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第451話 優秀な子どもたち
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「いいわね。ミアとドロシーの心がこもったブレスレットだなんて、それだけで無敵になりそうよ」
「キャロライン様ってばまだ七面鳥になれてないのに! でもそれを着けたらきっと不死鳥も夢じゃありませんね!」
「うぐっ……ライラはどんどん遠慮が無くなってくるわね……」
「ははは! それだけ心の垣根が薄れてきたということだ。私が思うに、王妃という役職は孤独だ。王を裏から常に支え、国民達の事にも気を配らなければならない。心は疲弊し精神が荒れる事もあるだろう。そんな時に気の置けない友人が居るのは素晴らしい事だぞ」
「そうね。それは私もとてもよく知ってるわ。ありがとう、ティナ。あなたも私の大切な友人よ」
「ああ、それはお互い様だ。ではミアに全員分のブレスレットを作ってもらおうか。私もお前達二人の心がこもった物がいいからな」
そう言ってティナが笑うと、ドロシーとミアは花が綻んだように笑った。
「いよいよ……だな」
「ええ、そうね。皆、明日は家族とゆっくり過ごすのよ」
「はい!」
「はい」
「はい。キャロライン様も」
「ええ、ありがとう」
そう言ってキャロラインは微笑んだが、頭上にある雲は暗く重く、分厚かった。
「集まったか。それで、皆スマホは部屋に置いてきたな?」
ルイスはそう言って部屋を見渡した。ここはあの秘密屋敷の一室だ。
「もちろん。これ以上は流石に駄目だ。聞かせられない」
カインは頷いて自分のポケットを指さした。
この部屋に集合した時にルイスが提案したのだ。これ以上子供たちは巻き込みたくないので、各自スマホを部屋に置いてくるように、と。子供たちは間違いなくまたあのうさぎを使って盗聴するに決まっているからだ。
「いきなり本題なんだが、モルガナの背中のバラが消えていた、だと!?」
ルイスは顔を真っ赤にして怒鳴った。激昂するルイスの向かい側ではノアが優雅にお茶など飲んでいる。
「そ。で、金のピンも無い。どうしよっかね?」
「どうしよっかねってお前……何でそんなにも呑気なんだ! 茶など飲んでいる場合か!」
「慌てても仕方ないでしょ? それとも怒鳴ったら何か解決でもするの?」
「そうそう。ほら、王子もちょっと落ち着きな」
「うぅ……すまん、リー君」
執務室でカインとシャルと最後の調整を行っていたところにノアから連絡が入った。『久しぶりに秘密屋敷に集まろう』と。
「アランとシャルはどうした?」
「あの二人はまだ作業中。終わり次第こっちに来るってさ。で、話を戻すよ。モルガナの背中のバラはどうやら既にアメリアに移ったみたいだよ。そのおかげでモルガナは……ちょっともう難しいかもね」
ドラゴンの谷でモルガナを捕まえた時、彼女に意識は既に無かった。それに気づいたルーイとユーゴは急いでポリーに診せたようだが、ポリーは口を真一文字に引き結んで首を振っただけだったそうだ。
「バラの根が心臓にまで達していたから……か? でもモルガナは死んでない?」
「うん。アメリアはどうやら本当にバラを引き剥がす術を知ってるみたいだ。アメリアがモルガナからバラを奪えたという事は、もうじきバラは咲くっていう暗示だよ。そうなる前にアメリアからバラを奪うか枯れさせなきゃなんだけどね、どこに居るのか分らないんだ。ちなみに絵美里も行方不明だよ」
「マジか……」
「マジだよ、まぁでも絵美里は既に赤ん坊になっちゃってるしどうこうしようもないんだけどさ」
「で、でも兄さま、もしも、もしもだよ? もしも絵美里がまた夏の庭とかに入ってたら?」
不安げにアリスが言うと、ノアはいつものようにニコッと笑った。
「それは無理だよアリス。あそこはもう妖精王の管轄だからね。ディノの加護がある人達は入れないのに、誰が赤ん坊の絵美里をあそこへ連れて行くの? 何より妖精王はあのスチュアートのおじさん達の一件で地下の結界を強化したみたいだから、たとえ妖精王の加護があっても、もしかしたらもう地下に下りる事は出来ないんじゃないかな」
「そうなのですか? というよりも、何故ノア様がその情報を?」
「ノエルからこれが送られてきたんだよ。こちらの話ばかりじゃ不公平だからってさ。多分言い出したのはノエルとレオとカイじゃないかな」
そう言ってノアが取り出したのはうさぎのぬいぐるみだ。
「あの子達ってば本当に……」
「流石ミアさんと俺の子です。優秀すぎますね」
レオとカイの優秀さは誰よりもキリとミアが一番良く知っている。キリの言葉にミアは頬を染めて小さく笑ってはにかんだ。そんなキリを押しのけてアリスが鼻息を荒くして言う。
「ノエルもだもん! 流石兄さまの子!」
「嫌だな、ノエルはアリスの子でもあるんだよ」
ノアは自分の子供に大興奮するアリスを抱き寄せると徐に膝の上に乗せると、アリスの頭を顎でグリグリと撫でた。
「あのさ、言いたかないんだけどあんた達さ、そうやってナチュラルにイチャつくのと唐突な子供自慢止めてくんない? あと、アリスが無駄に若返ってるから違和感が凄いんだけど」
「リー君、アリスとノア様はもうセットなの。いい加減見飽きてきたかもしれないけど、無視してれば気にもならないわ。ね?」
「そ、そこまでは思ってないよ」
相変わらず辛辣なライラに引きつりつつリアンは大きなため息を落として伸びをする。
「で、明日は皆どうすんの?」
「俺は家に戻るっす。ドロシーも戻ってくるらしいんで。そっすよね? キャロライン」
「ええ、最終日は皆、家族で過ごしましょうって約束をしたの。子供たちもこちらに戻しても構わないかしら?」
「それはうちからも頼むわ。ルークと妖精王の為に皆張り切ってるんだ」
苦笑いを浮かべてカインが言うと、ノアが頷いた。
「キャロライン様ってばまだ七面鳥になれてないのに! でもそれを着けたらきっと不死鳥も夢じゃありませんね!」
「うぐっ……ライラはどんどん遠慮が無くなってくるわね……」
「ははは! それだけ心の垣根が薄れてきたということだ。私が思うに、王妃という役職は孤独だ。王を裏から常に支え、国民達の事にも気を配らなければならない。心は疲弊し精神が荒れる事もあるだろう。そんな時に気の置けない友人が居るのは素晴らしい事だぞ」
「そうね。それは私もとてもよく知ってるわ。ありがとう、ティナ。あなたも私の大切な友人よ」
「ああ、それはお互い様だ。ではミアに全員分のブレスレットを作ってもらおうか。私もお前達二人の心がこもった物がいいからな」
そう言ってティナが笑うと、ドロシーとミアは花が綻んだように笑った。
「いよいよ……だな」
「ええ、そうね。皆、明日は家族とゆっくり過ごすのよ」
「はい!」
「はい」
「はい。キャロライン様も」
「ええ、ありがとう」
そう言ってキャロラインは微笑んだが、頭上にある雲は暗く重く、分厚かった。
「集まったか。それで、皆スマホは部屋に置いてきたな?」
ルイスはそう言って部屋を見渡した。ここはあの秘密屋敷の一室だ。
「もちろん。これ以上は流石に駄目だ。聞かせられない」
カインは頷いて自分のポケットを指さした。
この部屋に集合した時にルイスが提案したのだ。これ以上子供たちは巻き込みたくないので、各自スマホを部屋に置いてくるように、と。子供たちは間違いなくまたあのうさぎを使って盗聴するに決まっているからだ。
「いきなり本題なんだが、モルガナの背中のバラが消えていた、だと!?」
ルイスは顔を真っ赤にして怒鳴った。激昂するルイスの向かい側ではノアが優雅にお茶など飲んでいる。
「そ。で、金のピンも無い。どうしよっかね?」
「どうしよっかねってお前……何でそんなにも呑気なんだ! 茶など飲んでいる場合か!」
「慌てても仕方ないでしょ? それとも怒鳴ったら何か解決でもするの?」
「そうそう。ほら、王子もちょっと落ち着きな」
「うぅ……すまん、リー君」
執務室でカインとシャルと最後の調整を行っていたところにノアから連絡が入った。『久しぶりに秘密屋敷に集まろう』と。
「アランとシャルはどうした?」
「あの二人はまだ作業中。終わり次第こっちに来るってさ。で、話を戻すよ。モルガナの背中のバラはどうやら既にアメリアに移ったみたいだよ。そのおかげでモルガナは……ちょっともう難しいかもね」
ドラゴンの谷でモルガナを捕まえた時、彼女に意識は既に無かった。それに気づいたルーイとユーゴは急いでポリーに診せたようだが、ポリーは口を真一文字に引き結んで首を振っただけだったそうだ。
「バラの根が心臓にまで達していたから……か? でもモルガナは死んでない?」
「うん。アメリアはどうやら本当にバラを引き剥がす術を知ってるみたいだ。アメリアがモルガナからバラを奪えたという事は、もうじきバラは咲くっていう暗示だよ。そうなる前にアメリアからバラを奪うか枯れさせなきゃなんだけどね、どこに居るのか分らないんだ。ちなみに絵美里も行方不明だよ」
「マジか……」
「マジだよ、まぁでも絵美里は既に赤ん坊になっちゃってるしどうこうしようもないんだけどさ」
「で、でも兄さま、もしも、もしもだよ? もしも絵美里がまた夏の庭とかに入ってたら?」
不安げにアリスが言うと、ノアはいつものようにニコッと笑った。
「それは無理だよアリス。あそこはもう妖精王の管轄だからね。ディノの加護がある人達は入れないのに、誰が赤ん坊の絵美里をあそこへ連れて行くの? 何より妖精王はあのスチュアートのおじさん達の一件で地下の結界を強化したみたいだから、たとえ妖精王の加護があっても、もしかしたらもう地下に下りる事は出来ないんじゃないかな」
「そうなのですか? というよりも、何故ノア様がその情報を?」
「ノエルからこれが送られてきたんだよ。こちらの話ばかりじゃ不公平だからってさ。多分言い出したのはノエルとレオとカイじゃないかな」
そう言ってノアが取り出したのはうさぎのぬいぐるみだ。
「あの子達ってば本当に……」
「流石ミアさんと俺の子です。優秀すぎますね」
レオとカイの優秀さは誰よりもキリとミアが一番良く知っている。キリの言葉にミアは頬を染めて小さく笑ってはにかんだ。そんなキリを押しのけてアリスが鼻息を荒くして言う。
「ノエルもだもん! 流石兄さまの子!」
「嫌だな、ノエルはアリスの子でもあるんだよ」
ノアは自分の子供に大興奮するアリスを抱き寄せると徐に膝の上に乗せると、アリスの頭を顎でグリグリと撫でた。
「あのさ、言いたかないんだけどあんた達さ、そうやってナチュラルにイチャつくのと唐突な子供自慢止めてくんない? あと、アリスが無駄に若返ってるから違和感が凄いんだけど」
「リー君、アリスとノア様はもうセットなの。いい加減見飽きてきたかもしれないけど、無視してれば気にもならないわ。ね?」
「そ、そこまでは思ってないよ」
相変わらず辛辣なライラに引きつりつつリアンは大きなため息を落として伸びをする。
「で、明日は皆どうすんの?」
「俺は家に戻るっす。ドロシーも戻ってくるらしいんで。そっすよね? キャロライン」
「ええ、最終日は皆、家族で過ごしましょうって約束をしたの。子供たちもこちらに戻しても構わないかしら?」
「それはうちからも頼むわ。ルークと妖精王の為に皆張り切ってるんだ」
苦笑いを浮かべてカインが言うと、ノアが頷いた。
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