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第535話 原理は分からない
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「まぁ何にしてもレヴィウスはもう大丈夫そうだな。では俺はメイリングに向かおう」
マントを翻してアーロが言うと、ノアとキリはそんなアーロを止めた。
「待って。その前に戦況報告をカイン達にしてきて。僕たちはもう少しここで人形を減らすから。あと悪いんだけど、そろそろ妖精王とオズがぶつかるって報告してきて」
「分かった。それは確定事項か?」
「ここの人形の減り具合を見た僕の感想。だから兵士たちにはそろそろ撤退令を出した方がいい」
「そうですね。俺もそう思います。人形たちの増え方がだんだん鈍ってきているのを見る限り、そろそろ妖精王の出番です。それまでに残っている全ての兵士たちと妖精たちをレプリカに送らなければ」
何かイレギュラーな事が起こらない限り、この後は妖精王とオズワルドの戦いだ。拮抗する力がぶつかり合えば、相当なエネルギーが発生するだろう。その時に生者がここに居たら星への負担がさらに増えてしまう。
「分かった、伝えてこよう。ではまた後で」
「うん、また後で」
そう言ってノアとキリは戦闘に戻っていった。それを見送ったアーロはそのまま妖精手帳に『カイン』と書き付ける。
一瞬グニャリと視界が揺らぎ、次に目を開けるとそこは薄暗いどこかだった。
「ほう、これは興味深いな。ここは地下か?」
「おお、アーロか! ルーデリアはどうだ? アランからよく分からないメッセージが届いたんだが」
突然現れたアーロに驚くこともせず、ルイスはアランから送られてきたメッセージをアーロに見せた。そこには『人形に愛を。慈悲を。そうすれば彼らは光に還る』と書かれている。
「これは何かの暗号か何かか?」
「いや、暗号でもなんでも無い。そのままの意味だ。人形たちを闇雲に攻撃しても彼らは倒れない。金色の光を当てなければ」
アーロの言葉にカインとオルトは互いの顔を見合わせて首を傾げている。
「金色の光を当てる? いや、そんなん無理じゃね? 魔法か何かかよ?」
「詳しい説明をお願いします。セイからも報告がありましたが、魔法を使っている訳でもないのに剣が金の光を帯びたなどと訳の分からない事を言うので困っていたんです」
「ふむ……説明が難しいな。実際に見せた方が早いかもしれない」
アーロはそう言って自分の剣を引き抜いた。そしてその場でそれを軽く振って見せる。
「何も起こらんが……」
「ああ。今、俺は無の状態でこれを振った。だが、リサの事を考えながら振ると、こうだ」
そう言ってアーロが頭の中にエリザベスのイタズラが成功した時の笑みを思い浮かべながらもう一度剣を振ると、今度はその軌道上に金色の光の帯が現れたではないか。
それを見てルイスとカイン、そしてオルトは感嘆の声を上げた。
「ど、どうなっているんだ?」
「いや、絶対魔法使ったよな!?」
「一体どういう原理で……?」
「俺にも分からない。分からないが、戦場にいる兵士たちの振るう武器はどれもこうだ。恐らくだが、これはオズワルドの魔法ではないかと推測している」
アランから愛を持って攻撃をしろと言われた時から、何故か剣が光るようになった。それは次第に兵士や騎士たちの間で広まっていった。これはもう、オズワルドが何かしらの魔法をこの世界にかけたとしか思えない。
「なるほどな。いや、理屈はよく分かんないけど、こんな事が出来るのはオズか妖精王ぐらいだよな。この事、アンソニー王は知ってんのかな?」
「そりゃ知っているだろう。あの人は誰よりも慈悲深いぞ」
「複雑ではありますが、ルイス王の言う通りでしょうね。大分早い段階からアンソニー王は金色の光を出すことが出来たのではないでしょうか」
今までのメイリングとの長年に渡る戦争が、実はアンソニー達の手の平で泳がされていただけのものだったと知ったオルトは、大きなため息を落としながら言った。どうしてメイリングが今まで和平交渉に一度も応じなかったのか、何故ああも執拗にレヴィウスに戦争を仕掛けてきていたのか。
マントを翻してアーロが言うと、ノアとキリはそんなアーロを止めた。
「待って。その前に戦況報告をカイン達にしてきて。僕たちはもう少しここで人形を減らすから。あと悪いんだけど、そろそろ妖精王とオズがぶつかるって報告してきて」
「分かった。それは確定事項か?」
「ここの人形の減り具合を見た僕の感想。だから兵士たちにはそろそろ撤退令を出した方がいい」
「そうですね。俺もそう思います。人形たちの増え方がだんだん鈍ってきているのを見る限り、そろそろ妖精王の出番です。それまでに残っている全ての兵士たちと妖精たちをレプリカに送らなければ」
何かイレギュラーな事が起こらない限り、この後は妖精王とオズワルドの戦いだ。拮抗する力がぶつかり合えば、相当なエネルギーが発生するだろう。その時に生者がここに居たら星への負担がさらに増えてしまう。
「分かった、伝えてこよう。ではまた後で」
「うん、また後で」
そう言ってノアとキリは戦闘に戻っていった。それを見送ったアーロはそのまま妖精手帳に『カイン』と書き付ける。
一瞬グニャリと視界が揺らぎ、次に目を開けるとそこは薄暗いどこかだった。
「ほう、これは興味深いな。ここは地下か?」
「おお、アーロか! ルーデリアはどうだ? アランからよく分からないメッセージが届いたんだが」
突然現れたアーロに驚くこともせず、ルイスはアランから送られてきたメッセージをアーロに見せた。そこには『人形に愛を。慈悲を。そうすれば彼らは光に還る』と書かれている。
「これは何かの暗号か何かか?」
「いや、暗号でもなんでも無い。そのままの意味だ。人形たちを闇雲に攻撃しても彼らは倒れない。金色の光を当てなければ」
アーロの言葉にカインとオルトは互いの顔を見合わせて首を傾げている。
「金色の光を当てる? いや、そんなん無理じゃね? 魔法か何かかよ?」
「詳しい説明をお願いします。セイからも報告がありましたが、魔法を使っている訳でもないのに剣が金の光を帯びたなどと訳の分からない事を言うので困っていたんです」
「ふむ……説明が難しいな。実際に見せた方が早いかもしれない」
アーロはそう言って自分の剣を引き抜いた。そしてその場でそれを軽く振って見せる。
「何も起こらんが……」
「ああ。今、俺は無の状態でこれを振った。だが、リサの事を考えながら振ると、こうだ」
そう言ってアーロが頭の中にエリザベスのイタズラが成功した時の笑みを思い浮かべながらもう一度剣を振ると、今度はその軌道上に金色の光の帯が現れたではないか。
それを見てルイスとカイン、そしてオルトは感嘆の声を上げた。
「ど、どうなっているんだ?」
「いや、絶対魔法使ったよな!?」
「一体どういう原理で……?」
「俺にも分からない。分からないが、戦場にいる兵士たちの振るう武器はどれもこうだ。恐らくだが、これはオズワルドの魔法ではないかと推測している」
アランから愛を持って攻撃をしろと言われた時から、何故か剣が光るようになった。それは次第に兵士や騎士たちの間で広まっていった。これはもう、オズワルドが何かしらの魔法をこの世界にかけたとしか思えない。
「なるほどな。いや、理屈はよく分かんないけど、こんな事が出来るのはオズか妖精王ぐらいだよな。この事、アンソニー王は知ってんのかな?」
「そりゃ知っているだろう。あの人は誰よりも慈悲深いぞ」
「複雑ではありますが、ルイス王の言う通りでしょうね。大分早い段階からアンソニー王は金色の光を出すことが出来たのではないでしょうか」
今までのメイリングとの長年に渡る戦争が、実はアンソニー達の手の平で泳がされていただけのものだったと知ったオルトは、大きなため息を落としながら言った。どうしてメイリングが今まで和平交渉に一度も応じなかったのか、何故ああも執拗にレヴィウスに戦争を仕掛けてきていたのか。
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