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第2章 森でのさばいばる生活
2−4 ほんとうのしあわせですの
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第2章 森でのさばいばる生活
2-4 ほんとうのしあわせですの
ルフェール公爵家での生活がはじまって、もう数日がたちました。
最初は緊張していたけれど、いまではリリアナの笑顔が屋敷じゅうに広がっています。
朝は大きな時計の鐘の音で目を覚まし、
おひさまの光が窓から差しこんできます。
「おはようございますのー!」
リリアナの声が、使用人たちの間でも人気の“合図”になっていました。
メイドたちはくすくす笑いながら、「お嬢さま、おはようございます」と頭を下げます。
リリアナは少し照れながらも、きちんと背筋を伸ばして言い返しました。
「おはようですの! きょうも いきてる! がんばる! ですの!」
***
公爵夫妻の朝食の席。
白いテーブルクロスの上に、パンとハム、そしてオムレツが並んでいます。
リリアナはフォークを両手で持って、真剣な顔で食べ方を練習中。
「うまく切れませんの……」
「焦らなくていいわ。ナイフは押すより“すべらせる”のよ。」
イザベラ夫人が優しく教えてくれます。
「すべらせる……? あっ、ほんとに切れましたの!」
「ふふふ。上手にできたね。」
公爵は新聞を読みながら、笑顔で二人を見守っていました。
「我が家がこんなににぎやかになるとはな……。ありがたいことだ。」
「おとうさま、なにか言いましたの?」
「いや、なんでもない。パンをおかわりするか?」
「するですの!」
リリアナは両手を上げてにっこり。
その姿に、使用人たちもつられて微笑みました。
***
午前は庭で花を摘む時間です。
イザベラ夫人といっしょにバスケットを持ち、
花壇の間を小走りで行ったり来たりします。
「このお花、においがあまいですの!」
「それは“ジャスミン”。夜になるともっと香りが強くなるのよ。」
「夜の花さん……すてきですの!」
リリアナはその花をそっと胸に抱きしめました。
「森のにおいとぜんぜんちがいますの。ここはあたたかいにおいですの。」
「あなたも、ここに咲く花のひとつですわ。」
イザベラ夫人が微笑みながら言うと、
リリアナのほっぺがほんのり赤くなりました。
「……おかあさま、ですの?」
「ええ。あなたにそう呼ばれるの、うれしいわ。」
「おかあさま……!」
リリアナはうれしそうに抱きつきました。
イザベラ夫人もやさしくその小さな体を包みこみます。
あの日、森の火のあかりのようだった温もりが、
いまでは“家族のあたたかさ”になっていました。
***
昼下がり、公爵は執務室で手紙を読んでいました。
眉がわずかに動きます。
「……なるほど。ローゼリア家の継母が、子どもを追放した件、
すでに王城でも問題になっているらしい。」
「当然ですわ。」
イザベラ夫人が紅茶をそっと置きました。
「八歳の子どもをひとり森に追いやるなんて、人のすることではありません。」
「だが王子の判断も軽率だった。
“子どもすぎる”という理由で婚約破棄とは……国の評判が下がるばかりだ。」
「ええ。でも、わたしたちにとっては“奇跡のきっかけ”になりましたわ。」
「……そうだな。」
公爵は窓の外を見やりました。
庭ではリリアナが蝶を追いかけて笑っていました。
青い空の下で、その笑顔はひときわ明るく輝いていました。
「……あの子がこの家に来てから、屋敷が明るくなったな。」
「ええ。
神さまは、彼女を罰したのではなく、導いたのですわ。
“ほんとうのしあわせ”へ。」
公爵は静かにうなずき、机の上の封書をひとつ取りました。
「この件、国王に正式に伝えよう。
あの子がどれほどの強さで生き抜いたか、報告せねばならん。」
***
そのころ、リリアナは屋敷の裏庭で、
小さな畑をこしらえていました。
スコップよりも重たい木の棒で、土をほりかえします。
「これが、“じぶんで作るごはん”ですの!」
隣で庭師があきれたように笑いました。
「お嬢さま、本当に働き者でいらっしゃる。」
「だって、森ではぜんぶじぶんでしましたの!」
小さな手で土をならし、
種をまいて、水をかけます。
水が太陽の光をうけてきらきら光りました。
「きっと、おいしいやさいさんができますの!」
「きっと、ね。」
リリアナは胸を張って笑いました。
***
夕方。
リリアナはベッドの上でミーナさんにもらったボタンを見つめていました。
お母さまの形見。
いつもポケットに入れていたそれを、
この屋敷に来てからはベッドの横に置いています。
「おかあさま、きょうもがんばりましたの。
いまはもう、さみしくないですの。
あたらしいおかあさまと、おとうさまがいますの。」
ボタンをぎゅっと握ると、
どこからかやさしい風がふきました。
まるで“よくできましたね”と褒められた気がしました。
リリアナは目をとじて、
両手を胸の前で合わせました。
> 「おかあさま、わたし、もうだいじょうぶですの。
ここが、わたしのしあわせの場所ですの。」
その言葉とともに、リリアナは微笑みながら眠りにつきました。
月の光がカーテンのすきまからこぼれ、
ベッドの上の小さな寝顔をそっと照らします。
それは、孤独な森の少女が“家族の愛”に包まれて眠る――
まるで祝福の夜のようでした。
こうして、リリアナの“さばいばるの日々”は終わり、
“ほんとうのしあわせ”が、静かに幕を開けたのです。
2-4 ほんとうのしあわせですの
ルフェール公爵家での生活がはじまって、もう数日がたちました。
最初は緊張していたけれど、いまではリリアナの笑顔が屋敷じゅうに広がっています。
朝は大きな時計の鐘の音で目を覚まし、
おひさまの光が窓から差しこんできます。
「おはようございますのー!」
リリアナの声が、使用人たちの間でも人気の“合図”になっていました。
メイドたちはくすくす笑いながら、「お嬢さま、おはようございます」と頭を下げます。
リリアナは少し照れながらも、きちんと背筋を伸ばして言い返しました。
「おはようですの! きょうも いきてる! がんばる! ですの!」
***
公爵夫妻の朝食の席。
白いテーブルクロスの上に、パンとハム、そしてオムレツが並んでいます。
リリアナはフォークを両手で持って、真剣な顔で食べ方を練習中。
「うまく切れませんの……」
「焦らなくていいわ。ナイフは押すより“すべらせる”のよ。」
イザベラ夫人が優しく教えてくれます。
「すべらせる……? あっ、ほんとに切れましたの!」
「ふふふ。上手にできたね。」
公爵は新聞を読みながら、笑顔で二人を見守っていました。
「我が家がこんなににぎやかになるとはな……。ありがたいことだ。」
「おとうさま、なにか言いましたの?」
「いや、なんでもない。パンをおかわりするか?」
「するですの!」
リリアナは両手を上げてにっこり。
その姿に、使用人たちもつられて微笑みました。
***
午前は庭で花を摘む時間です。
イザベラ夫人といっしょにバスケットを持ち、
花壇の間を小走りで行ったり来たりします。
「このお花、においがあまいですの!」
「それは“ジャスミン”。夜になるともっと香りが強くなるのよ。」
「夜の花さん……すてきですの!」
リリアナはその花をそっと胸に抱きしめました。
「森のにおいとぜんぜんちがいますの。ここはあたたかいにおいですの。」
「あなたも、ここに咲く花のひとつですわ。」
イザベラ夫人が微笑みながら言うと、
リリアナのほっぺがほんのり赤くなりました。
「……おかあさま、ですの?」
「ええ。あなたにそう呼ばれるの、うれしいわ。」
「おかあさま……!」
リリアナはうれしそうに抱きつきました。
イザベラ夫人もやさしくその小さな体を包みこみます。
あの日、森の火のあかりのようだった温もりが、
いまでは“家族のあたたかさ”になっていました。
***
昼下がり、公爵は執務室で手紙を読んでいました。
眉がわずかに動きます。
「……なるほど。ローゼリア家の継母が、子どもを追放した件、
すでに王城でも問題になっているらしい。」
「当然ですわ。」
イザベラ夫人が紅茶をそっと置きました。
「八歳の子どもをひとり森に追いやるなんて、人のすることではありません。」
「だが王子の判断も軽率だった。
“子どもすぎる”という理由で婚約破棄とは……国の評判が下がるばかりだ。」
「ええ。でも、わたしたちにとっては“奇跡のきっかけ”になりましたわ。」
「……そうだな。」
公爵は窓の外を見やりました。
庭ではリリアナが蝶を追いかけて笑っていました。
青い空の下で、その笑顔はひときわ明るく輝いていました。
「……あの子がこの家に来てから、屋敷が明るくなったな。」
「ええ。
神さまは、彼女を罰したのではなく、導いたのですわ。
“ほんとうのしあわせ”へ。」
公爵は静かにうなずき、机の上の封書をひとつ取りました。
「この件、国王に正式に伝えよう。
あの子がどれほどの強さで生き抜いたか、報告せねばならん。」
***
そのころ、リリアナは屋敷の裏庭で、
小さな畑をこしらえていました。
スコップよりも重たい木の棒で、土をほりかえします。
「これが、“じぶんで作るごはん”ですの!」
隣で庭師があきれたように笑いました。
「お嬢さま、本当に働き者でいらっしゃる。」
「だって、森ではぜんぶじぶんでしましたの!」
小さな手で土をならし、
種をまいて、水をかけます。
水が太陽の光をうけてきらきら光りました。
「きっと、おいしいやさいさんができますの!」
「きっと、ね。」
リリアナは胸を張って笑いました。
***
夕方。
リリアナはベッドの上でミーナさんにもらったボタンを見つめていました。
お母さまの形見。
いつもポケットに入れていたそれを、
この屋敷に来てからはベッドの横に置いています。
「おかあさま、きょうもがんばりましたの。
いまはもう、さみしくないですの。
あたらしいおかあさまと、おとうさまがいますの。」
ボタンをぎゅっと握ると、
どこからかやさしい風がふきました。
まるで“よくできましたね”と褒められた気がしました。
リリアナは目をとじて、
両手を胸の前で合わせました。
> 「おかあさま、わたし、もうだいじょうぶですの。
ここが、わたしのしあわせの場所ですの。」
その言葉とともに、リリアナは微笑みながら眠りにつきました。
月の光がカーテンのすきまからこぼれ、
ベッドの上の小さな寝顔をそっと照らします。
それは、孤独な森の少女が“家族の愛”に包まれて眠る――
まるで祝福の夜のようでした。
こうして、リリアナの“さばいばるの日々”は終わり、
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