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第475話 家族の団らんか罰ゲームか
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アリスは子どもたちが戻ってくるまでエリザベスと号泣しながら今までの事を沢山話した。時折隣から鼻をすする音が聞こえるのはジョーのものだ。
「そででで(それでね)そのどぎじいさばが(その時兄さまが)じんじゃっだっでおぼっでで(死んじゃったって思ってね)じゃどぅどぅをぼごぼごにじでやどぅっでおぼっで(シャルルをボコボコにしてやるって思って)――」
「ぶんぶん(うんうん)、そでで?(それで?)」
「……」
アリスとエリザベスの会話を最初こそしんみりと聞いていたノアだったが、どんどん二人はエスカレートしてとうとう何を話しているのかわからなくなってきた。
「ノア様、笑ってはいけませんか」
「いいんじゃない。正直僕も二人が何の会話してるのかすらわからないよ」
「恐らく前回の戦争の話だろうと言うことだけはかろうじて分かるが、ジョーはどうだ?」
「いや……ごめん、俺も途中からはさっぱり……まぁ適当に返事してればいいよ、多分」
エリザベスは一度泣き出すと何を言ってるのか分からなくなる。そういう時は真剣な顔をして頷いておけば問題ない。
ジョーの言葉に男子たちは頷いてそれからしばらくは根気よく頷いていたのだが、そろそろうんざりしてきた所に突然子どもたちが現れた。
「たっだいま~! 母さま、父さま~! 愛娘のアミナスが帰ったよ~。あ! おばあちゃんだ! え!? 何で泣いてるの!?」
アミナスは部屋についた途端目の前に居たノアに抱きついたが、ふと振り返って愕然とした。アリスが泣いている。おまけにエリザベスまで泣いている。一体これは何事だ!
事件だ! と勝手に思い込んだアミナスをノアが抱きかかえると、キリとアーロとジョーに目配せしてノエルとレックスも連れてそっと部屋から退出する。
こそ泥のように屋敷から出ると、ジョーはそのままホッとした顔をして広場の手伝いに戻っていった。
一方ノアは屋敷を出た途端しゃがみこんでアミナスとノエルとレックスを抱きしめて笑顔で言う。
「おかえり! 何だか皆少し大きくなった?」
「僕はおっきくなってない。石だから」
「そっか。アミナスとノエルは?」
ノアがそう言って二人に尋ねると、アミナスがじたばたと暴れだす。
「父さま! 事件だよ! 母さまとおばあちゃんが泣いてたよ!」
「あー、いいのいいの。ていうかアミナスも泣いたの? 目が赤い」
「あ……うん……だって、おじいちゃんが……」
そこまで言ってアミナスはドレスをギュッと握りしめて先程地下で起こった事をノアに説明した。
ユアンは一緒には来なかった。何だかお別れの挨拶みたいなものをして別れた。それをノアに伝えると、ノアは腕を組んで深く頷く。
「まぁそうなるだろうなとは思ってたけど、頑固な人だなぁ」
「お嬢様の父親なので俺は驚きません。それにしてもレオもカイも大きくなりましたか?」
「お、下ろしてください、父さん」
「恥ずかしいです、父さん」
何故か部屋についた途端にキリに抱き上げられた二人は未だにキリに抱っこをされている。
「いいえ、下ろしません。今日はもうずっとこれです」
突然のキリの発言に双子はギョッとした顔をしてキリを見下ろしてくる。
「な、何か俺たちはしましたか!?」
「地味に心に来る罰です……」
言い切ったキリに双子たちは揃ってがっくりと項垂れる。そんな双子を見てキリが首を傾げた。
「なぜ罰だと? 俺は家族団らんのつもりなのですが」
「え?」
「え?」
「え!?」
真顔のキリに双子だけではなくノアまで驚いてしまった。あのキリが成長したなぁという喜びと、そこそこ大きな男子をずっと抱っこは罰ゲーム以外の何物でもないだろ、という思いが入り混じって思わず変な顔になってしまう。
「なぜノア様まで驚かれるのですか? ついでに我々は一度家に戻っても構いませんか?」
「あ、いやごめん。うん、いいんじゃないかな。家族の団らんゆっくりしておいで。夜までまだしばらくあるし。そうだ、うちもする?」
ノアが笑顔でノエルに問うと、ノエルに真顔で首を横に振られてしまった。その隣でアミナスは喜んでいるのでとりあえずアミナスを抱き上げる。
「レックスもおいでよ!」
「僕はいい。石だからノアよりも重いし」
何だか切なくなったレックスがポツリというと、そんなレックスの手をノアがそっと繋いでくれた。
「それじゃあディノに体を返したらレックスも抱っこしてあげるよ。それまでもう少し我慢していて。あ! アリスなら多分今のレックスでも抱っこ出来ると思うよ。してもらう?」
「抱っこは別にいい。でも……僕の体をディノに返したらってどういう意味?」
ノアの不思議な台詞にレックスが首をかしげると、ノアはニコっと笑って人差し指を自分の唇に当ててウィンクする。
「それはまだ内緒。でも大丈夫。全て上手くいくよ。だから少しの間だけ我慢していてね」
「? うん」
よく分からないけれど、ノアはどうやらレックスの為に何かをしてくれるらしい。どうして自分の為にそこまでしてくれるのか分からなくてノエルを見ると、ノエルもノアと同じようにニコッと笑った。
「大丈夫。父さまはきっと何かを思いついたんだよ。だから信じて大丈夫」
「うん……信じる」
何だかよく分からないが、ノエルが大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。
「それで、あれから地下では何か動きはあった?」
ノアがアミナスを下ろしてノエルに尋ねると、ノエルとレックスは顔を見合わせてあれから地下で見つけた不思議な場所の話を聞かせてくれた。
「そででで(それでね)そのどぎじいさばが(その時兄さまが)じんじゃっだっでおぼっでで(死んじゃったって思ってね)じゃどぅどぅをぼごぼごにじでやどぅっでおぼっで(シャルルをボコボコにしてやるって思って)――」
「ぶんぶん(うんうん)、そでで?(それで?)」
「……」
アリスとエリザベスの会話を最初こそしんみりと聞いていたノアだったが、どんどん二人はエスカレートしてとうとう何を話しているのかわからなくなってきた。
「ノア様、笑ってはいけませんか」
「いいんじゃない。正直僕も二人が何の会話してるのかすらわからないよ」
「恐らく前回の戦争の話だろうと言うことだけはかろうじて分かるが、ジョーはどうだ?」
「いや……ごめん、俺も途中からはさっぱり……まぁ適当に返事してればいいよ、多分」
エリザベスは一度泣き出すと何を言ってるのか分からなくなる。そういう時は真剣な顔をして頷いておけば問題ない。
ジョーの言葉に男子たちは頷いてそれからしばらくは根気よく頷いていたのだが、そろそろうんざりしてきた所に突然子どもたちが現れた。
「たっだいま~! 母さま、父さま~! 愛娘のアミナスが帰ったよ~。あ! おばあちゃんだ! え!? 何で泣いてるの!?」
アミナスは部屋についた途端目の前に居たノアに抱きついたが、ふと振り返って愕然とした。アリスが泣いている。おまけにエリザベスまで泣いている。一体これは何事だ!
事件だ! と勝手に思い込んだアミナスをノアが抱きかかえると、キリとアーロとジョーに目配せしてノエルとレックスも連れてそっと部屋から退出する。
こそ泥のように屋敷から出ると、ジョーはそのままホッとした顔をして広場の手伝いに戻っていった。
一方ノアは屋敷を出た途端しゃがみこんでアミナスとノエルとレックスを抱きしめて笑顔で言う。
「おかえり! 何だか皆少し大きくなった?」
「僕はおっきくなってない。石だから」
「そっか。アミナスとノエルは?」
ノアがそう言って二人に尋ねると、アミナスがじたばたと暴れだす。
「父さま! 事件だよ! 母さまとおばあちゃんが泣いてたよ!」
「あー、いいのいいの。ていうかアミナスも泣いたの? 目が赤い」
「あ……うん……だって、おじいちゃんが……」
そこまで言ってアミナスはドレスをギュッと握りしめて先程地下で起こった事をノアに説明した。
ユアンは一緒には来なかった。何だかお別れの挨拶みたいなものをして別れた。それをノアに伝えると、ノアは腕を組んで深く頷く。
「まぁそうなるだろうなとは思ってたけど、頑固な人だなぁ」
「お嬢様の父親なので俺は驚きません。それにしてもレオもカイも大きくなりましたか?」
「お、下ろしてください、父さん」
「恥ずかしいです、父さん」
何故か部屋についた途端にキリに抱き上げられた二人は未だにキリに抱っこをされている。
「いいえ、下ろしません。今日はもうずっとこれです」
突然のキリの発言に双子はギョッとした顔をしてキリを見下ろしてくる。
「な、何か俺たちはしましたか!?」
「地味に心に来る罰です……」
言い切ったキリに双子たちは揃ってがっくりと項垂れる。そんな双子を見てキリが首を傾げた。
「なぜ罰だと? 俺は家族団らんのつもりなのですが」
「え?」
「え?」
「え!?」
真顔のキリに双子だけではなくノアまで驚いてしまった。あのキリが成長したなぁという喜びと、そこそこ大きな男子をずっと抱っこは罰ゲーム以外の何物でもないだろ、という思いが入り混じって思わず変な顔になってしまう。
「なぜノア様まで驚かれるのですか? ついでに我々は一度家に戻っても構いませんか?」
「あ、いやごめん。うん、いいんじゃないかな。家族の団らんゆっくりしておいで。夜までまだしばらくあるし。そうだ、うちもする?」
ノアが笑顔でノエルに問うと、ノエルに真顔で首を横に振られてしまった。その隣でアミナスは喜んでいるのでとりあえずアミナスを抱き上げる。
「レックスもおいでよ!」
「僕はいい。石だからノアよりも重いし」
何だか切なくなったレックスがポツリというと、そんなレックスの手をノアがそっと繋いでくれた。
「それじゃあディノに体を返したらレックスも抱っこしてあげるよ。それまでもう少し我慢していて。あ! アリスなら多分今のレックスでも抱っこ出来ると思うよ。してもらう?」
「抱っこは別にいい。でも……僕の体をディノに返したらってどういう意味?」
ノアの不思議な台詞にレックスが首をかしげると、ノアはニコっと笑って人差し指を自分の唇に当ててウィンクする。
「それはまだ内緒。でも大丈夫。全て上手くいくよ。だから少しの間だけ我慢していてね」
「? うん」
よく分からないけれど、ノアはどうやらレックスの為に何かをしてくれるらしい。どうして自分の為にそこまでしてくれるのか分からなくてノエルを見ると、ノエルもノアと同じようにニコッと笑った。
「大丈夫。父さまはきっと何かを思いついたんだよ。だから信じて大丈夫」
「うん……信じる」
何だかよく分からないが、ノエルが大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。
「それで、あれから地下では何か動きはあった?」
ノアがアミナスを下ろしてノエルに尋ねると、ノエルとレックスは顔を見合わせてあれから地下で見つけた不思議な場所の話を聞かせてくれた。
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