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第6章:心の距離が、少しずつ近づいて
しおりを挟む6-1:夫婦の距離、変わり始める空気
春の風が、柔らかな日差しとともに大公邸の中庭を吹き抜けた。
白と紫のビオラが花壇を彩り、遠くから聞こえる小鳥の囀りが空気に彩を添えている。
「今日は……良い日になりそうですわね」
アルテッツァは中庭の東屋に腰掛け、手元のノートに薬草の成分メモを書き留めていた。
彼女の視線はノートに落ち着いていたが、どこか心は浮ついていた。
それもそのはずだった。昨晩、アレクセイが初めて真正面から彼女の存在を“妻”として肯定してくれた。
それは契約書に記された言葉ではない、心からの宣言だった。
――“君は、私の妻だ”と。
「はぁ……」
気がつけば、小さな溜息が漏れる。
「何かお困りですか、お嬢様」
背後からふわりと声をかけたのは、侍女クレアだった。お茶を盆に乗せて運んでくる。
「いえ……別に困ってはおりませんの。ただ……ちょっと、胸がもやもやと」
「それを“恋の兆し”と呼ぶんですよ、お嬢様」
「こ、恋……ですって?」
紅茶の香りと共に、アルテッツァの頬がほんのり色づいた。
「ち、違いますわ。恋とはもっとこう、情熱的で、言葉では言い表せないような――」
「それは小説の読みすぎです」
「……うっ」
クレアの手厳しい一言に、紅茶を飲む口元がかすかに揺れる。
そのときだった。
「アルテッツァ。ここにいたか」
低く落ち着いた声が中庭に届いた。
見ると、アレクセイが手に分厚い書類を持って立っていた。
「こちらで研究中かと思って」
「大公様……お疲れ様ですわ」
立ち上がりかけたアルテッツァを、アレクセイは手で制した。
「座ったままで構わない。今日は報告を一つ、伝えに来ただけだ」
アレクセイは椅子を引き寄せて彼女の隣に腰を下ろし、手元の書類を彼女に差し出した。
「これは……王立施療院から?」
「君が提案した“薬草基礎教育課程”が正式に採用された。学会も支援を決定している」
「それって……!」
アルテッツァは思わず瞳を輝かせた。
「これで、王都だけでなく周辺地域の村や教会でも、誰でも薬草学を学べるように……!」
「君の努力の成果だ。誇っていい」
アレクセイの声音は変わらず淡々としている――けれど、そこに微かに“誇り”が滲んでいた。
「私……ほんとうに、やってよかったですわ」
「君のような人間が、この国には必要だ。君の知識、意志、正しさ。どれも欠けてはならない」
彼の言葉に、アルテッツァはそっと目を伏せた。
まるで胸の奥にそっと手を入れられて、心臓をやさしく掴まれたような、そんな不思議な感覚だった。
「ねえ、アレクセイ様」
「なんだ?」
「私たち……まだ、“白い結婚”なのでしょうか」
唐突な問いに、アレクセイの動きが止まる。
「形式上は、確かに。だが、君が望むなら――」
「形式、ですのね。……なら、そろそろ、契約以外の時間を過ごしてみるのも、悪くないかもしれませんわ」
アレクセイは目を細めた。
それは微笑の代わりのような、彼特有の穏やかな反応だった。
「それは、どういう意味だ?」
「……少しだけ、“妻らしいこと”を、してみたい気分ですの。
あなたの隣にいて、同じお茶を飲んだり、朝食をご一緒したり。
別に……恋だなんて、大げさな話ではありませんけれど」
「そうか。なら、まずは朝食から始めよう。明日から、君の席の向かいに座ることにする」
「そ、それは……ええ。わかりましたわ」
会話が終わっても、ふたりの間にはふしぎな余韻が残った。
ただの夫婦の会話、それだけだったはずなのに――胸が、ふわりと温かくなった。
まるで、春風が心に吹き込んできたかのように。
---
その夜、アルテッツァは眠れずにいた。
窓の外では風が庭の木々を揺らし、月明かりが白いカーテン越しに差し込んでいる。
「“隣に座る”……って、そんなに特別なことでもないはずなのに」
胸の鼓動が、昼間からずっと落ち着かない。
ほんの少し近づいただけで、どうしてこんなにも意識してしまうのか。
どうして彼の言葉に、あんなにも安心してしまうのか。
――それが、“心の距離が近づいている”ということだと、彼女はまだ知らなかった。
6-2:薬草研究を共にする二人、見えてきた彼の素顔
「……これが、君の調合室か」
「ええ。ほとんど物置を改装したものですけれど、今では私の聖域ですわ」
翌日。
アルテッツァは、初めてアレクセイを自室に隣接した調合室に招いた。
淡い光が差し込む窓辺には、乾燥中の薬草が吊るされており、壁沿いの棚にはびっしりと瓶や薬壺が並ぶ。
薄荷、ラベンダー、シダ、紫霞草――様々な香りがほのかに混ざり合い、独特の空気を醸し出していた。
「立ち入り禁止のはずだと聞いていたが」
「それは、あまりにも無遠慮に見られるのが嫌だったからですの。
でも、あなたなら……見られても構いませんわ」
アレクセイは、その言葉にわずかに目を細めた。
それが“信頼”という名の鍵であることを、彼はきちんと理解していた。
「では、光栄に預かろう」
彼は静かに部屋の中央へと進み、調合机の前で立ち止まった。
「これは……新しい器具だな」
「ええ、王立施療院の協力で支給されましたの。
抽出効率が三割上がる優れものでして。ほら、ここのフィルター構造が……」
アルテッツァは、身を乗り出して指差した。
だが、彼女の動きが思いのほか大胆だったのか、アレクセイとの距離が急に縮まってしまう。
「あ……」
息をのんだのは彼女の方だった。
二人の顔の距離はわずか数十センチ。手を伸ばせば、触れられる。
視線が交差する。
アルテッツァは、急いで一歩引いた。
「し、失礼しました。説明に夢中で……」
「いや。……気にしていない」
アレクセイもわずかに背筋を正すと、視線を器具に戻した。
だがその耳元が、ほんのり赤くなっていることに彼女は気づいていた。
「それで、この薬草は何の用途なんだ?」
「こちらは“白火草”と呼ばれるものでして、粉末にして水に溶かすと、軽い鎮痛効果がございますの。
特に筋肉疲労や頭痛に有効ですわ。大公様も時折、肩が凝るとおっしゃっていたでしょう?」
「……そんなことまで覚えていたのか」
「ええ。些細なことでも、大切な情報ですもの。
ですから、今回は特別に“大公様専用”として処方して差し上げますわ」
そう言って微笑むアルテッツァの姿に、アレクセイはしばし言葉を失った。
「君は……本当に、不思議な人だな」
「それは褒め言葉として受け取っても?」
「もちろんだ。君といると、静かに心が満たされていく。
……戦場でも、政務の最中でも感じたことのない安らぎだ」
「まぁ……そんなに大げさな……」
「大げさではない。
私の人生に、これほど静かで温かい時間が存在するとは思っていなかった」
アルテッツァの手が、ふと止まる。
そして、心臓が静かに鳴る。
それは、政略で交わした“契約の結婚”には決して含まれていなかったはずの感情。
けれど今、確かに、彼女の胸にそれが芽吹いているのを感じた。
「アレクセイ様」
自然と口から名前がこぼれた。
「ん?」
「……もし、もう少しだけ私が心を開いたら、あなたは受け止めてくださるのかしら」
「君がどれほど開いても、私はその全てを受け止めるつもりだ。
例えそれが、私を拒絶する言葉だったとしても」
「……拒絶なんて、もうしませんわ。きっと」
二人の間に、また静けさが落ちた。
だが、それは居心地の悪い沈黙ではなかった。
互いの鼓動がほんの少しだけ近づき、今まで見えなかった景色がひとつずつ、色を持って現れてきた。
---
それからというもの、アレクセイは時折アルテッツァの調合室を訪れるようになった。
「この葉の形は……君が昔描いていた薬草図鑑のものか?」
「よく覚えていてくださいましたのね。子供の頃、父の書斎で拾った薬草の古本をもとに、自分なりにまとめたものですわ」
「君は努力家だな」
「いえ、それしか取り柄がなかっただけですのよ」
「だとしても、君は私が今まで見てきた誰よりも才覚にあふれている」
「……そういうお言葉は、あまり軽々しく言わないでくださる?」
「軽々しくなど言っていない。
私は、本当にそう思っている。君を見ていると、私のような人間が、少しでも柔らかくなれる気がする」
「……ふふ。では、この薬でもっと柔らかくして差し上げますわね」
「それは薬なのか? それとも……君の笑顔か?」
「……どちらも、効能は保証付きですわ」
二人は、目を合わせて笑った。
---
こうして、ふたりは“研究”という名の時間を通じて、徐々に距離を縮めていく。
お互いの癖や、好み、静かな時間の共有――
恋とは、決して華やかな告白や情熱の嵐ばかりではない。
こうして、日々を重ねていく中で、静かに、確かに、愛に変わっていく。
それを、今の彼女たちはまだ“言葉”にしていない。
けれど、もう誰の目にも明らかだった。
次の一歩を、誰が踏み出すのか――
それを知る者は、まだいない。
6-3:思い出に触れた夜、過去の自分を語るとき
その夜、アルテッツァは珍しく眠れなかった。
枕元の読書灯をつけ、薬草の研究書を開いてみても、文字が頭に入ってこない。
“君を見ていると、私のような人間が、少しでも柔らかくなれる気がする”
今日、アレクセイが言った言葉が、心のどこかにずっと引っかかっていた。
胸が、少しだけ痛い。けれど、それは不快な痛みではない。
まるで、凍っていた場所が少しずつ溶けているような、不思議な感覚だった。
「ふう……」
ページを閉じてベッドに身を沈めようとしたとき、不意に扉がノックされた。
「……どなた?」
「私だ。アレクセイ」
一瞬、心臓が跳ねた。
夜分に彼が自ら部屋を訪れるのは、初めてのことだった。
「……どうぞ」
そっと扉を開くと、アレクセイはいつもの礼服ではなく、シンプルな寝間着姿だった。
それだけで、彼の雰囲気はどこか柔らかく感じられた。
「眠れないのか?」
「……はい。少し、考えごとをしていて」
「奇遇だな。私もだ。……少し、話をしないか?」
「ええ、ぜひ」
アルテッツァは自分の部屋に彼を招き入れた。
夜の静けさに包まれた部屋。暖炉の火は落ちていたが、窓辺から差し込む月明かりが、ふたりの影を淡く照らしていた。
アレクセイは椅子を引いて腰を下ろすと、窓の外をしばらく眺めた。
そして、ふとぽつりと呟いた。
「……君は、自分の過去を恨んでいないのか?」
唐突な問いに、アルテッツァはまばたきをした。
「……恨んでいた時期も、ありましたわ」
「だろうな。君のように賢くて気高い者が、あんな男に婚約破棄されて、どれだけ傷ついたか……想像するだけで腹が立つ」
「ふふ……あなたが怒ってくださるなんて、意外ですわね」
「当然だ。君がどれだけ努力して、貴族令嬢として振る舞い、自分の家のために耐えてきたか……
私は、少しずつ理解できるようになってきた」
「……そう、ですのね」
アルテッツァは、小さく息を吐いた。
「子供の頃、私は何の取り柄もない女の子でしたのよ。
姉も弟も賢くて優秀で、私はただ空気のような存在で……。
唯一褒めてもらえたのが、薬草に詳しいことだけでした」
「君が、“努力して手に入れた居場所”なんだな」
「ええ。誰にも頼らず、自分の手で、自分の頭で……この世界に居場所を作りたかったんですの」
彼女は、少しだけ視線を落とした。
「……それでも、どこかで“認められたい”という気持ちがあったのかもしれませんわ。
元婚約者に、じゃなくて……父に。母に。侯爵家の人間として、“期待に応えた”って」
「……私は、君を認めている」
静かなその言葉に、アルテッツァは息を飲んだ。
「君が望んでいようといまいと、私は君の努力を見てきた。
ただの飾りの妃ではない。君は、私の傍らに立つにふさわしい、才と意志を持った人間だ」
「アレクセイ様……」
「そして私は……君のような人間に、少しでも報いられるような男でありたいと思っている」
その真摯な言葉に、胸が熱くなった。
言葉ではなく、その想いがまっすぐに伝わってくる。
「……過去の私なら、そんな言葉を信用しなかったと思いますわ」
「では、今の君は?」
「今の私は、信じてみたい。……そう思えるようになりました」
一拍置いて、アルテッツァは微笑んだ。
「ふふ。どうしてでしょうね。あなたが、そんなに器用でも、甘い言葉を使う人でもないって分かっているからかもしれませんわ」
アレクセイも、ふっと小さく笑った。
「君の言葉は、よく刺さるな。だが、嫌いではない」
「私も、あなたの真面目すぎるところ……少しずつ、好きになってきた気がしますの」
静寂が、ふたりを包む。
窓の外では、夜風が木々を揺らしている。
その音さえも、ふたりの間に流れる柔らかな時間を引き立てていた。
「……そろそろ、お休みになりますか?」
「そうだな。だが……もう少しだけ、君のそばにいてもいいか?」
「……はい」
それだけの会話。
けれどその夜、アルテッツァは生まれて初めて、“誰かと過ごす夜”の心地よさを知った。
それは、契約でも、義務でもない。
ただ、自分の心が求めたぬくもりだった。
6-4:明かされた本心、そして芽生えた決意
「……おはようございます、大公様」
翌朝、ダイニングルームの扉を開けたアルテッツァは、思わず目を見張った。
そこには、すでに席に着いて朝刊を読んでいるアレクセイの姿があった。
「おはよう、アルテッツァ。早いな」
「いえ、あなたの方こそ。……まさか、先にお席でお待ちになっていたとは」
アレクセイは新聞をたたみ、椅子の背に預けながら淡く微笑む。
「昨日、言っただろう。『君の向かいの席に座る』と。……さっそく実行してみた」
その真面目すぎるほどの律儀さに、アルテッツァはくすりと笑った。
「でしたら、私も負けていられませんわね。今朝は、あなたのために特別なハーブティーを淹れてまいりましたの」
使用人に手渡したポットから注がれた液体は、淡い黄金色。
柔らかな香りが食卓に広がる。
「リムノアの根に、ラベンダーとベルガモットを少々。昨晩の夜更かしに効く、爽快な香りですわ」
「君の手になる薬は、心まで癒すな」
そう呟いてカップに口をつけたアレクセイの横顔に、アルテッツァは少しだけ見とれてしまった。
――こんな風に、並んで食卓を囲む日がくるなんて。
ほんの数ヶ月前までは、考えもしなかった未来。
政略結婚。干渉なし。白い結婚。
それは、彼女にとって“自分を守るための距離”だったはずだった。
けれど今は――その距離が、むしろ“物足りなく”感じるようになっていた。
「ねえ、アレクセイ様」
「ん?」
「あなたは、どうして……あのとき、私との結婚を引き受けてくださったのですか?」
アレクセイは少しだけ目を細めた。
カップを置き、静かに言葉を選ぶように答えた。
「……最初は、純粋に必要だった。君の家の縁が政略的に有利で、学術面でも興味深い研究をしていると知っていた。
冷徹な判断だった。少なくとも、君に対して“情”のようなものはなかった」
「……率直ですのね」
「だが、初めて会ったとき、君の目を見て……私は思った」
アレクセイは、ゆっくりと向かいに座るアルテッツァを見つめた。
「この人は、“私に媚びる必要のない存在”だと」
「……え?」
「私の身分も、力も、まるで気にしていない。君は私に対しても、常に対等であろうとした。
……それが、どれほど貴重なことか、君は分かっていないだろう」
「私は……ただ、誇りだけは手放したくなかっただけですの」
「その誇りが、私には眩しかった」
ふたりの間に、しばし沈黙が落ちる。
けれど、その沈黙は決して重くはなかった。
ただ、心の奥にあった“何か”が、ゆっくりと姿を現そうとしていた。
アルテッツァはそっと手を伸ばし、カップを置いたままの彼の手に触れた。
「アレクセイ様。私は……もう“白い結婚”に、しがみついて生きるつもりはありませんわ」
「……そうか」
「あなたがくれた居場所、言葉、そしてこの毎日が……
私にとって、どれほど心を救ってくれたか……やっと気づけました」
アレクセイは、ゆっくりと手を返し、彼女の指を優しく包む。
「君が笑ってくれるなら、それだけで私は報われる。
君が望むなら、これから先も“白く”あってもいい。けれど――」
その瞳がまっすぐに彼女を見つめる。
「もし君が、私の隣で生きていく覚悟を決めてくれるなら……私は、この手を決して離さない」
その言葉に、アルテッツァの胸が熱くなった。
嬉しいという感情が、はじめて“涙”というかたちで込み上げてきた。
「……はい」
彼女は微笑んだ。
「私は、あなたの隣を選びます。
もう一度、自分の意志でこの手を取りたいと思いました」
その瞬間、陽光が窓から差し込み、ふたりの手を優しく照らした。
契約で始まったふたりの関係は、いま確かに――自らの意志で結ばれ直されようとしていた。
---
その日の午後。
屋敷のテラスでは、使用人たちがなにやらそわそわとざわついていた。
「……見ました? 今朝の食堂でのおふたりの様子」
「ええ! 奥様の手に、閣下が自分から……」
「まさかの進展ですわね。これで“白い結婚”も終わりかしら」
その噂はすでに屋敷の中を駆けめぐり、やがて王都中にも静かに波紋を広げていく。
冷酷と噂された大公が、ただひとりの妻にだけは穏やかな微笑みを見せる。
――そんな“甘い噂”が、ざまあで彩られた政略結婚の終焉を告げるものになるとは、まだ誰も知らなかった。
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