彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

文字の大きさ
20 / 61

第20話 秘密のやり取り

しおりを挟む
 ポケットのスマホが震えた。

 2年になってからあまり震えなくなったスマホが、本日ラストの6限に震えるなんて相当珍しい。

 どうせ広告メールかなんかだろうと思いながらも、こっそりスマホを見ると。

「優乃……?」

 彼女からLOINでチャットメッセージが届いていた。

 チラリと優乃の席を見ると、授業を受けている雰囲気を醸し出していた。

 それを見て、クスリと笑ってLOINを開いた。

 なんだか久しぶりに誰かからLOINが来た気がするな。

 もう開くこともないかもと思っていまLOINを開いて届いたメッセージを確認する。
『カフェのバイトというのはいつでしょうか?』

 俺的には今日の気分だったのだが、その文字を見て、そういえば日程は言っていなかったことに気が付いた。

『今日カフェのバイトなんだよ。だから今日とかどうかな?』

 メッセージを送ると、数秒後に返事が返ってくる。

『今日ですね。わかりました。なにか必要なものとかありますか? あれば放課後のカフェまでの時間に揃えておきます。それと大変恐縮なのですが、わたしはカフェのアルバイト、いえ、アルバイト自体が初体験です。ですので、よろしければ京太くんより優しく手解きしていただきたく思います。あ、京太くんの興が冷めぬのならそのまま夜の方も手解きしていただいて構いません』

 なっがっ!

 長い、長い。この数秒でどんだけ長い文字打ち込んでんだよ。ガチ勢か! てか、最後下ネタじゃねぇか! なにをサラッと下ネタ挟んできたよ。おっさんかっ!
『特に必要なものはないから手ぶらで大丈夫』

 下ネタは余裕でスルーをして、必要な文だけ送ると、数秒で返信が来る。

『わっかりました♪───O(≧∇≦)O────♪
 わたしにできることがあれば言ってくださいね(*≧∀≦*) 
わたし、せいっぱいがばるんば( ̄▽ ̄) 
ああ、緊張しますねぇ( ゚д゚) 
でも、京太くんがいれば
大丈夫ですよね(´・ω・`)』

 世代!! お前本当に同世代なの!? 使い方が紫藤先生世代だぞ!

 と、とりあえずこれもスルーで良いか。

『ほんじゃ放課後一緒に行こっか』

 そのメッセージを送った時だった。

「でゅえっ!」

 ふと、優乃の席辺りから変な声が聞こえてきた。

 相変わらず変なリアクションをする高嶺の花なこって。

 そう思うのと同時にクラスの奴等は、「いま、東堂さんから変な声しなかった?」みたいな雰囲気が出ている。

 英語の女性教諭も黒板に書いていた手を止めて、優乃の方を見ていた。

 高嶺の花の東堂さんが変な声を出せば、そりゃ注目を浴びるのも当然か。

 さぁ、どう切り抜ける。

「先生」

 意外にも優乃は冷静に英語の先生を呼んで一言。

「デュエットのスペルが少し違う気がします」

 そしてクールに言い放つ。

「あ、あら、そう?」

 英語の先生は、彼女の冷静な指摘に従い黒板のデュエットよスペルを書き直した。

「なんだ。スペルが間違っていたのか」
「流石。高嶺の花の東堂さん。頭も良い」
「ふつくしい」

 そんな声が聞こえた気がして優乃の評価が勝手に上がった。

 ちなみにだが、先生はデュエットのスペルは間違えていない。正しいスペルであった。

 これが高嶺の花の効果。

 その立場を利用しての指摘。あたかも自分が正しいと言わんとする自信。周りは高嶺の花の東堂さんが間違えるはずないと錯覚する。

 あいつ、自分のことをわかってやがる。なんて女だ。恐ろしい女だぜ。

 東堂優乃の恐ろしさに誰も気が付かずに、授業の雰囲気は通常に戻る。

 優乃にとっての危機は過ぎ去ってから数十分が経過した時だ。

 彼女からの返信はなく、既読スルーされている状況。

 もしかしたら、また情緒不安定が発動してしまい、いきなり行きたくなくなったのかもしれないな。

 今は行かない理由をなんて言い訳しようか考えているのかもしれないな。

 それはそれで面白い。どんな言い訳が返ってくるのか期待してしまう。

 今の彼女は、先ほどの危機を乗り越えてノリノリの状態。そんなノリに乗っている優乃からどんな面白い言い訳がくるのか期待で胸が躍る。

 しかし、待てと暮らせど返信はなかった。

 少し過度な期待をし過ぎたか。
仕方ない。いざ何かを行動する時のダルい気持ちはわからなくもない。
なので、こちらからメッセージを飛ばしてやろうかと思った矢先に返信がくる。

『公園で』

 さっきとはうって変わって随分と短い文章だ。

 長い時間かけて言い訳を考えていると思ったので、なんのこっちゃわからなかった。

『公園のバイト? 役所の人なの?』

 そんなわけないと思いながらもそんな文字を打ってメッセージを送ると、また数分のインターバルで返ってくる。

『隣の公園集合でお願いします』

 ああ。なるほど。

 放課後、俺と一緒に教室に出てしまうと自分の評価が下がるのを恐れての提案だろう。

 俺としては一緒に出て学校の奴等にマウント取りたい──のは言い訳で、あんな美少女と一緒に教室を出るなんて普通にやりたい。
まぁあいつにはあいつの野望なあるからな。それを邪魔する趣味もなし。

『おけ』

 それで終わりと思われるLOINだが、優乃はスマホを操作していた。

 まだなにか俺に伝えたいことがあるのか疑問だったが、そこで終わらせば良かったな。

「東堂さん?」
「!?」

 いつの間にか優乃の前に先生が立っており、彼女は肩を震わせた。

「ごめんなさいね。緊急事以外のスマホの使用は禁止なの。今のは緊急だった?」

 大翼高校は緊急事以外のスマホの使用は禁止。破れば放課後まで没収の罰がある。

 もう6限だが、校則は校則。悪いの優乃なので、「すみません」と素直にスマホを先生に渡した。

「放課後取りに来てください」
「はい」

 優乃のスマホが没収されたので、彼女が最後になにを伝えたかったのかわからなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

処理中です...