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23話 王太子の焦燥と“白い結婚”の再確認
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王太子の焦燥と“白い結婚”の再確認
王城の執務室。
窓から差し込む朝の光は柔らかいはずなのに、アーロンの表情は暗かった。
机の上には、昨夜から放置したままの書簡が積まれている。
本来なら丁寧に返信すべき外交文書だが、いまの彼にはそれどころではなかった。
理由はただ一つ――
カチュアが昨日、義姉アンジェリカと何やら“濃密な女子会”をしていたらしい、という情報を耳にしたからだ。
「……女子会って、何をするんだ……?」
紙に書かれた文字を眺めながら、すでに集中などしていない。
報告を持ってきた側近セオドールは、アーロンの顔色を見てそっと距離を取った。
「殿下、深呼吸を。カチュア様は、自由に過ごしてよいと殿下ご自身が――」
「言った。……言ったけど……!」
アーロンは机に額をぶつける勢いで前に倒れ込んだ。
「なんで義姉とそんなに仲良くなるんだ……!?
しかも“巨乳絶対至上主義”のアンジェリカだぞ!?
うちの義姉だぞ!?
あの人、弟の婚約者だろうが容赦なく胸で序列つけるんだぞ!!」
セオドールは思わず背筋を伸ばした。
(殿下、嫉妬の方向がちょっと特殊です……)
アーロンは両手を握りしめ、さらに暴走する。
「カチュアは……ほら……控えめというか……柔らかそうで可愛らしい胸なのに……
あの巨乳絶対至上主義の義姉のそばに置いて大丈夫なのか……?」
「胸の問題ではないと思いますが……」
「ある!!」
なぜか力強く断言した。
「アンジェリカは“胸こそ正義”と言い切る女だ。
あの思想に触れたらカチュアが……洗脳されるかもしれないだろう!!」
「……」
(胸の宗教戦争が起こる……?)
セオドールの脳裏に、カチュアがアンジェリカに胸を揉まれて泣いている幻想が浮かび、軽く頭を振った。
アーロンは立ち上がり、急に真剣な顔になる。
「……俺は白い結婚を望んだ。
カチュアの自由を尊重すると誓った。
その誓いは……変わらない。絶対に。」
セオドールは黙って耳を傾ける。
アーロンは胸に手を当て、ふっと苦笑した。
「けど……気持ちは勝手に、彼女の方へ向かってしまうんだ。
白い結婚でいいと思っていたのは、俺だけだったのかもしれない。
彼女と距離が縮まるたびに――
“白いままじゃ、いられないかもしれない”って……考えてしまう。」
その声は、ごく小さく震えていた。
「でも、焦っても嫌われるだけだ。
……少しずつでいい。少しずつ、彼女に知ってもらいたい。」
その表情は決意に満ち、男としての影を帯びている。
セオドールは静かに頷いた。
「でしたら殿下。まずはお会いになって、きちんと――」
「行く!」
言うが早いか、アーロンは手袋を掴み、まっすぐ扉へ向かう。
「今からカチュアの家へ行く!!」
「殿下、仕事は!?書簡は!?」
「帰ってきてから全部やる!! 秒速で!!」
疾風の勢いで駆けていく王太子。
セオドールは深い溜息をつき、だが微笑んだ。
「……殿下、完全に恋をしておられる……」
そして、そっと机の書簡を整理しながら、ぽつり。
「アンジェリカ様……どうか殿下の婚約者を胸の沼に落とさないでください……」
執務室には、儚い祈りだけが残された。
王城の執務室。
窓から差し込む朝の光は柔らかいはずなのに、アーロンの表情は暗かった。
机の上には、昨夜から放置したままの書簡が積まれている。
本来なら丁寧に返信すべき外交文書だが、いまの彼にはそれどころではなかった。
理由はただ一つ――
カチュアが昨日、義姉アンジェリカと何やら“濃密な女子会”をしていたらしい、という情報を耳にしたからだ。
「……女子会って、何をするんだ……?」
紙に書かれた文字を眺めながら、すでに集中などしていない。
報告を持ってきた側近セオドールは、アーロンの顔色を見てそっと距離を取った。
「殿下、深呼吸を。カチュア様は、自由に過ごしてよいと殿下ご自身が――」
「言った。……言ったけど……!」
アーロンは机に額をぶつける勢いで前に倒れ込んだ。
「なんで義姉とそんなに仲良くなるんだ……!?
しかも“巨乳絶対至上主義”のアンジェリカだぞ!?
うちの義姉だぞ!?
あの人、弟の婚約者だろうが容赦なく胸で序列つけるんだぞ!!」
セオドールは思わず背筋を伸ばした。
(殿下、嫉妬の方向がちょっと特殊です……)
アーロンは両手を握りしめ、さらに暴走する。
「カチュアは……ほら……控えめというか……柔らかそうで可愛らしい胸なのに……
あの巨乳絶対至上主義の義姉のそばに置いて大丈夫なのか……?」
「胸の問題ではないと思いますが……」
「ある!!」
なぜか力強く断言した。
「アンジェリカは“胸こそ正義”と言い切る女だ。
あの思想に触れたらカチュアが……洗脳されるかもしれないだろう!!」
「……」
(胸の宗教戦争が起こる……?)
セオドールの脳裏に、カチュアがアンジェリカに胸を揉まれて泣いている幻想が浮かび、軽く頭を振った。
アーロンは立ち上がり、急に真剣な顔になる。
「……俺は白い結婚を望んだ。
カチュアの自由を尊重すると誓った。
その誓いは……変わらない。絶対に。」
セオドールは黙って耳を傾ける。
アーロンは胸に手を当て、ふっと苦笑した。
「けど……気持ちは勝手に、彼女の方へ向かってしまうんだ。
白い結婚でいいと思っていたのは、俺だけだったのかもしれない。
彼女と距離が縮まるたびに――
“白いままじゃ、いられないかもしれない”って……考えてしまう。」
その声は、ごく小さく震えていた。
「でも、焦っても嫌われるだけだ。
……少しずつでいい。少しずつ、彼女に知ってもらいたい。」
その表情は決意に満ち、男としての影を帯びている。
セオドールは静かに頷いた。
「でしたら殿下。まずはお会いになって、きちんと――」
「行く!」
言うが早いか、アーロンは手袋を掴み、まっすぐ扉へ向かう。
「今からカチュアの家へ行く!!」
「殿下、仕事は!?書簡は!?」
「帰ってきてから全部やる!! 秒速で!!」
疾風の勢いで駆けていく王太子。
セオドールは深い溜息をつき、だが微笑んだ。
「……殿下、完全に恋をしておられる……」
そして、そっと机の書簡を整理しながら、ぽつり。
「アンジェリカ様……どうか殿下の婚約者を胸の沼に落とさないでください……」
執務室には、儚い祈りだけが残された。
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