傍若無人の悪役令嬢 ―幸せになりたいなら黙って私に従いなさい―

しおしお

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第5話 非難の嵐? 誤解? そんなもの気にしませんわ

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 スラム街の強制撤去が始まり、難民キャンプも稼働し始めた。
 雨風をしのげるテントに、配給所、洗い場、仮設医療所。
 必要最低限ではあるが、住民たちが生き延びる環境は整っていく。

 だがその裏側で――。

「ヴァイオレット様が、スラムを潰したらしいぞ」
「婚約破棄の腹いせだと……!」
「住民が泣いていたぞ!ひどい!」

 城下も王都も噂で溢れていた。
 中には“悪役令嬢が暴走した”などという失礼な噂まで。

(まあ……事実ではありますけれど)

 

◆側近、大炎上に頭を抱える

「お嬢様ああああっ!!
 噂がとんでもないことになっております!!」

 側近アルフレッドが書類を抱えたまま駆け込んできた。
 目の下にはクマ、声は震え、動悸が聞こえてきそう。

「“八つ当たり令嬢”
 “暴虐の乙女王”
 “領地破壊令嬢”
 ……などと、あらゆる悪名が……!」

「まあ。ずいぶん楽しそうな称号をつけられたものですわね」

「た、楽しそう……!? そんな問題では……!」

「問題ではありませんわ。事実ですもの」

 アルフレッドが脱力して床に膝をつく。

「事実であることと、世間が理解するかどうかは別です!!
 なぜ誤解を放置なさるのです!?」

「誤解?私は誤解などしてほしいと思ったこと、ありませんけれど」

「――ッ!」

 

◆ヴァイオレット、悪評に対しての姿勢が斬新すぎる

「清々しいほどの開き直りだ……」と側近が呟く中、
 私は窓の外で進む工事を眺めながら紅茶を飲む。

「そもそも、誤解と思っているのはそちらの勝手ですわ。
 私は“汚いから壊した”。
 それ以上でもそれ以下でもありません」

「そ、それでは世間にどう説明を……!」

「説明など必要ありませんわ。
 壊した結果が良ければ、誰も文句は言わなくなりますから」

 側近たちは顔を見合わせた。

「結果で黙らせる……まさに悪役令嬢……」
「いや、もはや暴君では……?」

 ぶつぶつという声が聞こえるが、私は気にしない。

 

◆住民たちの不満? 知らないわ、そんなもの

 そこへ役人が飛び込んでくる。

「お嬢様!住民の一部から“急な退去で困っている”と抗議が!」

「抗議? それは以前に申請されました?」

「い、いえ……申請などは……」

「なら聞く必要ありませんわね」

 役人、崩れ落ちる。

「わ、私はどうすれば……!」

「必要な物資は配っているでしょう?
 食事も衣服も寝床もある。
 文句を言いたいなら、私が公営住宅を建てる前に言うべきですわ」

 側近たちはまたしても頭を抱える。

「お嬢様……もう少し優しく……!」

「優しさは形で示しますの。言葉で示す必要はありませんわ」
 私は淡々と言った。

 

◆ミーナとの再会と、ひとすじの変化

 そのとき、難民キャンプの少女ミーナが駆け寄ってきた。

「ヴァイオレット様っ!
 ごはん……ありがとうございますっ……!」

 目を潤ませ、差し出したパンを大事そうに抱えている。

「ちゃんと食べて、元気になりなさいませ」

 私は軽く頭を撫でる。

「……ほんとに、家もくれるの……?」

「約束しましたでしょう?
 建てている間は少し我慢なさいな」

 ミーナはぎゅっとパンを抱いた。

「頑張る……!私……頑張る!」

 その素直な瞳に、側近たちが動揺する。

「あの……お嬢様……」
「すごく……好かれておられますが……?」

「当然ですわ。
 ――私は、この子たちの生活を改善しに来ているのですから」

 優雅な笑みを浮かべた瞬間――
 側近全員が同時に震えた。

(こんな優しい笑顔をするのに……言ってることは容赦ない……!)

 

◆そしてヴァイオレットは宣言する

「誤解なんて放置しておけばよろしい。
 どうせすぐに“誤解ではなかった”と皆が理解しますもの」

「えっ……どういう……」

「だって私は“本当に壊したかった”のですから」

 ――側近、全滅。

こうして、非難の嵐にも動じない悪役令嬢は、改革の第一歩を進めていくのだった。


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