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17 手紙の温度差
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17 手紙の温度差
カトリーヌからの手紙は、その後も途切れはしなかった。
ただし、それは安心できるという意味ではない。
むしろ逆だった。
数は届く。文面も丁寧だ。けれど、どれも同じ温度をしているのだ。
お母様、ご心配には及びません。
お父様、ロシュフォール家の皆様は礼を尽くしてくださっています。
実家の皆様もどうかご安心ください。
ギルベルト様は、私を大切にしてくださっています。
まるで型紙でもあるように、言葉が繰り返される。
紙も上質、文字も整然、内容も破綻がない。だがだからこそ、そこに生身のカトリーヌが見えなかった。
義母は日に日にその手紙を読むのが怖くなっているようだった。
届けば飛びつくように封を切る。けれど読み終える頃には、いつも顔色を失っている。
「同じなのよ」
ある日、義母は居間でそう呟いた。
手元には、今朝届いたばかりの便箋がある。
「季節の挨拶の位置まで、前とほとんど同じ……。違うのは、花の名前と天気の話くらいで」
フィオレッタは少し離れた席で本を閉じた。
「誰かに見せても差し障りのない文ばかりなのね」
義母がはっとしたように顔を上げる。
「あなたもそう思うでしょう?」
「ええ」
もう否定の余地はない。
これは“無事を知らせる娘の手紙”ではなく、“無事だと知らせておきたい誰か”の手紙だ。
義母は膝の上で便箋を握りしめた。
「私、何度も返事を書いているのに。体調はどう、眠れているの、食事は取れているの、困ったことはないのって……」
「そして返ってくるのは、何も問題ありません、でしょう」
「そうよ……」
義母の声は弱かった。
フィオレッタは窓の外を見た。
初夏の陽射しが庭の芝を照らし、白い薔薇が風に揺れている。見慣れた庭だ。けれど最近、その景色に妙な距離を感じることが増えた。もうここは、自分が長くとどまる場所ではないのだと、身体のどこかが先に理解し始めているのかもしれない。
「カトリーヌは」
義母がぽつりと言った。
「助けてと言えないのかしら」
その問いは、母親の嘆きであると同時に、自分への言い訳にも聞こえた。
助けを求めてこないのだから、まだ本当にひどいことにはなっていないのではないか。そんなふうに思いたいのだろう。
だが、フィオレッタは知っている。
人は追いつめられた時ほど、助けてと言えなくなることがある。
とくに、自分で望んで手に入れたものが地獄だったと認めるのは、想像以上に苦しい。
「言えないのでしょうね」
静かに答える。
「自分で欲しがった結婚ですもの。今さら苦しいと言えば、最初の望みそのものが間違いだったと認めることになる」
義母が唇を噛んだ。
「でも、そんな……娘なのよ」
「娘でも、もうロシュフォール家の人間です」
その言葉に義母は目を伏せた。
それがこの世界の婚姻の重さだ。嫁いだ女は、実家の娘である前に、婚家の妻になる。しかも相手はロシュフォール公爵家。少しの不和で戻れるような家格ではない。
義母は小さく首を振る。
「こんなはずではなかったのに」
フィオレッタは、その言葉に何も返さなかった。
こんなはずではなかった。
それはきっと本心だろう。だが同時に、あまりにも遅い言葉でもあった。
その日の夕刻、今度はフィオレッタ自身のもとへ、アルディシア公国から一通の封書が届いた。
封を見ただけで、胸の奥の空気が少し変わる。
フェリクスからだった。
机へ向かい、ゆっくり開く。
文面は、いつも通り簡潔だ。
――出立の日取りについて、最終の確認が整いました。
――詳細は別紙にまとめてあります。
――長旅になりますから、不安があるのは当然です。疑問があれば小さなことでも書き送ってください。
フィオレッタは、手紙の端を指先でなぞった。
疑問があれば小さなことでも。
それは当たり前のようでいて、決して当たり前ではない。これまで彼女の人生で、多くのことは「疑問があっても黙って従うもの」だったからだ。
別紙には旅程が細かく記されていた。
朝の出発時刻。
各宿泊地の設備。
同行する騎士の人数。
女性用の休憩時間を多めに取るように調整したこと。
そして最後に、手書きで一文だけ添えられている。
――疲れが出たら、予定は崩して構いません。到着を急がせるつもりはありませんので。
フィオレッタは、その一文を何度か読み返した。
急がせるつもりはありません。
焦らせない。
無理を前提にしない。
それだけのことで、どうしてこんなに胸が静かになるのだろう。
「お嬢様」
エマが入ってきて、表情を見て少しだけ微笑んだ。
「アルディシア公爵閣下からでございますか」
「ええ」
「今回も、よろしいお手紙でしたか」
フィオレッタは小さくうなずく。
「優しい、というより、ちゃんとしているの」
「ちゃんとしている」
「私が人間であることを前提に、予定を組んでくださっている感じ」
エマは目を細めた。
「それは何よりでございます」
その言葉のあと、部屋に少し沈黙が落ちた。
やがてエマが、ためらいがちに口を開く。
「……カトリーヌ様からは、また」
「ええ。お義母様のところへ」
「同じようなお手紙で?」
「同じようなものよ」
フィオレッタは手紙を畳みながら言った。
「大丈夫です。幸せです。心配はいりません。そういう言葉ばかり」
「本当に大丈夫な方は、たいていそんなに繰り返しませんのに」
エマの呟きに、フィオレッタは目を上げた。
「そうね」
本当に大丈夫な人間は、大丈夫だと何度も証明しようとはしない。
それが必要になる時点で、もうどこかが崩れているのだ。
夜、フィオレッタは自室で便箋を広げた。
フェリクスへ返事を書くためだ。
最初の一行を前に、少しだけ迷う。
何を書けばいいのだろう。感謝はある。安心もある。けれど、それをそのまま並べれば、どこか軽く見える気がした。
しばらく考えた末、彼女は正直に書き始めた。
旅程の詳細をありがたく思ったこと。
到着を急がせないという言葉に救われたこと。
不安がまったくないわけではないが、少しずつ“行かなければならない場所”ではなく、“自分の目で見る場所”としてアルディシアを思えるようになっていること。
そこまで書いて、ペン先が止まった。
自分でも驚くほど率直な文だった。
こんなことを書いてよいのかと少し迷う。けれど、これまで届いたフェリクスの言葉は、こちらに曖昧な取り繕いを要求していない。
だからこそ、フィオレッタもまた曖昧にしたくなかった。
書き上げた文面を読み返し、封をする。
それからふと、机の隅へ置いてあるカトリーヌからの手紙へ目が向いた。
こちらは温度がない。
整いすぎていて、誰に宛てたのかすら曖昧だ。
それに比べて、いま自分が書いた手紙は、拙いなりにちゃんと“自分の言葉”だった。
その差が、あまりにも鮮やかだった。
翌朝、フィオレッタは珍しく義母へ声をかけた。
「お義母様」
朝食後の居間で、義母はまたカトリーヌからの手紙を読み返していた。呼びかけられて顔を上げる。
「何かしら」
「もし次にカトリーヌから文が届いたら、返事の中に一つだけ、昔のことを書いてみてください」
「昔のこと?」
「ええ。たとえば、あの子が幼い頃に転んで膝を擦りむいた時の話でも、お気に入りだった人形の話でもいい」
義母は戸惑うように瞬きをした。
「どうしてそんなことを」
「もし手紙を誰かに見られているなら、意味がないかもしれません。でも」
フィオレッタは静かに言った。
「カトリーヌ本人にしかわからない記憶を入れれば、少なくとも“あなた自身へ向けて書いている”と伝えられるかもしれない」
義母の目が揺れる。
そこまで考えていなかったのだろう。娘からの異様に整った手紙を前に怯えるばかりで、その中へどうやって実家側の意志を差し込むかまでは思いつかなかったのかもしれない。
「……そうね」
義母はかすれた声で言った。
「そうしてみるわ」
フィオレッタはうなずき、それ以上は何も言わなかった。
本当に意味があるかはわからない。けれど、ただ“元気ですか”“心配しています”を繰り返すだけよりはましだった。
部屋へ戻ると、窓から見える空はやわらかく晴れていた。
風が少し強い。
レースのカーテンがゆれて、机の上の便箋の角をそっと持ち上げる。
フィオレッタは、自分が今まさに二つの手紙のあいだにいるのだと感じた。
一つは、温度を奪われた手紙。
一つは、少しずつ信頼を交わし始めた手紙。
片方は、結婚が檻になっていく気配を伝えてくる。
もう片方は、まだ始まってもいない未来に、息をつける余白を用意してくれている。
手紙の温度差は、そのまま相手のあり方の差でもあった。
フィオレッタは、そっと自分の返書に触れる。
あちらへ行けば、きっとまた新しい不安もあるだろう。
けれど少なくとも、自分は沈黙しか返せない相手のもとへ行くわけではない。
それだけで、遠い国への道は昨日より少しだけ歩きやすく思えた。
カトリーヌからの手紙は、その後も途切れはしなかった。
ただし、それは安心できるという意味ではない。
むしろ逆だった。
数は届く。文面も丁寧だ。けれど、どれも同じ温度をしているのだ。
お母様、ご心配には及びません。
お父様、ロシュフォール家の皆様は礼を尽くしてくださっています。
実家の皆様もどうかご安心ください。
ギルベルト様は、私を大切にしてくださっています。
まるで型紙でもあるように、言葉が繰り返される。
紙も上質、文字も整然、内容も破綻がない。だがだからこそ、そこに生身のカトリーヌが見えなかった。
義母は日に日にその手紙を読むのが怖くなっているようだった。
届けば飛びつくように封を切る。けれど読み終える頃には、いつも顔色を失っている。
「同じなのよ」
ある日、義母は居間でそう呟いた。
手元には、今朝届いたばかりの便箋がある。
「季節の挨拶の位置まで、前とほとんど同じ……。違うのは、花の名前と天気の話くらいで」
フィオレッタは少し離れた席で本を閉じた。
「誰かに見せても差し障りのない文ばかりなのね」
義母がはっとしたように顔を上げる。
「あなたもそう思うでしょう?」
「ええ」
もう否定の余地はない。
これは“無事を知らせる娘の手紙”ではなく、“無事だと知らせておきたい誰か”の手紙だ。
義母は膝の上で便箋を握りしめた。
「私、何度も返事を書いているのに。体調はどう、眠れているの、食事は取れているの、困ったことはないのって……」
「そして返ってくるのは、何も問題ありません、でしょう」
「そうよ……」
義母の声は弱かった。
フィオレッタは窓の外を見た。
初夏の陽射しが庭の芝を照らし、白い薔薇が風に揺れている。見慣れた庭だ。けれど最近、その景色に妙な距離を感じることが増えた。もうここは、自分が長くとどまる場所ではないのだと、身体のどこかが先に理解し始めているのかもしれない。
「カトリーヌは」
義母がぽつりと言った。
「助けてと言えないのかしら」
その問いは、母親の嘆きであると同時に、自分への言い訳にも聞こえた。
助けを求めてこないのだから、まだ本当にひどいことにはなっていないのではないか。そんなふうに思いたいのだろう。
だが、フィオレッタは知っている。
人は追いつめられた時ほど、助けてと言えなくなることがある。
とくに、自分で望んで手に入れたものが地獄だったと認めるのは、想像以上に苦しい。
「言えないのでしょうね」
静かに答える。
「自分で欲しがった結婚ですもの。今さら苦しいと言えば、最初の望みそのものが間違いだったと認めることになる」
義母が唇を噛んだ。
「でも、そんな……娘なのよ」
「娘でも、もうロシュフォール家の人間です」
その言葉に義母は目を伏せた。
それがこの世界の婚姻の重さだ。嫁いだ女は、実家の娘である前に、婚家の妻になる。しかも相手はロシュフォール公爵家。少しの不和で戻れるような家格ではない。
義母は小さく首を振る。
「こんなはずではなかったのに」
フィオレッタは、その言葉に何も返さなかった。
こんなはずではなかった。
それはきっと本心だろう。だが同時に、あまりにも遅い言葉でもあった。
その日の夕刻、今度はフィオレッタ自身のもとへ、アルディシア公国から一通の封書が届いた。
封を見ただけで、胸の奥の空気が少し変わる。
フェリクスからだった。
机へ向かい、ゆっくり開く。
文面は、いつも通り簡潔だ。
――出立の日取りについて、最終の確認が整いました。
――詳細は別紙にまとめてあります。
――長旅になりますから、不安があるのは当然です。疑問があれば小さなことでも書き送ってください。
フィオレッタは、手紙の端を指先でなぞった。
疑問があれば小さなことでも。
それは当たり前のようでいて、決して当たり前ではない。これまで彼女の人生で、多くのことは「疑問があっても黙って従うもの」だったからだ。
別紙には旅程が細かく記されていた。
朝の出発時刻。
各宿泊地の設備。
同行する騎士の人数。
女性用の休憩時間を多めに取るように調整したこと。
そして最後に、手書きで一文だけ添えられている。
――疲れが出たら、予定は崩して構いません。到着を急がせるつもりはありませんので。
フィオレッタは、その一文を何度か読み返した。
急がせるつもりはありません。
焦らせない。
無理を前提にしない。
それだけのことで、どうしてこんなに胸が静かになるのだろう。
「お嬢様」
エマが入ってきて、表情を見て少しだけ微笑んだ。
「アルディシア公爵閣下からでございますか」
「ええ」
「今回も、よろしいお手紙でしたか」
フィオレッタは小さくうなずく。
「優しい、というより、ちゃんとしているの」
「ちゃんとしている」
「私が人間であることを前提に、予定を組んでくださっている感じ」
エマは目を細めた。
「それは何よりでございます」
その言葉のあと、部屋に少し沈黙が落ちた。
やがてエマが、ためらいがちに口を開く。
「……カトリーヌ様からは、また」
「ええ。お義母様のところへ」
「同じようなお手紙で?」
「同じようなものよ」
フィオレッタは手紙を畳みながら言った。
「大丈夫です。幸せです。心配はいりません。そういう言葉ばかり」
「本当に大丈夫な方は、たいていそんなに繰り返しませんのに」
エマの呟きに、フィオレッタは目を上げた。
「そうね」
本当に大丈夫な人間は、大丈夫だと何度も証明しようとはしない。
それが必要になる時点で、もうどこかが崩れているのだ。
夜、フィオレッタは自室で便箋を広げた。
フェリクスへ返事を書くためだ。
最初の一行を前に、少しだけ迷う。
何を書けばいいのだろう。感謝はある。安心もある。けれど、それをそのまま並べれば、どこか軽く見える気がした。
しばらく考えた末、彼女は正直に書き始めた。
旅程の詳細をありがたく思ったこと。
到着を急がせないという言葉に救われたこと。
不安がまったくないわけではないが、少しずつ“行かなければならない場所”ではなく、“自分の目で見る場所”としてアルディシアを思えるようになっていること。
そこまで書いて、ペン先が止まった。
自分でも驚くほど率直な文だった。
こんなことを書いてよいのかと少し迷う。けれど、これまで届いたフェリクスの言葉は、こちらに曖昧な取り繕いを要求していない。
だからこそ、フィオレッタもまた曖昧にしたくなかった。
書き上げた文面を読み返し、封をする。
それからふと、机の隅へ置いてあるカトリーヌからの手紙へ目が向いた。
こちらは温度がない。
整いすぎていて、誰に宛てたのかすら曖昧だ。
それに比べて、いま自分が書いた手紙は、拙いなりにちゃんと“自分の言葉”だった。
その差が、あまりにも鮮やかだった。
翌朝、フィオレッタは珍しく義母へ声をかけた。
「お義母様」
朝食後の居間で、義母はまたカトリーヌからの手紙を読み返していた。呼びかけられて顔を上げる。
「何かしら」
「もし次にカトリーヌから文が届いたら、返事の中に一つだけ、昔のことを書いてみてください」
「昔のこと?」
「ええ。たとえば、あの子が幼い頃に転んで膝を擦りむいた時の話でも、お気に入りだった人形の話でもいい」
義母は戸惑うように瞬きをした。
「どうしてそんなことを」
「もし手紙を誰かに見られているなら、意味がないかもしれません。でも」
フィオレッタは静かに言った。
「カトリーヌ本人にしかわからない記憶を入れれば、少なくとも“あなた自身へ向けて書いている”と伝えられるかもしれない」
義母の目が揺れる。
そこまで考えていなかったのだろう。娘からの異様に整った手紙を前に怯えるばかりで、その中へどうやって実家側の意志を差し込むかまでは思いつかなかったのかもしれない。
「……そうね」
義母はかすれた声で言った。
「そうしてみるわ」
フィオレッタはうなずき、それ以上は何も言わなかった。
本当に意味があるかはわからない。けれど、ただ“元気ですか”“心配しています”を繰り返すだけよりはましだった。
部屋へ戻ると、窓から見える空はやわらかく晴れていた。
風が少し強い。
レースのカーテンがゆれて、机の上の便箋の角をそっと持ち上げる。
フィオレッタは、自分が今まさに二つの手紙のあいだにいるのだと感じた。
一つは、温度を奪われた手紙。
一つは、少しずつ信頼を交わし始めた手紙。
片方は、結婚が檻になっていく気配を伝えてくる。
もう片方は、まだ始まってもいない未来に、息をつける余白を用意してくれている。
手紙の温度差は、そのまま相手のあり方の差でもあった。
フィオレッタは、そっと自分の返書に触れる。
あちらへ行けば、きっとまた新しい不安もあるだろう。
けれど少なくとも、自分は沈黙しか返せない相手のもとへ行くわけではない。
それだけで、遠い国への道は昨日より少しだけ歩きやすく思えた。
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