貧乳シンデレラは、貧乳を理由に婚約破棄されましたが、元婚約者には未来の可能性が見えていませんでした。

しおしお

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20話  アンジェリカ、巨乳の価値が消える瞬間に全てを失う

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 アンジェリカ、巨乳の価値が消える瞬間に全てを失う

アンジェリカ・フラットは、王宮法廷から引きずられるように外へ連れ出された。

足は震え、涙で視界はぐしゃぐしゃ。
息は上手く吸えず、胸元を押さえながら何度も叫んだ。

「いやよ……いやああああ……
 巨乳が……武器じゃなくなる世界なんて……!」

だが、もはや彼女の叫びに耳を貸す者はいなかった。

王宮前の広場には、噂を聞きつけた貴族たちが集まっていた。
アンジェリカが姿を見せると、ざわつきがさらに強くなる。

「胸を武器にして貴族を誘惑していたらしいわよ」
「胸が大きいことを鼻にかけて、散々他人を見下して……」
「胸しか取り柄がなかったんじゃない?」

聞きたくない言葉ばかりだ。

アンジェリカの顔は、羞恥と恐怖で真っ赤になり、
その胸元は震える手で必死に隠されていた。

(どうして……
 どうして皆、巨乳を褒めてくれないの……?
 昨日まで私は“選ばれる女”だったのに……!)

彼女の人生は、巨乳こそ絶対の価値――
そう叩き込まれて形成された。

巨乳なら褒められる。
巨乳なら優しくされる。
巨乳なら未来が約束される。

母メリッサにそう教わり、
巨乳という一点だけを磨き続けてきた。

そのすべてが、今日。
一瞬で壊れた。

王子レオナードが胸差別を否定し、
シンディという“貧乳の娘”が国民に支持された。

“巨乳絶対至上主義”は崩壊したのだ。

アンジェリカは突然地面に膝をつき、
胸を抱えて泣きながら叫んだ。

「返して……返してよ!!
 私の価値を返してよ!!
 巨乳で生きてきたのに……
 巨乳だけが私の誇りだったのに……!!」

だが、その悲痛な叫びの対面に立ったのは――
かつて彼女が胸で誘惑し、利用しようとした若い騎士たちだった。

そのうち一人が、冷たく言い放った。

「アンジェリカ様。
 あなたが“胸の大きさ”だけで人を判断していた頃、
 どれだけの者が傷つけられたか、ご存知ですか?」

別の騎士が続ける。

「胸が小さい女性を見下し、嘲笑い、
 “自分より劣っている”と決めつけ、
 婚約まで破談に追い込んだと聞いています」

アンジェリカは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら叫んだ。

「だ、だって……そう教えられたのよ!!
 巨乳が一番、巨乳が価値のすべて、
 巨乳が……男を惹きつける唯一の力だって!!」

「その価値観はもう消えた」

騎士の言葉は、処刑宣告のように重かった。

「巨乳しか誇れない女は、
 もう誰からも選ばれない」

アンジェリカは絶句した。

(選ばれない……?
 私が……?
 胸が大きいのに……?)

彼女の世界ではあり得ないことだった。

だが――

現実はもっと残酷だった。

その瞬間、
城下からやってきた女性たちが、アンジェリカの前に並び、
静かに、しかしはっきり告げた。

「シンディ様を“貧乳”と侮辱した罪、許しません」
「胸だけを武器にした生き方では、もう誰にも相手にされません」
「あなたは胸が大きいだけの人。
 でも私たちは、胸以外にも価値がある」

アンジェリカの胸がきゅうっと締めつけられた。

(私だけが……
 何も持ってない……?)

ついに彼女は、震える声で呟いた。

「じゃあ……私は……
 胸を取ったら何も残らない女……?」

誰も否定しなかった。

それが、最も残酷な真実だったからだ。

アンジェリカは泣き崩れ、地面に伏した。

「いや……いやあああああ!!
 私は……巨乳で……生きてきたのに……
 巨乳を……否定されたら……
 私は……どうすればいいのよおおお……!!」

涙で顔を濡らしながら、地面を叩いて叫び続ける。

かつて胸を誇り、
胸で他者を見下し、
胸で未来を勝ち取れると信じていた少女は――

胸以外の価値を持つ者たちの前で、
完全に敗北した。

「巨乳絶対至上主義」は、この瞬間。
彼女と共に終焉を迎えたのだった。

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