彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

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第14話 改めての決意

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 誠実な連れがかわりに謝って、当の本人からの謝罪はなし。

 気分を害したことにかわりはないので、切り替えるためにテイクアウトでキャラメルフラッペをお互いに買って、家に帰ることになった。

 なんだよあの男性アイドル風のくそやろう。俺の邪魔ばっかしやがって。今度会ったら、ギッタンギッタンのメッタメッタにしてやる。

 なんて思ったら、キャラメルフラッペを飲んで気分を落ち着かせる。うん。ギッタンギタンの、メッタメッタはだめ。

 しかし、やっぱスタバは最高だな。気分が良くなる。

 そんな気分で先程の出来事や、学校での出来事を考えると凹む。

 それの繰り返しをしながら、これからの先のことを考えた。

 考え込んで東堂の家までの道を歩いていたので、彼女との会話はなかった。

 東堂のキャラメルフラッペは減ってなかった。どうやら一口も飲んでいない。沈んだ様子で、ボーっと歩いている感じだった。

 そんな東堂と。ふと目が合ってしまう。

 彼女は、あわあわとしながら、「えとえと」と焦った声を漏らしていた。

「きょ、きょきょ」
 
 やはり沈黙は苦手な人種らしい。

「今日はすみません」
「ん?」

 どうして彼女が謝っているのか理解ができずに首を傾げてしまう。

「なんで東堂が謝ってるの?」
「そ、それは、だ、だって、わ、わたしが、カフェに行きたいって言ったので……。それで……あの……」

 彼女は少し涙目になっているので、本当に自分が悪いと思っているのだろう。

 彼女は1ミリも悪くないので、その誤解を解いてやらないといけないな。

「ありがとう」
「へ……」

 目を丸めて予想外の言葉を聞いたと言わんとする表情を無視して続ける。

「東堂が止めてくれなかったら俺はそのまま殴ってたかも。俺も範○刃牙までは見てるからさ。エア味噌汁発動してたかも」

 冗談を混ぜながら彼女へ微笑む。

 しかし東堂は、「あわあわ」と擬音を口で言い放っているので、まだ誤解を解けていない様子。

「てかさ」

 では、話題を変えてみよう。

「お前。俺のこと名前で呼んだだろう」
「うぐっ!」

 予想以上にダメージを受けた声を出していた。こちらもそんなにダメージを受けるようなことを言ったつもりはなく、軽くいじろうとしただけなんだが……。とりあえず続けるか。

「え? なに? もしかしてずっと名前で呼びたかった? 中学の頃からとか?」
 
 素直な、ありがとうで誤解が解けないなら、少し煽ってから誤解を解くとする。

「な、なま、え!? よ、よよ、よよ……」

 ちっとも予想だにしない反応。

「よ、よよ、YO! チェケ! ラッチョ!」

 あ、だめだ。バグった。

「ズンズンチャ! ズンズンチャ! 週末ホムパで、水曜リムジン。どんぺり、どんぺり、ペペロンチーノ!」

 これはちゃんと言ってやらないと伝わらないな。

「なぁ優乃」

 少し緊張したが、バグった歌を歌っている彼女の名前を呼んでみると、ポーズボタンを押したかのようにフリーズした。
 
 数秒後、壊れたロボットみたいに、ギギギと首だけをこちらに向けてくる。

「今……わた、しの、ことなんて呼び、ました?」
「優乃」
「ひゅん!」

 儚い感じで自分の胸をおさえる彼女のお手製の擬音はちょっと間違っていた。

「そもそもさ。同じ中学出身で、俺の唯一の味方で、同じ志を持った人なんだから、いつまでも名字呼びってのも他人行儀な気がしてさ。それとも、嫌だった?」
「ブンブンブンブンブンブン!」
「酔う酔う酔う。そんなに首を横に振ったら酔うだろ」

 めちゃくちゃ首を横に振っている彼女を止めてから話しを続ける。

「さっきさ、あんなことがあって改めて思ったよ」

 少し脱線してしまった会話を元に戻し、真剣に言ってのける。

「学校内でも、学校外でも、騒いでいても、大人しくしててもさ……。好き放題言われるなら振り切ろうと思ってさ」
「振り切る……。ですか?」
「ああ」

 帰り道に考えていたことを優乃に喋る。

「さっき、優乃が提案してくれただろう? 中間テストで上位に入ったら良いんじゃないかって。その時は、妬みを買うかもしれないって思って乗り気じゃなかったんだけどさ。あのくそやろうに絡まれて実感したよ。なにもしなくても絡まれるって。ならさ、徹底的に振り切って、世の中の奴全員にマウント取るくらいの気持ちでやってやった方が気持ちが良いんじゃないかって思ってさ。もちろん、中間テストだけじゃない。他のことも誰よりも優れた人間になって世の中にマウント取ってやる」
「良いと思います」

 こちらの提案に、彼女は静かに頷いてくれる。

「も、もちろん、本当にマウントを取るのは良くはないと思いますが、あ、あなたは実際にそんなことをする人ではありません。だからこそ、その位の気持ちでいて良いと思います」

 優乃は必死に言葉を選んで肯定してくれる。

「わたしも応援しています」
「何言ってんだ。お前はお前で高校デビューするんだろうが。俺の応援する前に、自分の応援しないといけないだろ」
「あ、そ、それもそうですね」
「そうと決まれば、次の中間でぶっちぎりで1位取らないとな。俺と優乃で1、2フィニッシュ決めてやろうぜ」
「よ、よよ、余裕です」

 余裕ではなさそうな返答だった。

 なんだかやる気がみなぎってきたところで、俺達は優乃の家の前に到着となる。

「ほんじゃ。今日はありがとうな」

 家の前に到着したので、バイバイをして帰ろうとすると、優乃は俺の空になったキャラメルフラッペの容器をジッと見つめていた。

「ん? どうかしたのか?」
「あ、ああ、い、いえいえい。な、なんでもないです……」

 そうして、自分の空になった容器を見ると、顔を赤らめていた。

「んー? 大丈夫か?」
「だ、だだ、大丈夫っす。うす」

 こいつってキャラが定まってないよな。

「そ。んじゃな。優乃」
「は、はい。また明日です。京太くん」
 
 別れ際に名前を呼ばれて、ドキッとしてしまった。

 さっき名前を呼ばれた時はアドレナリンがでまくっていたので、そんな気持ちになる余裕はなかったが、今のはちょっとやばいな。

 性格を知っているとはいえ、見た目はかなりの美少女。そんな彼女から改めて名前呼びされると、心臓が1段階跳ねる。

 こりゃだめだ。あやうく惚れてしまいそうになる。

 ドキドキとしながら、彼女との絡みを思い返す。

 あー。うん。ちょっとマシになったか。

 心臓の高鳴りも収まった帰り道。彼女の視線があった空の容器を見てみる。

 ドキンと、再度心臓が跳ねてしまう。

その容器にはスタバの店員さんが書いてくれたのであろう、『素敵なカップルですね♪』なんて文字が書かれていたのに気が付いて、俺はドキドキを加速させながら家へと帰って行った。
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