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第487話 誰も居ない世界

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 世界から全ての生物が居なくなるとこんなにも静かなのかということを思い知った。

 仲間たちは領民や家族を送り出した人達から順番に何故かあの秘密屋敷に集まってきていた。一番最初に到着したのはライラとリアンだ。次いでオリバーがやってきた。

「だ~れも来ないからここに集合じゃないんじゃないかって思ったよ。ね? ライラ」
「そうね。珍しく外れたかと思ったわ」
「ライラが外すのもあんまり想像出来ないけど。で、他の人達は?」

 リアンはようやくやってきたオリバーを見て言うと、オリバーは苦笑いで答える。

「いや、そもそも誰もここに集合だなんて言ってなかったと思うんすけど」

 そんな事を言いながらもドロシー達を送り出した後、どうしようか迷った挙げ句ここへやってきたオリバーだ。そんなオリバーの心など見透かしたかのようにリアンが言う。

「でも来たじゃん」
「そうなんすよ。でも流石に全員は集まらない――」
「待たせたな! やはり王都の全ての生き物を逃がすには時間がかかるな!」
「あら? まだライラ達とオリバーしか来ていないの?」
「ほら、王子とお姫様も来たじゃん」
「……っすね」

 何だか皆、普段は別々の方向を向いているくせにこういう時だけはしっかりと同じ方を向くのだなぁと改めて感心しつつオリバーはそそくさとお茶の準備をする。

 そこへ続々と仲間たちが集まりだした。

「おいルイス、ここへ来るなら来るで誘えよ」
「ああ、カイン。いや、お前のことだから俺よりも先に来ているかと思ってたんだ」
「ったく。あ、キャシーのバターサンドあるじゃん。誰の持ち込み?」
「私よ。部屋に置いていても痛むもの」

 隠しお菓子を根こそぎ持ってきたキャロラインは、どこから現れるか予想出来ないアリスにドキドキしながら言った。

 そこへアランとシャルル、そしてシャルが何故かアルファとアーロを従えてやってくる。

「あれ? なんであんた達変態と一緒じゃないの?」

 不思議に思ってリアンがアーロとアルファに言うと、二人は顔を見合わせて戸惑ったように言う。

「えっと、アリスさんがですね、その……」
「その先は俺が言おう。アリスが肉を焼き始めたんだ。ここへ来るにはもう少しかかるだろう」
「はぁ!? あいつ何考えて――あ、何も考えてないのか。で、魔道士とシャルルはそれ何持ってんの? すっごく見覚えあるんだけど」
「よくぞ聞いてくださいました。これは改良版うさちゃん録画録音装置です。ちなみに映像の投影も出来るので、レプリカにこっそり送ったスクリーンに誰かが気づいてくれれば前回の戦争同様にあちらでもこちらの映像を見ることが出来ますよ!」
「どうしてこっそり送るんだ?」
「え? だって皆さんそれどころではないかなと思いまして」

 アーロに指摘されてアランがしょんぼりしながら言うと、アーロは腕組をして頷く。そんなアーロにアランは何故かビクビクしている。

「お、怒ってます?」
「何をだ?」
「いや、そのこっそり送った事とか、勝手な事をしたな、的な」
「いいや? これは俺の通常運転だ。気にするな」
「あ、はい」

 アランはアーロの言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろした。孤高のアーロは黙って立っていたら本当に怖い。仮面も相まってどこからどう見ても怒っているようにしか見えない。

「それでその……何となく言われるがまま私もここへ来てしまったのですが、良かったのでしょうか?」

 明らかに場違いな感じに戸惑いつつアルファが言うと、ルイスが声を出して笑った。

「いいに決まっているだろう! それで、結局ユアンはどうするつもりなんだ?」
「ユアンはアンソニー王達の元へ戻りました。彼には彼なりのけじめがあるのでしょう。ですが、私は彼も救いたいのです。どうか皆さん、お力を貸してはいただけないでしょうか?」
「もちろんだ! しかしユアンめ……まだ腹は決まっていなかったのか」
「ま、それは仕方ないよ。ずっとそうやって生きてきたんだからそれを急に変えろって言われてもね。それにあいつがそれを許さないでしょ。どうにかしようとするよ、絶対」

 リアンが自信満々に言うと、後ろから聞き慣れた、いや最早聞き飽きた声が聞こえてきた。

「さっすがリー君! 心の友よ! そうだよ、私がなんとかしてみせるよ! 絶対にパパは犠牲になんてしないから! あとはい、これ! アリス特製特大ローストビーフだぞ!」
「お待たせ~。あれ? 僕たちが最後?」
「やはり皆さんここに集まっていたのですね。まぁ他に行く所もする事もありませんしね」

 全員がちゃっかり秘密屋敷に集まっているのを見てキリが呆れたように言うと、ノアも苦笑いして皆を見渡す。

「ノア、ノエル達はどうしたんです?」

 突然現れたノアを見てシャルルが言うと、ノアとキリが顔を見合わせて足元を指差す。

「地下に送ったのですか?」
「うん。最後のピンが見つかるまでディノの部屋にしばらく居るようにって」
「なるほど。妖精王も?」
「もちろん。僕たちが子どもたちだけ行かせる訳ないでしょ? 出る前に妖精王にお願いしたんだよ」

 家を出る前に妖精王を呼び出し、ピンが見つかるまでは子どもたちと共に行動していて欲しいと頼み込んだのだ。

「あれはお願いというよりも脅迫だったのでは」

 妖精王を呼びつけて胸ぐらを掴んで笑顔で妖精王に詰め寄っていたノアを思い出してキリが言うと、ノアは笑顔のままキリを叱りつけてくる。

「こらキリ! めっ!」
「なるほど。それで妖精王は皆があっちに行った後そそくさと家を出たんだな」

 何かに納得したようにカインが言うと、ノアがコクリと頷いた。

「で、これからどうするのです? とりあえずあちらが動くまで談笑でもするのですか?」

 いつも通り危機感のない仲間たちにいっそ感心しながらシャルが尋ねると、ノアが首を横に振った。
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