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第3章「裏切りの王都」
3-3 騎士団の反乱
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3-3 騎士団の反乱
夜。
王都を包む風が、不吉なざわめきを含んでいた。
宴の混乱の後、王宮は異様な静けさに沈んでいる。
ルナリエは寝台の脇で椅子に腰かけ、オルヴィンの額に濡らした布をあてていた。
彼の顔色はまだ青白い。
毒はほとんど抜けたが、完全ではない。
「……どうして、あんな無茶を」
囁く声が震える。
「お前が……倒れたら、俺の意味がなくなる」
かすれた声。だが、その目には、いつものようにまっすぐな光が宿っていた。
ルナリエは眉を寄せる。
「あなたは……いつもそうですわ。自分を犠牲にしてばかり」
「お前を守ると、十年前に誓った」
「だからといって命を投げ出していい理由にはなりません!」
言いながら、涙がこみ上げる。
けれど彼の前では泣きたくなかった。
だから、代わりに微笑んだ。
「――今度は、わたくしが守ります。だからもう……眠ってください」
オルヴィンは薄く笑った。
「……命令するのが、うまくなったな」
「騎士を従えるのは、姫の務めですわ」
「……ああ。了解した、“姫”」
彼のまぶたが静かに閉じる。
ルナリエはその手を握りながら、心の奥で誓った。
(この国を……必ず取り戻す)
***
深夜。
王都の鐘が、突然鳴り響いた。
緊急を告げる鐘――不吉な音。
「なに……?」
外に出た瞬間、遠くで爆発音がした。
炎の光が、夜空を赤く染める。
「反乱だ! 貴族派が動いた!」
城内を走る兵士たちの叫びが響く。
ルナリエは駆けだした。
途中、兵士の一人が彼女を見つけ、ひざまずく。
「殿下! 王都が――二分されました!
ヴァルデマー伯爵の私兵が城門を制圧、王太子殿下を“救出”したとの報が!」
「救出? 違う……それは――」
「奪還です!」
ルナリエの胸に冷たいものが走る。
(まさか、王太子まで利用して……!)
そのとき――背後から声がした。
「ルナリエ!」
振り向くと、オルヴィンが立っていた。
まだ顔色は悪いのに、剣を手にしている。
「起きては――!」
「寝てられない。……戦場の匂いがする」
オルヴィンが窓の外を見やる。
遠くに、城下町の屋根が燃え上がるのが見えた。
「貴族派と王太子派が衝突している。
――奴ら、民の命を盾にしている」
「……なんてことを」
ルナリエの拳が震える。
「この国を“救う”はずの祈りが、命を奪っているなんて!」
オルヴィンは静かに剣を抜いた。
「逃げるぞ」
「逃げる? この状況で?」
「お前まで捕まれば終わりだ。今は退く。反撃の時は、必ず来る」
ルナリエは唇を噛む。
王女として、ここで逃げることがどれほど屈辱か――理解している。
けれど、死ねば何も変わらない。
「……わかりました」
「いい子だ」
その一言に、胸が熱くなる。
「あなた……そういう言い方はずるいですわ」
「わかってる」
二人は廊下を駆け抜ける。
その途中、倒れた兵士の手に握られた王家の紋章が目に入った。
(この国は、もう……限界なのかもしれない)
だが、背後から怒号が響いた。
「そこだ! 姫を捕えろ!」
「チッ、来たか!」
オルヴィンが剣を構え、影のように動く。
刃が火花を散らし、敵兵を次々と薙ぎ払う。
その背に、ルナリエは手をかざした。
「《氷壁(グレイシャル・シールド)》!」
瞬間、通路に透明な氷の壁が形成され、敵の進行を遮る。
白い霜が床を這い、冷気が舞う。
「……まだ使えるんだな」
「ええ。もう、怖くありません」
ルナリエの瞳は揺るぎなく光る。
「オルヴィン。行きましょう。この国の“真の毒”を、暴くために」
「了解だ、姫」
二人は王宮の裏門から脱出した。
外の世界は、炎と雪が交錯する戦場。
王都は、まるで血に染まった氷の花のように崩れていく。
その光景を見つめながら、ルナリエは静かに呟いた。
「……あの夜、私を追放した者たち。
今度は、私があなたたちの罪を裁きます」
氷の姫はもう泣かない。
彼女の心は――炎のように凛として、冷たい。
夜空を裂く鐘の音が響く中、
王国の運命は、静かに大きく動き始めていた。
---
夜。
王都を包む風が、不吉なざわめきを含んでいた。
宴の混乱の後、王宮は異様な静けさに沈んでいる。
ルナリエは寝台の脇で椅子に腰かけ、オルヴィンの額に濡らした布をあてていた。
彼の顔色はまだ青白い。
毒はほとんど抜けたが、完全ではない。
「……どうして、あんな無茶を」
囁く声が震える。
「お前が……倒れたら、俺の意味がなくなる」
かすれた声。だが、その目には、いつものようにまっすぐな光が宿っていた。
ルナリエは眉を寄せる。
「あなたは……いつもそうですわ。自分を犠牲にしてばかり」
「お前を守ると、十年前に誓った」
「だからといって命を投げ出していい理由にはなりません!」
言いながら、涙がこみ上げる。
けれど彼の前では泣きたくなかった。
だから、代わりに微笑んだ。
「――今度は、わたくしが守ります。だからもう……眠ってください」
オルヴィンは薄く笑った。
「……命令するのが、うまくなったな」
「騎士を従えるのは、姫の務めですわ」
「……ああ。了解した、“姫”」
彼のまぶたが静かに閉じる。
ルナリエはその手を握りながら、心の奥で誓った。
(この国を……必ず取り戻す)
***
深夜。
王都の鐘が、突然鳴り響いた。
緊急を告げる鐘――不吉な音。
「なに……?」
外に出た瞬間、遠くで爆発音がした。
炎の光が、夜空を赤く染める。
「反乱だ! 貴族派が動いた!」
城内を走る兵士たちの叫びが響く。
ルナリエは駆けだした。
途中、兵士の一人が彼女を見つけ、ひざまずく。
「殿下! 王都が――二分されました!
ヴァルデマー伯爵の私兵が城門を制圧、王太子殿下を“救出”したとの報が!」
「救出? 違う……それは――」
「奪還です!」
ルナリエの胸に冷たいものが走る。
(まさか、王太子まで利用して……!)
そのとき――背後から声がした。
「ルナリエ!」
振り向くと、オルヴィンが立っていた。
まだ顔色は悪いのに、剣を手にしている。
「起きては――!」
「寝てられない。……戦場の匂いがする」
オルヴィンが窓の外を見やる。
遠くに、城下町の屋根が燃え上がるのが見えた。
「貴族派と王太子派が衝突している。
――奴ら、民の命を盾にしている」
「……なんてことを」
ルナリエの拳が震える。
「この国を“救う”はずの祈りが、命を奪っているなんて!」
オルヴィンは静かに剣を抜いた。
「逃げるぞ」
「逃げる? この状況で?」
「お前まで捕まれば終わりだ。今は退く。反撃の時は、必ず来る」
ルナリエは唇を噛む。
王女として、ここで逃げることがどれほど屈辱か――理解している。
けれど、死ねば何も変わらない。
「……わかりました」
「いい子だ」
その一言に、胸が熱くなる。
「あなた……そういう言い方はずるいですわ」
「わかってる」
二人は廊下を駆け抜ける。
その途中、倒れた兵士の手に握られた王家の紋章が目に入った。
(この国は、もう……限界なのかもしれない)
だが、背後から怒号が響いた。
「そこだ! 姫を捕えろ!」
「チッ、来たか!」
オルヴィンが剣を構え、影のように動く。
刃が火花を散らし、敵兵を次々と薙ぎ払う。
その背に、ルナリエは手をかざした。
「《氷壁(グレイシャル・シールド)》!」
瞬間、通路に透明な氷の壁が形成され、敵の進行を遮る。
白い霜が床を這い、冷気が舞う。
「……まだ使えるんだな」
「ええ。もう、怖くありません」
ルナリエの瞳は揺るぎなく光る。
「オルヴィン。行きましょう。この国の“真の毒”を、暴くために」
「了解だ、姫」
二人は王宮の裏門から脱出した。
外の世界は、炎と雪が交錯する戦場。
王都は、まるで血に染まった氷の花のように崩れていく。
その光景を見つめながら、ルナリエは静かに呟いた。
「……あの夜、私を追放した者たち。
今度は、私があなたたちの罪を裁きます」
氷の姫はもう泣かない。
彼女の心は――炎のように凛として、冷たい。
夜空を裂く鐘の音が響く中、
王国の運命は、静かに大きく動き始めていた。
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