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第二十八話 均衡の継承と、揺るがない証明
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第二十八話 均衡の継承と、揺るがない証明
公開討論会の後、王都の空気はさらに澄んだ。
均衡理論は“北の影響力”ではなく、“王都の選択”として位置づけられ、噂は静かに消えていった。南方連合もまた、限定的ながら分散型の一部を採用し始める。
均衡は広がっている。
だが広がるほど、ひとつの問いが浮かび上がる。
――この理論は、私がいなくなっても続くのか。
北の書斎。
私は机の上に広げた古い記録を眺めていた。
かつて“価値なし”とされた水晶の波形。
歪み。
揺らぎ。
それが今や王都を支えている。
「あなたが始めた理論だ」
レオンハルトが言う。
「始めただけです」
私は首を振る。
「守るのは、私ではありません」
王都。
均衡特性研究局では、新たな人材育成計画が始まっていた。
若手魔術師たちに、均衡理論を体系的に教育する。
中心人物はアルフレッドだが、彼は明確に言った。
「均衡は個人に依存してはならない」
それは彼自身への戒めでもある。
講義室。
若い魔術師が問う。
「均衡特性は特異体質なのですか」
「いいや」
アルフレッドは答える。
「体質ではなく、現象の理解だ」
水晶を掲げる。
「揺らぎは誰にでもある。削り方を学ぶだけだ」
その言葉は、私がかつて言われた否定を反転させたものだった。
北。
通信が入る。
「育成は順調だ」
「良かった」
「いずれ君の直接支援は不要になる」
「それが理想です」
彼は静かに笑う。
「君は本当に欲がないな」
「ありますよ」
私は庭を見る。
「均衡が続くこと。それだけは欲しい」
数日後。
王都で小規模な試験が行われる。
北の遠隔補正なしで、補助炉の位相ずれを修正する。
若手魔術師が担当。
波形は一瞬揺れる。
だがすぐに整う。
観測室に歓声が上がる。
「成功だ」
アルフレッドは静かに頷く。
北に報告が届く。
「修正完了。遠隔不要」
私は深く息を吐いた。
安心と、少しの寂しさ。
だがそれは誇りでもある。
ざまぁ。
かつて私の水晶を否定した王都が、今はその理論を自ら継承している。
夜。
私は庭に立つ。
星が澄んでいる。
均衡は私のものではない。
王都のものでもない。
削る理論。
支える仕組み。
それが人から人へと渡っていく。
「あなたはもう、象徴ではない」
レオンハルトが言う。
「ええ」
「それでも価値はある」
「象徴でなくていいのです」
私は微笑む。
選ばれなかった令嬢は、いまや不要になっても揺らがない。
それこそが最大の証明。
均衡は個人を超えた。
王都は自立した。
私は北に立つ。
世界は回る。
削られ、整い、支え合う。
それが続く限り、私は動かなくていい。
星は静かに瞬き、北の夜は穏やかだった。
公開討論会の後、王都の空気はさらに澄んだ。
均衡理論は“北の影響力”ではなく、“王都の選択”として位置づけられ、噂は静かに消えていった。南方連合もまた、限定的ながら分散型の一部を採用し始める。
均衡は広がっている。
だが広がるほど、ひとつの問いが浮かび上がる。
――この理論は、私がいなくなっても続くのか。
北の書斎。
私は机の上に広げた古い記録を眺めていた。
かつて“価値なし”とされた水晶の波形。
歪み。
揺らぎ。
それが今や王都を支えている。
「あなたが始めた理論だ」
レオンハルトが言う。
「始めただけです」
私は首を振る。
「守るのは、私ではありません」
王都。
均衡特性研究局では、新たな人材育成計画が始まっていた。
若手魔術師たちに、均衡理論を体系的に教育する。
中心人物はアルフレッドだが、彼は明確に言った。
「均衡は個人に依存してはならない」
それは彼自身への戒めでもある。
講義室。
若い魔術師が問う。
「均衡特性は特異体質なのですか」
「いいや」
アルフレッドは答える。
「体質ではなく、現象の理解だ」
水晶を掲げる。
「揺らぎは誰にでもある。削り方を学ぶだけだ」
その言葉は、私がかつて言われた否定を反転させたものだった。
北。
通信が入る。
「育成は順調だ」
「良かった」
「いずれ君の直接支援は不要になる」
「それが理想です」
彼は静かに笑う。
「君は本当に欲がないな」
「ありますよ」
私は庭を見る。
「均衡が続くこと。それだけは欲しい」
数日後。
王都で小規模な試験が行われる。
北の遠隔補正なしで、補助炉の位相ずれを修正する。
若手魔術師が担当。
波形は一瞬揺れる。
だがすぐに整う。
観測室に歓声が上がる。
「成功だ」
アルフレッドは静かに頷く。
北に報告が届く。
「修正完了。遠隔不要」
私は深く息を吐いた。
安心と、少しの寂しさ。
だがそれは誇りでもある。
ざまぁ。
かつて私の水晶を否定した王都が、今はその理論を自ら継承している。
夜。
私は庭に立つ。
星が澄んでいる。
均衡は私のものではない。
王都のものでもない。
削る理論。
支える仕組み。
それが人から人へと渡っていく。
「あなたはもう、象徴ではない」
レオンハルトが言う。
「ええ」
「それでも価値はある」
「象徴でなくていいのです」
私は微笑む。
選ばれなかった令嬢は、いまや不要になっても揺らがない。
それこそが最大の証明。
均衡は個人を超えた。
王都は自立した。
私は北に立つ。
世界は回る。
削られ、整い、支え合う。
それが続く限り、私は動かなくていい。
星は静かに瞬き、北の夜は穏やかだった。
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