逍遙の殺人鬼

こあら

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「楽しく食べましょうよ。」

「っそ、そうですよ。春さんもっね、せっかく頑張って作ったんですから」

「美味しそうだね…、っね、ちさちゃん。」

「はい!…、もぅこれなんて春さんが仕込みから丹精込めて作ったものなんです」

ハハハ…と無理に笑って、無言で睨み合っている春さんと瑞貴さんに受け取り皿にある程度盛り付け渡した
フォークを手にガン飛ばしながら食べ始める春さんを見て、ふぅ…と一息つけば、なんとも不思議で臼田うすたさんも「フゥ………」と小さく一息ついていた

何だかそれが可笑しくって、2人してその様子に静かに笑い合った
「水の中みたいに息苦しかったね」と内緒話みたいに耳元に小さな声で伝えてくる彼に、本当ですねと笑い返した









折り合いの悪い2人の気を逸らすのは結構大変だった
私と臼田うすたさんは瑞貴さんに話し掛けて、春さんに注意が向かないように必死で
拙い知識で、アイドル活動はどうですか?とか新プロジェクトについて投げかけたりした
そんな私をフォローするように、隣に座る臼田うすたさんが小さな点と点を繋ごうとしてくれている

春さんはそんな私達を見て察してくれたのか、渋々身を引いた
隣のジャンさんと話す姿は、やはり昔ながらの知り合いと言うのがピッタリだ

そして目の前に座る朔夜さんはあいも変わらず、ひとりでたらふく夕食を食べ進めている
1番の年長者が何故1番子どもみたいに食い散らかしているんですか!?

「……あのぉ…春さん?お酒呑み過ぎじゃ…ないですか?」

「こんなの呑まなきゃやってらんない!アタシの斜めには気取り屋が居るし、左には暴食魔。目の前はひさしよ?」

臼田うすたさんは何も…悪いことしていませんよ?大丈夫…ですか?」(…酔ってる?)

「ダメなのよー、ひさしはー。アタシはジャン派なの。悪気は無いのよひさし。」

飛び火が掛かった臼田うすたさんは、あははと若干苦笑いな様子
春さんは完全に酔ってらっしゃる

まぁ…お酒の瓶を殻にして4本目
今なんて「面倒くさい!」って言って、瓶を鷲掴みして呑んでいる

チラッと臼田うすたさんの隣を見れば、瑞貴さんは既に眠っていた
背もたれに寄りかかった状態で、腕組みして、片手にはおちょこが握られている

ひさし、あんたは優しすぎるわ、目からマシュマロが出てくるくらい。でもうちのジャンだって立派な男よ。」

「ハルカさん酔うといつもジャンのお母さんみたいになりますね。ちょっと面白いです。」

「高身長さんで外国人並みに整ったこの面、マッチョ過ぎない筋肉なんてダビデ像よりうん万倍良いのに。まぁ、もっと飲んで。」

「はぁい、ハルカさん。」

「たまぁーにハシビロコウみたいな目つきするけど、意外と優しい一面だってあるのよぉ。是非、清き一票をジャンに!」

酒瓶を掲げて、選挙みたいな事言ってる…
春さんは絶対に…呑み過ぎている

どうしましょう…と隣の臼田うすたさんの袖を引っ張って助けを求めたが、なぜか振り子のように揺れる感覚が感じ取れた
見れば真っ赤な顔した臼田うすたさんが、笑ってお酒を飲んでいた

(嘘でしょ…。)
こちらも酔っている!?

「犬顔に一票!」そう、デカデカと朔夜さんが声を上げた

「わーい、朔夜さんから一票貰ったー。嬉しいなー、隣にはちさちゃんも居て。料理も美味しかったし、久しぶりのお酒も美味しい。」

臼田うすたさん…呑み過ぎでは?もうお水飲みましょう」

「僕の心配してくれるのー?ちさちゃん優しい。…あれ?ちさちゃんが2人…今度3人、4人になった。ちさちゃんがいっぱいだー。」

「もうお開きにしては?!朔夜さん、ちょっと手伝ってください、瑞貴さんをソファーに移します」

もう既に潰れてしまった瑞貴さんを取り敢えず移動させようとする私に、臼田うすたさんは背もたれ部分に向き返して動く私を見ては、甘ったるい声で「困った顔も可愛い」だなんて仰ってる

朔夜さんは酔っているみたいだったけど、フラ付いてはいなかった
でも、いつも以上に可怪しかった
「イタリア人か?」とか言って、瑞貴さんのサングラスを勝手に取って自分に掛けている

(っえ、何基準で言ってるの?)
朔夜さんの言うイタリア人の定義とは…
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