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第15話 姉の想いと妹の想いの違い(東堂優乃視点)
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「あ……」
「どうしたの? お姉ちゃん」
お風呂で、艶やかな髪と、スタイル抜群の身体を洗った後、つい漏らした声に私の──東堂優乃の妹の東堂優美が浴槽から、ひょっこり顔を出して尋ねてくる。
「いえ。今日は駅前まで行ったので、ついでにシャンプーとコンディショナーにヘアオイルでも見ておけば良かったと思いまして」
そんな時間はなかったとわかっていたが、なんとなくそんなことを呟いて、髪を束ねてお団子にして私も浴槽内に入る。
優美とわたしが入った浴槽内のお湯は、ザバーンとオーバーフロ―して洗い場の方へ流れて行った。
「ふぅ……」
一息ついて、目の前の髪を下ろした妹がこちらを見ているのに気が付いて首を捻る。
「どうかしましたか?」
「お姉ちゃんの髪って、とっても綺麗だよね」
妹が尊敬の眼差しで言ってくる。
「そりゃわたしは美少女ですからね。髪も綺麗で当然です」
唐突な妹の褒め言葉に気持ち良くなり、えっへんと大きな胸を張ってみせた。
「それに、お胸も大きくてスタイル抜群だし。お姉ちゃんって世界一綺麗だよね」
「でゅへへ。そ、そっふかね」
妹が身内贔屓なのかどうかわからないが、これ以上ないくらいに褒めてくれる。
「そうだよー。お姉ちゃん美少女だもん。わたしもお姉ちゃんみたいに綺麗な髪になれるかな?」
将来に少しの不安を抱きながら、優美は自分の髪をいじる。
その妹の髪をわたしは優しく手櫛をしてあげた。
「心配しなくても、優美の髪はわたしよりも綺麗ですよ」
「ほんと?」
「ええ。とても繊細で、きめ細かく、艶やかです」
本当に、妬いてしまうくらいに綺麗な髪。
わたしは量も多くて、ヘアケアーをしないとボサボサなのに、優美の髪は特に力を入れてケアしなくてもとても綺麗だ。
「ゆうみ、お姉ちゃんみたいに美人さんになれるかな?」
容姿の話に切り替わり、わたしは目を細めて断言してあげた。
「当然です。わたしの妹なのですから、きっとわたしよりも綺麗な美人さんになれるでしょう」
「やった♪ お姉ちゃんが言うなら間違いないよね」
優美は嬉しそうな顔をして喜びを表現する。
「美人さんになったら京太お兄ちゃんと結婚できるかな?」
「ぶっ!」
妹が男性の名を口にした途端、わたしは大きく吹き出してしまった。
「や、やや、優美は京太くんがす、好きなのですか?」
「うん♪ 大好きだよ♡」
即答された。
やばい。妹の目がまじの♡になっている。
「ど、どど、どういうところがですか?」
「えっとね……」
指を口元に持っていき、湯気が立ちこもる浴槽内の天井を見上げた。天井から雫が、ポタリと背中に当たる感触と共に優美が答えてくれる。
「優しくて、かっこよくて、頭良くて、ゲームが上手だからかな」
ふっ。所詮は子供。好きな動機がお子ちゃまです。それだけでは陽キャうぇーい族の長である京太くんは物にできないでしょう。
ん……。でも、京太くんが優美を見る目……。結構危なかったような……。もしや、ロリコン!? 京太くんはロリコン!?
「お姉ちゃんも京太お兄ちゃん好きなんだよね?」
「ぶべっ!」
「お姉ちゃん!?」
京太くんがロリコンかどうかの判定をしていると、妹からの爆弾発言でわたしは、ぶくぶくと沈んでしまった。
「な、なんで、そうなるのですか!?」
ザバっと浮き上がる。
「違うの?」
「や……。それは……。なんて言うか複雑な……」
「好きに複雑なんてあるの?」
妹の質問に、あります、と答えようとして動き出そうとした口を止めた。
わたしの京太くんへの気持ちは、二次元から飛び出して来た推しを見ているような感覚。
よくよく考えると優美の気持ちの方がよっぽどマシな気がする。
い、いやいや。それはそれ。これはこれ。人の気持ちなど人それぞれなのです。
「あ、ありますよ。お、大人の好きには色々とあるのです」
「ふぅん。確かに、ゆうみが京太お兄ちゃんに好きって言っても、あんまり手応えがない気がするもんね。そこら辺が大人の好きの複雑さを表しているんだね。勉強になる。流石、りあじゅーのお姉ちゃんだね」
「ぐっ」
この素直な思いに、素直に喜べないなんて、わたしは姉失格です……。しかし、妹にガッツリりあじゅーアピールしたのと、京太くんにも助け舟を出していただいた手前、今更陰キャぼっちと言うのは妹に深い傷を負わすことになる。あと、普通にわたしの精神的ダメージがもたない。
「でもでも、お姉ちゃん。複雑な好きって言っても、お姉ちゃんは京太お兄ちゃんが好きなんだよね?」
「ど、どうしてそう思うのですか?」
「だって、京太お兄ちゃんのこと、『枚方くん』じゃなくて『京太くん』って名前で呼んでるもん」
妹に言われた瞬間に、なぜかわたしの脳裏には、『優乃』と呼んでくれる京太くんの声が聞こえた。
そして、今日の別れ際にわたしが京太くんと呼んだら少し顔を赤らめていた気がする。
「でゅ。でゅへふ。ぢゅるる」
「お姉ちゃんって、世界一の美人さんだけど、笑い方は世界一汚いよね」
「がーん」
「どうしたの? お姉ちゃん」
お風呂で、艶やかな髪と、スタイル抜群の身体を洗った後、つい漏らした声に私の──東堂優乃の妹の東堂優美が浴槽から、ひょっこり顔を出して尋ねてくる。
「いえ。今日は駅前まで行ったので、ついでにシャンプーとコンディショナーにヘアオイルでも見ておけば良かったと思いまして」
そんな時間はなかったとわかっていたが、なんとなくそんなことを呟いて、髪を束ねてお団子にして私も浴槽内に入る。
優美とわたしが入った浴槽内のお湯は、ザバーンとオーバーフロ―して洗い場の方へ流れて行った。
「ふぅ……」
一息ついて、目の前の髪を下ろした妹がこちらを見ているのに気が付いて首を捻る。
「どうかしましたか?」
「お姉ちゃんの髪って、とっても綺麗だよね」
妹が尊敬の眼差しで言ってくる。
「そりゃわたしは美少女ですからね。髪も綺麗で当然です」
唐突な妹の褒め言葉に気持ち良くなり、えっへんと大きな胸を張ってみせた。
「それに、お胸も大きくてスタイル抜群だし。お姉ちゃんって世界一綺麗だよね」
「でゅへへ。そ、そっふかね」
妹が身内贔屓なのかどうかわからないが、これ以上ないくらいに褒めてくれる。
「そうだよー。お姉ちゃん美少女だもん。わたしもお姉ちゃんみたいに綺麗な髪になれるかな?」
将来に少しの不安を抱きながら、優美は自分の髪をいじる。
その妹の髪をわたしは優しく手櫛をしてあげた。
「心配しなくても、優美の髪はわたしよりも綺麗ですよ」
「ほんと?」
「ええ。とても繊細で、きめ細かく、艶やかです」
本当に、妬いてしまうくらいに綺麗な髪。
わたしは量も多くて、ヘアケアーをしないとボサボサなのに、優美の髪は特に力を入れてケアしなくてもとても綺麗だ。
「ゆうみ、お姉ちゃんみたいに美人さんになれるかな?」
容姿の話に切り替わり、わたしは目を細めて断言してあげた。
「当然です。わたしの妹なのですから、きっとわたしよりも綺麗な美人さんになれるでしょう」
「やった♪ お姉ちゃんが言うなら間違いないよね」
優美は嬉しそうな顔をして喜びを表現する。
「美人さんになったら京太お兄ちゃんと結婚できるかな?」
「ぶっ!」
妹が男性の名を口にした途端、わたしは大きく吹き出してしまった。
「や、やや、優美は京太くんがす、好きなのですか?」
「うん♪ 大好きだよ♡」
即答された。
やばい。妹の目がまじの♡になっている。
「ど、どど、どういうところがですか?」
「えっとね……」
指を口元に持っていき、湯気が立ちこもる浴槽内の天井を見上げた。天井から雫が、ポタリと背中に当たる感触と共に優美が答えてくれる。
「優しくて、かっこよくて、頭良くて、ゲームが上手だからかな」
ふっ。所詮は子供。好きな動機がお子ちゃまです。それだけでは陽キャうぇーい族の長である京太くんは物にできないでしょう。
ん……。でも、京太くんが優美を見る目……。結構危なかったような……。もしや、ロリコン!? 京太くんはロリコン!?
「お姉ちゃんも京太お兄ちゃん好きなんだよね?」
「ぶべっ!」
「お姉ちゃん!?」
京太くんがロリコンかどうかの判定をしていると、妹からの爆弾発言でわたしは、ぶくぶくと沈んでしまった。
「な、なんで、そうなるのですか!?」
ザバっと浮き上がる。
「違うの?」
「や……。それは……。なんて言うか複雑な……」
「好きに複雑なんてあるの?」
妹の質問に、あります、と答えようとして動き出そうとした口を止めた。
わたしの京太くんへの気持ちは、二次元から飛び出して来た推しを見ているような感覚。
よくよく考えると優美の気持ちの方がよっぽどマシな気がする。
い、いやいや。それはそれ。これはこれ。人の気持ちなど人それぞれなのです。
「あ、ありますよ。お、大人の好きには色々とあるのです」
「ふぅん。確かに、ゆうみが京太お兄ちゃんに好きって言っても、あんまり手応えがない気がするもんね。そこら辺が大人の好きの複雑さを表しているんだね。勉強になる。流石、りあじゅーのお姉ちゃんだね」
「ぐっ」
この素直な思いに、素直に喜べないなんて、わたしは姉失格です……。しかし、妹にガッツリりあじゅーアピールしたのと、京太くんにも助け舟を出していただいた手前、今更陰キャぼっちと言うのは妹に深い傷を負わすことになる。あと、普通にわたしの精神的ダメージがもたない。
「でもでも、お姉ちゃん。複雑な好きって言っても、お姉ちゃんは京太お兄ちゃんが好きなんだよね?」
「ど、どうしてそう思うのですか?」
「だって、京太お兄ちゃんのこと、『枚方くん』じゃなくて『京太くん』って名前で呼んでるもん」
妹に言われた瞬間に、なぜかわたしの脳裏には、『優乃』と呼んでくれる京太くんの声が聞こえた。
そして、今日の別れ際にわたしが京太くんと呼んだら少し顔を赤らめていた気がする。
「でゅ。でゅへふ。ぢゅるる」
「お姉ちゃんって、世界一の美人さんだけど、笑い方は世界一汚いよね」
「がーん」
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