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女王の帰還
ep5
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女王アリューゼはのんびりとやってくると、やれやれと首を横に振った。
「最悪、傷は治せばいいとしても、心の傷は消えないのよ。うちの家臣たちに手を出すのはやめてもらおうかしらね。それと、うちの可愛いマリアンヌを泣かせたら国を亡ぼすってあなたの両親にお伝えしたのだけど…聞いていない?」
「え…?」
ルーキスが顔を上げると、女王は不気味な笑みを浮かべた。
「南の大陸に三大戦闘民族あり――とはいうけれど、ブリガンテ族の端くれ程度が、族長と親友同士の私のツテを舐めないでくれる? それと、ハインツのことは手打ちが済んでいることであって、我が国の隣国フィラディルシアからの目を誤魔化すために政略結婚も必要な手段の一つってこと。でも、マリアンヌが受けるっていうから許可しているだけであって、嫌がったら握りつぶすに決まっているじゃない?」
ハインツはニヤニヤしながらルーキスを見おろし、マリアンヌを振り返った。
「派手にやりましたねぇ」
「日々の鬱憤よ。練習用にいつも木刀を使っていたけど、これが真剣だったら文字通り赤い花が咲いたかもしれないけれど」
「嫌なら政略結婚なんて…――モゴッ」
後ろからギュスターヴが彼の口を塞いだ。
「いいから黙っていろ」
アリシアは緩々と首を横に振った。
「私は誰かの血の上に立っていられるほど強くないですわ、お母さま。それより、レーゲン殿下。あなたとの方がマシだったのですが、そのお詫びもかねて弟君を処分、じゃなかった。強制送還してくださいな?」
「姫さん。バカなことを言っちゃいけねぇよ。ワシがこっちに来たら聖龍たちのパワーバランスが崩れる。エメルに二匹いるん。三つこっちに行ったら、他の国はどうなると?」
「二匹? お兄様と…だあれ?」
「さぁのう? じゃが、ワシと青以外のもう一匹、聖龍反応があったんよ。聖龍以外の生き物が聖龍反応なんて出るわけないし、ワシじゃない誰かが術をぶっ放したというわけだ」
「じゃあ、そいつを見つけ出して南の国に送れば全部解決じゃないかしら?」
「うーん、あいにく、ワシは向こうの大陸が好きなんよ。ワシの領域が一ミリもない…というのも大きいのじゃが」
「そうよね」
肩をすくめたマリアンヌが深くため息を漏らした。
「これ、じゃなかったらよかったんだけど」
「なら、姫が好きになった男を王家で養子に引き取ればいいんよ!」
レーゲンはそんなことを言ってポンっと手を打った。
「ワシ、我ながらいいこと言うよのぅ! な? そうすりゃあ万事解決。性癖がおかしい我が弟より、姫が決めた男と結婚した方がみんな幸せ。万事うまくいく!」
ルピルもノリノリで言った。
「おぉ、いい作戦だなぁ。俺様もそう思うぞ! 姐さんもそう思わないか!?」
唐突に話を振られたアリシアは驚いた顔をしたが、戸惑った顔をした。
「あの、マリアンヌ様が想いを寄せる方、でしたっけ。その方の同意が得られればいいのではないでしょうか? でも、ルピル。一つ…聞いてもいいです?」
アリシアはひょこひょこやってきたルピルに耳打ちをして尋ねた。
「…姫様の意中の方ってどなたです?」
ルピルはのんびりと笑った。
「さすが姐さん! 全く気が付いていないのか!」
「褒めてます、それ?」
「もちろん。そんなポヤポヤしているから、俺様も守りがいがあるなぁと思うわけですよ、姐さん。だから、姐さんの美人さに男が寄ってきても、全然わかっていないですし、ホント、不浄な男どもを余計に寄せつけるというのに、そんなんだから守りがいがありますよ」
「むうぅ!」
ルピルの頬に親指をひっかけてみにょーんと伸ばしながらアリシアは羞恥に頬を朱に染めながら頬をリスのようにパンパンに膨らませた。
「うひゃひゃ、ねぇふぁん、いふぁいふぇふ(うわぁ、姐さん、痛いです)」
「ルピルはもっと乙女心を学んでください!」
「もふぅ、ねえふぁんふぁ、かふぁふぃふぃなふぁ(もう、姐さんは可愛いなぁ)」
「ルーピールー!」
反省の色が見えないルピルの頬をビョンビョンと伸縮させていたが、アリシアの方が息が上がってきており、やがてばててしまったのか息を切らせながら手を下ろした。
「て、手ごわいです…」
「いやぁ、姐さんが自爆しただけっすよ」
そんなことをしている間にルーキスは老騎士に治癒魔法で顔を治癒してもらい、拗ねたように口を尖らせていた。レーゲンはのんびりと強制償還のための陣を張っていた。
マリアンヌは3人の新入りメイドたちを見やる。
「さて、お騒がせしてごめんなさい。これは王家の問題なのに、お仕事の邪魔をしてしまったわね」
すると、アリューゼが目を輝かせた。
「あらあら、新人ちゃん達じゃないの! 会いたいと思っていたのよね! わざわざ謁見させる手間が省けてよかったわ!」
そう言いながらルーキスを陣に魔法で放り投げ、「ふぎゃん」と彼が尻もちをついて踏まれた声を出した直後、魔方陣が発動し、ルーキスの姿が一瞬で消え、送還されたようだった。
「ちょ、まだテレン海洋連邦という以外、場所を指定してな――」
レーゲンがそう言ったが、その言葉を遮ってアリューゼがパタパタと三人に駆け寄り、一番近くにいたアリシアの手を握った。
「うふふ、初めまして! 私が女王アリューゼよ♪」
三人はその勢いに押されながら会釈をすることしかできなかった。
「あらあら、可愛い!」
アリューゼはその反応にニコニコと満面の笑みを浮かべていた。
「最悪、傷は治せばいいとしても、心の傷は消えないのよ。うちの家臣たちに手を出すのはやめてもらおうかしらね。それと、うちの可愛いマリアンヌを泣かせたら国を亡ぼすってあなたの両親にお伝えしたのだけど…聞いていない?」
「え…?」
ルーキスが顔を上げると、女王は不気味な笑みを浮かべた。
「南の大陸に三大戦闘民族あり――とはいうけれど、ブリガンテ族の端くれ程度が、族長と親友同士の私のツテを舐めないでくれる? それと、ハインツのことは手打ちが済んでいることであって、我が国の隣国フィラディルシアからの目を誤魔化すために政略結婚も必要な手段の一つってこと。でも、マリアンヌが受けるっていうから許可しているだけであって、嫌がったら握りつぶすに決まっているじゃない?」
ハインツはニヤニヤしながらルーキスを見おろし、マリアンヌを振り返った。
「派手にやりましたねぇ」
「日々の鬱憤よ。練習用にいつも木刀を使っていたけど、これが真剣だったら文字通り赤い花が咲いたかもしれないけれど」
「嫌なら政略結婚なんて…――モゴッ」
後ろからギュスターヴが彼の口を塞いだ。
「いいから黙っていろ」
アリシアは緩々と首を横に振った。
「私は誰かの血の上に立っていられるほど強くないですわ、お母さま。それより、レーゲン殿下。あなたとの方がマシだったのですが、そのお詫びもかねて弟君を処分、じゃなかった。強制送還してくださいな?」
「姫さん。バカなことを言っちゃいけねぇよ。ワシがこっちに来たら聖龍たちのパワーバランスが崩れる。エメルに二匹いるん。三つこっちに行ったら、他の国はどうなると?」
「二匹? お兄様と…だあれ?」
「さぁのう? じゃが、ワシと青以外のもう一匹、聖龍反応があったんよ。聖龍以外の生き物が聖龍反応なんて出るわけないし、ワシじゃない誰かが術をぶっ放したというわけだ」
「じゃあ、そいつを見つけ出して南の国に送れば全部解決じゃないかしら?」
「うーん、あいにく、ワシは向こうの大陸が好きなんよ。ワシの領域が一ミリもない…というのも大きいのじゃが」
「そうよね」
肩をすくめたマリアンヌが深くため息を漏らした。
「これ、じゃなかったらよかったんだけど」
「なら、姫が好きになった男を王家で養子に引き取ればいいんよ!」
レーゲンはそんなことを言ってポンっと手を打った。
「ワシ、我ながらいいこと言うよのぅ! な? そうすりゃあ万事解決。性癖がおかしい我が弟より、姫が決めた男と結婚した方がみんな幸せ。万事うまくいく!」
ルピルもノリノリで言った。
「おぉ、いい作戦だなぁ。俺様もそう思うぞ! 姐さんもそう思わないか!?」
唐突に話を振られたアリシアは驚いた顔をしたが、戸惑った顔をした。
「あの、マリアンヌ様が想いを寄せる方、でしたっけ。その方の同意が得られればいいのではないでしょうか? でも、ルピル。一つ…聞いてもいいです?」
アリシアはひょこひょこやってきたルピルに耳打ちをして尋ねた。
「…姫様の意中の方ってどなたです?」
ルピルはのんびりと笑った。
「さすが姐さん! 全く気が付いていないのか!」
「褒めてます、それ?」
「もちろん。そんなポヤポヤしているから、俺様も守りがいがあるなぁと思うわけですよ、姐さん。だから、姐さんの美人さに男が寄ってきても、全然わかっていないですし、ホント、不浄な男どもを余計に寄せつけるというのに、そんなんだから守りがいがありますよ」
「むうぅ!」
ルピルの頬に親指をひっかけてみにょーんと伸ばしながらアリシアは羞恥に頬を朱に染めながら頬をリスのようにパンパンに膨らませた。
「うひゃひゃ、ねぇふぁん、いふぁいふぇふ(うわぁ、姐さん、痛いです)」
「ルピルはもっと乙女心を学んでください!」
「もふぅ、ねえふぁんふぁ、かふぁふぃふぃなふぁ(もう、姐さんは可愛いなぁ)」
「ルーピールー!」
反省の色が見えないルピルの頬をビョンビョンと伸縮させていたが、アリシアの方が息が上がってきており、やがてばててしまったのか息を切らせながら手を下ろした。
「て、手ごわいです…」
「いやぁ、姐さんが自爆しただけっすよ」
そんなことをしている間にルーキスは老騎士に治癒魔法で顔を治癒してもらい、拗ねたように口を尖らせていた。レーゲンはのんびりと強制償還のための陣を張っていた。
マリアンヌは3人の新入りメイドたちを見やる。
「さて、お騒がせしてごめんなさい。これは王家の問題なのに、お仕事の邪魔をしてしまったわね」
すると、アリューゼが目を輝かせた。
「あらあら、新人ちゃん達じゃないの! 会いたいと思っていたのよね! わざわざ謁見させる手間が省けてよかったわ!」
そう言いながらルーキスを陣に魔法で放り投げ、「ふぎゃん」と彼が尻もちをついて踏まれた声を出した直後、魔方陣が発動し、ルーキスの姿が一瞬で消え、送還されたようだった。
「ちょ、まだテレン海洋連邦という以外、場所を指定してな――」
レーゲンがそう言ったが、その言葉を遮ってアリューゼがパタパタと三人に駆け寄り、一番近くにいたアリシアの手を握った。
「うふふ、初めまして! 私が女王アリューゼよ♪」
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