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第494話 ソラの介入
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「言ったわよ。はじめまして、妖精王。今回の事は災難だったわね。これからはちゃんと契約書の中身読んで買おうとしている星についてもっと調べる事をオススメするわ」
「そ、そうだな……いや! 我の選択は間違っていなかったがな!」
「そう? とんだハズレくじを引いたとは思わないの?」
「思うものか! ハズレだと思っていたらこんな危ない橋は渡らぬ! むしろ大当たりだと思っているぞ! この星ほど賢く、自我がある星など他にあるものか!」
「自我、ね。そうねぇ、確かにこの子はちょっとやんちゃよね。私も長年観測者やってるけど、ここまでの子は初めてだわ。でもだからこそ面白い生物が沢山いるんだけどね」
そこが星の面白いところである。観測者はそう言って腕を組んで肩を揺らした。
「そうだろう!? ところでその……どうしてあなたがここに?」
「ソラからね、手紙が届いたのよ。どちらかを手助けしてやれってね。ソラにそんな事言われたら動かない訳にはいかないわよね? って事で、私も作戦会議に混ぜてちょうだいな」
「ソラから手紙? どちらかを手助けしてやれ?」
「そうよ~。ここで二択にしてくるのがソラの嫌らしいところよね! そりゃこっち手伝うに決まってんだろって」
「一体どういう意図があってそんな二択を……」
本気で意味がわからない妖精王が言うと、観測者は困ったように笑う。
「あの人にとってはどちらが勝っても面白いからじゃないの? オズワルドが勝ってもあなたが勝ってもソラにとってはどちらでもいい事なのよ。最悪星が一つ消し飛ぶだけで、あの人からしたら些細な出来事なんだから」
「そ、そうか……。で、ソラは怒っていなかったか?」
「ソラが怒る? 何故? むしろ楽しそうだったわよ。あの人星の管理なんて今までした事ないからね。そういう意味では庶民の生活を理解するいい機会だと思ってるわよ、きっと」
「しょ、庶民……妖精王が……庶民……?」
サラリと言ってのけた観測者の言葉に子どもたちが全員固まる。この世界の神は、宇宙に出たらただの庶民なのか。そう思うと何だか不思議な気持ちだ。
けれど驚いたのは子どもたちだけで、妖精王は特に気にした様子もない。それどころか不貞腐れたように鼻を鳴らす。
「ふん。簡単に言ってくれる。今回の事で我らの労働基準も少しは見直されればいいがな」
「全くだわね」
「では始めよう! で、ルーク、ライアンはもう戻ってきたか?」
『ううん、まだ。でもあちこちからうつせ~る君だけ届き出したから、ライアンが声かけて回ってるんだと思う』
「そうか。では我の計画を話そう。さきほども言ったが、我は今、星の管理者ではない。だからそれを利用して――」
真剣に耳を傾ける子どもたちに妖精王は一言一句丁寧に話しだした。
同じ頃、レプリカでは皆の心配事が見事に的中していた。レプリカでの諍いにラルフの代わりに星に残ったオルトまでもがスマホで会話に参加させられていた。
「はぁ……これでは先が思いやられるな」
あちこちから届く小さないざこざに各国の要人たちは、簡素な天幕の中で頭を抱えていた。
「まぁ仕方ありません。こうなる事は予想済みでしたから」
頭を抱えたヘンリーの前にロビンがお茶を置いて、用意されていた簡素な椅子に座ると一息つく。そんなロビンをヘンリーは半眼で睨みつけた。
「お前はこんな時でも余裕だな。一度でいいから慌てたお前を見てみたいものだ」
学生時代の事を思い出したヘンリーが言うと、ロビンは微笑するだけだ。
「俺にはしょっちゅう怒鳴っていたぞ。なぁステラ?」
「それはあなたがロビンの言う事を全然聞かないからよ。それで、子どもたちは画面を集めて一体何をしているのかしら?」
「私も気になっていたの。危ない事をしている訳ではないのよね?」
こうなる前に大量に買い込んだキャシーのバターサンドを頬張るルカにステラとオリビアが問うと、ルカは首を傾げただけだ。
そんなステラに助け舟を出したのはオルトだ。
『子どもたちは画面を通して英雄たちの行動を全て監視すると言っていましたよ。それを地下にいるノエル達に教えるのだそうです』
「なるほど。ここからあちらをサポートする気なのか。全く、侮れんな!」
「本当に……あの行動力は英雄たちに似たのか……しかし、地下に残った子たちにはどうやら妖精王が側に居てくれているようなので、そこはあまり心配はないな」
ラルフは言いながらお茶を飲んで大きなため息を落とした。
ここへ到着してすぐに要人たちはロビンによってすぐさま一箇所に集められた。国境も立場も超えてこうして集まるのは初めての事で、最初はラルフ戸惑っていたが、確かに集まった方が情報が散乱しなくて良い。
「そう言えばラルフ王、アーシャ様はどうされたの?」
「ああ、アーシャは気を失った者たちに付きっきりだ。目覚めた時にすぐに対処出来るようにしておきたいらしい。シエラ公后も一緒だ」
「そうなの! それじゃあオリビア、私達もそろそろ行きましょうか」
アーシャとシエラが既に自分の役割を見つけて動いていると知ったステラは、それを聞いてすぐさま立ち上がった。
「そ、そうだな……いや! 我の選択は間違っていなかったがな!」
「そう? とんだハズレくじを引いたとは思わないの?」
「思うものか! ハズレだと思っていたらこんな危ない橋は渡らぬ! むしろ大当たりだと思っているぞ! この星ほど賢く、自我がある星など他にあるものか!」
「自我、ね。そうねぇ、確かにこの子はちょっとやんちゃよね。私も長年観測者やってるけど、ここまでの子は初めてだわ。でもだからこそ面白い生物が沢山いるんだけどね」
そこが星の面白いところである。観測者はそう言って腕を組んで肩を揺らした。
「そうだろう!? ところでその……どうしてあなたがここに?」
「ソラからね、手紙が届いたのよ。どちらかを手助けしてやれってね。ソラにそんな事言われたら動かない訳にはいかないわよね? って事で、私も作戦会議に混ぜてちょうだいな」
「ソラから手紙? どちらかを手助けしてやれ?」
「そうよ~。ここで二択にしてくるのがソラの嫌らしいところよね! そりゃこっち手伝うに決まってんだろって」
「一体どういう意図があってそんな二択を……」
本気で意味がわからない妖精王が言うと、観測者は困ったように笑う。
「あの人にとってはどちらが勝っても面白いからじゃないの? オズワルドが勝ってもあなたが勝ってもソラにとってはどちらでもいい事なのよ。最悪星が一つ消し飛ぶだけで、あの人からしたら些細な出来事なんだから」
「そ、そうか……。で、ソラは怒っていなかったか?」
「ソラが怒る? 何故? むしろ楽しそうだったわよ。あの人星の管理なんて今までした事ないからね。そういう意味では庶民の生活を理解するいい機会だと思ってるわよ、きっと」
「しょ、庶民……妖精王が……庶民……?」
サラリと言ってのけた観測者の言葉に子どもたちが全員固まる。この世界の神は、宇宙に出たらただの庶民なのか。そう思うと何だか不思議な気持ちだ。
けれど驚いたのは子どもたちだけで、妖精王は特に気にした様子もない。それどころか不貞腐れたように鼻を鳴らす。
「ふん。簡単に言ってくれる。今回の事で我らの労働基準も少しは見直されればいいがな」
「全くだわね」
「では始めよう! で、ルーク、ライアンはもう戻ってきたか?」
『ううん、まだ。でもあちこちからうつせ~る君だけ届き出したから、ライアンが声かけて回ってるんだと思う』
「そうか。では我の計画を話そう。さきほども言ったが、我は今、星の管理者ではない。だからそれを利用して――」
真剣に耳を傾ける子どもたちに妖精王は一言一句丁寧に話しだした。
同じ頃、レプリカでは皆の心配事が見事に的中していた。レプリカでの諍いにラルフの代わりに星に残ったオルトまでもがスマホで会話に参加させられていた。
「はぁ……これでは先が思いやられるな」
あちこちから届く小さないざこざに各国の要人たちは、簡素な天幕の中で頭を抱えていた。
「まぁ仕方ありません。こうなる事は予想済みでしたから」
頭を抱えたヘンリーの前にロビンがお茶を置いて、用意されていた簡素な椅子に座ると一息つく。そんなロビンをヘンリーは半眼で睨みつけた。
「お前はこんな時でも余裕だな。一度でいいから慌てたお前を見てみたいものだ」
学生時代の事を思い出したヘンリーが言うと、ロビンは微笑するだけだ。
「俺にはしょっちゅう怒鳴っていたぞ。なぁステラ?」
「それはあなたがロビンの言う事を全然聞かないからよ。それで、子どもたちは画面を集めて一体何をしているのかしら?」
「私も気になっていたの。危ない事をしている訳ではないのよね?」
こうなる前に大量に買い込んだキャシーのバターサンドを頬張るルカにステラとオリビアが問うと、ルカは首を傾げただけだ。
そんなステラに助け舟を出したのはオルトだ。
『子どもたちは画面を通して英雄たちの行動を全て監視すると言っていましたよ。それを地下にいるノエル達に教えるのだそうです』
「なるほど。ここからあちらをサポートする気なのか。全く、侮れんな!」
「本当に……あの行動力は英雄たちに似たのか……しかし、地下に残った子たちにはどうやら妖精王が側に居てくれているようなので、そこはあまり心配はないな」
ラルフは言いながらお茶を飲んで大きなため息を落とした。
ここへ到着してすぐに要人たちはロビンによってすぐさま一箇所に集められた。国境も立場も超えてこうして集まるのは初めての事で、最初はラルフ戸惑っていたが、確かに集まった方が情報が散乱しなくて良い。
「そう言えばラルフ王、アーシャ様はどうされたの?」
「ああ、アーシャは気を失った者たちに付きっきりだ。目覚めた時にすぐに対処出来るようにしておきたいらしい。シエラ公后も一緒だ」
「そうなの! それじゃあオリビア、私達もそろそろ行きましょうか」
アーシャとシエラが既に自分の役割を見つけて動いていると知ったステラは、それを聞いてすぐさま立ち上がった。
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