3 / 30
3 奪うための微笑み
しおりを挟む
3 奪うための微笑み
ギルベルト・ド・ロシュフォールがランベール侯爵家を訪れたのは、その三日後の午後だった。
晴れてはいたが、風の強い日だった。庭の若葉が騒がしく揺れ、空は青いのに落ち着かない。そんな空模様は、今日の来客に妙に似合っているとフィオレッタは思った。
ロシュフォール公爵家の馬車が正門をくぐったと知らせが入った時、彼女はちょうど書斎でアルディシア公国に関する資料を読んでいた。
地図。
気候。
交易品。
宮廷儀礼の差異。
他国へ嫁ぐことが現実になるなら、知らぬままでいるわけにはいかない。そう考えて読み始めたはずなのに、紙面の文字を追うたび、胸の奥では別の感情がざわつく。
これは前向きな準備なのだろうか。
それとも、捨てられる自分への慰めにすぎないのだろうか。
「お嬢様」
エマが入室して、少し困ったような顔で一礼した。
「ギルベルト様が、お嬢様にぜひお会いしたいと」
「断れないわね」
フィオレッタは資料を閉じた。
すでに、こうなることは予想していた。書面だけでは足りず、本人が来て、自分に納得しろと言いに来るのだろう。あるいは、これはお前のためでもあると、そんな都合のいい話でも持ってくるかもしれない。
ギルベルトはそういう男だ。
自分にとって自然な考えは、他人にとっても当然受け入れられると思っている。
「応接間?」
「はい。旦那様と奥様もご一緒です。カトリーヌ様も」
やはり、と思う。
一対一で話す気など、最初からないのだ。場を整え、空気を味方につけ、異を唱えづらくしてから押し切るつもりなのだろう。
フィオレッタは立ち上がった。
「行くわ」
鏡を見れば、顔色は悪くない。髪も乱れていない。淡い青のドレスも、侯爵家の長女として不足のないものだ。
けれど胸の内には、静かな怒りが沈んでいる。
怒鳴るつもりはなかった。
泣くつもりもなかった。
ただ、今日はきちんと見極めようと思っていた。この男が、どこまで本気で愚かなのかを。
応接間の扉の前で一度だけ足を止め、フィオレッタはゆっくり息を整えた。
中からは、義母のやわらかな笑い声と、カトリーヌの控えめな返事が聞こえる。その中に混じる低く落ち着いた男の声は、聞き慣れているはずなのに、今は妙に遠く思えた。
扉が開かれる。
視線が一斉にこちらへ向いた。
ギルベルト・ド・ロシュフォールは、窓際の椅子に悠然と腰掛けていた。濃紺の上着に銀糸の刺繍。整えられた黒髪に、冷ややかな灰色の瞳。外見だけ見れば、誰もが見惚れるだろう。名門公爵家の嫡男らしい威厳も華も持っている。
ただし、それが中身まで保証するわけではない。
「フィオレッタ」
彼は立ち上がりもしなかった。
当然のようにこちらの名を呼び、当然のように自分が場の中心である顔をしている。
「お待たせしてしまいましたわね、ギルベルト様」
フィオレッタは微笑みもせず、一礼だけした。
父が渋い顔でうなずく。
「座りなさい」
勧められた席は、ギルベルトの正面ではなく少し斜めの位置だった。まるで対等な対話ではなく、話を聞かされる側の場所のようで、少しだけ皮肉だった。
フィオレッタが腰を下ろすと、義母がいかにも場を和ませるような声音で言った。
「こうして皆で落ち着いて話し合えれば、きっとよい形にまとまりますわ」
よい形。
誰にとっての。
問いかけたくなったが、口にはしなかった。
ギルベルトは組んでいた足をほどき、ようやく口を開く。
「先日の件で、君に余計な動揺を与えたことは認めよう」
認めよう。
謝罪ではない。その言い方だけで、すでに多くがわかる。
「だが、感情的にならずに聞いてほしい。これは誰かを傷つけるための話ではない」
フィオレッタは静かに彼を見返した。
「では、何のためのお話なのですか」
「より適切な形へ整えるためだ」
あまりにも迷いのない返答に、一瞬だけ笑いそうになった。
より適切。
それは誰が決めるのだろう。少なくとも、婚約を破棄されかけている側ではないらしい。
ギルベルトは続ける。
「当初、私は君との婚約に異議を唱えるつもりはなかった。君は侯爵家の長女として不足なく教育されてきたし、ロシュフォール家に入る者としても体裁は整っている」
体裁。
その言葉の選び方に、フィオレッタは胸の奥が冷たくなるのを感じた。
「ですが?」
「だが、人と人との結びつきは、それだけでは足りない。婚約とは、家のためであると同時に、将来を共にする伴侶を定めるものでもある」
彼の視線が、そっとカトリーヌへ流れる。
義妹は、はっとしたように肩を揺らし、恥じらうようにうつむいた。
なんて出来のいい芝居かしら、とフィオレッタは思った。
いや、もう芝居ですらないのかもしれない。自分が望む物語に本人たちも酔っているのだ。
「カトリーヌ嬢と話すうちに、私は気づいたのだ」
ギルベルトは言った。
「守るべき相手とはどういうものかを」
その瞬間、フィオレッタはようやく理解した。
この男は、自分が恋愛劇の主人公にでもなったつもりなのだ。
怯える可憐な令嬢。
冷たい姉に抑えつけられていた妹。
そんな彼女を見出し、自分が救い出す。
あまりにも安っぽい筋書きだった。けれど傲慢な男にはちょうどいいのだろう。自分が一人で何もかも見抜いたつもりになれる物語なのだから。
「お言葉ですが」
フィオレッタは穏やかに口を開いた。
「その“気づき”は、婚約を交わした後であっても、正当化されるものなのでしょうか」
ギルベルトは眉をわずかに動かした。
「正当化?」
「はい。ギルベルト様は、私との婚約が家同士の正式な約束であることをご存じのはずです。それを覆してまで別の方を望むなら、そこには相応の責任が伴います」
父の視線が少しきつくなる。義母は不満げに唇を結んだ。
けれどフィオレッタは続ける。
「それともロシュフォール公爵家では、婚約とは後から気分で差し替えられる程度のものとお考えですか」
「フィオレッタ」
父がたしなめるように言った。
しかしギルベルトは制した。
「いや、構わない」
彼は椅子の背にもたれ、どこか余裕ぶった口調で返した。
「君が不満を覚えるのは理解できる。だが、物事には優先順位がある。誤った組み合わせのまま婚姻を進めるより、今のうちに正す方が家のためでもある」
「誤った組み合わせ」
「そうだ」
「私とギルベルト様の婚約が?」
「率直に言えば」
言い切った。
その瞬間、カトリーヌが小さく息を呑む。義母は「まあ」とでも言いたげに眉をひそめ、父はますます顔を険しくする。
だがフィオレッタは、不思議なほど落ち着いていた。
痛くないわけではない。
けれど、ここまで明確に言われれば、もはや未練の入り込む余地もなかった。
「どのあたりが誤っていたのでしょう」
「君は優秀だ」
ギルベルトは言った。
「だが優秀すぎる。常に正しく、隙がない。私に対しても、婚約者というよりは義務として接していた」
「義務でしたもの」
思わずそう返すと、彼は少し眉を寄せた。
「その物言いだ。君には温かみがない」
まるでこちらが悪いとでもいう口ぶりだった。
フィオレッタは彼を見つめたまま、静かに言う。
「温かみとは、何でしょう」
「男を立て、寄り添い、支えようとする柔らかさだ」
「私はこれまで、十分に礼を尽くしてきたつもりです」
「礼は尽くしただろう。だが、それだけだ」
ギルベルトの視線はもう、まるで判決を下す側のものだった。
「君は、私を必要としているようには見えなかった」
なんて勝手なのだろう、とフィオレッタは思った。
必要としているように見えなかった。
だから婚約者として不足だと。
では自分は、どれだけこの男に歩調を合わせてきたのだろう。招かれた場では彼の顔を立て、好みに合わせて話題を選び、家格に恥じぬよう装いを整え、未来の公爵夫人として不足がないよう振る舞ってきた。
それを彼は「義務だから」と見なし、今度は「もっと頼れ」「もっとすがれ」と言う。
どこまでいっても、自分の気分が基準なのだ。
「カトリーヌ様は、そう見えたのですね」
フィオレッタがそう尋ねると、ギルベルトは当然のようにうなずいた。
「彼女は私を必要としていた」
カトリーヌが恥じらうように顔を伏せる。
「ギルベルト様、そんな……」
「遠慮する必要はない」
やさしい声音だった。
フィオレッタには一度も向けられたことのない、甘く庇うような響き。
けれどそれすら、今は滑稽に見えた。必要とされる自分に酔っているだけだ。この男は、誰かを守りたいのではない。守られるにふさわしい自分を演じたいだけなのだ。
「お姉様」
カトリーヌが、おずおずと口を開いた。
「私、ギルベルト様を困らせたいわけではありませんの。ただ……お姉様とギルベルト様が、あまりにもよそよそしく見えてしまって……」
「だから、哀れに思われるような話をしたの?」
フィオレッタがそう返すと、カトリーヌはびくりと肩を揺らした。
「わ、私はそんなつもりでは……」
「では、どういうつもりだったのかしら」
「お姉様が怖かったのです」
ぽろりと涙がこぼれる。
もう見飽きたほど美しい涙だった。
「お姉様はいつも正しくて、何でもおできになって、私が間違えると静かに注意なさるでしょう? 私……それが、ずっと……」
「怖かった?」
フィオレッタは繰り返した。
自分でも驚くほど冷えた声が出た。
「あなたを叩いたことがあったかしら。食事を抜いた? 部屋に閉じ込めた? 社交の場で恥をかかせた?」
「そ、そうではなくて……」
「では何をもって怖いと?」
カトリーヌはうつむき、すすり泣く。
答えられないのだ。実際には何もされていないから。ただ、自分より優秀で、自分より理性的で、自分より屋敷の空気を読める姉が目障りだっただけだろう。
義母がすかさず口を挟む。
「フィオレッタさん、妹を追い詰めるのはおやめなさい」
「追い詰めてなどおりませんわ。ただ事実を確かめているだけです」
「あなたはいつだってそう。正しいことばかり言って、人の気持ちを考えない」
フィオレッタはそこで、義母の顔を見た。
この人もまた同じなのだ。気持ち、気持ち、と言いながら、守るのはいつもカトリーヌの気持ちだけ。フィオレッタの側に感情があるとは、最初から考えていない。
「では、お義母様は私の気持ちをお考えになったことがございますか」
義母が目を見張る。
おそらく、真っ向からそう返されるとは思っていなかったのだろう。
「私は婚約者を奪われようとしています。名誉も、将来も、社交上の立場も揺らいでいます。それでもなお、妹が泣いているから譲れとおっしゃるのですか」
「譲れなどとは……」
「そういうことではありませんか」
父が低い声を落とした。
「そこまでだ、フィオレッタ」
ぴたりと空気が止まる。
フィオレッタは口を閉じた。父の声には明らかな警告があった。この場を荒立てるな、というより、これ以上自分たちの都合の悪い本質を言葉にするな、という警告に近い。
ギルベルトが、わずかにため息をつく。
「君も感情的になるのだな」
その言葉に、さすがにフィオレッタも少し笑った。
「ええ。驚かれました? 私にも感情はありますの」
「皮肉を言うのはやめろ」
「皮肉ではなく事実ですわ」
ギルベルトの目が少しだけ冷たくなる。
この男は、自分に従わないものを好まない。昔からそうだった。意見を求めるふりをして、実際には同意しか許さない。だからこそ、従順で頼ってくるカトリーヌの方が居心地よく映るのだろう。
フィオレッタはふと、妙にすっきりした気持ちになっている自分に気づいた。
ああ、そうか。
私はこの人に愛されていたわけではないのだ。
ただ、彼の隣に置いて見栄えのする婚約者だっただけ。
そして今、その役目を別の娘に替えたい。それだけのことなのだ。
「ギルベルト様」
フィオレッタは、落ち着いた声で言った。
「最後にひとつ、お聞きしてもよろしいですか」
「何だ」
「もし私が泣いて縋ったなら、お考えを変えましたか」
部屋の空気が一瞬で張りつめた。
ギルベルトは答えなかった。
答えられなかったのではない。そんな仮定自体が、彼にとって想定外だったのだろう。
「おそらく変えませんわね」
フィオレッタは自分で答えた。
「なぜなら、すでに決めていらっしゃるから。私が何を思おうと、どう傷つこうと関係なく」
「それは違う」
ようやくギルベルトが口を開く。
「私は君にも相応しい道を与えようとしている」
「相応しい道」
「アルディシア公爵は、君のような女にはむしろ合っている。冷静で、理知的で、完璧な令嬢だ。君の能力も生かせるだろう」
まるで、捨てる代わりに転職先を斡旋してやる、とでも言うような口調だった。
フィオレッタは、ほんの少しだけ首を傾げる。
「では、私は役に立ちそうな場所へ配置換えされる品物なのですね」
「極端な言い方をするな」
「極端でしょうか」
ギルベルトは苛立ったように眉を寄せた。
「君は昔からそうだ。言葉尻を捕らえて本質を見失う」
「本質なら見えておりますわ」
フィオレッタははっきりと言った。
「あなたは、自分にとって都合のいい女を選んだのです」
カトリーヌがびくりと震える。
義母が何か言いかけたが、その前に父が立ち上がった。
「もうよい」
低く重い声だった。
「これ以上は無益だ」
父はギルベルトへ向き直る。
「本日のところはここまでにいたしましょう、公子」
「……承知した」
ギルベルトは不満げではあったが、立ち上がった。
カトリーヌも慌てて腰を上げる。
その時だった。
「ギルベルト様」
フィオレッタが呼び止める。
彼が振り返る。灰色の瞳がこちらを射抜いた。
「まだ何かあるのか」
「ええ。ございますわ」
フィオレッタはまっすぐに彼を見た。
「本日、よくわかりました」
「何がだ」
「あなたが、どなたを選んだのかではなく」
一拍置いて、彼女は言った。
「どの程度の方だったのかが、です」
義母が息を呑み、カトリーヌが顔をこわばらせる。
ギルベルトの表情が初めてはっきりと崩れた。怒りと驚きが混ざった顔だった。
「……ずいぶんな言いようだな」
「事実ですもの」
フィオレッタは微笑まなかった。
「婚約を交わした相手に対する礼も、責任もなく、ただご自分が気分よくいられる相手へ乗り換える。それを高尚な選択のように語っていらっしゃる。正直、失望いたしました」
「フィオレッタ!」
父が鋭く名を呼ぶ。
けれどもう止まらなかった。
「あなたは私を温かみがないと仰ったけれど、温かみとは甘やかしのことではありませんわ。相手の人生を軽く扱わないこともまた、情というものでしょう」
ギルベルトの目が冷えきる。
「言いたいことはそれだけか」
「ええ」
「ならば覚えておけ。君はいずれ、この決断が正しかったと知る」
そう言い捨て、彼は踵を返した。
カトリーヌも慌ててその後を追う。通り過ぎる瞬間、義妹は一瞬だけフィオレッタを見た。その目には怯えと、勝ち取った者の安堵が同時に浮かんでいた。
なんて醜い顔だろう、とフィオレッタは思った。
扉が閉まる。
応接間に重苦しい沈黙が落ちた。
父は額に手を当て、深く息を吐く。義母は明らかに不満そうだったが、今はもうフィオレッタを責める言葉さえ見つからないらしい。
「……下がりなさい」
父が疲れた声で言った。
フィオレッタは何も言わず、一礼して部屋を出た。
廊下に出た途端、足から力が抜けそうになる。
けれど倒れはしなかった。
壁に手をつき、目を閉じる。
悲しいのか、悔しいのか、怒っているのか、自分でももううまく言えなかった。ただ、胸の中で長く張っていた糸が、ようやく切れたような気がした。
あの男はもう、婚約者ではない。
名目の上ではまだ何か手続きが残っていようと、フィオレッタの心の中では、今、完全に終わった。
「お嬢様」
振り返ると、エマが少し先で待っていた。
「お顔の色が……」
「大丈夫よ」
言いかけて、やめる。
「……いいえ。大丈夫ではないわね」
エマの瞳が揺れた。
フィオレッタはかすかに息を吐く。
「でも、すっきりしたの。驚くほど」
「お嬢様」
「私、まだどこかで期待していたのかもしれないわ。せめて、きちんとした理由があるのではないかって。私との年月に、少しは誠意があったのではないかって」
けれど違った。
あれはただの選別だった。
自分を気分よくさせる女と、そうでない女。
それだけのこと。
「資料を続けましょう」
「今すぐでございますか」
「ええ」
フィオレッタは顔を上げた。
「もう迷っている時間はないもの」
エマは涙ぐみそうな顔で、それでも力強くうなずいた。
「かしこまりました」
自室へ戻る道すがら、窓の外で風がますます強くなっていた。枝がしなり、若葉がざわめく。
何かが大きく動いている。
それはきっと、もう止められない。
けれど少なくとも、フィオレッタは確かに知ったのだ。
奪われつつあるものが何で、失う相手がどんな男かを。
それを知った今、ただ泣いて終わるつもりはなかった。
ギルベルト・ド・ロシュフォールがランベール侯爵家を訪れたのは、その三日後の午後だった。
晴れてはいたが、風の強い日だった。庭の若葉が騒がしく揺れ、空は青いのに落ち着かない。そんな空模様は、今日の来客に妙に似合っているとフィオレッタは思った。
ロシュフォール公爵家の馬車が正門をくぐったと知らせが入った時、彼女はちょうど書斎でアルディシア公国に関する資料を読んでいた。
地図。
気候。
交易品。
宮廷儀礼の差異。
他国へ嫁ぐことが現実になるなら、知らぬままでいるわけにはいかない。そう考えて読み始めたはずなのに、紙面の文字を追うたび、胸の奥では別の感情がざわつく。
これは前向きな準備なのだろうか。
それとも、捨てられる自分への慰めにすぎないのだろうか。
「お嬢様」
エマが入室して、少し困ったような顔で一礼した。
「ギルベルト様が、お嬢様にぜひお会いしたいと」
「断れないわね」
フィオレッタは資料を閉じた。
すでに、こうなることは予想していた。書面だけでは足りず、本人が来て、自分に納得しろと言いに来るのだろう。あるいは、これはお前のためでもあると、そんな都合のいい話でも持ってくるかもしれない。
ギルベルトはそういう男だ。
自分にとって自然な考えは、他人にとっても当然受け入れられると思っている。
「応接間?」
「はい。旦那様と奥様もご一緒です。カトリーヌ様も」
やはり、と思う。
一対一で話す気など、最初からないのだ。場を整え、空気を味方につけ、異を唱えづらくしてから押し切るつもりなのだろう。
フィオレッタは立ち上がった。
「行くわ」
鏡を見れば、顔色は悪くない。髪も乱れていない。淡い青のドレスも、侯爵家の長女として不足のないものだ。
けれど胸の内には、静かな怒りが沈んでいる。
怒鳴るつもりはなかった。
泣くつもりもなかった。
ただ、今日はきちんと見極めようと思っていた。この男が、どこまで本気で愚かなのかを。
応接間の扉の前で一度だけ足を止め、フィオレッタはゆっくり息を整えた。
中からは、義母のやわらかな笑い声と、カトリーヌの控えめな返事が聞こえる。その中に混じる低く落ち着いた男の声は、聞き慣れているはずなのに、今は妙に遠く思えた。
扉が開かれる。
視線が一斉にこちらへ向いた。
ギルベルト・ド・ロシュフォールは、窓際の椅子に悠然と腰掛けていた。濃紺の上着に銀糸の刺繍。整えられた黒髪に、冷ややかな灰色の瞳。外見だけ見れば、誰もが見惚れるだろう。名門公爵家の嫡男らしい威厳も華も持っている。
ただし、それが中身まで保証するわけではない。
「フィオレッタ」
彼は立ち上がりもしなかった。
当然のようにこちらの名を呼び、当然のように自分が場の中心である顔をしている。
「お待たせしてしまいましたわね、ギルベルト様」
フィオレッタは微笑みもせず、一礼だけした。
父が渋い顔でうなずく。
「座りなさい」
勧められた席は、ギルベルトの正面ではなく少し斜めの位置だった。まるで対等な対話ではなく、話を聞かされる側の場所のようで、少しだけ皮肉だった。
フィオレッタが腰を下ろすと、義母がいかにも場を和ませるような声音で言った。
「こうして皆で落ち着いて話し合えれば、きっとよい形にまとまりますわ」
よい形。
誰にとっての。
問いかけたくなったが、口にはしなかった。
ギルベルトは組んでいた足をほどき、ようやく口を開く。
「先日の件で、君に余計な動揺を与えたことは認めよう」
認めよう。
謝罪ではない。その言い方だけで、すでに多くがわかる。
「だが、感情的にならずに聞いてほしい。これは誰かを傷つけるための話ではない」
フィオレッタは静かに彼を見返した。
「では、何のためのお話なのですか」
「より適切な形へ整えるためだ」
あまりにも迷いのない返答に、一瞬だけ笑いそうになった。
より適切。
それは誰が決めるのだろう。少なくとも、婚約を破棄されかけている側ではないらしい。
ギルベルトは続ける。
「当初、私は君との婚約に異議を唱えるつもりはなかった。君は侯爵家の長女として不足なく教育されてきたし、ロシュフォール家に入る者としても体裁は整っている」
体裁。
その言葉の選び方に、フィオレッタは胸の奥が冷たくなるのを感じた。
「ですが?」
「だが、人と人との結びつきは、それだけでは足りない。婚約とは、家のためであると同時に、将来を共にする伴侶を定めるものでもある」
彼の視線が、そっとカトリーヌへ流れる。
義妹は、はっとしたように肩を揺らし、恥じらうようにうつむいた。
なんて出来のいい芝居かしら、とフィオレッタは思った。
いや、もう芝居ですらないのかもしれない。自分が望む物語に本人たちも酔っているのだ。
「カトリーヌ嬢と話すうちに、私は気づいたのだ」
ギルベルトは言った。
「守るべき相手とはどういうものかを」
その瞬間、フィオレッタはようやく理解した。
この男は、自分が恋愛劇の主人公にでもなったつもりなのだ。
怯える可憐な令嬢。
冷たい姉に抑えつけられていた妹。
そんな彼女を見出し、自分が救い出す。
あまりにも安っぽい筋書きだった。けれど傲慢な男にはちょうどいいのだろう。自分が一人で何もかも見抜いたつもりになれる物語なのだから。
「お言葉ですが」
フィオレッタは穏やかに口を開いた。
「その“気づき”は、婚約を交わした後であっても、正当化されるものなのでしょうか」
ギルベルトは眉をわずかに動かした。
「正当化?」
「はい。ギルベルト様は、私との婚約が家同士の正式な約束であることをご存じのはずです。それを覆してまで別の方を望むなら、そこには相応の責任が伴います」
父の視線が少しきつくなる。義母は不満げに唇を結んだ。
けれどフィオレッタは続ける。
「それともロシュフォール公爵家では、婚約とは後から気分で差し替えられる程度のものとお考えですか」
「フィオレッタ」
父がたしなめるように言った。
しかしギルベルトは制した。
「いや、構わない」
彼は椅子の背にもたれ、どこか余裕ぶった口調で返した。
「君が不満を覚えるのは理解できる。だが、物事には優先順位がある。誤った組み合わせのまま婚姻を進めるより、今のうちに正す方が家のためでもある」
「誤った組み合わせ」
「そうだ」
「私とギルベルト様の婚約が?」
「率直に言えば」
言い切った。
その瞬間、カトリーヌが小さく息を呑む。義母は「まあ」とでも言いたげに眉をひそめ、父はますます顔を険しくする。
だがフィオレッタは、不思議なほど落ち着いていた。
痛くないわけではない。
けれど、ここまで明確に言われれば、もはや未練の入り込む余地もなかった。
「どのあたりが誤っていたのでしょう」
「君は優秀だ」
ギルベルトは言った。
「だが優秀すぎる。常に正しく、隙がない。私に対しても、婚約者というよりは義務として接していた」
「義務でしたもの」
思わずそう返すと、彼は少し眉を寄せた。
「その物言いだ。君には温かみがない」
まるでこちらが悪いとでもいう口ぶりだった。
フィオレッタは彼を見つめたまま、静かに言う。
「温かみとは、何でしょう」
「男を立て、寄り添い、支えようとする柔らかさだ」
「私はこれまで、十分に礼を尽くしてきたつもりです」
「礼は尽くしただろう。だが、それだけだ」
ギルベルトの視線はもう、まるで判決を下す側のものだった。
「君は、私を必要としているようには見えなかった」
なんて勝手なのだろう、とフィオレッタは思った。
必要としているように見えなかった。
だから婚約者として不足だと。
では自分は、どれだけこの男に歩調を合わせてきたのだろう。招かれた場では彼の顔を立て、好みに合わせて話題を選び、家格に恥じぬよう装いを整え、未来の公爵夫人として不足がないよう振る舞ってきた。
それを彼は「義務だから」と見なし、今度は「もっと頼れ」「もっとすがれ」と言う。
どこまでいっても、自分の気分が基準なのだ。
「カトリーヌ様は、そう見えたのですね」
フィオレッタがそう尋ねると、ギルベルトは当然のようにうなずいた。
「彼女は私を必要としていた」
カトリーヌが恥じらうように顔を伏せる。
「ギルベルト様、そんな……」
「遠慮する必要はない」
やさしい声音だった。
フィオレッタには一度も向けられたことのない、甘く庇うような響き。
けれどそれすら、今は滑稽に見えた。必要とされる自分に酔っているだけだ。この男は、誰かを守りたいのではない。守られるにふさわしい自分を演じたいだけなのだ。
「お姉様」
カトリーヌが、おずおずと口を開いた。
「私、ギルベルト様を困らせたいわけではありませんの。ただ……お姉様とギルベルト様が、あまりにもよそよそしく見えてしまって……」
「だから、哀れに思われるような話をしたの?」
フィオレッタがそう返すと、カトリーヌはびくりと肩を揺らした。
「わ、私はそんなつもりでは……」
「では、どういうつもりだったのかしら」
「お姉様が怖かったのです」
ぽろりと涙がこぼれる。
もう見飽きたほど美しい涙だった。
「お姉様はいつも正しくて、何でもおできになって、私が間違えると静かに注意なさるでしょう? 私……それが、ずっと……」
「怖かった?」
フィオレッタは繰り返した。
自分でも驚くほど冷えた声が出た。
「あなたを叩いたことがあったかしら。食事を抜いた? 部屋に閉じ込めた? 社交の場で恥をかかせた?」
「そ、そうではなくて……」
「では何をもって怖いと?」
カトリーヌはうつむき、すすり泣く。
答えられないのだ。実際には何もされていないから。ただ、自分より優秀で、自分より理性的で、自分より屋敷の空気を読める姉が目障りだっただけだろう。
義母がすかさず口を挟む。
「フィオレッタさん、妹を追い詰めるのはおやめなさい」
「追い詰めてなどおりませんわ。ただ事実を確かめているだけです」
「あなたはいつだってそう。正しいことばかり言って、人の気持ちを考えない」
フィオレッタはそこで、義母の顔を見た。
この人もまた同じなのだ。気持ち、気持ち、と言いながら、守るのはいつもカトリーヌの気持ちだけ。フィオレッタの側に感情があるとは、最初から考えていない。
「では、お義母様は私の気持ちをお考えになったことがございますか」
義母が目を見張る。
おそらく、真っ向からそう返されるとは思っていなかったのだろう。
「私は婚約者を奪われようとしています。名誉も、将来も、社交上の立場も揺らいでいます。それでもなお、妹が泣いているから譲れとおっしゃるのですか」
「譲れなどとは……」
「そういうことではありませんか」
父が低い声を落とした。
「そこまでだ、フィオレッタ」
ぴたりと空気が止まる。
フィオレッタは口を閉じた。父の声には明らかな警告があった。この場を荒立てるな、というより、これ以上自分たちの都合の悪い本質を言葉にするな、という警告に近い。
ギルベルトが、わずかにため息をつく。
「君も感情的になるのだな」
その言葉に、さすがにフィオレッタも少し笑った。
「ええ。驚かれました? 私にも感情はありますの」
「皮肉を言うのはやめろ」
「皮肉ではなく事実ですわ」
ギルベルトの目が少しだけ冷たくなる。
この男は、自分に従わないものを好まない。昔からそうだった。意見を求めるふりをして、実際には同意しか許さない。だからこそ、従順で頼ってくるカトリーヌの方が居心地よく映るのだろう。
フィオレッタはふと、妙にすっきりした気持ちになっている自分に気づいた。
ああ、そうか。
私はこの人に愛されていたわけではないのだ。
ただ、彼の隣に置いて見栄えのする婚約者だっただけ。
そして今、その役目を別の娘に替えたい。それだけのことなのだ。
「ギルベルト様」
フィオレッタは、落ち着いた声で言った。
「最後にひとつ、お聞きしてもよろしいですか」
「何だ」
「もし私が泣いて縋ったなら、お考えを変えましたか」
部屋の空気が一瞬で張りつめた。
ギルベルトは答えなかった。
答えられなかったのではない。そんな仮定自体が、彼にとって想定外だったのだろう。
「おそらく変えませんわね」
フィオレッタは自分で答えた。
「なぜなら、すでに決めていらっしゃるから。私が何を思おうと、どう傷つこうと関係なく」
「それは違う」
ようやくギルベルトが口を開く。
「私は君にも相応しい道を与えようとしている」
「相応しい道」
「アルディシア公爵は、君のような女にはむしろ合っている。冷静で、理知的で、完璧な令嬢だ。君の能力も生かせるだろう」
まるで、捨てる代わりに転職先を斡旋してやる、とでも言うような口調だった。
フィオレッタは、ほんの少しだけ首を傾げる。
「では、私は役に立ちそうな場所へ配置換えされる品物なのですね」
「極端な言い方をするな」
「極端でしょうか」
ギルベルトは苛立ったように眉を寄せた。
「君は昔からそうだ。言葉尻を捕らえて本質を見失う」
「本質なら見えておりますわ」
フィオレッタははっきりと言った。
「あなたは、自分にとって都合のいい女を選んだのです」
カトリーヌがびくりと震える。
義母が何か言いかけたが、その前に父が立ち上がった。
「もうよい」
低く重い声だった。
「これ以上は無益だ」
父はギルベルトへ向き直る。
「本日のところはここまでにいたしましょう、公子」
「……承知した」
ギルベルトは不満げではあったが、立ち上がった。
カトリーヌも慌てて腰を上げる。
その時だった。
「ギルベルト様」
フィオレッタが呼び止める。
彼が振り返る。灰色の瞳がこちらを射抜いた。
「まだ何かあるのか」
「ええ。ございますわ」
フィオレッタはまっすぐに彼を見た。
「本日、よくわかりました」
「何がだ」
「あなたが、どなたを選んだのかではなく」
一拍置いて、彼女は言った。
「どの程度の方だったのかが、です」
義母が息を呑み、カトリーヌが顔をこわばらせる。
ギルベルトの表情が初めてはっきりと崩れた。怒りと驚きが混ざった顔だった。
「……ずいぶんな言いようだな」
「事実ですもの」
フィオレッタは微笑まなかった。
「婚約を交わした相手に対する礼も、責任もなく、ただご自分が気分よくいられる相手へ乗り換える。それを高尚な選択のように語っていらっしゃる。正直、失望いたしました」
「フィオレッタ!」
父が鋭く名を呼ぶ。
けれどもう止まらなかった。
「あなたは私を温かみがないと仰ったけれど、温かみとは甘やかしのことではありませんわ。相手の人生を軽く扱わないこともまた、情というものでしょう」
ギルベルトの目が冷えきる。
「言いたいことはそれだけか」
「ええ」
「ならば覚えておけ。君はいずれ、この決断が正しかったと知る」
そう言い捨て、彼は踵を返した。
カトリーヌも慌ててその後を追う。通り過ぎる瞬間、義妹は一瞬だけフィオレッタを見た。その目には怯えと、勝ち取った者の安堵が同時に浮かんでいた。
なんて醜い顔だろう、とフィオレッタは思った。
扉が閉まる。
応接間に重苦しい沈黙が落ちた。
父は額に手を当て、深く息を吐く。義母は明らかに不満そうだったが、今はもうフィオレッタを責める言葉さえ見つからないらしい。
「……下がりなさい」
父が疲れた声で言った。
フィオレッタは何も言わず、一礼して部屋を出た。
廊下に出た途端、足から力が抜けそうになる。
けれど倒れはしなかった。
壁に手をつき、目を閉じる。
悲しいのか、悔しいのか、怒っているのか、自分でももううまく言えなかった。ただ、胸の中で長く張っていた糸が、ようやく切れたような気がした。
あの男はもう、婚約者ではない。
名目の上ではまだ何か手続きが残っていようと、フィオレッタの心の中では、今、完全に終わった。
「お嬢様」
振り返ると、エマが少し先で待っていた。
「お顔の色が……」
「大丈夫よ」
言いかけて、やめる。
「……いいえ。大丈夫ではないわね」
エマの瞳が揺れた。
フィオレッタはかすかに息を吐く。
「でも、すっきりしたの。驚くほど」
「お嬢様」
「私、まだどこかで期待していたのかもしれないわ。せめて、きちんとした理由があるのではないかって。私との年月に、少しは誠意があったのではないかって」
けれど違った。
あれはただの選別だった。
自分を気分よくさせる女と、そうでない女。
それだけのこと。
「資料を続けましょう」
「今すぐでございますか」
「ええ」
フィオレッタは顔を上げた。
「もう迷っている時間はないもの」
エマは涙ぐみそうな顔で、それでも力強くうなずいた。
「かしこまりました」
自室へ戻る道すがら、窓の外で風がますます強くなっていた。枝がしなり、若葉がざわめく。
何かが大きく動いている。
それはきっと、もう止められない。
けれど少なくとも、フィオレッタは確かに知ったのだ。
奪われつつあるものが何で、失う相手がどんな男かを。
それを知った今、ただ泣いて終わるつもりはなかった。
56
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵夫人フルールは、夫である伯爵と愛人の秘書に長年頭を悩ませていた。
何度夫に苦言を呈しても「彼女は仕事において必要不可欠なパートナーだから」と一切聞く耳を持たない。
困り果てていたそのとき、彼女は突然前世の記憶を取り戻した。
このままだと夫と愛人の真実の愛の犠牲になってしまう。
それだけは御免だ。
結婚五年目にして、彼女はようやく夫を見限り、新たな事業を立ち上げた。
そして事業を成功させたフルールの隣には、いつも同じ男が立っていた。
その男は誰なのかと問い詰める夫に、フルールはニッコリ笑って言った。
「彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです」と。
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
あなたの思い通りにはならない
木蓮
恋愛
自分を憎む婚約者との婚約解消を望んでいるシンシアは、婚約者が彼が理想とする女性像を形にしたような男爵令嬢と惹かれあっていることを知り2人の仲を応援する。
しかし、男爵令嬢を愛しながらもシンシアに執着する身勝手な婚約者に我慢の限界をむかえ、彼を切り捨てることにした。
*後半のざまあ部分に匂わせ程度に薬物を使って人を陥れる描写があります。苦手な方はご注意ください。
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
三年分の涙を飲み込んで離婚を決めた私に、今さら愛してると言わないでください
まさき
恋愛
「別れてください」
笑顔で、声を震わせずに、澄花はそう言った。
三年間、夫の隣に立ち続けた。残業続きの夫を待ち、不満を飲み込み、完璧な妻を演じた。幼なじみの麗奈が現れるまでは、それが愛だと信じていた。
嫉妬も、怒りも、とうに泣き尽くしていた。残ったのは、静かな決意だけだった。
離婚届を差し出した翌朝、夫・誠は初めて泣いた。
――遅すぎる。三年分、遅すぎる。
幼なじみに夫を奪われかけた妻が、すべてを手放す覚悟をしたとき、夫はようやく目を覚ます。泣き終わった女の強さと、取り戻せないものの重さを描く、夫婦の崩壊と再生の物語。
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる