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第三十三話 空席の重みと、選ばない自由
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第三十三話 空席の重みと、選ばない自由
均衡が国法に明記されてから、王都の空気はどこか落ち着きを帯びていた。
制度は固定された。
理念は共有された。
基金は動き、地方展開も順調。
王家も、研究局も、南方連合も、もはや“均衡の是非”を議論しない。
当然の基盤になった。
だが――。
王都はひとつの空席を抱えたままだった。
均衡理論最高顧問。
制度上は存在する。
だが就任者は未定。
王宮会議室。
「形式上、顧問は必要だ」
「責任の所在を明確にするためにも」
団長が言う。
「だが特定個人に集中させれば、再中央化の危険がある」
王太子は沈黙する。
誰もが思っている。
最適な人物はひとりしかいない。
だがその人物は、北にいる。
北。
私はその議題を通信で知り、静かに目を閉じた。
「空席のままにすればよいのに」
「人は空白を恐れる」
レオンハルトが言う。
「席があれば、誰かを座らせたくなる」
均衡は中心を持たない。
だが制度は“責任者”を欲する。
王都から打診が来る。
就任ではない。
助言。
「最高顧問を設けるべきか」
私は即答しなかった。
庭に出る。
初冬の風が冷たい。
均衡は削る理論。
ならば削るべきは――席そのもの。
数日後、返書を送る。
――最高顧問という職位は不要。
――責任は分散させるべき。
――判断は合議制で。
王宮。
王は返書を読み、静かに笑った。
「席を消せ、と」
王太子が頷く。
「彼女らしい」
会議の末、最高顧問職は廃止される。
代わりに、分散審議会が設置された。
複数名による合議制。
責任は共有。
権限は分散。
ざまぁ。
今回は誰も失脚しない。
だが“中心を作りたい欲”は削られた。
北。
通信が入る。
「席は消えた」
「良かった」
「王都は、空席を受け入れた」
私は小さく頷く。
「空席は不在ではありません」
「どういう意味だ」
「中心がないという証明です」
夜。
私は庭に立つ。
冬の星は鋭い。
かつて私は選ばれなかった。
だが今は違う。
私は“選ばない”自由を持っている。
王都は席を作った。
だが私は座らない。
そして最終的に、席そのものが消えた。
それが最大の逆転。
中心はない。
均衡は回る。
王都も、北も、南方も。
削られ、整えられ、支え合う。
私は北に立つ。
呼ばれなくても、座らなくても、揺らがない。
空席は空のまま。
それが、均衡の完成形だった。
均衡が国法に明記されてから、王都の空気はどこか落ち着きを帯びていた。
制度は固定された。
理念は共有された。
基金は動き、地方展開も順調。
王家も、研究局も、南方連合も、もはや“均衡の是非”を議論しない。
当然の基盤になった。
だが――。
王都はひとつの空席を抱えたままだった。
均衡理論最高顧問。
制度上は存在する。
だが就任者は未定。
王宮会議室。
「形式上、顧問は必要だ」
「責任の所在を明確にするためにも」
団長が言う。
「だが特定個人に集中させれば、再中央化の危険がある」
王太子は沈黙する。
誰もが思っている。
最適な人物はひとりしかいない。
だがその人物は、北にいる。
北。
私はその議題を通信で知り、静かに目を閉じた。
「空席のままにすればよいのに」
「人は空白を恐れる」
レオンハルトが言う。
「席があれば、誰かを座らせたくなる」
均衡は中心を持たない。
だが制度は“責任者”を欲する。
王都から打診が来る。
就任ではない。
助言。
「最高顧問を設けるべきか」
私は即答しなかった。
庭に出る。
初冬の風が冷たい。
均衡は削る理論。
ならば削るべきは――席そのもの。
数日後、返書を送る。
――最高顧問という職位は不要。
――責任は分散させるべき。
――判断は合議制で。
王宮。
王は返書を読み、静かに笑った。
「席を消せ、と」
王太子が頷く。
「彼女らしい」
会議の末、最高顧問職は廃止される。
代わりに、分散審議会が設置された。
複数名による合議制。
責任は共有。
権限は分散。
ざまぁ。
今回は誰も失脚しない。
だが“中心を作りたい欲”は削られた。
北。
通信が入る。
「席は消えた」
「良かった」
「王都は、空席を受け入れた」
私は小さく頷く。
「空席は不在ではありません」
「どういう意味だ」
「中心がないという証明です」
夜。
私は庭に立つ。
冬の星は鋭い。
かつて私は選ばれなかった。
だが今は違う。
私は“選ばない”自由を持っている。
王都は席を作った。
だが私は座らない。
そして最終的に、席そのものが消えた。
それが最大の逆転。
中心はない。
均衡は回る。
王都も、北も、南方も。
削られ、整えられ、支え合う。
私は北に立つ。
呼ばれなくても、座らなくても、揺らがない。
空席は空のまま。
それが、均衡の完成形だった。
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