恋愛ゲームのモブに転生した俺が悪役令嬢に転生した妹の闇堕ちフラグを叩き折る。

芽春

文字の大きさ
48 / 55
最終章 廻る因果の果てに

第46話 たった一人

しおりを挟む
…………これは……なんだろう……夢?

俺の目の前には病院のベッドに横たわる母親と寄り添うように椅子に座る
幼い自分がいた。まるで思い出を俯瞰して見ているような不思議な光景だ。

「ねぇ。不諦、よく聞いてね?」
「何?」

これが夢だからか、俺の口は動かない。
代わりに幼い自分が母さんの問いかけに答えた。

「もし……もしも私が居なくなったら妹の事をお願いできる?」
「…………うん。分かった」
「あと、良かったらお父さんの方もお願い。……あの人ちょっと頼りないから」
「大丈夫、僕が頑張るから……だから、早く良くなってね?」

……これが最後の会話だった。
この数日後、僕が寝ている真夜中に容態が急変したらしい。

(ごめんねお母さん……お父さんはもうそっちに行っちゃったよ。
守れなかった)

そう思っていると、瞬きする間に景色が変わった。
今度は病室どころか何も見えない暗闇が広がっている。

「暗い……」
「不諦」
「……あ、お父さん」

後ろから懐かしい声が響いて振り向くと、そこにはかつてと変わらない姿の父親ガチャ立っていた。不思議な事に暗闇の中でもハッキリと認識出来た。
おまけに、声が出せるようになっている。

「ごめんな……守るのは僕の役割だったのに。ごめんな……」

「……」

……よく出来た夢だ。

「お前もいい加減疲れただろ?お父さんとゆっくり休もう……」
「俺には……やるべき事が残ってる」

この夢は、良くある死んだ両親に激励される綺麗なものじゃない。
ただ、俺の心に有る弱さが両親の形を取ってるだけだ。

「父さんも母さんも、もうこの世にはいない。
でも、二人共最期の最後まで俺らを案じてた。
奈緒の事を言わずに、俺を立ち止まらせようとする
お前は偽物だ! 消えてくれ!」

「……」

俺が叫ぶと、幻覚は塵が飛ぶように消えていく。

「母さんとの約束を二度も破れない……
父さんの教えと愛情を忘れる訳にはいかない……」

次第に視界は光に包まれていき……



「知らない天井だ……」

目を開けると、白い天井が視界に入った。

「……! 起きた!?先生!先生ー!」

俺が目を開けたのに反応して、看護服を着た女性が叫びながら
ドタドタと部屋の外に駆けていった。

「……ここは?……!痛てて……」

身体を見ると、清潔な入院着に着替えされている。
所々痛むが、どこも折れたり、重い火傷を負ったりはしていないようだ。

「おー……君、大丈夫かい?」
「……どうやら」

身体の確認をしていると、部屋に人が入ってきて、俺に声を掛ける。
たぶん彼は医者だろう。

「えーっと……爆発で全身と頭を打ったようだけど、
幸いにも打ち所は良く、早めに救助されたからほとんど煙も吸わなかった。
……いやー、あの状況でこれは奇跡だよ」

「救助?」

「ああ、どうやらライトって子と、マロンって子が君を炎の中から引っ張り出してきたみたいでね。お礼を言っとくんだよ?」

(……あの二人に助けられたのか)

「なるほど。……! あれからどれくらい経ってるんだ!?」

「二日は経ってるけど……」

「……そんなに! 今すぐやらなきゃいけない事があるんで退院させてもらう! 」

「え!?いや、それは医者として許せないんだけど……」

「あの爆発で一人行方不明がいるよな?」

「なんでそれ?確かにセイラっていう子が行方不明らしいけど……」

「やっぱり……」

俺が気絶する直前に見た光景は真実だった訳だ。
だったら寝ている暇は無い。

「まぁ……何らかの事情があるんだろうけどさ、少し落ち着きなって……
取り敢えずこの君宛ての手紙でも読みなよ」

「手紙?」

俺は手渡された小さな赤い封筒を切って、中身を取り出す。

(ノーティスに告ぐ。目を覚ましたなら、夜12時に学園の生徒会室に来い。
お前の大切な人間と一緒に待ってる)

怪しい手紙だが、何も分からない今この指示を無視するのは良くない。
文章から察するに、奈緒は人質に取られているのだろうし。

「……今すぐ退院するのは辞めます」
「そうしてくれると助かるよ」

今夜十二時に、本当に最後の戦いが始まる事になりそうだ……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...