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第三章 兄妹
第17話 小さな妹と大きな兄
しおりを挟むどうやら俺にアイスをたかったこの娘は境遇も奈緒に似ているようだ。
そう思うとなんだか放っておけない。
「そっか……じゃあ何で君はここにいるのかな?」
「いえで!」
「駄目だよそんな事しちゃあ」
「フン!してもいいもん!お父さんもお兄ちゃんも
わたしのことどうでも良いと思ってるから!」
(兄までいるのか。
とことん寄せてくるな)
「どうでも良いって事無いと思うよ、家族なんだから」
「でも、お母さんが死んじゃってからぜんぜんお家にかえってこないし
あそんでくれないもん!」
そういった途端に、堰を切ったように女の子の文句が溢れ出てきた。
小さい子特有のめちゃくちゃな言葉使いのせいで分かりづらかったが、
女の子の家は父と母の共働きで家計を支えていた。
しかし母が死んでから稼ぎが減り、父は仕事の時間を増やし、兄も店番のバイトなど子供でも出来る仕事を始めたせいで、女の子は一人の時間が増えたらしい。
帰って来ても、父は料理や家事など一通りの仕事を終えてから
泥のように眠ってしまうらしくほとんど口を聞けて無いようだ。
(……この娘の話を聞いてると、
ちゃんと愛されてるけどそれが伝わってないって感じだな)
「……落ち着いた?」
「うん……」
一通り話し終わると、女の子は疲れてしまったのか俯いている。
流石にほっとけ無い。
「……じゃあ、お父さんが何処で働いてるか分かる?」
「わかる、まちやくばではたらいてる……」
「じゃあ、お父さんに君の事預けにいくよ。ほら、立って」
「いやだ!あいたくない!」
まぁ、そう言うだろうとは思った。なら、こう言い変えよう。
「……そうだね、じゃあ君のお父さんに文句言いに行こっか」
「文句?」
「色々あるんでしょ?遊んでくれなくて寂しいとかさ、
そう思うなら言ってやらなきゃ」
「うーん……わかった、文句いいにいく」
女の子は案外すぐ納得し、立ち上がった。
町役場の場所を知っているのかは分からないが、スタスタと歩いて行く。
俺は置いてかないよう横に並んで歩きだす。
「ちょっと待ってよ、町役場の場所知ってるの?案内しようか?」
「知ってるもん!一人で行ける!」
あらあら、一人で何でもやりたがる年頃のようだ。
「分かった、分かった。じゃあ、お兄ちゃんに案内して?
俺は君について行くから」
「ふふん、任せて!」
まあ、間違ってそうなら俺が訂正すれば良い話だ。
歩調を女の子に合わせて、ゆっくりと街を歩く。
「……しかし、何でまた家出なんかしたの?家にいるの嫌い?」
「…………家はさびしいけどきらいじゃない。しんぱいさせたらお父さんもお兄ちゃんも私のことだいじにしてくれるんじゃないかと思ったの」
「ふーん、昔に心配させた事あったの?」
「うん、むかし、お母さんもいたときにわたしがねつをだしたの。
そのときは、すっごくしんぱいされて家ぞくみんなでかんびょうしてくれたの。
だから、こんどもしんぱいさせたらかまってくれると思って……」
「ふっ、良い家族じゃん。君のお父さんならきっと、君の文句聞いてくれるよ」
「……うん、だから早くあいにいく」
俺の家もこれくらい平和だったら良かったのに。
そう思いながら、この娘を早く届けてやろうと決意した。
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