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第3章 躍進の始まり
75.【出発準備】
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前回はユリが目をふさいでくれたのだが、今回はユリも固まってしまったようだ。そのため、俺の視界を遮ってくれるものがなく、マリーナさんの裸体をがっつりと見てしまった。
「な……なんで……ちゃんと縛ったのに……」
どうやら亀甲縛りをしたのはミケーラさんのようだ。固まっていたミケーラさんが怒りに身体を震わせる。
「この……この馬鹿姉が!!」
「ぎゃっ!!」
ミケーラさんがマリーナのお腹を踏みつけた。
「普通に! 縛っても! 気付いたら! 脱ぐから! わざわざ! 亀甲縛り! したのに!!!」
「ぐえ! ミ、ミケーラ! うぐ! 痛い! 痛いって! どうしたのさ! ってあれ、動けない! た、助けて!!」
「黙りなさい!!」
マリーナさんが目を覚ましても、ミケーラさんはかまわず踏み続ける。マリーナさんは、両手を背中で縛られているため、立ち上がったり、避けたりすることができないようだ。何度も踏みつけた後、ミケーラさんは俺達に土下座した。
「アレン様、誠に……誠に申し訳ありません! こうならないよう、ちゃんと縛っておいたのですが……。イリス様も申し訳ありません!」
「え、いや……あの……」
「キャーーーー!!!」
土下座するミケーラさんの後ろでマリーナさんが絶叫する。
「わ、わたし! また! やだ、動けない! 見ないで! あ、いや助けて!」
「…………アレンさん?」
急に背中に寒気を感じて振り向くと、クリスさんがこちらを向いていた。その顔は笑みを浮かべているものの、目が全く笑っていない。
「ずいぶん凝視されていましたね」
「え、あ、いや……」
固まって動けなかっただけで、凝視していたつもりはなのだが、確かに目を逸らしたりはしなかった。
「…………アレンさんはお胸の大きい女性が好きですか?」
「はい??」
クリスさんが自分の胸に手を当てて聞いてきた。
(胸……確かに、服を着ているときは分からなかったけど、マリーナさんって意外とスタイルが……いやいや! 何を考えてる!?)
産まれて初めて女性の裸を見て混乱しているようだ。今考えるべきはそこじゃない。
「大きさなんて気にしみゃ…………気にしませんよ」
思いっきり噛んでしまった。クリスさんの顔がどんどん悲しそうな表情になる。
(クリスさんの胸だって気にするほど小さくはないはず……いや、見たことないけど……って、そうじゃなくて!)
混乱する俺にユリが耳打ちをした。
「お兄ちゃん。こういう時は、『俺が好きなのはクリスさんの胸だけです!』って言えばいいんだよ」
「! ……俺が好きなのはクリスさんの胸だけです!」
「!?!?」
混乱した俺は、ユリに言われたことをそのまま口にしてしまったが、重大なミスをした気がする。実際、言われたクリスさんは顔を真っ赤にしてしまった。
「そ、その……アレン様。そう言ったことは結婚した後に……」
「す、すみません……」
「あ、いえ。殿方として健康な証ですのでお気になさらず……」
「あ、あははは……」
何とも言えない空気に笑ってごまかすしかなかった。ニヤニヤしているユリが腹立たしい。
「あのー。熱々なところ悪いんだけどそろそろ助けて……」
後ろから声が聞こえるけど、俺は振り返るようなことはしない。
「俺、倉庫の外に出てますね!」
「そうですね! 片が付きましたらお呼びしますので、絶対に中を見ないでくださいね」
「もちろんです!」
俺は、マリーナさんに背中を向けたまま倉庫の外に出る。外に出ると、そこには父さんとバミューダ君がいた。
「おー、アレン。災難だったな」
「悲鳴が聞こえたけど大丈夫だった? ……です?」
「あー、大丈夫だよ。2人は倉庫に入らなかったの?」
「おう。ミケーラさんは大丈夫だと言ってたけど、マリーナさんの事だからな。念のため外で待っていた。バミューダにも一緒にな」
さすがの危険回避能力である。マリーナさんのあんな姿を母さんの前で見ていたら、今頃どうなっていたか……。
「今、女性陣が対処してるから、終わるまで待ってよ」
「そうだな」
「??? はい……です」
マリーナさんを亀甲縛りしていたロープはかなり頑丈なものだったようだ。30分程して、ようやく俺達は中に呼ばれた。
少し遅くなってしまったが、商品を確認して、出発の準備を進める。
(作ってくれた品はどれもいい出来だった。腕はいいんだよな、腕は……)
マリーナさんとミケーラさんは荷馬車最終確認をしていた。
「うぅぅ……全部見られた……もうお嫁にいけない……」
「どうせ誰ももらってくれません。御託はいいから、とっとと手を動かしなさい」
「ひどい!」
その後ろでは、母さんとバミューダ君がなにやら打ち合わせをしている。
「いい? バミューダ君? 荷馬車を使った、商品を運びながらの移動は盗賊に狙われやすいの。この町と私達の町位の距離だったら大丈夫だけど、ブリスタ領まで行くとなると、まず間違いなく襲われるわ。その時、私が皆を守るから、バミューダ君は盗賊を捕まえてみなさい」
どうやら護衛方法について話しているようだ。今更だが、母さんは腰に刀をつけていて、バミューダ君は手と足に防具をつけていることに気付いた。
(自然すぎて気付かなかった。でも……)
「バミューダ君に盗賊の相手をさせるの? 危なくない?」
バミューダ君の身体能力が高いのは理解しているが、戦闘能力は別だ。いきなり実践で戦うのは危ないと思って母さんに聞いたのだが……。
「大丈夫よ。心配なのは盗賊の命ね」
「大丈夫……です。ちゃんと、お母さんに教わった……です。狙っていいのは足や手だけ……です」
「その通りよ。ただし、深追いはせず、危ないと思ったらすぐに逃げること。いいわね?」
「はい! ……です!」
「よろしい。アレンもそんな心配そうな顔しないの。バミューダ君なら大丈夫よ」
母さんがそう言うなら大丈夫なのだろう。まだ少し心配だが、任せることにする。
そうしている間に、マリーナさん達の最終確認が終わった。
さぁ、いよいよ出発だ!
「な……なんで……ちゃんと縛ったのに……」
どうやら亀甲縛りをしたのはミケーラさんのようだ。固まっていたミケーラさんが怒りに身体を震わせる。
「この……この馬鹿姉が!!」
「ぎゃっ!!」
ミケーラさんがマリーナのお腹を踏みつけた。
「普通に! 縛っても! 気付いたら! 脱ぐから! わざわざ! 亀甲縛り! したのに!!!」
「ぐえ! ミ、ミケーラ! うぐ! 痛い! 痛いって! どうしたのさ! ってあれ、動けない! た、助けて!!」
「黙りなさい!!」
マリーナさんが目を覚ましても、ミケーラさんはかまわず踏み続ける。マリーナさんは、両手を背中で縛られているため、立ち上がったり、避けたりすることができないようだ。何度も踏みつけた後、ミケーラさんは俺達に土下座した。
「アレン様、誠に……誠に申し訳ありません! こうならないよう、ちゃんと縛っておいたのですが……。イリス様も申し訳ありません!」
「え、いや……あの……」
「キャーーーー!!!」
土下座するミケーラさんの後ろでマリーナさんが絶叫する。
「わ、わたし! また! やだ、動けない! 見ないで! あ、いや助けて!」
「…………アレンさん?」
急に背中に寒気を感じて振り向くと、クリスさんがこちらを向いていた。その顔は笑みを浮かべているものの、目が全く笑っていない。
「ずいぶん凝視されていましたね」
「え、あ、いや……」
固まって動けなかっただけで、凝視していたつもりはなのだが、確かに目を逸らしたりはしなかった。
「…………アレンさんはお胸の大きい女性が好きですか?」
「はい??」
クリスさんが自分の胸に手を当てて聞いてきた。
(胸……確かに、服を着ているときは分からなかったけど、マリーナさんって意外とスタイルが……いやいや! 何を考えてる!?)
産まれて初めて女性の裸を見て混乱しているようだ。今考えるべきはそこじゃない。
「大きさなんて気にしみゃ…………気にしませんよ」
思いっきり噛んでしまった。クリスさんの顔がどんどん悲しそうな表情になる。
(クリスさんの胸だって気にするほど小さくはないはず……いや、見たことないけど……って、そうじゃなくて!)
混乱する俺にユリが耳打ちをした。
「お兄ちゃん。こういう時は、『俺が好きなのはクリスさんの胸だけです!』って言えばいいんだよ」
「! ……俺が好きなのはクリスさんの胸だけです!」
「!?!?」
混乱した俺は、ユリに言われたことをそのまま口にしてしまったが、重大なミスをした気がする。実際、言われたクリスさんは顔を真っ赤にしてしまった。
「そ、その……アレン様。そう言ったことは結婚した後に……」
「す、すみません……」
「あ、いえ。殿方として健康な証ですのでお気になさらず……」
「あ、あははは……」
何とも言えない空気に笑ってごまかすしかなかった。ニヤニヤしているユリが腹立たしい。
「あのー。熱々なところ悪いんだけどそろそろ助けて……」
後ろから声が聞こえるけど、俺は振り返るようなことはしない。
「俺、倉庫の外に出てますね!」
「そうですね! 片が付きましたらお呼びしますので、絶対に中を見ないでくださいね」
「もちろんです!」
俺は、マリーナさんに背中を向けたまま倉庫の外に出る。外に出ると、そこには父さんとバミューダ君がいた。
「おー、アレン。災難だったな」
「悲鳴が聞こえたけど大丈夫だった? ……です?」
「あー、大丈夫だよ。2人は倉庫に入らなかったの?」
「おう。ミケーラさんは大丈夫だと言ってたけど、マリーナさんの事だからな。念のため外で待っていた。バミューダにも一緒にな」
さすがの危険回避能力である。マリーナさんのあんな姿を母さんの前で見ていたら、今頃どうなっていたか……。
「今、女性陣が対処してるから、終わるまで待ってよ」
「そうだな」
「??? はい……です」
マリーナさんを亀甲縛りしていたロープはかなり頑丈なものだったようだ。30分程して、ようやく俺達は中に呼ばれた。
少し遅くなってしまったが、商品を確認して、出発の準備を進める。
(作ってくれた品はどれもいい出来だった。腕はいいんだよな、腕は……)
マリーナさんとミケーラさんは荷馬車最終確認をしていた。
「うぅぅ……全部見られた……もうお嫁にいけない……」
「どうせ誰ももらってくれません。御託はいいから、とっとと手を動かしなさい」
「ひどい!」
その後ろでは、母さんとバミューダ君がなにやら打ち合わせをしている。
「いい? バミューダ君? 荷馬車を使った、商品を運びながらの移動は盗賊に狙われやすいの。この町と私達の町位の距離だったら大丈夫だけど、ブリスタ領まで行くとなると、まず間違いなく襲われるわ。その時、私が皆を守るから、バミューダ君は盗賊を捕まえてみなさい」
どうやら護衛方法について話しているようだ。今更だが、母さんは腰に刀をつけていて、バミューダ君は手と足に防具をつけていることに気付いた。
(自然すぎて気付かなかった。でも……)
「バミューダ君に盗賊の相手をさせるの? 危なくない?」
バミューダ君の身体能力が高いのは理解しているが、戦闘能力は別だ。いきなり実践で戦うのは危ないと思って母さんに聞いたのだが……。
「大丈夫よ。心配なのは盗賊の命ね」
「大丈夫……です。ちゃんと、お母さんに教わった……です。狙っていいのは足や手だけ……です」
「その通りよ。ただし、深追いはせず、危ないと思ったらすぐに逃げること。いいわね?」
「はい! ……です!」
「よろしい。アレンもそんな心配そうな顔しないの。バミューダ君なら大丈夫よ」
母さんがそう言うなら大丈夫なのだろう。まだ少し心配だが、任せることにする。
そうしている間に、マリーナさん達の最終確認が終わった。
さぁ、いよいよ出発だ!
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