恋愛ゲームのモブに転生した俺が悪役令嬢に転生した妹の闇堕ちフラグを叩き折る。

芽春

文字の大きさ
20 / 55
第三章 兄妹

第18話 小さな兄と大きな妹

しおりを挟む
ノーティスが女の子を市役所に送り届けようとしていた時、ほとんど同時刻に
孤独に耐えかねたセイラ・リドゥーも気晴らしに街に来ていた。

彼女が居るのは寂れた裏通り。
盗品買取店や風俗店などが並んでいるここは、
清廉潔白な学生には縁の無い場所だ。

(はぁ……知り合いに会いたくないから裏通りに来てみたけど……
寂れてるだけで何も面白くないな)

目に入るのはゴミゴミしたつまらない景色ばかり。
そうしていると、自然と兄からの手紙と自分が書いた返事を思い出してしまい
気分が悪くなる。

「なにか良い気晴らし無いかなぁ……」

特に目的も無く、さまよっていると突然前方から怒号が聞こえた。

「おいおい!お前どうしてくれるんだよ!
こいつの骨折れちまってるぜぇ~!?」

「いや、あの、本当にごめんなさい!今すっごく急いでて……」

「あぁ~!痛ぇよぉ~!早く医者に見せてくれ~!」

何事かと思って前を見ると、
男二人が標的を囲んでくだらないカツアゲをしている所だった。
被害者は十二歳くらいだろうか、可哀想な事に怯えきっている。

(……人助けの趣味は無いけど)

声がデカいだけの馬鹿が得をするというのは胸糞悪い。

「そこのお二方?子供相手に恐喝とは感心しませんね……」

「あ゛あ゛ん゛?なんだい?お嬢ちゃん。正義の味方気取りかい?」

「……私に正義なんて無い」

「だったらすっこんでろや!!!」

逆上した男が殴りかかってくる。
だが、所詮はチンピラ。虫が止まりそうな程動きが遅い。

パシン!
「なにっ!?」

開いた鉄扇によって、男の拳はいとも簡単に止められる。

「クソがっ……!」

男は拳で押しきろうとするが、鉄扇を持ったセイラの腕は
壁を押してると勘違いしてしまう程ビクともしない。

「その程度?」

セイラがそう呟くと、鉄扇越しに下方向の力が加えられ男の腕が下がっていく。
男は何が起きてるか分からないと言った様子だ。

「ば、馬鹿な……こんなヒョロい女に……」
「今度からは人を見た目で判断しない事」
ベチッ!

腕を下げられ無防備になった男の目に、
閃光のように早い鉄扇の打撃がヒットする。

「グアアア!目がああ!」

目潰しを食らった男は叫びながら崩れ落ち、
死にかけの虫のようにのたうち回る。

「て、てめえ!調子に乗るんじゃ……!」

すると今度は肩の骨が折れたはずのもう一人のチンピラが襲い来る。
しかし、セイラにとっては相手をするまでも無いようだ。

「……貴方、骨が折れていたんじゃ無かったっけ?」

男の首元に突きつけられた鉄扇が、刃の様にキラリと光る。

「ひえええええ!ごめんなさいー!」

男は戦意喪失し、逃げていく。
同時に目潰しを食らった方もヨタヨタと歩いて去っていった。

「あ、あの……ありがとうございます」

「礼を言われるまでも無いよ、あんな奴ら。
……というか、君急いでたんじゃなかったの?」

「あ!そうだ!お姉さん茶色おさげの女の子見かけませんでしたか?」

「……?いや、見かけて無いよ」

「そうですか……」

男の子は見るからにガッカリとした様子を見せて、肩を落とす。

「僕の妹なんですけど……朝に家を飛び出したっきり戻って無いみたいで」

「妹……」

……まだお父さんが生きてた頃、私も普通の子供らしく店ではしゃいで迷子になった事もあったな。そういえば、その時お兄ちゃんが探してくれたんだっけ。

なんだか、この子の事を他人事だとは思えない。

「一緒に探してあげようか?」

「え?良いんですか?」

「良いよ、今は暇だし」

なんだか、柄でも無い事を言ってしまった。
でも悪い気分じゃ無いのは何故だろう。

「ありがとうございます!とりあえずこの裏通りから出ません……?」

「まぁ、そうだね」

さっきのチンピラのような連中がまた来ても面倒なので、少年の言葉に従って
裏通りの出口に進む。
クラスの誰かに出会うかもしれないという不安はもう無かった。

「ところでさぁ……さっきみたいに怖い目に合うかもしれないのに
妹を探すのやめないんだね」

「……また怖い目に合うのは嫌ですけど、妹が帰って来ないのはもっと怖いです」

「そんなに大事なの?」

「そりゃあそうですよ、あいつが生まれた時から知ってるんです。
心配で心配で仕方ないですよ」

「それは君がお兄ちゃんだから?」

「……たぶんそうですね。
僕にとってあいつはたった一人の兄妹で、片割れみたいな存在なんです」

(…………兄妹って皆そういうものなのかな?)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...