24 / 32
第24話 彼は、もう迷わない——「二度と傷つけさせない」
しおりを挟む
ラディスが呼び出されてから数時間後。
リオラは自室の椅子に座ったまま、そわそわと落ち着かない時間を過ごしていた。
(さっき……ラディス、告白しようとしてた……よね?)
胸を押さえるたびに、さっきの熱が蘇る。
けれど、その甘い余韻は
エミの慌ただしいノックで破られた。
「リオラ様! 旦那様がお戻りです!」
「えっ……!」
階段を急いで降りると、玄関ホールでラディスが側近たちと話していた。
表情は鋭く、緊張が空気を張り詰めている。
だが、リオラが駆け寄った瞬間——
ラディスの眼差しだけが一気に柔らいだ。
「リオラ。……待たせたな」
「お帰りなさい。あの……何があったの?」
ラディスは深く息を吐き、
ためらうことなく核心を告げた。
「侯爵家——君の実家が、動いている」
「えっ……」
「具体的には、君をこちらから“引き戻す”準備を進めている。
名目は『療養のため』だが、実態は——」
言葉を切り、眉が険しくなる。
「“辺境伯領からリオラを取り返す”という意図が見える」
(取り返す……?)
白い結婚で、互いに干渉しないはずだったのに。
婚約破棄の傷で放り出された自分に、もう興味なんてないと思っていたのに。
胸の奥が不安と苦しさでざわめく。
「どうして……今になって……」
ラディスは、リオラが不安にならないよう
丁寧に、真っ直ぐな声で言った。
「理由は二つだ。
ひとつは……君が俺の領地で、思っていた以上に“力”を持ち始めているから」
「力……?」
「村人からの信頼。屋敷の管理能力。お菓子作りでの交流。
どれも、侯爵家より“こちらで幸せに暮らしている証拠”だ。
それが向こうにとって、面白くない」
リオラは唇をかみしめる。
たしかに、ここでの生活は暖かく、穏やかで、充実していた。
(……戻りたくなんて、ない)
もうあの冷たい屋敷に戻れば、
自分の心は折れてしまう。
するとラディスが、一歩前に出て、
リオラの肩にそっと手を添えた。
「もうひとつは——」
言葉がさらに低くなる。
「侯爵家は、“俺と君の関係が深まっている”と察したらしい」
「……っ!」
リオラは顔が真っ赤になった。
「ま、まだ……そんな……!」
「そう思うか? 俺は……そうだと思っている。
君は俺の妻だ。それ以上でも、それ以下でもない」
その声音は揺らぎなく、
“夫の言葉”そのものだった。
リオラの心臓が跳ね続ける。
(こんなふうに……言ってもらえるなんて……)
しかし、次の瞬間。
ラディスがふっと表情を曇らせた。
「君が不安になる必要はない。
だが、侯爵家の動きは軽視できない」
そして、しっかりとリオラの手を取った。
その手の温かさは、
“逃がさない”という強い意志を宿していた。
「リオラ。
俺は——二度と君を傷つけさせない」
(……っ)
胸の奥が熱く、甘く、震える。
ラディスの瞳はまっすぐで、力強くて、
その言葉は誓いのようだった。
「君の意志は俺が守る。
君が望まない場所へは絶対に帰さない。
君は……俺の妻だから」
その瞬間。
リオラの胸の奥にあった不安は、
すべて溶けて消えた。
(守ってくれる……ラディスが……私を……)
頬が熱く染まり、言葉が出なかった。
ただ、その手を握り返すことしかできなかった。
二人の指が絡んだ瞬間、
静かに、確かに結ばれていく“本物の夫婦”の絆があった。
---
リオラは自室の椅子に座ったまま、そわそわと落ち着かない時間を過ごしていた。
(さっき……ラディス、告白しようとしてた……よね?)
胸を押さえるたびに、さっきの熱が蘇る。
けれど、その甘い余韻は
エミの慌ただしいノックで破られた。
「リオラ様! 旦那様がお戻りです!」
「えっ……!」
階段を急いで降りると、玄関ホールでラディスが側近たちと話していた。
表情は鋭く、緊張が空気を張り詰めている。
だが、リオラが駆け寄った瞬間——
ラディスの眼差しだけが一気に柔らいだ。
「リオラ。……待たせたな」
「お帰りなさい。あの……何があったの?」
ラディスは深く息を吐き、
ためらうことなく核心を告げた。
「侯爵家——君の実家が、動いている」
「えっ……」
「具体的には、君をこちらから“引き戻す”準備を進めている。
名目は『療養のため』だが、実態は——」
言葉を切り、眉が険しくなる。
「“辺境伯領からリオラを取り返す”という意図が見える」
(取り返す……?)
白い結婚で、互いに干渉しないはずだったのに。
婚約破棄の傷で放り出された自分に、もう興味なんてないと思っていたのに。
胸の奥が不安と苦しさでざわめく。
「どうして……今になって……」
ラディスは、リオラが不安にならないよう
丁寧に、真っ直ぐな声で言った。
「理由は二つだ。
ひとつは……君が俺の領地で、思っていた以上に“力”を持ち始めているから」
「力……?」
「村人からの信頼。屋敷の管理能力。お菓子作りでの交流。
どれも、侯爵家より“こちらで幸せに暮らしている証拠”だ。
それが向こうにとって、面白くない」
リオラは唇をかみしめる。
たしかに、ここでの生活は暖かく、穏やかで、充実していた。
(……戻りたくなんて、ない)
もうあの冷たい屋敷に戻れば、
自分の心は折れてしまう。
するとラディスが、一歩前に出て、
リオラの肩にそっと手を添えた。
「もうひとつは——」
言葉がさらに低くなる。
「侯爵家は、“俺と君の関係が深まっている”と察したらしい」
「……っ!」
リオラは顔が真っ赤になった。
「ま、まだ……そんな……!」
「そう思うか? 俺は……そうだと思っている。
君は俺の妻だ。それ以上でも、それ以下でもない」
その声音は揺らぎなく、
“夫の言葉”そのものだった。
リオラの心臓が跳ね続ける。
(こんなふうに……言ってもらえるなんて……)
しかし、次の瞬間。
ラディスがふっと表情を曇らせた。
「君が不安になる必要はない。
だが、侯爵家の動きは軽視できない」
そして、しっかりとリオラの手を取った。
その手の温かさは、
“逃がさない”という強い意志を宿していた。
「リオラ。
俺は——二度と君を傷つけさせない」
(……っ)
胸の奥が熱く、甘く、震える。
ラディスの瞳はまっすぐで、力強くて、
その言葉は誓いのようだった。
「君の意志は俺が守る。
君が望まない場所へは絶対に帰さない。
君は……俺の妻だから」
その瞬間。
リオラの胸の奥にあった不安は、
すべて溶けて消えた。
(守ってくれる……ラディスが……私を……)
頬が熱く染まり、言葉が出なかった。
ただ、その手を握り返すことしかできなかった。
二人の指が絡んだ瞬間、
静かに、確かに結ばれていく“本物の夫婦”の絆があった。
---
14
あなたにおすすめの小説
婚約お断り令嬢ですわ ~奇行で縁談を潰していたら本命騎士に再会しました~
鍛高譚
恋愛
婚約話? 結構ですわ。
私には――子供の頃に命を救ってくれた“黒髪の騎士”がいるのですから。
公爵令嬢アンネローゼ・フォン・グレイシアは、才色兼備の完璧令嬢……だった。
だが、ある日から突如“奇行”に走り始める。正座で舞踏会に参加? スープにストロー? 謎のポエム朗読?
そう、それはすべて――望まぬ婚約をぶち壊すため!
王族、貴族、策略家、演技派……次々と舞い込む政略結婚の話。
アンネローゼはあの手この手で縁談をぶった斬り、恋も名誉も自由も手に入れる!
すべての婚約破棄は、たった一人の人に出会うため――
「破談のアンネローゼ様」が貫く、“本当の婚約”とは?
痛快!恋愛ざまぁ×ラブコメディ×ハッピーエンド!
破談上等のお嬢様が、本物の愛を掴むまでの逆転劇が今、始まりますわ!
【完結】冷酷陛下はぬいぐるみ皇妃を手放せない~溺愛のツボはウサギの姿?それとも人間(中身)の私?~
りんりん
恋愛
「これが私ということですか?
まさか冗談ですよね」
レイン様との初めての夜。
私は鏡の中の自分にかわいた笑い声をあげた。
真っ白なフワフワの身体。
丸い虹色の瞳。
なぜか私はお父様からいただいたぬいぐるみの姿になっていたからだ。
「何を企んでいるんだ。魔法でぬいぐるみになって、俺の寝首をかくつもりなのか」
レイン様は凍り付いた瞳を私にむけた。
レイン様の正式な名前はレイン・ファン・バルバドで、バルバド帝国の若き皇帝陛下でもある。
冷酷な事でしられるレイン様の二つ名は【血の雨】という。
そんな美しくも恐ろしい皇帝陛下にウサギ村の貧乏令嬢である
従姉妹に婚約者を奪われた私はひょんな事から嫁ぐことになった。
私はお金の為に。
陛下は政治的な立場をまもるための契約結婚だったけれど。
「皇妃がウサギになった事がばれるときっと大騒ぎになるだろう。
しばらくは俺達だけの秘密にしておくんだ」
そう言ってレイン様は私をポショットにいれて連れ歩く事にした。
貴族会議や公務にともなわれた私がポショットの中から見たのは、
レイン様の孤独や思いがけない温かさだった。
そしていつしかぬいぐるみの分際で、皇帝陛下を愛し始めていたのだ。
レイン様のお役に立ちたい。
その一心で聖獣ラビと契約を交わし不思議な魔法を使えるようにも
なった。
なのにレイン様の反勢力派に捕らえられてしまう。
私はレイン様の弱みになりたくなかった。
だから彼らと一緒にこの世から消えるつもりだったのに。
騎士達を率いたレイン様が反勢力のアジトへ突入してきたのだ。
これは私、キャンディラビットがぬいぐるみになって冷酷皇帝陛下レイン様に溺愛される、ちょっと不思議なお話です。
(土曜日曜の二日間で一気に完結まで更新いたしますので、安心してお楽しみください。
よろしくお願いいたします)
【完結】今更、好きだと言われても困ります……不仲な幼馴染が夫になりまして!
Rohdea
恋愛
──私の事を嫌いだと最初に言ったのはあなたなのに!
婚約者の王子からある日突然、婚約破棄をされてしまった、
侯爵令嬢のオリヴィア。
次の嫁ぎ先なんて絶対に見つからないと思っていたのに、何故かすぐに婚約の話が舞い込んで来て、
あれよあれよとそのまま結婚する事に……
しかし、なんとその結婚相手は、ある日を境に突然冷たくされ、そのまま疎遠になっていた不仲な幼馴染の侯爵令息ヒューズだった。
「俺はお前を愛してなどいない!」
「そんな事は昔から知っているわ!」
しかし、初夜でそう宣言したはずのヒューズの様子は何故かどんどんおかしくなっていく……
そして、婚約者だった王子の様子も……?
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました!
なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!
【完結済】侯爵令息様のお飾り妻
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
没落の一途をたどるアップルヤード伯爵家の娘メリナは、とある理由から美しい侯爵令息のザイール・コネリーに“お飾りの妻になって欲しい”と持ちかけられる。期間限定のその白い結婚は互いの都合のための秘密の契約結婚だったが、メリナは過去に優しくしてくれたことのあるザイールに、ひそかにずっと想いを寄せていて─────
婚約破棄された令嬢は、幸せになると決めました~追放先で出会った冷徹公爵が、なぜか溺愛してくる件~
sika
恋愛
名家の令嬢・アイリスは、婚約者の王太子から「平凡すぎる」と婚約破棄を突きつけられる。全てを奪われ、家からも冷たく追放された彼女がたどり着いたのは、戦場帰りの冷徹公爵・レオンの領地だった。誰にも期待しないようにしていたアイリスだったが、無愛想な彼の優しさに少しずつ心を開いていく。
やがて、笑顔を取り戻した彼女の前に、あの王太子が後悔と共に現れて——。
「すまない、戻ってきてくれ」
「もう、あなたの令嬢ではありません」
ざまぁと溺愛が交錯する、幸福への再生ストーリー。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
完璧すぎると言われ婚約破棄された令嬢、冷徹公爵と白い結婚したら選ばれ続けました
鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎて、可愛げがない」
その理不尽な理由で、王都の名門令嬢エリーカは婚約を破棄された。
努力も実績も、すべてを否定された――はずだった。
だが彼女は、嘆かなかった。
なぜなら婚約破棄は、自由の始まりだったから。
行き場を失ったエリーカを迎え入れたのは、
“冷徹”と噂される隣国の公爵アンクレイブ。
条件はただ一つ――白い結婚。
感情を交えない、合理的な契約。
それが最善のはずだった。
しかし、エリーカの有能さは次第に国を変え、
彼女自身もまた「役割」ではなく「選択」で生きるようになる。
気づけば、冷徹だった公爵は彼女を誰よりも尊重し、
誰よりも守り、誰よりも――選び続けていた。
一方、彼女を捨てた元婚約者と王都は、
エリーカを失ったことで、静かに崩れていく。
婚約破棄ざまぁ×白い結婚×溺愛。
完璧すぎる令嬢が、“選ばれる側”から“選ぶ側”へ。
これは、復讐ではなく、
選ばれ続ける未来を手に入れた物語。
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる