌がらせをされていた。食事をつくらされたり、雑用押し付けられたり罵られたり…叩かれたり。
普段からできるだけ彼には出会わないようにあたりを警戒しながら歩いているが、今日は家の前のベンチにやつは居座っていた。
リアーは長い脚を組みベンチにもたれかかっている。その横には村一番の美女が座っていた。この二人は昔からお似合いだと言われていて仲が良い。
リアーの番候補も彼女で決まりだと噂されていたのになぜか俺が選ばれた。だから彼女には敵対心を抱かれている。ただ嫌がらせのためだけに番候補にさせられたのに…。
今だって、俺がいるのを分かっててリアーの腕にべったりしがみついてるし…。美女はそのまま唇を近づけ、見せつけるようにキスをした。幼なじみも当然それを受け入れる。
俺は、婚約者とその浮気相手がちゅくちゅくと舌まで使った濃厚なキスをしているのを見せつけられている。これどんな状況だよ。
多分リアーの本命は彼女なんだろう。
気まずい…。でもここを通らなくては水くみにはいけない。仕方なく視線を地面に落としながら早足でその前を通り過ぎようとした。
やっぱり幼なじみは苦手だ。虐めてくるし怖い。今だって婚約者(仮)の前で堂々と浮気をすることで俺に恥をかかせようとしている。
「お前なんか言うことないのかよ」
すると彼は怖い顔をしながらこちらを睨みつけてきた。
言うことってなんだろう…。昼間からお盛んですね、これでいいのかな。心では思っても口では絶対に言えない。
「ご、ごめんなさい…」
とりあえず謝っておくことにした。
おどおどと謝罪の言葉を述べると彼は余計不機嫌になる。
はぁ。と大きくため息をつくと、よく通る声でこういった。
「こいつと番になってもやっぱつまんねーわ。まじでムカつく」
すると隣の美女がくすくす笑った。
「ならあんなのやめて私にしてよぉ。私ならリアーを楽しませてあげられるよ?」
彼は俺を一瞥すると彼女の腰に腕を回した。そして
「それも悪くないな」
と笑った。
もしかしてこれはチャンスなのでは?リアーの気まぐれでされた番宣言。この遊びに飽きたならはやく美女に乗り換えてもらいたい。
番という名のパシリに嫌気が差してきたところだ。
「じゃっじゃあ…番は解消ってことで!」
俺は内心飛び跳ねていた。やった解放される!
そう思ったのに、それが癇に障ったのか、
「あ?」
と険しい顔をし彼は立ち上がった。ものすごく怒っている…。
「ひっ」
「ふざけんな!」
ハスは俺の胸ぐらを掴んだ。
なんでっ…。そっちがやめたいって言ったのに…っ。
「何勝手に決めてんだよ!逃げようとしてんじゃねーよ」
そう言って後ろに突き飛ばされた。
痛てっ。俺は尻餅をついて彼を見上げる。
リアーは冷たい目で俺を睨んでいた。
彼はきっと俺のことを舐めてるんだ。体格差あるし頭も回らないから何もできないだろうって。
どんな理不尽を強いてもいうことを聞くだろうって。
実際村から追い出されたら行くところなんてないんだけどさ…。くそ…。強くなりたい…。
ここは人間とケモ耳が共存する世界。俺、ウルは暗い茶色の髪に黄色の瞳をもつ狼族だ。狼と言っても、ほぼ人間の見た目に狼の耳と尻尾が生えているだけのいわゆるケモ耳ってやつ。
狼族は縄張り意識が強いから、人里離れた山奥で村を作りひっそりと生活をしていた。狼の社会にはヒエラルキー、つまり力関係があるんだ。
力の強い者、賢い者が弱者を支配する。どんな理不尽を強いられていても逆らうことは許されない。
俺の村では見た目がよくカリスマ性がありリーダーシップがある狼が権力を持っていた。
それが俺の幼なじみのリアーだ。彼は村長の息子で襟足の長い黒髪にツリ目、三白眼で高身長の男。口は悪いが、頭がよく格好いいから村中の人気者だった。
それに対して俺は小柄で力も弱く頭も悪い。見た目も至って平凡だった。昔から彼と比べられていたせいか、出来損ないだといじめの対象になっていた。
そして数日前、幼なじみは皆の前で俺に向かってこういった。
「こいつ俺の番候補だから」
番というのは恋人のこと。つまり婚約者を指す。正直信じられなかった。だって彼はいつも俺のことを虐めてくる。パシリにしたり乱暴なことをしたりバカにしたり…。
今回もなにかの嫌がらせだろう、そう思っていた。でも村の人気者に逆らうことはできない。だからただ黙っていた。すると周りの狼たちはケラケラ面白がって笑った。
「男のくせに番候補だってさ。ウルちゃん!」
「小せぇしお前本当はメスなんじゃねーの?」
「今日からこいつ虐めていいのは俺だけだからな」
リアーはそう言って高らかに笑った。
俺は後ろ手にギュッと拳を握りしめた。
「おいウル」
うわっ。でた…。できれば出会いたくない人ナンバーワンの男。
ある朝、乱暴な幼なじみは、畑にまく水を汲もうと川へ向かう途中の俺を引き止めた。
番候補と言われてから村の連中は俺に暴力を振るうことはなくなった。それは良かったんだけど、でもいつもどおりリアーには何かと嫌がらせをされていた。食事をつくらされたり、雑用押し付けられたり罵られたり…叩かれたり。
普段からできるだけ彼には出会わないようにあたりを警戒しながら歩いているが、今日は家の前のベンチにやつは居座っていた。
リアーは長い脚を組みベンチにもたれかかっている。その横には村一番の美女が座っていた。この二人は昔からお似合いだと言われていて仲が良い。
リアーの番候補も彼女で決まりだと噂されていたのになぜか俺が選ばれた。だから彼女には敵対心を抱かれている。ただ嫌がらせのためだけに番候補にさせられたのに…。
今だって、俺がいるのを分かっててリアーの腕にべったりしがみついてるし…。美女はそのまま唇を近づけ、見せつけるようにキスをした。幼なじみも当然それを受け入れる。
俺は、婚約者とその浮気相手がちゅくちゅくと舌まで使った濃厚なキスをしているのを見せつけられている。これどんな状況だよ。
多分リアーの本命は彼女なんだろう。
気まずい…。でもここを通らなくては水くみにはいけない。仕方なく視線を地面に落としながら早足でその前を通り過ぎようとした。
やっぱり幼なじみは苦手だ。虐めてくるし怖い。今だって婚約者(仮)の前で堂々と浮気をすることで俺に恥をかかせようとしている。
「お前なんか言うことないのかよ」
すると彼は怖い顔をしながらこちらを睨みつけてきた。
言うことってなんだろう…。昼間からお盛んですね、これでいいのかな。心では思っても口では絶対に言えない。
「ご、ごめんなさい…」
とりあえず謝っておくことにした。
おどおどと謝罪の言葉を述べると彼は余計不機嫌になる。
はぁ。と大きくため息をつくと、よく通る声でこういった。
「こいつと番になってもやっぱつまんねーわ。まじでムカつく」
すると隣の美女がくすくす笑った。
「ならあんなのやめて私にしてよぉ。私ならリアーを楽しませてあげられるよ?」
彼は俺を一瞥すると彼女の腰に腕を回した。そして
「それも悪くないな」
と笑った。
もしかしてこれはチャンスなのでは?リアーの気まぐれでされた番宣言。この遊びに飽きたならはやく美女に乗り換えてもらいたい。
番という名のパシリに嫌気が差してきたところだ。
「じゃっじゃあ…番は解消ってことで!」
俺は内心飛び跳ねていた。やった解放される!
そう思ったのに、それが癇に障ったのか、
「あ?」
と険しい顔をし彼は立ち上がった。ものすごく怒っている…。
「ひっ」
「ふざけんな!」
ハスは俺の胸ぐらを掴んだ。
なんでっ…。そっちがやめたいって言ったのに…っ。
「何勝手に決めてんだよ!逃げようとしてんじゃねーよ」
そう言って後ろに突き飛ばされた。
痛てっ。俺は尻餅をついて彼を見上げる。
リアーは冷たい目で俺を睨んでいた。
彼はきっと俺のことを舐めてるんだ。体格差あるし頭も回らないから何もできないだろうって。
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