貧乳シンデレラは、貧乳を理由に婚約破棄されましたが、元婚約者には未来の可能性が見えていませんでした。

しおしお

文字の大きさ
24 / 32

24話  王子との絆、そして未来への決意

しおりを挟む
 王子との絆、そして未来への決意

王宮の小広間。
王妃教育の一日を終えたシンディは、深く息を吐き、窓の外に沈みゆく夕陽を見つめていた。

胸差別が根強く残る国で育った彼女にとって、
“王妃になるための教育”というのは、贅沢でもあり、恐れでもあった。

ドレスの選び方、外交の基本、舞踏、言語、歴史、さらには王族としての立ち居振る舞いまで。
教師たちは「胸の大小にとらわれない王妃」を育てようと、彼女の内面を徹底的に磨こうとしている。

シンディは机に置かれたテキストをそっと閉じた。

「……本当に私が、この国を変えていけるのかしら」

かつて“胸がない”と笑われ続けた彼女。
母を失い、継母メリッサと義姉アンジェリカに虐げられ、
婚約者だったアルブレイド公爵からは侮辱と嘲笑しか受けなかった日々。

だが――

「君は、胸なんかよりずっと……強くて、優しい」

温かな声が響き、シンディは振り返った。

レオナード王子だ。
今日の講義が終わる頃を見計らって、彼はいつもここに現れる。

「シンディ、今日もよく頑張ったね」

「……あの……私、本当に王妃にふさわしいのでしょうか?」

シンディは膝の上で指を絡め、不安を隠せなかった。

するとレオナードはゆっくり近づいてきて、
彼女の手をそっと握った。

「胸の形でも、衣装でもない。
 今日の君の表情を見れば分かる。
 国を支えたい、人々を守りたい――
 その気持ちが、誰よりも強い。」

胸差別の国で、胸を理由に蔑まれた令嬢。
その彼女が今、胸とは無関係の“心の美しさ”で国を支えようとしている。

シンディの視界がふわりと滲む。

「レオナード様は……私のどこを見て、そう思ってくださるの?」

「君が泣きながらも舞踏会へ行った夜、
 魔法が消えても、胸がどうであっても――
 君は誰よりも気高く、美しかった。」

その言葉は、シンディの胸の奥深くにまっすぐ届いた。

「私が好きなのは、胸の大きさではなく、
 君の強さ、優しさ、そして……生き方だ。」

シンディの頬に温かな涙が伝う。

レオナードはその涙を指先でそっと拭った。

「胸差別の国を変えたい。
 いや、君と一緒に変えたいんだ。」

シンディは胸に手を当て、はっきりと答えた。

「……私でよければ、どうかおそばで支えさせてください。
 胸の大きさではなく、人の心を大切にできる国を……私も作りたい。」

レオナードは優しく微笑む。

「心強いよ、シンディ。
 君がいてくれるだけで、どんな未来だって恐くない。」

そして二人は夕陽を背に並び立ち、
これから歩む新しい王国の未来を静かに見つめた。

胸ではなく――
心こそが女性の価値となる国を。

その始まりは、
“胸至上主義の国で蔑まれていた少女シンディ”の強さから生まれたものだった。


---

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
 婚約者である王太子からの突然の断罪!  それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。  しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。  味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。 「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」  エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。  そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。 「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」  義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

処理中です...