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教皇と元聖女
ep2
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ノリアがモグモグと天丼を食べながら顔を上げてアリシアとカンナを振り返った。
「ほーいえふぁ、しってふ?(そーいえば、知ってる?)」
カンナが顔を引きつらせてスプーンの匙の部分の上でクルクルとフォークを動かし、カルボナーラを一口サイズに取りながら呆れ顔をした。
「ノリア、お行儀が悪い。飲み込んでから話をしなさい」
「ふぁーい(はーい)」
ノリアはよく噛みしめてからゴクンと飲み干し、水を一口飲むと言い直した。
「あ、うん。あのね、教皇様がもうじきこのエメル国に来るんだって! 教皇庁にね、私のおじさんがいるんだけど、今朝、手紙が届いたの」
アリシアはにこにこと満面の笑みを浮かべながらサーモンのマリネをもぐもぐと頬張っていた。
ノリアが頬を膨らませる。
「ちょっと、アリー。聞いている?」
「へ? あ、何か言いました?」
「…全然聞いていないし…」
ノリアがさらに膨れ面をすると、アリシアはにこにことしながら幸せそうに言った。
「ごめんなさい、ノリア。なんでしたっけ?」
「教皇様がこっちに来るらしいってハナシ! アリーは知っている?」
「はい、もちろん♪ 今朝早く、伝令龍さんが来ていましたから」
カンナが尋ねた。
「伝令龍って言うと、教皇様に仕える伝令役の龍だよね。伝書鳩よりも早く手紙を届けられるし、その存在自体が教皇様からの勅使って言われているんだっけ。電報もあるけれど、今でも伝令龍を使っているんだよね」
「はい、そうです。聖女として過ごしていた頃はよく、教皇様に色々とお世話になったのです」
アリシアは嬉しそうに声を弾ませた。
ノリアがちょっとモヤモヤした顔をしていたが、瞬いた。
「それって、アリーにとって教皇様ってお父さんみたいな存在だったってこと?」
「はい。だから、非番の日が楽しみで仕方がないのです。ようやく教皇様と会えるのですから、嬉しいです」
「…非番の日が? 普通に王宮で会えるんじゃない?」
カンナの問いかけに、アリシアはのほほんと言った。
「えへへ、親子デートですよ♪ 小さい頃はお祭りに連れて行ってもらって、顔くらいあるわたあめというお菓子を買ってもらったり、デザートの食べ放題に連れて行ってもらったり、パレードを一緒に見て他愛もない話をして過ごしたりしましたけど、ウィノンは町並みが綺麗ですから、ただ歩くだけでも楽しそうです」
デートと言う言葉で何人かの騎士が振り返っていたが、アリシアは全く気が付いていないのか、ライスバーガーをモグモグと頬張った。
「う~ん、美味しい!」
ノリアはすっかり機嫌を直したのか、声を弾ませた。
「アリーはお父さんっ子なんだね」
「かもしれません。というか、家族という概念をきちんと教えてくれた、そんな人が教皇様でしたから。教皇様も歳をとってきましたし、孝行できるうちにしておきたいです」
アリシアはちょっとだけ寂しそうに笑った。
「聖女ではないのであまり一緒にいられませんけれど、ね」
カンナが微笑む。
「そっか。じゃあ、その日はきちんと休めるように私たちも頑張るから、安心して行って来ていいからね」
ノリアが身を乗り出してピシッと挙手をした。
「あ、もちろん、私も頑張るからね! アリー、楽しんできていいからね!」
アリシアは驚いたような顔をしたが、ふにゃりと笑った。
「ふふっ、ありがとうございます、カンナ。ノリア」
ノリアが得意げに胸を張り、それを見てカンナがクスクスと笑っているのを見ながら、アリシアもつられて肩をゆすって笑い始めた時、通りがかった侍女長が呆れ顔をした。
「あなたたち、さっさと食べて支度をしてしまいなさい。そろそろお仕事の時間ですよ」
時計を確認したノリアが慌てて席に座り直した。
「わわっ、こんな時間! 侍女長、ごめんなさい、すぐに食べます!」
「そうね、きちんと残さずに食べなさい。遅刻だけは気を付けて」
「はひっ!」
ノリアが大きなえび天を口に咥えたまま、返事をした。
アリシアとカンナもいそいそと食べ始め、3人とも料理をがっついている様子を見ながら、侍女長は呆れ半分の笑顔を浮かべた後、肩をすくめてから立ち去った。
☆
「ううっ、きついよー」
ノリアが仕事始めにお腹を擦っているのをみながらアリシアとカンナは顔を見合わせた。カンナが告げる。
「調子に乗って天丼の『特盛』なんて頼むから」
「だって、美味しいんだもん!」
アリシアが少しだけ曖昧に笑った。
「胸やけしませんか?」
「しないよ、アリー! むしろ、ウェルカム! 毎晩毎食、あれくらいでもどんとこい!」
そんなノリアの様子を見ながらアリシアは遠い目をした。
「若いっていいですねー」
カンナがすかさずツッコミを入れる。
「若いっていうより、食い意地を張っているだけだからいいんだよ、アリー。むしろ、真似しちゃダメだからね。暴飲暴食はおデブへの道なんだから!」
その瞬間、ノリアが動きを止め、お腹の肉をつまむ仕草をして泣きそうな顔をした。
「うそぉん、私、太っちゃう!?」
ノリアがアリシアに抱き着いた。
「ねえ、アリー。いいダイエット方法、知らない?」
「なぜに、私です?」
「カンナは絶対スパルタだから怖いんだもん」
カンナにキッとにらまれ、ノリアがササッと素早くアリシアの後ろに隠れた。
そんなノリアを見てカンナが深くため息を漏らし、呆れ顔を浮かべる。
「ノリア。アリーが運動をしているように見えるの?」
「ふえ?」
アリシアは小首を傾げた。
「特にしていないですね。必ず朝5時に目を覚まして、着替えて部屋の掃除を済ませて、それから聖堂で毎日30分お祈りをして、聖堂のお掃除をしてから朝ごはんですけれど」
「聖堂の掃除、それだ!」
ノリアはハッとして目を輝かせた。が、カンナに呆れられた。
「よく言うね。でも、ノリアの場合、起きられるの?」
「ああああっ、無理! 無理無理!」
頭を抱えたノリアを見ながら二人は顔を見合わせ、呆れたように小さく笑った。
「ほーいえふぁ、しってふ?(そーいえば、知ってる?)」
カンナが顔を引きつらせてスプーンの匙の部分の上でクルクルとフォークを動かし、カルボナーラを一口サイズに取りながら呆れ顔をした。
「ノリア、お行儀が悪い。飲み込んでから話をしなさい」
「ふぁーい(はーい)」
ノリアはよく噛みしめてからゴクンと飲み干し、水を一口飲むと言い直した。
「あ、うん。あのね、教皇様がもうじきこのエメル国に来るんだって! 教皇庁にね、私のおじさんがいるんだけど、今朝、手紙が届いたの」
アリシアはにこにこと満面の笑みを浮かべながらサーモンのマリネをもぐもぐと頬張っていた。
ノリアが頬を膨らませる。
「ちょっと、アリー。聞いている?」
「へ? あ、何か言いました?」
「…全然聞いていないし…」
ノリアがさらに膨れ面をすると、アリシアはにこにことしながら幸せそうに言った。
「ごめんなさい、ノリア。なんでしたっけ?」
「教皇様がこっちに来るらしいってハナシ! アリーは知っている?」
「はい、もちろん♪ 今朝早く、伝令龍さんが来ていましたから」
カンナが尋ねた。
「伝令龍って言うと、教皇様に仕える伝令役の龍だよね。伝書鳩よりも早く手紙を届けられるし、その存在自体が教皇様からの勅使って言われているんだっけ。電報もあるけれど、今でも伝令龍を使っているんだよね」
「はい、そうです。聖女として過ごしていた頃はよく、教皇様に色々とお世話になったのです」
アリシアは嬉しそうに声を弾ませた。
ノリアがちょっとモヤモヤした顔をしていたが、瞬いた。
「それって、アリーにとって教皇様ってお父さんみたいな存在だったってこと?」
「はい。だから、非番の日が楽しみで仕方がないのです。ようやく教皇様と会えるのですから、嬉しいです」
「…非番の日が? 普通に王宮で会えるんじゃない?」
カンナの問いかけに、アリシアはのほほんと言った。
「えへへ、親子デートですよ♪ 小さい頃はお祭りに連れて行ってもらって、顔くらいあるわたあめというお菓子を買ってもらったり、デザートの食べ放題に連れて行ってもらったり、パレードを一緒に見て他愛もない話をして過ごしたりしましたけど、ウィノンは町並みが綺麗ですから、ただ歩くだけでも楽しそうです」
デートと言う言葉で何人かの騎士が振り返っていたが、アリシアは全く気が付いていないのか、ライスバーガーをモグモグと頬張った。
「う~ん、美味しい!」
ノリアはすっかり機嫌を直したのか、声を弾ませた。
「アリーはお父さんっ子なんだね」
「かもしれません。というか、家族という概念をきちんと教えてくれた、そんな人が教皇様でしたから。教皇様も歳をとってきましたし、孝行できるうちにしておきたいです」
アリシアはちょっとだけ寂しそうに笑った。
「聖女ではないのであまり一緒にいられませんけれど、ね」
カンナが微笑む。
「そっか。じゃあ、その日はきちんと休めるように私たちも頑張るから、安心して行って来ていいからね」
ノリアが身を乗り出してピシッと挙手をした。
「あ、もちろん、私も頑張るからね! アリー、楽しんできていいからね!」
アリシアは驚いたような顔をしたが、ふにゃりと笑った。
「ふふっ、ありがとうございます、カンナ。ノリア」
ノリアが得意げに胸を張り、それを見てカンナがクスクスと笑っているのを見ながら、アリシアもつられて肩をゆすって笑い始めた時、通りがかった侍女長が呆れ顔をした。
「あなたたち、さっさと食べて支度をしてしまいなさい。そろそろお仕事の時間ですよ」
時計を確認したノリアが慌てて席に座り直した。
「わわっ、こんな時間! 侍女長、ごめんなさい、すぐに食べます!」
「そうね、きちんと残さずに食べなさい。遅刻だけは気を付けて」
「はひっ!」
ノリアが大きなえび天を口に咥えたまま、返事をした。
アリシアとカンナもいそいそと食べ始め、3人とも料理をがっついている様子を見ながら、侍女長は呆れ半分の笑顔を浮かべた後、肩をすくめてから立ち去った。
☆
「ううっ、きついよー」
ノリアが仕事始めにお腹を擦っているのをみながらアリシアとカンナは顔を見合わせた。カンナが告げる。
「調子に乗って天丼の『特盛』なんて頼むから」
「だって、美味しいんだもん!」
アリシアが少しだけ曖昧に笑った。
「胸やけしませんか?」
「しないよ、アリー! むしろ、ウェルカム! 毎晩毎食、あれくらいでもどんとこい!」
そんなノリアの様子を見ながらアリシアは遠い目をした。
「若いっていいですねー」
カンナがすかさずツッコミを入れる。
「若いっていうより、食い意地を張っているだけだからいいんだよ、アリー。むしろ、真似しちゃダメだからね。暴飲暴食はおデブへの道なんだから!」
その瞬間、ノリアが動きを止め、お腹の肉をつまむ仕草をして泣きそうな顔をした。
「うそぉん、私、太っちゃう!?」
ノリアがアリシアに抱き着いた。
「ねえ、アリー。いいダイエット方法、知らない?」
「なぜに、私です?」
「カンナは絶対スパルタだから怖いんだもん」
カンナにキッとにらまれ、ノリアがササッと素早くアリシアの後ろに隠れた。
そんなノリアを見てカンナが深くため息を漏らし、呆れ顔を浮かべる。
「ノリア。アリーが運動をしているように見えるの?」
「ふえ?」
アリシアは小首を傾げた。
「特にしていないですね。必ず朝5時に目を覚まして、着替えて部屋の掃除を済ませて、それから聖堂で毎日30分お祈りをして、聖堂のお掃除をしてから朝ごはんですけれど」
「聖堂の掃除、それだ!」
ノリアはハッとして目を輝かせた。が、カンナに呆れられた。
「よく言うね。でも、ノリアの場合、起きられるの?」
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