『反省だけなら猿でもできるので、王子は王家を追放されました。』

しおしお

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第2章-3:公式発表と破棄の決意

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第2章-3:公式発表と破棄の決意

それは、いつもと同じ朝のはずだった。

王立学園の中央棟にある掲示板前。

次期模擬議会の役割発表を見に来た生徒たちは、そこに貼り出された“もう一枚の紙”に目を奪われた。

金箔で縁取られた格式ある文書。中央には、王室の紋章と共にこう記されていた。


《第二王子エルマー・フォン・アインヘリヤル殿下 ご婚約発表の儀に関する告知》

《日程:舞踏会当日。場所:王立学園大広間。時刻:第一舞踏曲前に開式》


一瞬で、ざわめきが学園中に広がった。

「えっ、ほんとに? 第二王子が婚約を?」

「正式に、しかも舞踏会の場で発表って……貴族社会の歴史に残るわね」

「相手はやっぱり、ラファール王国のクレハ姫よね?」

「顔すら知られてないのに。舞踏会が初顔合わせってことも……?」


中には好奇の目を向ける者もいれば、純粋に祝福しようとする者もいた。

だが、その中心で、もっとも注目を集めていたのは、当然のように――

エルマー・フォン・アインヘリヤル本人だった。


「……ふん、思った通りだな」

そう呟く彼の横顔は、どこか皮肉げな笑みを浮かべている。

リヒトが隣で小声で話しかけた。

「お前、やるつもりか。あの場で、本当に」

「ああ。王が決めたことに従うのは、簡単だ。だが、それが正しいとは限らない」

「でも、国王陛下が直々に……」

「だからこそ、だ」

エルマーは拳を握った。

「“形式”だけの結婚なんて、ごめんだ。俺は、あの場で正式に断る。皆の前で」


リヒトはため息をついた。

「お前のその頑固さ、見てるだけなら面白いけどな……。でもまあ、何が起こるか、ちょっと楽しみになってきた」

「見てろよ。俺が“第二王子”じゃなく、“一人の人間”として生きる瞬間だ」


* * *

そのころ、学園の別棟では。

クレア・ミゴール――ラファール王国第二王女、クレハ・アルフェリア・ラファールは、静かに通知を眺めていた。

微風が窓からカーテンを揺らし、紙片の端が揺れる。


「……なるほど。これで、殿下のお考えも確定したというわけですのね」


淡々とした声の裏に、わずかな怒りがにじんでいた。

彼女はわざわざ身分を偽って学園に留学し、相手を見極めようとしていた。

少しでも、未来を共にする価値があるかどうか。

それなのに――

相手は顔も知らぬまま、縁談を“拒絶”する算段を立てている。

「まるで、私の存在そのものを侮辱しているようですわね」


そう言いながらも、クレハの表情は崩れない。

王女としての矜持は、その程度のことで揺らがない。

ただ、心の奥底に小さな火種が生まれる。


「……ならば、受けて立ちましょう」

ゆっくりと机にペンを取り、予定帳の舞踏会当日の欄に、ひと文字添えた。

《公開処刑》


* * *

その日の午後、エルマーは舞踏会の準備のために城に呼び戻された。

衣装の確認、礼節指導、報道陣への対応練習など、やることは山積みだった。

「殿下、次は舞踏の手順確認でございます」

「ふう……わかってる」


だが彼の心の中は、どこか空虚だった。

踊る相手の顔も知らず、名前すらまともに聞いたことのない相手。

誰かに操られて決められた道など、進む価値はない。

「舞踏会は、俺の自由を取り戻す場だ」

そう言い聞かせ、彼は剣のように鋭い決意を胸に秘める。


* * *

そして、舞踏会前日。

クレア――いや、クレハは、ラファール王国から届けられた紅いドレスを静かに受け取った。

それは、ラファールの王族しか着用が許されない色。

彼女が“正体を明かす”決意を固めた証だった。

「準備は整いましたわ、殿下」

その瞳には、冷たく光る“罰”の意志が宿っていた。


かくして、王国を巻き込む一夜の宴が、静かに幕を開けようとしていた。


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