役立たず聖女見習い、追放されたので森でマイホームとスローライフします ~召喚できるのは非生物だけ?いいえ、全部最強でした~

しおしお

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第十四話 背面戦:タンスさん出撃(無限引き出し絨毯爆撃)

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第十四話

背面戦:タンスさん出撃(無限引き出し絨毯爆撃)

 ――キィィィン。

 警報音が、さらに一段階、鋭さを増した。

「……背面……
 完全に……
 狙われてる……」

 私は、マイホームさんの中央ホールで立ち尽くしていた。

 正面では、熊がえくすかりばーさんを振るい、
 魔物の軍勢を文字通り“刈り取って”いる。

 だが――
 戦場は、そこだけじゃない。

「……別動隊……
 もう……
 近い……」

 壁に映し出された映像では、
 森の影から、複数の魔物が
 慎重に、しかし確実に近づいてきている。

 数は、正面より少ない。

 だが。

「……動き……
 違う……」

 統率が取れている。
 無駄がない。
 明らかに、“裏取り”を理解している動き。

「……賢い……
 タイプ……」

 そのとき。

 ――ギィ……。

 背後で、
 窓が開いた。

「……え……?」

 私が振り返った瞬間。

「10」

 どこからともなく、
 無機質な声が響いた。

「……え……?」

「9」

「……なに……
 この……
 カウント……」

「8」

 部屋の中央。

 一番大きなタンスが、
 わずかに、浮いた。

「……え……?」

「7」

 タンスが、
 完全に宙に浮く。

 脚は、畳まれている。

「6」

 私の脳が、
 現実を拒否し始める。

「……タンス……
 飛ぶ……?」

「5」

 視界に、表示。

> 《付喪神:タンス》
《役割:背面防衛》
《攻撃準備:完了》



「……役割……
 攻撃……?」

「4」

 タンスの引き出しが、
 カタカタと音を立てた。

「3」

「……ちょ……
 待っ……」

「2」

 タンスが、
 水平を保ったまま、窓の外へ向く。

「1」

「0」

 ――ファイヤー。

 次の瞬間。

 タンスが、水平飛行で飛び出した。

「………………」

 言葉が、消えた。

 タンスは、
 弾丸のような速度で、
 森の上空へ躍り出る。

 そして。

 ――ガコン。

 引き出しが、一つ、外れた。

 落下。

 ――ドン。

 魔物の一体に直撃。

 粉砕。

「……え……」

 次。

 ――ガコン、ガコン。

 引き出しが、
 次々と生成され、落下していく。

「………………」

 それは、
 無限。

 数える意味がない。

 上空から、
 木製の引き出しが、
 雨のように降り注ぐ。

「……絨毯……
 爆撃……」

 言葉にした瞬間、
 その異常さに震えた。

 引き出し一つ一つが、
 鈍器兵器。

 直撃すれば、
 魔物は原形を留めない。

 回避しようにも、
 降ってくる数が違う。

「……ひど……」

 別動隊は、
 瞬く間に壊滅状態に追い込まれた。

 だが。

「……あ……
 まだ……
 動いてる……?」

 映像の中。

 引き出しの雨を、
 華麗に避ける影があった。

「……一体……?」

 大型。

 異形。

 明らかに、
 この別動隊の――

「……ボス……」

 引き出しが当たらない。

 跳ぶ。
 転がる。
 木々を盾にする。

「……すご……
 避けてる……」

 その瞬間。

 ――ピタ。

 タンスが、爆撃を止めた。

「……え……?」

 引き出しが、
 ぴたりと生成を止める。

 静寂。

「……弾……
 切れ……?」

 否。

 タンスは、
 急降下を始めた。

「……まさか……」

 速度が、上がる。

 風を切る音。

 ボス魔物が、
 顔を上げる。

 その瞬間。

「――タンスの角キィィィック!!」

 どこからか、
 そんな叫びが聞こえた気がした。

 次の瞬間。

 タンスの角が、
 ボス魔物の額に直撃。

 ――ゴン。

 一瞬、
 時間が止まったように見えた。

「…………」

 そして。

 ――ドォォォン!!

 衝撃波。

 ボス魔物の巨体が、
 水平に吹き飛ばされていく。

 木々を薙ぎ倒し、
 地面を削り、
 視界の彼方へ。

「………………」

 私は、
 ぽつりと呟いた。

「……角……
 痛そう……」

 タンスは、
 何事もなかったかのように、
 再び宙に浮き、
 マイホームさんの窓へ帰還する。

 ――シュタ。

 元の位置に、
 静かに着地。

 引き出しも、
 きれいに収まっている。

> 《背面脅威:排除完了》



「………………」

 沈黙。

 マイホームさんが、
 低く、満足そうに軋んだ。

 ――問題なし。

「……問題……
 ありすぎ……」

 私は、頭を抱えた。

 戦っていない。

 指示もしていない。

 だが。

「……全部……
 守られてる……」

 正面では、
 熊が最後の敵を斬り伏せている。

 背面は、
 タンスが制圧。

「……私……
 ほんとに……
 何も……
 してない……」

 でも。

 それでいい。

 戦う必要はない。

 決意するだけで、
 家も、家具も、
 剣も、ぬいぐるみも――
 勝手に最善を選ぶ。

 こうして。

 魔物の別動隊は、
 家具によって殲滅された。

 王都は、
 まだ無事だ。

 だが。

 この戦いが、
 誰にも気づかれずに
 終わるはずがなかった。

 空を舞ったタンスと、
 降り注ぐ引き出しを見た者は、
 必ずこう思うだろう。

 ――これは、戦争ではない。

 ――生活用品による、制圧だ。


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