彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

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第5話 家庭教師のアルバイト

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 終業のチャイムが鳴ると帰りのHRが始まる。

 我が担任の紫藤先生は、その性格からほとんど連絡事項を言わず、「ほんじゃ終わり」と数秒顔を出して終わってくれる。

 なので、放課後はどのクラスよりも1番乗りで、逃げるように学校を出ることができる。

 昔の仲間とばったり会ったりしないのは本当に助かる。

 速攻で学校を出ると、通学路の河川敷を早歩きで歩く。

 家とは違うところの階段を降りると、住宅街が広がる。

 昔ながらの瓦の家や、リフォームした新しい家など、様々な家が並ぶ中、可愛らしい洋風の家のチャイムを押した。

 モニター付きのチャイムから反応はないが、代わりに玄関の扉が開かれる。

 ひょこっと顔を出したツインテールの女の子と目が合うと、にこっと天使の笑みを見してくれる。ピョンと跳ねて俺の前に来てくれた。

「京太お兄ちゃん。いらっしゃい」
「やぁ。優美ゆうみちゃん」

 名前を呼ぶと、嬉しそうに俺の手を引いて家の中へと誘う。

「ゆうみ、京太お兄ちゃんのこと待ってたよ。お母さんがお菓子買って来てくれてるから、一緒に食べよ」
「勉強終わってからな」
「ええ。先に食べようよー」
「だめだめ。ちゃんと勉強してからじゃないと」
「ぶぅ」

 拗ねた表情を見せた後にしぶしぶと、「はぁい」と返事をしてくれる。

「良い子だ」

 優美ちゃんの頭を撫でてあげると、「えへへ」と天使の笑顔を見せてくれる。

 今日は優美ちゃんの家庭教師の日である。

 4月から彼女に勉強を教えているのだが、俺は正式な会社がしている家庭教師というわけではない。

 親の知り合いの子供、それが優美ちゃんだ。
 
 優美ちゃんの親は、俺の親の恩人らしく、どうしてもというので家庭教師を引き受けた。

 一応賃金も出るみたいだし、バイト感覚で始めた家庭教師。

 優美ちゃんの親は良い人だし、優美ちゃんは天使のように可愛いので、良い職場だと思う。

 優美ちゃんは今年の春から4年生になるのだが、優美ちゃんの姉があまり勉強ができない人らしい。
 高校受験で苦戦したのをきっかけに、姉と同じ轍は踏まないという思いで、今のうちから家庭教師を付けることにしたとか。

 ただ、家庭教師を付けるにも、本物の家庭教師はお金が高いし、優美ちゃんも嫌がるということで、俺みたいな、ガチガチではない人を探していたみたいだ。

 実際、家庭教師と名乗っているが、宿題とか気になるところを聞いたりしたら、後は遊んだりしても良いみたいで、やることをやれば遊んだりしている。

 優美ちゃんも学校の友達と遊んだりしたいみたいなので、不定期での家庭教師となった。

 今の俺がまともにいられるのも、優美ちゃんのおかげなのかもしれないな。







「──できたぁ」

 優美ちゃんの家のリビング。ダイニングテーブルで勉強を見ていると、どうやら宿題が終わったみたいで、ペンを転がした。

「はい。京太お兄ちゃん。みてみてー」
「どれどれー?」

 渡されたノートを見て、チェックをする。

「それ終わったらゲームしよー。イカトゥーンしたい」
「全問正解ならね」
「大丈夫。ゆうみ、自信しかないよ」
「本当かな?」

 自信満々に言ってのける彼女のノートをザッと見渡すと、うん、全問正解みたいだ。

「おおー。全問正解」
「やったー♪ それじゃ京太お兄ちゃん。はやくお菓子食べながらゲームしよーよー」
「おっけー」

 最初の方は、本当にゲームしていて良いのだろかと、優美ちゃんのお母さんに相談したのだが。

『色々な人と接したり、勉強したり、遊んだりするのに意味があるのですよ』

 なんて論してくれた。なので遊ぶことも仕事のうちということを言ってくれたのだが、そのあとのどこか複雑そうな顔が印象的であった。

『優美の姉の方がね……。ほら、知ってると思うけど……。色々残念だから』

 なんて言っていたな。壮大なため息と共に。

 俺が優美ちゃんのお姉さんと会ったことがあるみたいな言い方だったが、会ったことはない。と、言える雰囲気ではなかった。

 とりあえず、よくわからないが、優美ちゃんのお姉さんは残念な人みたいだな。

『ただいまぁ』

 玄関の方で小さく声が聞こえてくる。

 ゲームの準備をしていた優美ちゃんが反応してみせた。

「あれ? お姉ちゃんだ」
「お姉さん帰って来たんだ」
「珍しい。この時間に帰って来るなんて」
「ふぅん。部活で忙しい人なの?」
「ううん。なんか、『リアじゅーは忙しい』って言ってた」
「へ、へぇ……。あはは」

 自分で言うタイプなんだな。しかも妹に自慢するタイプ。優美ちゃんのお母さんが残念と言っていたのが少しわかるかも。

 しかしだ。いくら残念といえど、初対面の人と会うのは緊張する。

 しかも、相手からすれば勝手に家に上がっているわけだし。

 まぁ、優美ちゃんのお姉さんだから、優しいお姉さんだとは思うけど。

 少し、心臓を加速させていると、ガチャリとリビングのドアが開いた。

「今、帰りました。優美。聞いてください。今日、わたしは陽キャうぇーい族の長を従え、新たなるリアじゅー道に足を……」

 時が止まった。

 優美ちゃんのお姉さんと目が合って時が止まったのだ。

 いや、優美ちゃんのお姉さんとかじゃない。

 東堂優乃を見てだ。

「はわっ!? ど、どどど、どうして枚方くんが!?」

 あわあわとして動揺する東堂を見て、とりあえず俺は彼女に言った。

「俺の緊張返してくれない?」
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