白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお

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第27話 旦那様の本気の怒り——「二度と妻を侮辱するな」

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侯爵家が帰っていったその翌日からだった。

まるで反撃するかのように、
リオラの実家は“嫌がらせ”を開始した。

エミが慌てて駆け込んでくる。

「り、リオラ様! 昨日から王都に妙な噂が広がっています!」

「噂……?」

「『公爵夫人は家を追い出されるらしい』『白い結婚は失敗だった』など……!」

リオラは目を見開いた。

(そんな……)

続くエミの言葉は、さらにひどかった。

「しかも“公爵家の内情を知る者”が話している、という情報まで……」

それはつまり——
侯爵家が流しているということだ。

胸がぎゅっと締め付けられる。

(また……あの人たちは……私を……)

息を吸うのも痛い。

そこへ、コンコンと執務室の扉が開く音。

「リオラ。少し来てほしい」

表情を変えずに呼んだラディスの声は静かだった。

だが——静かすぎた。

静けさの底に、確かな怒りが潜んでいる。

リオラが執務室に入ると、
ラディスは机にいくつもの報告書を広げていた。

「これを見てくれ」

リオラが震える手で報告書を読む。

そこには――
・侯爵家から流された虚偽の噂
・公爵家の信用を揺るがす中傷
・“リオラは夫に捨てられる”という根拠のない言説

そして最後に。

『公爵家にふさわしくない娘』

という父の署名入りの文言が記されていた。

「…………っ!」

息が止まりそうになる。

そんな言葉、家族の口から聞きたくなかった。

だが——その時。

ラディスがゆっくりと手を伸ばし、
リオラの肩に触れた。

「リオラ。顔を上げて」

彼の声は優しく、しかし芯が鋼のように強かった。

「これは、君の責任ではない。
君が気に病む必要もない。
すべて……勝手に騒いでいるだけだ」

ラディスは深く一度だけ息を吸い、
報告書を重ねて机に置いた。

「……本来なら、実家の問題は君が対応するべきだと思っていた。
けれど——もう遠慮はしない」

ラディスの瞳が、まっすぐに燃えるような光を宿す。

「“妻を侮辱する者”には、領主として正式に対応する」

「ラ、ラディス……?」

次の瞬間。

ラディスは机の上に新しい紙を置き、
ペンを走らせ始めた。

その文字は強く、迷いがなかった。

「公式文書だ。
侯爵家への“警告状”を発行する」

重々しい筆跡で書かれていく言葉。

『二度と我が妻を侮辱するな。
虚偽の噂を流す行為を即刻中止せよ。
従わぬ場合、公爵領は正式に侯爵家を敵対行為と見なす』

読むだけで背筋が震える内容だった。

「これを……侯爵家に送るんですか?」

リオラが震える声で問うと、
ラディスは静かに頷く。

「当たり前だ。
これは俺の責任だ。
君にこんな思いをさせた時点で、既に遅いくらいだ」

その言葉に、リオラの胸は熱くなる。

(ラディス……私を、守るために……)

ラディスは印章を押し、
文書を側近に手渡した。

「至急だ。侯爵家に届けろ」

「はっ!」

側近が駆け出していく。

その直後。

屋敷の外で騒ぎ声がした。

「奥様を侮辱するなんて許せねぇ!」

「公爵様、私らにも何かできませんか!」

「奥様はいつも優しくしてくれるのに……!」

窓から覗くと、
村人たちが集まり、怒りに満ちた声をあげていた。

「奥様は、この村の宝だからな!」

「うちの子の誕生日に、奥様が菓子を作ってくれたんだぞ!」

「旦那様、どうか私らにも守らせてください!」

涙が滲む。

(みんな……私なんかのために……)

ラディスはリオラの肩に手を置き、
小さく微笑んだ。

「リオラ。
君がどれだけ愛されているか、わかっただろう?」

リオラは胸がいっぱいになって、
ただ頷くことしかできなかった。

こうして——
“ざまぁ”はゆっくりと動き出した。


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