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第十三話 正面戦:熊、えくすかりばーさんで斬りまくる
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第十三話
正面戦:熊、えくすかりばーさんで斬りまくる
――ズン。
マイホームさんが、足を止めた。
それは偶然ではない。
揺れない家が、意図をもって停止する――
それ自体が、戦闘開始の合図だった。
「……止まった……」
私は、思わず窓の外を見た。
森の向こう。
木々の隙間から、黒い影が溢れ出してくる。
「……来た……」
魔物。
数は――
数える意味がないほど、多い。
だが、恐怖はなかった。
なぜなら。
――パタパタ。
柔らかな足音が、前方へ向かっていく。
「……熊……」
熊のぬいぐるみは、
えくすかりばーさんを肩に担ぎ、
何の躊躇もなく、外へ出た。
その背中は小さい。
ぬいぐるみだ。
抱きしめられるサイズ。
なのに。
「……あんな……
小さいのに……」
えくすかりばーさんの声が、静かに響く。
「前線到達まで、十秒」
熊は、頷いた。
――了解。
次の瞬間。
熊が、跳んだ。
森の地面を蹴り、
信じられない速度で前進する。
「……は……?」
視界が追いつかない。
木々を避けるでもなく、
ぶつかるでもなく。
最短距離を選び、
一直線。
魔物の軍勢が、
熊の接近に気づく。
角を持つ獣が、咆哮を上げた。
「……あ……」
熊は、えくすかりばーさんを構えた。
その動きは、
無駄がない。
感情がない。
ためらいもない。
ただ、斬るための動き。
――シュン。
えくすかりばーさんが、
光を描いた。
次の瞬間。
魔物が、分断された。
切断面は、あまりにも滑らかで、
倒れるまで、
魔物自身が斬られたことに気づいていない。
「…………」
私は、息を呑んだ。
熊は、止まらない。
――ザシュ。
――ザシュ。
――ザシュ。
振るたびに、
魔物が倒れる。
数も、種類も、
関係ない。
えくすかりばーさんの刃は、
防御という概念を無視していた。
「……強……」
言葉が、震える。
魔物の軍勢が、
一瞬で混乱に陥った。
統率が、崩れる。
前線が、割れる。
「……すごい……
すごすぎ……」
えくすかりばーさんの声は、
どこまでも冷静だった。
「敵戦力、前線崩壊を確認」
熊は、
さらに踏み込む。
敵の密集地帯へ。
そこは、
本来なら
包囲されて死ぬ場所だ。
だが。
――ブン。
――ブン。
えくすかりばーさんの刃が、
円を描く。
周囲、全滅。
熊の足元に、
倒れ伏す魔物たち。
「……戦争……
って……」
私は、唇を噛んだ。
こんな一方的な光景を、
想像していなかった。
だが。
そのとき。
――キィィィン。
再び、警報音。
「……え……?」
私は、はっと顔を上げた。
警報の質が、
変わっている。
高く、短い。
えくすかりばーさんが、
すぐに反応する。
「……別動隊……」
「……え……?」
「敵は、
正面だけではありません」
壁に、
新たな映像が浮かび上がる。
「………………」
そこには。
森の左右から、
別の部隊が進行してくる様子が映っていた。
「……挟撃……」
知らない言葉じゃない。
でも。
「……正面……
熊が……
全部……」
「だからこそ、です」
えくすかりばーさんは、
淡々と告げた。
「正面が崩壊したことで、
敵は判断しました」
「……なにを……?」
「正面突破は不可能だと」
胸が、冷える。
「……じゃあ……」
「目標を、
変更した」
映像の中で、
別動隊の進路が、
マイホームさんへ向かっている。
「………………」
言葉を失う。
「……家……
狙われてる……」
熊は、前線で戦っている。
正面は、
完全に制圧している。
だが。
「……熊……
戻れない……」
距離が、ありすぎる。
えくすかりばーさんが、
低く言った。
「挟撃されれば、
内部に非戦闘員がいる
マイホームさんが
危険に晒されます」
「……私……!」
思わず、声を上げた。
何か言わなきゃ。
何かしなきゃ。
でも。
「……私……
戦えない……」
拳が、震える。
熊は、前線で戦っている。
えくすかりばーさんは、
熊の手にある。
「……どう……
しよう……」
そのとき。
――ドクン。
マイホームさんが、
低く、強く脈打った。
床が、わずかに振動する。
視界に、
新たな表示。
> 《防衛対象:マイホーム》
《脅威接近:側面》
《対応:自律防衛》
「……え……?」
私は、目を見開いた。
「……自律……?」
えくすかりばーさんが、
静かに言う。
「どうやら……
家が、動きます」
外壁の一部が、
音もなく、変形し始めた。
「………………」
別動隊は、
確実に近づいている。
正面は、熊が制圧。
側面は、
マイホームさん。
「……戦争……
って……」
私は、息を吸った。
「……一人じゃ……
終わらない……」
その言葉を、
誰かが聞いたわけじゃない。
でも。
この瞬間。
戦いは、次の段階へ進んだ。
熊の無双は、
“勝利”ではなかった。
ただの、
開幕だった。
---
正面戦:熊、えくすかりばーさんで斬りまくる
――ズン。
マイホームさんが、足を止めた。
それは偶然ではない。
揺れない家が、意図をもって停止する――
それ自体が、戦闘開始の合図だった。
「……止まった……」
私は、思わず窓の外を見た。
森の向こう。
木々の隙間から、黒い影が溢れ出してくる。
「……来た……」
魔物。
数は――
数える意味がないほど、多い。
だが、恐怖はなかった。
なぜなら。
――パタパタ。
柔らかな足音が、前方へ向かっていく。
「……熊……」
熊のぬいぐるみは、
えくすかりばーさんを肩に担ぎ、
何の躊躇もなく、外へ出た。
その背中は小さい。
ぬいぐるみだ。
抱きしめられるサイズ。
なのに。
「……あんな……
小さいのに……」
えくすかりばーさんの声が、静かに響く。
「前線到達まで、十秒」
熊は、頷いた。
――了解。
次の瞬間。
熊が、跳んだ。
森の地面を蹴り、
信じられない速度で前進する。
「……は……?」
視界が追いつかない。
木々を避けるでもなく、
ぶつかるでもなく。
最短距離を選び、
一直線。
魔物の軍勢が、
熊の接近に気づく。
角を持つ獣が、咆哮を上げた。
「……あ……」
熊は、えくすかりばーさんを構えた。
その動きは、
無駄がない。
感情がない。
ためらいもない。
ただ、斬るための動き。
――シュン。
えくすかりばーさんが、
光を描いた。
次の瞬間。
魔物が、分断された。
切断面は、あまりにも滑らかで、
倒れるまで、
魔物自身が斬られたことに気づいていない。
「…………」
私は、息を呑んだ。
熊は、止まらない。
――ザシュ。
――ザシュ。
――ザシュ。
振るたびに、
魔物が倒れる。
数も、種類も、
関係ない。
えくすかりばーさんの刃は、
防御という概念を無視していた。
「……強……」
言葉が、震える。
魔物の軍勢が、
一瞬で混乱に陥った。
統率が、崩れる。
前線が、割れる。
「……すごい……
すごすぎ……」
えくすかりばーさんの声は、
どこまでも冷静だった。
「敵戦力、前線崩壊を確認」
熊は、
さらに踏み込む。
敵の密集地帯へ。
そこは、
本来なら
包囲されて死ぬ場所だ。
だが。
――ブン。
――ブン。
えくすかりばーさんの刃が、
円を描く。
周囲、全滅。
熊の足元に、
倒れ伏す魔物たち。
「……戦争……
って……」
私は、唇を噛んだ。
こんな一方的な光景を、
想像していなかった。
だが。
そのとき。
――キィィィン。
再び、警報音。
「……え……?」
私は、はっと顔を上げた。
警報の質が、
変わっている。
高く、短い。
えくすかりばーさんが、
すぐに反応する。
「……別動隊……」
「……え……?」
「敵は、
正面だけではありません」
壁に、
新たな映像が浮かび上がる。
「………………」
そこには。
森の左右から、
別の部隊が進行してくる様子が映っていた。
「……挟撃……」
知らない言葉じゃない。
でも。
「……正面……
熊が……
全部……」
「だからこそ、です」
えくすかりばーさんは、
淡々と告げた。
「正面が崩壊したことで、
敵は判断しました」
「……なにを……?」
「正面突破は不可能だと」
胸が、冷える。
「……じゃあ……」
「目標を、
変更した」
映像の中で、
別動隊の進路が、
マイホームさんへ向かっている。
「………………」
言葉を失う。
「……家……
狙われてる……」
熊は、前線で戦っている。
正面は、
完全に制圧している。
だが。
「……熊……
戻れない……」
距離が、ありすぎる。
えくすかりばーさんが、
低く言った。
「挟撃されれば、
内部に非戦闘員がいる
マイホームさんが
危険に晒されます」
「……私……!」
思わず、声を上げた。
何か言わなきゃ。
何かしなきゃ。
でも。
「……私……
戦えない……」
拳が、震える。
熊は、前線で戦っている。
えくすかりばーさんは、
熊の手にある。
「……どう……
しよう……」
そのとき。
――ドクン。
マイホームさんが、
低く、強く脈打った。
床が、わずかに振動する。
視界に、
新たな表示。
> 《防衛対象:マイホーム》
《脅威接近:側面》
《対応:自律防衛》
「……え……?」
私は、目を見開いた。
「……自律……?」
えくすかりばーさんが、
静かに言う。
「どうやら……
家が、動きます」
外壁の一部が、
音もなく、変形し始めた。
「………………」
別動隊は、
確実に近づいている。
正面は、熊が制圧。
側面は、
マイホームさん。
「……戦争……
って……」
私は、息を吸った。
「……一人じゃ……
終わらない……」
その言葉を、
誰かが聞いたわけじゃない。
でも。
この瞬間。
戦いは、次の段階へ進んだ。
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ただの、
開幕だった。
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