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第574話 作戦開始!

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「ではノエル様、出発しましょう」
「こちらも準備完了しました。いつでも出発出来ます」
「分かった。アミナス、レックスと手を離しちゃ駄目だよ」
「もちろん! レックス、何か出てきたら私の後に隠れてもいいからね!」
「うん、すぐに隠れる」

 アミナスは強い。レックスの中ではもうそんな方程式が成り立っている。出来る事は出来る人がすればいいというテオの言葉を思い出したレックスは、すぐさま頷いてアミナスの手を取った。

「それじゃあレックス、道案内をお願い。これがチャップマン商会の倉庫がある場所だよ」

 ノエルはレオが書いてくれた地図をレックスに手渡すと、レックスはそれを見てコクリと頷いた。

「倉庫は王都の端にあるの?」
「うん。行けそう?」
「大丈夫。この地図のここらへんの水辺に地下の入口がある。そこから出るのが一番近いと思う」
「なるほど。ちょっと倉庫から距離あるけど大丈夫かな」

 地図を覗き込んだノエルが言うと、レックスが申し訳無さそうに顔を伏せた。そんなレックスを見てノエルは慌てたように言う。

「違う違う! レックスのせいではないから! そんな顔しないで。確かに少し距離はあるけど、走ったらすぐだよ。それにいざとなればアミナスとカイはそこそこ戦える」
「うん……でも戦うのは危ない。ルーク情報では今度の人形は武器とか魔法とかも模倣するって言ってた」
「言ってたね。でも複雑な事は出来ないとも言ってたよ。そう言えばレックスは何か魔法は使えないの? いつだったか、水の温度が一斉に変わった時にレックスだけ気づいた事があったじゃない? あの妖精王もびっくりしてた時」
「僕は魔法の塊みたいなものだけど、それは体を動かすのに使われてる。だから魔法の感知は出来るけど、実際に使うことは出来ないんだ。でも、もしかしたら……」
「もしかしたら?」

 突然何かを考え込んでしまったレックスにノエルが尋ねると、レックスは小さく首を振った。

「ううん、ごめん、何でも無い」

 もしかしたら、いつか見たトーマスやリーゼロッテの増幅のような事は出来ないだろうかと考えたが、それを試してみる時間もないのでレックスはそこで会話を切り上げた。そんなレックスにノエルはさほど気にした様子もなくにこやかに頷く。

「そっか! それじゃあ行こうか。できるだけ人形には会わないように気をつけながら」
「うん」

 こうして子どもたちはディノの部屋を後にした。
 

 しばらく歩いていると、レックスが立ち止まり壁にあったルビーを触った。すると、途端に目の前の通路と景色が変わる。さっきからずっとこれを繰り返しているが、その度にアミナスは奇声を上げて喜んでいた。

「アミナスはずっと喜んでる。飽きない?」
「飽きないよ! 次はどんな絵になるんだろうってワクワクする!」
「そっか」

 地下で過ごしていた時は何百回も見た光景にレックスはすっかり忘れていたが、アミナス達からすればこれはとてつもなく不思議で面白いようだ。

「僕も地上に居た時そんな風に考えれば良かった」
「どういう事?」
「地上は初めて見るものばかりだったんだ。でも、その頃の僕はそういうのを楽しむ余裕も心も無かった。でも、アミナスを見てたらもっと楽しんでおけば良かったって思う」

 正直なレックスの気持ちを伝えると、それを聞いてアミナスはニカッと笑った。

「だったらまた旅したらいいと思う! 今度は私も一緒に行ってあげるよ! そうしたらきっと凄く楽しいと思う!」
「うん。それは楽しそう。ノエル達も一緒に旅する?」
「僕たちも一緒に行きたいけど、難しいかも」
「どうして?」
「そろそろ僕は学園に入る準備をしなきゃだから」
「学園?」

 それは一体何をする所なのか見当もつかないレックスが首を傾げると、ノエルが学園について詳しく説明をしてくれた。それを聞いてレックスは珍しく目を輝かせる。

「それは僕も通う事が出来る?」
「学園も様変わりして、今は魔法が使えるとか使えないとか関係なく希望者は誰でも通えるようになったんだ。だから出来ると思うよ。一緒に行けるよう、全部終わったら父さまにお願いしてみよっか?」
「うん」

 同年代の子どもたちが一箇所に集まって生活を共にする。それはレックスからすれば地下で沢山の人たちと過ごしてきた日々を思い出させる。

「何か目標があるのはいい事です。その為にも頑張りましょう」
「そうだね。さあ行こ――ん? アミナス、どうしたの変な顔して」
「ズルい……兄さま達だけズルい!」
「何がズルいの。アミナスだって学園通うんでしょ?」
「そうだけど、兄さまよりも二年も後だもん! その間にレックスに私よりも仲の良い子が出来たらどうするの!?」

 眉を吊り上げたアミナスを見てノエルは困ったように笑い、双子たちは呆れたような顔をしている。

「アミナスは一緒に行けないの?」
「うん……だって、13歳からだもん」
「じゃあ、僕はアミナスと一緒に行くことにする。それならいい?」
「ほんと!? それならいいよ!」

 レックスの提案にアミナスはその場で飛び跳ねて喜んだ。そんなアミナスを見てカイが大きなため息を落とす。
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