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18-1 消えた建物
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18-1 消えた建物
静かだった。
それが、最初の違和感だった。
魔物の咆哮もない。
剣がぶつかる音も、魔法の炸裂音もない。
あれほど騒然としていた戦場が、まるで嘘のように、音を失っていた。
風が吹く。
煙が、ゆっくりと流れる。
私は、マイホームさんの窓辺に立ったまま、外を見ていた。
「……終わった……の?」
自分の声が、ひどく小さく聞こえた。
王都の方角。
さっきまで、確かに――
王城があった場所。
そこに、
何もない。
「……え?」
声が、自然と漏れた。
城壁は?
尖塔は?
玉座の間は?
あれほど高くそびえていた、王国の象徴は?
視線を凝らす。
あるのは、
平らな地面だけ。
焦げ跡もない。
崩れた石もない。
瓦礫すら、残っていない。
まるで――
最初から、そこに存在しなかったかのように。
「……そんな……」
私は、思わず一歩、前に出た。
マイホームさんが、微かに揺れる。
次に視線を向けたのは、
王城のすぐ近くにあったはずの、
大聖堂。
私を追放した場所。
役立たずと笑われ、
タンスやぬいぐるみしか呼べないと嘲られ、
森へ放り出された、あの場所。
白亜の壁。
高い天井。
神の名を掲げた、荘厳な建物。
――そこも、ない。
「……え?」
もう一度、同じ言葉が出た。
今度は、少し間抜けな響きで。
大聖堂があった場所も、
王城と同じだった。
綺麗に、
何もない。
地面は、妙に均されている。
瓦礫が散らばっているわけでも、
崩壊した痕跡があるわけでもない。
“消えた”
それ以外に、説明がつかない。
「……夢……?」
頬をつねる。
痛い。
夢じゃない。
遠くでは、
騎士たちが、
聖女たちが、
人々が、
呆然と立ち尽くしているのが見えた。
彼らもまた、
何が起きたのか、理解できていない。
私は、胸の奥が、ひやりとするのを感じた。
――もしかして。
――やりすぎた……?
頭の中に、
あの光景がよぎる。
空から落ちてきた、巨大なえくすかりばーさん。
世界が歪むほどの衝撃。
すべてを押し流す、圧倒的な力。
「……まさか……」
私は、無意識に、両手を握りしめていた。
王城が消えた。
教会が消えた。
それは、
魔物だけを吹き飛ばした結果ではない。
もし、
もしも――
そこに、
人が、いたら……?
喉が、ひくりと鳴る。
私は、ゆっくりと振り返り、
マイホームさんの内部を見た。
「……マイホームさん……」
答えは、まだない。
今は、
ただ状況を確認している最中なのだろう。
けれど、
私の胸の中では、
不安が、膨らみ続けていた。
追放されたとはいえ、
あの教会には、
私を嫌った人だけでなく、
何も知らない人たちもいた。
王城には、
王族だけでなく、
使用人や兵士や、
ただ働いていただけの人もいたはずだ。
「……私……」
言葉が、続かない。
英雄になるつもりなんて、なかった。
世界を救うつもりも、なかった。
ただ――
止まる場所が欲しかっただけ。
生き延びたかっただけ。
それなのに。
窓の外の光景は、
あまりにも大きな結果を突きつけてくる。
私は、王都を見下ろしたまま、
しばらく、動けなかった。
誰も、責めていない。
誰も、叫んでいない。
それが、
余計に、怖かった。
静かすぎる。
世界が、
一拍、息を止めているみたいだった。
そして、
その沈黙を破るかのように――
マイホームさんの内部で、
淡々とした処理音が、鳴り始める。
次の瞬間、
**“確認結果”**が告げられることになる。
私は、
まだ知らない。
この光景が、
絶望ではなく、安堵へと繋がっていることを。
今はただ、
呆然と、立ち尽くすしかなかった。
> ヒロイン「……え?」
その一言だけが、
王都の上に、
ぽつりと落ちていた。
静かだった。
それが、最初の違和感だった。
魔物の咆哮もない。
剣がぶつかる音も、魔法の炸裂音もない。
あれほど騒然としていた戦場が、まるで嘘のように、音を失っていた。
風が吹く。
煙が、ゆっくりと流れる。
私は、マイホームさんの窓辺に立ったまま、外を見ていた。
「……終わった……の?」
自分の声が、ひどく小さく聞こえた。
王都の方角。
さっきまで、確かに――
王城があった場所。
そこに、
何もない。
「……え?」
声が、自然と漏れた。
城壁は?
尖塔は?
玉座の間は?
あれほど高くそびえていた、王国の象徴は?
視線を凝らす。
あるのは、
平らな地面だけ。
焦げ跡もない。
崩れた石もない。
瓦礫すら、残っていない。
まるで――
最初から、そこに存在しなかったかのように。
「……そんな……」
私は、思わず一歩、前に出た。
マイホームさんが、微かに揺れる。
次に視線を向けたのは、
王城のすぐ近くにあったはずの、
大聖堂。
私を追放した場所。
役立たずと笑われ、
タンスやぬいぐるみしか呼べないと嘲られ、
森へ放り出された、あの場所。
白亜の壁。
高い天井。
神の名を掲げた、荘厳な建物。
――そこも、ない。
「……え?」
もう一度、同じ言葉が出た。
今度は、少し間抜けな響きで。
大聖堂があった場所も、
王城と同じだった。
綺麗に、
何もない。
地面は、妙に均されている。
瓦礫が散らばっているわけでも、
崩壊した痕跡があるわけでもない。
“消えた”
それ以外に、説明がつかない。
「……夢……?」
頬をつねる。
痛い。
夢じゃない。
遠くでは、
騎士たちが、
聖女たちが、
人々が、
呆然と立ち尽くしているのが見えた。
彼らもまた、
何が起きたのか、理解できていない。
私は、胸の奥が、ひやりとするのを感じた。
――もしかして。
――やりすぎた……?
頭の中に、
あの光景がよぎる。
空から落ちてきた、巨大なえくすかりばーさん。
世界が歪むほどの衝撃。
すべてを押し流す、圧倒的な力。
「……まさか……」
私は、無意識に、両手を握りしめていた。
王城が消えた。
教会が消えた。
それは、
魔物だけを吹き飛ばした結果ではない。
もし、
もしも――
そこに、
人が、いたら……?
喉が、ひくりと鳴る。
私は、ゆっくりと振り返り、
マイホームさんの内部を見た。
「……マイホームさん……」
答えは、まだない。
今は、
ただ状況を確認している最中なのだろう。
けれど、
私の胸の中では、
不安が、膨らみ続けていた。
追放されたとはいえ、
あの教会には、
私を嫌った人だけでなく、
何も知らない人たちもいた。
王城には、
王族だけでなく、
使用人や兵士や、
ただ働いていただけの人もいたはずだ。
「……私……」
言葉が、続かない。
英雄になるつもりなんて、なかった。
世界を救うつもりも、なかった。
ただ――
止まる場所が欲しかっただけ。
生き延びたかっただけ。
それなのに。
窓の外の光景は、
あまりにも大きな結果を突きつけてくる。
私は、王都を見下ろしたまま、
しばらく、動けなかった。
誰も、責めていない。
誰も、叫んでいない。
それが、
余計に、怖かった。
静かすぎる。
世界が、
一拍、息を止めているみたいだった。
そして、
その沈黙を破るかのように――
マイホームさんの内部で、
淡々とした処理音が、鳴り始める。
次の瞬間、
**“確認結果”**が告げられることになる。
私は、
まだ知らない。
この光景が、
絶望ではなく、安堵へと繋がっていることを。
今はただ、
呆然と、立ち尽くすしかなかった。
> ヒロイン「……え?」
その一言だけが、
王都の上に、
ぽつりと落ちていた。
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