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3 愛は消耗品
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恋人なんて初めは皆優しいよ?だって相手のことが好きなんだから優しくするに決まってるじゃん。
自分の嫌なところはできるだけ見せないようにして相手に嫌われないように努める。
でもその意識は段々薄れていくものだ。
もしかしたら愛は消耗品なのかもしれない。
俺が最愛の主人に違和感を持ったのは、家に来てから一ヶ月ぐらい経ったある日のことだった。
その日俺は掃除のために彼の書斎に勝手に入ってしまったんだ。
「書斎の本の位置が変わっていた」
夕食のとき、彼は苛立たし気にこちらに歩み寄ると低い声でそういった。
"書斎には入ってはいけない"昔していた約束をすっかり忘れていたから彼が何に怒っているのかわからなかった。
「はい、掃除しておきまし…っ」
その瞬間、グレイさんは分厚い本で俺を思い切りひっぱたいた。
「っ…」
予想外の衝撃に驚いて、地面にそのまま倒れ込む。肩を強く打ち付けた。
初めて彼から振るわれた暴力に俺は唖然とした。
「なぜ勝手に入る?書斎は、勝手に、入るなといっただろう?!」
「ご、ごめんなさ…ぃ」
グレイさんは地面に倒れ込んだ俺の上に跨ると、本の角で頭を背中を何度も殴った。
俺はびっくりしてただうずくまることしか出来なかった。
彼がこんなに感情を露わにして怒るのは初めてだったから。
「はぁはぁ,はぁお前が悪いんだ。僕を怒らせないでくれ」
どれぐらい時間が経っただろうか。ようやく落ち着きを取り戻した彼は声を震わせそういった。
「ごめんなさいごめんなさい…」
優しい彼を怒らせてしまった。俺が悪いんだ。その時は罪悪感でいっぱいだった。もうどうしていいのかわからなくて頭が真っ白になった。俺は本当にだめだめだ…。
それ以降、エルビス・グレイはよく俺に暴力をふるうようになった。ご飯が口に合わなかったとき、掃除が行き届いていなかったとき、お皿を割ったとき。
前はそんなことなかったのに…。
「使えねぇなら殺してやるからな!」
「誰のおかげで生きていられると思ってんだ!」
殴られること自体には慣れていた。でも、孤児院の先生に叩かれたときよりも、奴隷商にムチで打たれたときよりも、グレイさんに殴られることのほうがとても痛かった。
それに伴って、グレイさんが俺を抱く頻度も減少していった。
優しかったのは初めだけだった。それでもどうしても過去の幸せに縋ってしまう。
きっと俺がいけないんだ。彼はとても優しいのに俺が使えないから、俺に魅力がないから…。
買い物以外で家を出ることは禁止されていたから、ただ毎日家の掃除をして、雑用をして、ご飯を作って彼の帰りを待っていた。
そうしているうちに、だんだん彼は家にも帰らなくなった。仕事だからと朝まで家を空けることが多くなった。
でも本当は多分…他に愛人でもいるのだろう。それを俺は知っていた。
「さぁ、そろそろ帰るか」
時刻は現在夜の二時。朝には主人のグレイさんが帰ってくるからそれまでに家に戻らないと。
俺はベッドから起き上がると手早く服を着た。
隣では美しい男が規則正しい寝息を立てている。ヴィルという名前が本名なのかはわからない。
グレイさんとの生活に耐えられなくなった俺は夜の間だけ家を出た。彼はここ最近朝まで飲み歩いているからバレることはないだろう。
ヴィルというイケメンのおかげで少しだけ辛い毎日を忘れることができた。いい現実逃避をすることができた。
「ありがとな」
もう会うことはないだろうけど、俺はそのどこの誰かもわからないイケメンにお礼を言って部屋を出た。
自分の嫌なところはできるだけ見せないようにして相手に嫌われないように努める。
でもその意識は段々薄れていくものだ。
もしかしたら愛は消耗品なのかもしれない。
俺が最愛の主人に違和感を持ったのは、家に来てから一ヶ月ぐらい経ったある日のことだった。
その日俺は掃除のために彼の書斎に勝手に入ってしまったんだ。
「書斎の本の位置が変わっていた」
夕食のとき、彼は苛立たし気にこちらに歩み寄ると低い声でそういった。
"書斎には入ってはいけない"昔していた約束をすっかり忘れていたから彼が何に怒っているのかわからなかった。
「はい、掃除しておきまし…っ」
その瞬間、グレイさんは分厚い本で俺を思い切りひっぱたいた。
「っ…」
予想外の衝撃に驚いて、地面にそのまま倒れ込む。肩を強く打ち付けた。
初めて彼から振るわれた暴力に俺は唖然とした。
「なぜ勝手に入る?書斎は、勝手に、入るなといっただろう?!」
「ご、ごめんなさ…ぃ」
グレイさんは地面に倒れ込んだ俺の上に跨ると、本の角で頭を背中を何度も殴った。
俺はびっくりしてただうずくまることしか出来なかった。
彼がこんなに感情を露わにして怒るのは初めてだったから。
「はぁはぁ,はぁお前が悪いんだ。僕を怒らせないでくれ」
どれぐらい時間が経っただろうか。ようやく落ち着きを取り戻した彼は声を震わせそういった。
「ごめんなさいごめんなさい…」
優しい彼を怒らせてしまった。俺が悪いんだ。その時は罪悪感でいっぱいだった。もうどうしていいのかわからなくて頭が真っ白になった。俺は本当にだめだめだ…。
それ以降、エルビス・グレイはよく俺に暴力をふるうようになった。ご飯が口に合わなかったとき、掃除が行き届いていなかったとき、お皿を割ったとき。
前はそんなことなかったのに…。
「使えねぇなら殺してやるからな!」
「誰のおかげで生きていられると思ってんだ!」
殴られること自体には慣れていた。でも、孤児院の先生に叩かれたときよりも、奴隷商にムチで打たれたときよりも、グレイさんに殴られることのほうがとても痛かった。
それに伴って、グレイさんが俺を抱く頻度も減少していった。
優しかったのは初めだけだった。それでもどうしても過去の幸せに縋ってしまう。
きっと俺がいけないんだ。彼はとても優しいのに俺が使えないから、俺に魅力がないから…。
買い物以外で家を出ることは禁止されていたから、ただ毎日家の掃除をして、雑用をして、ご飯を作って彼の帰りを待っていた。
そうしているうちに、だんだん彼は家にも帰らなくなった。仕事だからと朝まで家を空けることが多くなった。
でも本当は多分…他に愛人でもいるのだろう。それを俺は知っていた。
「さぁ、そろそろ帰るか」
時刻は現在夜の二時。朝には主人のグレイさんが帰ってくるからそれまでに家に戻らないと。
俺はベッドから起き上がると手早く服を着た。
隣では美しい男が規則正しい寝息を立てている。ヴィルという名前が本名なのかはわからない。
グレイさんとの生活に耐えられなくなった俺は夜の間だけ家を出た。彼はここ最近朝まで飲み歩いているからバレることはないだろう。
ヴィルというイケメンのおかげで少しだけ辛い毎日を忘れることができた。いい現実逃避をすることができた。
「ありがとな」
もう会うことはないだろうけど、俺はそのどこの誰かもわからないイケメンにお礼を言って部屋を出た。
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