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第476話 仲間の説得
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「ああ、良かった。無事に見つかったんだね。で、予行演習は出来た訳だけど、まだアメリアの金のピンが取り返せて無いんだ」
「戦争、明日からだよ?」
不安そうにノエルが言うと、ノアも真顔で頷く。
「アメリアの母親、モルガナは保護した。でも彼女の背中にもうバラは無かったんだ。彼女は驚くほどのスピードで衰弱していってる。バラを長年背負うとそういう副作用があるみたい」
「……死んじゃうの?」
「かもしれない。一応お城ではどうにかしてモルガナを救えないかと躍起になってるみたいだけど、バラによる衰弱はディノの春の庭でも防げなかったみたいだから……厳しいかもね」
アリスの言うように犯した罪も償わずに死なれてしまうのは避けたかったけれど、どうやらそれは難しいようだ。
「そっか……」
「ノエルはそんな顔しなくていいんだよ。それにまだ何か方法があるかもしれないしね。アメリアのピンは見つけ次第君たちに渡す。ユアンの言う通りここまで来たら最後まで付き合ってもらうよ。でも他の子達はどうするんだろうね?」
ふとノアが言うとノエルは首を傾げた。その顔は当然皆も一緒だと思っていたようだが、あくまでもこれはバセット家の判断だ。特にライアンやルークなんて次期王と宰相である。そんな二人をこの星に残すのはどうなのだろうか。
「ノエルとアミナスは僕たちが今更何を言ってもここに残るよね?」
「うん。レックスだけ置いていけない」
「そうだね。本当なら僕たちの誰かがレックスに付き添えればいいんだろうけど、こちらも残念ながら手が足りない。電話ではあんな事言ったけど、僕は君たちに期待してるよ。でもライアンやルークは次期王と宰相だ。おいそれとこちらに残すのは……どうかなと思うんだよ」
「……」
ノアの言う通りだ。そういう意味ではテオもジャスミンとローズもこちらに残るべきではないかもしれない。
よく考えろ。
ノエルは腕を組んでその場で立ち尽くして考えた。ノアの言う事は全くもってその通りだ。
でもライアン達が果たしてそれを受け入れるだろうか? ここまでずっと一緒に戦ってきた仲間だ。それをどうやって伝えればいいんだ?
「父さま、ライアン達は僕が説得するよ。いい?」
「もちろん。これは君たちにしか出来ない事だと思うよ。両親や僕たちでは彼らは止められない。お願いするよ」
「うん」
ノエルはノアを見てしっかりと頷いた。そうと決まればすぐに皆に連絡をしなければ。ノエルはスマホを握りしめてレックスを見た。するとレックスも何かに気づいたように頷いてくれる。
「僕も行く」
「ありがとう、レックス。父さま、僕ちょっと皆に連絡してくる。晩ごはんまでには戻るから」
「分かった。それじゃあアミナス、僕たちはアリスと母さんをそろそろ慰めに行こうか」
「うん!」
「俺も行こう。リサはああ見えて泣くと獰猛になるんだ」
「どういう事? よく分かんないけど、それじゃあそっちはよろしくね」
「うん。それじゃあまた後で。レックス、僕の部屋に行こう」
「分かった」
二人はノエルの部屋に移動して床にスマホを置くと、顔を見合わせて頷き合う。どうやって説明すればいいのだろう? ここまでずっと一緒に戦ってきた仲間たちだ。どう伝えても伝わらない気がする。
考え込むノエルにレックスがポンポンと慰めるように肩を叩いてきた。
「大丈夫。皆仲間。絶対に伝わるはずだよ」
「……そうだね。良し! それじゃあまずは皆を招集しよう」
「うん」
ノエルが皆に一斉にメッセージを送っているのを横目に、レックスは初めて入るノエルの部屋をグルリと見渡した。
ノエルの部屋はとても綺麗だった。余計なものが部屋に一切置かれていない。作り付けの本棚には隙間なく本がびっしりと入っていて、巻数順にきっちりと並べられている。よく見ると作者別に分けられているので、そんな所からノエルの几帳面さが見て取れる。
「終わった! ん? 何か面白いものある?」
メッセージを送り終えたノエルが部屋を見渡しているレックスに尋ねると、レックスは何も言わずに本棚を指差す。
「本読みたいの? どれでも好きなの読んでいいよ」
「違う。自分の部屋って持ったこと無いからよく分からなかったけど、こうやって好きなものを置いておく部屋の事なんだなって思っただけ」
「ああ、そっか。レックスずっと旅してたもんね。そうだよ。自分の部屋っていうのは、自分がそこに居て居心地の良い部屋の事だよ。レックスも全部終わったら自分の部屋もらおうね」
「部屋はもらうもの?」
「うん。母さまがきっとレックスの部屋を建て増すって言うよ」
もう既に全てが終わったらレックスはここに住むと思っているノエルが言うと、レックスは少しだけ困ったように笑った。
「僕はここに住むのかな?」
「え、違うの!? あ、でもそっか……ディノと一緒に居たいよね……ごめん、僕てっきりレックスもここに住むと思ってた」
「ううん。それも楽しそうだなって思う。でも……ディノも心配。一人にしたらディノは泣いてしまうかもしれない。寂しいって……辛いって分かった」
「そう……だね。でも! 遊びに来るよね!?」
「もちろん。ノエルはえっと、心友? だから」
「うん! 僕たちは心友だよ! それにアミナスも出来れば一緒に面倒見てほしい」
思わず漏れた本音にノエルが笑うと、それを聞いてレックスも笑う。そこへようやく皆がやってきた。
「どうしたんだ? さっき別れたばかりなのにもう寂しくなったのか?」
意気揚々とやってきたライアンが言うと、ノエルとレックスは途端に顔を強張らせた。その顔を見てライアンは何かを察して一枚の手紙をそっとノエルに差し出してくる。
「戦争、明日からだよ?」
不安そうにノエルが言うと、ノアも真顔で頷く。
「アメリアの母親、モルガナは保護した。でも彼女の背中にもうバラは無かったんだ。彼女は驚くほどのスピードで衰弱していってる。バラを長年背負うとそういう副作用があるみたい」
「……死んじゃうの?」
「かもしれない。一応お城ではどうにかしてモルガナを救えないかと躍起になってるみたいだけど、バラによる衰弱はディノの春の庭でも防げなかったみたいだから……厳しいかもね」
アリスの言うように犯した罪も償わずに死なれてしまうのは避けたかったけれど、どうやらそれは難しいようだ。
「そっか……」
「ノエルはそんな顔しなくていいんだよ。それにまだ何か方法があるかもしれないしね。アメリアのピンは見つけ次第君たちに渡す。ユアンの言う通りここまで来たら最後まで付き合ってもらうよ。でも他の子達はどうするんだろうね?」
ふとノアが言うとノエルは首を傾げた。その顔は当然皆も一緒だと思っていたようだが、あくまでもこれはバセット家の判断だ。特にライアンやルークなんて次期王と宰相である。そんな二人をこの星に残すのはどうなのだろうか。
「ノエルとアミナスは僕たちが今更何を言ってもここに残るよね?」
「うん。レックスだけ置いていけない」
「そうだね。本当なら僕たちの誰かがレックスに付き添えればいいんだろうけど、こちらも残念ながら手が足りない。電話ではあんな事言ったけど、僕は君たちに期待してるよ。でもライアンやルークは次期王と宰相だ。おいそれとこちらに残すのは……どうかなと思うんだよ」
「……」
ノアの言う通りだ。そういう意味ではテオもジャスミンとローズもこちらに残るべきではないかもしれない。
よく考えろ。
ノエルは腕を組んでその場で立ち尽くして考えた。ノアの言う事は全くもってその通りだ。
でもライアン達が果たしてそれを受け入れるだろうか? ここまでずっと一緒に戦ってきた仲間だ。それをどうやって伝えればいいんだ?
「父さま、ライアン達は僕が説得するよ。いい?」
「もちろん。これは君たちにしか出来ない事だと思うよ。両親や僕たちでは彼らは止められない。お願いするよ」
「うん」
ノエルはノアを見てしっかりと頷いた。そうと決まればすぐに皆に連絡をしなければ。ノエルはスマホを握りしめてレックスを見た。するとレックスも何かに気づいたように頷いてくれる。
「僕も行く」
「ありがとう、レックス。父さま、僕ちょっと皆に連絡してくる。晩ごはんまでには戻るから」
「分かった。それじゃあアミナス、僕たちはアリスと母さんをそろそろ慰めに行こうか」
「うん!」
「俺も行こう。リサはああ見えて泣くと獰猛になるんだ」
「どういう事? よく分かんないけど、それじゃあそっちはよろしくね」
「うん。それじゃあまた後で。レックス、僕の部屋に行こう」
「分かった」
二人はノエルの部屋に移動して床にスマホを置くと、顔を見合わせて頷き合う。どうやって説明すればいいのだろう? ここまでずっと一緒に戦ってきた仲間たちだ。どう伝えても伝わらない気がする。
考え込むノエルにレックスがポンポンと慰めるように肩を叩いてきた。
「大丈夫。皆仲間。絶対に伝わるはずだよ」
「……そうだね。良し! それじゃあまずは皆を招集しよう」
「うん」
ノエルが皆に一斉にメッセージを送っているのを横目に、レックスは初めて入るノエルの部屋をグルリと見渡した。
ノエルの部屋はとても綺麗だった。余計なものが部屋に一切置かれていない。作り付けの本棚には隙間なく本がびっしりと入っていて、巻数順にきっちりと並べられている。よく見ると作者別に分けられているので、そんな所からノエルの几帳面さが見て取れる。
「終わった! ん? 何か面白いものある?」
メッセージを送り終えたノエルが部屋を見渡しているレックスに尋ねると、レックスは何も言わずに本棚を指差す。
「本読みたいの? どれでも好きなの読んでいいよ」
「違う。自分の部屋って持ったこと無いからよく分からなかったけど、こうやって好きなものを置いておく部屋の事なんだなって思っただけ」
「ああ、そっか。レックスずっと旅してたもんね。そうだよ。自分の部屋っていうのは、自分がそこに居て居心地の良い部屋の事だよ。レックスも全部終わったら自分の部屋もらおうね」
「部屋はもらうもの?」
「うん。母さまがきっとレックスの部屋を建て増すって言うよ」
もう既に全てが終わったらレックスはここに住むと思っているノエルが言うと、レックスは少しだけ困ったように笑った。
「僕はここに住むのかな?」
「え、違うの!? あ、でもそっか……ディノと一緒に居たいよね……ごめん、僕てっきりレックスもここに住むと思ってた」
「ううん。それも楽しそうだなって思う。でも……ディノも心配。一人にしたらディノは泣いてしまうかもしれない。寂しいって……辛いって分かった」
「そう……だね。でも! 遊びに来るよね!?」
「もちろん。ノエルはえっと、心友? だから」
「うん! 僕たちは心友だよ! それにアミナスも出来れば一緒に面倒見てほしい」
思わず漏れた本音にノエルが笑うと、それを聞いてレックスも笑う。そこへようやく皆がやってきた。
「どうしたんだ? さっき別れたばかりなのにもう寂しくなったのか?」
意気揚々とやってきたライアンが言うと、ノエルとレックスは途端に顔を強張らせた。その顔を見てライアンは何かを察して一枚の手紙をそっとノエルに差し出してくる。
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