氷の王女と影の騎士 ――誓いの逆転婚姻

しおしお

文字の大きさ
17 / 27
第4章「反撃の誓い」

4-4 決起

しおりを挟む
4-4 決起

夜空に、無数の焚き火が灯っていた。
砦の中庭は兵と民で埋め尽くされ、誰もが息を呑むように中央の高台を見つめていた。
そこに立つのは――かつて“氷の姫”と呼ばれた女、ルナリエ・フロステリア。

白銀の外套が風に揺れ、松明の光を反射して輝く。
その姿は、神々しくも、人間らしく温かい。

「……王国の地に、春は戻っていません」
彼女の声が、夜空に響く。

「民は飢え、兵は疲れ、貴族は争い、そして――
 無実の者たちが“粛清”という名のもとに消えていく。
 この国は、誰のものなのでしょうか?」

ざわめきが広がる。
彼女は静かに、胸に手を当てた。

「かつて私は、王家の娘として生まれました。
 でも、あの王宮で見たのは“誇り”ではなく、“冷たさ”でした。
 ……そして今、わたくしは知りました。
 本当の温もりは、民と共にあるのだと」

彼女の言葉に、老兵が涙をぬぐう。
孤児が両手を合わせ、若き騎士が剣を掲げた。

「我らはもう、誰かに支配される民ではありません!」
「戦うのです! 我らの手で、未来を取り戻すのです!」

ルナリエは頷き、両腕を広げた。
「王都奪還――それは復讐のためではありません。
 この国を、再び“生かす”ための戦いです」

その瞬間、地面が淡い光に包まれた。
氷の魔力が静かに溢れ出し、砦の中心に巨大な“氷の紋章”が浮かび上がる。

「これは誓いの印。
 ――誰も、独りでは戦わせない」

彼女の言葉と共に、氷の光が仲間たちの足元へ流れ、
全員の剣と盾を輝かせた。

「見ろ……姫様が、我らの力を繋いでくださった!」
「これが……氷の誓い……!」

歓声が轟く中、オルヴィンが一歩前に出る。
彼の黒髪が風に揺れ、真剣な眼差しでルナリエを見上げた。

「ルナリエ・フロステリア。
 俺は、これまで剣としてあなたを守ってきた。
 だが今は、誓いを新たにしたい」

彼は片膝をつき、剣を地に突き立てる。
「これより先は、主と従者ではなく――共に歩む者として、命を懸ける」

ルナリエは驚きのあと、静かに微笑む。
「……ならば、わたくしも誓います。
 あなたを守り、共に笑い、共に未来を作ることを」

そして、彼女はオルヴィンの手を取り、立たせた。
「誓いは、一方的なものではありませんわ。
 あなたの剣がわたくしを支え、わたくしの氷があなたを守る――
 それが、私たちの“共闘”です」

二人が向き合うと、砦中から歓声が上がった。

「氷の姫に栄光を!」
「ルナ様に――自由の風を!」
「オルヴィン将軍、ばんざい!」

叫びが波のように広がり、誰もが高く剣を掲げる。
焚き火の炎が一斉に揺れ、空を焦がすように舞い上がった。

ルナリエはその光景を見渡しながら、ゆっくりと息を吸い込む。
その瞳には、もはや迷いはない。

> 「この命、凍てついた王国を溶かすために。
この心、あなたたちと共に燃やすために。
――行きましょう、王都へ!」



その叫びが夜空を貫いた瞬間、砦全体が歓声と雄叫びに包まれた。
氷と炎が交わるような熱気。
それはまるで、長く閉ざされていた冬が終わり、
“春”が今まさに訪れようとしている瞬間のようだった。

オルヴィンが隣で囁く。
「ようやく、ここまで来たな」
「ええ……ここからが、本当の始まりです」

彼女は微笑み、夜空を仰いだ。
雪が静かに降り始める。
だが、それはもはや寒さをもたらす雪ではなく、
希望を告げる“白銀の花”のように――
人々の肩に、優しく降り注いでいた。


---
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借りてきたカレ

しじましろ
恋愛
都合の良い存在であるはずのレンタル彼氏に振り回されて…… あらすじ システムエンジニアの萩野みさをは、仕事中毒でゾンビのような見た目になるほど働いている。 人の良さにつけ込まれ、面倒な仕事を押しつけられたり、必要のない物を買わされたり、損ばかりしているが、本人は好きでやっていることとあまり気にしていない。 人並みに結婚願望はあるものの、三十歳過ぎても男性経験はゼロ。 しかし、レンタル彼氏・キキとの出会いが、そんな色の無いみさをの日常を大きく変えていく。 基本的にはカラッと明るいラブコメですが、生き馬の目を抜くIT企業のお仕事ものでもあるので、癖のあるサブキャラや意外な展開もお楽しみください!

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

ぽっちゃり侯爵と大食い令嬢の甘い婚約生活

piyo
恋愛
女性秘書官として働きながら、“大食い令嬢”の異名を持つダニエラ。そんな彼女に、上司のガリウスがひとつの縁談を持ってくる。 相手は名門オウネル侯爵家の当主、キーレン・オウネル。 大変ふくよかな体形の彼は、自分と同じように食を楽しんでくれる相手を探していた。 一方のダニエラも、自分と同じくらいの食欲のある伴侶を求めていたため、お茶会を通じて二人は晴れて婚約者となる。 ゆっくりと距離を縮め、穏やかに愛を育んでいく二人だが、 結婚式の半年前、キーレンが交易交渉のため国外へ赴くことになり―― ※なろうにも掲載しています

ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人
恋愛
 私は冒険者ギルド職員ロックウィーナ。25歳の女で担当は回収役。冒険者の落し物、遺品、時には冒険者自体をも背負います!  素敵な恋愛に憧れているのに培われるのは筋肉だけ。  しかし無駄に顔が良い先輩と出動した先で、行き倒れた美形剣士を背負ってから私の人生は一変。初のモテ期が到来です!!  ……とか思ってウハウハしていたら何やら不穏な空気。ええ!?  私の選択次第で世界がループして崩壊の危機!? そんな結末は認めない!!!! ※【エブリスタ】でも公開しています。  【エブリスタ小説大賞2023 講談社 女性コミック9誌合同マンガ原作賞】で優秀作品に選ばれました。

処理中です...